(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第38話

ギバーソン社長からもたらされた良くない知らせとは、ずっと恐れていたニュースだった。20年以上ずっと探し求めていた悪魔の実、ゴロゴロの実の能力者がとうとう現れてしまったのだ。

 

これだけ青海で見つからないなら、空島にしかないと正直思ってはいた。ギバーソン社長に止められていたから調査に入れないまま時がすぎ、スカイピアに実際現れた。その男により空島ビルカは一夜にして消滅したが、ウラヌスなのかゴロゴロの実の力なのかはわからない。はっきりしているのは、ウラヌスによく似た攻撃による消滅だということだけだ。

 

その男はからくり島の消滅を見ていたのだろうかと思ったが、