(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第35話

ゴムゴムの実

 

超人系悪魔の実のひとつ。紫色のメロンのような形をしており、果皮に唐草模様がある。食べると永遠に泳げなくなるのと引き換えに、体中がゴムのように伸び縮みする体質になり、打撃や圧迫、関節技、通常の銃弾や砲弾が通用しなくなる。

 

そして全身が絶縁体となり、電撃によるダメージを一切受けない。当然、高所から落下しても変形するだけで一切のダメージが無い。

 

しかし、鋭利な物に対する耐性はそのままの為、刀剣による斬撃、針やトゲなど先端が鋭く尖った物による刺突は防げない。特殊な技能や道具によって衝撃自体を与えられる場合も、防御できずにダメージを受けてしまう。また、砲弾や刺突であっても一定の速度を超えていると抑えきれずに貫かれてしまうことがある。

 

また、武装色の覇気による攻撃や海楼石製の武器による攻撃も無効化出来ない。

 

新聞を広げたまま悪魔の実辞典を広げた私は、オペオペの実のように特別な価値がある悪魔の実ではなさそうでなおさら疑念を膨らませる結果となっていた。市場価格は1億円。ごく普通の悪魔の実の相場だ。

 

ギバーソン社長の倉庫街にたどり着いた私は、港に降りて黒服の見張り達の間を歩いていく。事務所の入り口前はモルガンズを始めとした新聞記者でごった返している。思わず立ち止まると気を利かせた見張りの男がひとり、私を別口から事務所に入れてくれた。いつもと違う廊下や階段を歩き、ようやくに社長室にいくまでみんなどこか落ち着かない様子でザワザワしているようだった。デンデン虫が忙しなく鳴り響いていて、従業員が必死で対応しているのだ。

 

「おはようございます、ギバーソン社長」

 

「おはよう、ホーミング。朝からうるさくてすまんな」

 

朝からこんな調子なのだろう。さすがにギバーソン社長もどこか疲れている様子だった。

 

「あんな大ニュースが流れたら仕方ありませんよ。ましてあなたは関係者だ」

 

「勘弁して欲しいもんだ。おれだって知識としては悪魔の実辞典と変わらないんだからな。真偽の鑑定だって長年の経験と企業秘密の数値化された情報の比較にすぎない。どうだったと聞かれてもわかるわけないだろ」

 

「お疲れ様です。ギバーソン社長が世界政府にも公認の優秀な鑑定士がゆえの苦労ですね」

 

「噂も七十五日っていうが実際にそんなに長くこんな調子が続くのか?勘弁してくれ......」

 

ギバーソン社長がため息をつくのも無理はない。

 

ギバーソン社長によるとCP9が直々にギバーソン社長に鑑定を依頼してきたのは、悪魔の実ゴムゴムの実だったという。それを四皇の赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団が護送中の政府の船を襲撃して襲ったのだ。さすがにCP9の情報は政府要人という単語に置き換わっているのだが、なんの変哲もない普通の超人系悪魔の実である。それをわざわざ政府の船で運ぶということは、よっぽどなにか隠されたものがあるんだろうとみんな考える。

 

そのためみんなの興味は真っ先に実際に目で見て触って確認してゴムゴムの実を鑑定したギバーソン社長に向かう。その結果、いろんな人からどうだったと聞かれる。朝から晩まで同じことを聞かれ続けてうんざりしているわけだ。

 

「赤髪のシャンクスは、五老星に謁見できる立場のようですからね。事情を知る人ほど深読みしたくなるんでしょう」

 

「たしかに悪魔の実は海の秘宝と呼ばれる程の貴重品だ。政府が厳重に護送するのはおかしな話じゃない。だがその護送に海軍じゃなく世界政府直轄のCP9を用いたとなると妙な話だ。確かにおれも当事者じゃなかったら、野次馬してるところだ」

 

「私もですよ」

 

「なあ、ホーミング。たしかあのオペオペの実ですら護送は海軍の予定だったんだろう?」

 

「そうですね。私が見てもわかるくらいの偽物だったので取引不成立にしましたが、世界政府は本物なら50億以上は出すオペオペの実ですら海軍の船でした。そもそも普通CP9の任務は古代兵器やポーネグリフに関する調査が多いはずですから、空白の100年に関係するものなんでしょうね」

 

「ゴムゴムの実がかあ?」

 

「ゴムゴムの実が......なんでしょうね、多分。さっぱり思いつきませんが」

 

「おれもだ。てっきりベガパンクの新発明に有用な能力なのかと思ってたんだが、あの赤髪だろ?さっぱりわからん」

 

前の世界でも起こった三面記事を飾る大ニュースの出来事だ。赤髪海賊団が政府の船を襲撃し、ゴムゴムの実を奪った。このニュースのため一般人ですらゴムゴムの実の知名度が跳ね上がったことで有名な事件である。

 

まさか赤髪海賊団が1年も誰にも食べさせないまま肌身離さず持ち歩き、なにかの拍子にガープ中将の孫、モンキー・D・ルフィが食べることになるだなんて誰が予想したんだろうか。

 

「そういやドフラミンゴの方はどうだ?元気にしてるか?」

 

「ええ、手紙を読む限りは元気そうですよ。ただ、最近は忙しすぎて死にそうだと書いてありましたけど」

 

「もっと人増やして回すよう伝えてくれ。ドフラミンゴのおかげでどんだけ物流や取引が快適になったか。過労死されたら世界の損失だ」

 

「伝えておきます、ありがとうございます」

 

ドフィは私の期待通り全世界を牛耳る闇のブローカーに成長してくれた。秘密裏に武器や商品を捌きたい闇の商人達、またそれらを欲する者達を繋ぐ闇の仲買人の頂点にいる。

 

定期的に手紙で情報共有を図っているので私が把握している限りでは、前の世界よりも勢力が強まっている。ドレスローザを拠点に王になるのではないかと警戒していたが、いまだにドフィは明確な拠点なき七武海だ。

 

ドレスローザは上納金を稼ぐ繁華街と私が支援して研究している人工悪魔の実とカイドウから依頼されたSMILEの試作品をどちらもトンタッタ族に栽培させているようだ。

 

ベガパンクとシーザーはまだ世界政府所属のはずだがどうやらシーザーはすでにカイドウと繋がっており、このころから人工悪魔の実に手を出しているようだ。

 

SMILE試作品はともかく私の人工悪魔の実は対悪魔の実の能力者用の兵器として転用しているためばら撒くだけの量はどう頑張っても残らない。一般人に流出しないよう徹底的に管理しておけば、いずれSMILEは駆逐される日が来る。そのころまでに量産ができれば一気に駆逐できるだろう。まだまだ先だが。

 

それを考えたら市場はまだまだSMILEの時代なのかもしれない。

 

カイドウは世界を戦争の世界にするためワノ国を武器輸出の拠点にしており、海楼石と酒鉄鉱を使った武器の輸出をドフィに依頼している。この規模はすさまじく、下手したら世界政府と海軍と革命軍と七武海と四皇がみんな同じ武器を使っているのでは、と錯覚しそうになるほどだ。おかげで放棄された武器を転用しやすいから楽に稼げてありがたいが。

 

ドフィはなかなか胆力があるようで私に情報を横流ししながら、全世界の人々に所属や勢力問わず平等に売り捌いている。おかげで戦況が非常に読みやすくて紛争や戦争を長引かせることが簡単にできる。

 

最近は上納金がまた跳ね上がったとかで医療品なんかにも手を出し始めた。もはや海賊というより闇のブローカーの方が本職ではといいたくなるくらい多忙なようだ。

 

もしかしてと思って探りを入れたら白ひげあたりにも取引があるようだ。ドフラミンゴファミリー印の医薬品にかこまれた白ひげは、想像するとなかなかにシュールな光景だ。ほんとうに体調不良なのか、毒をもっているのかはわからないが、私も血統因子が欲しいので介入を依頼した。はやく入手したいものだ。

 


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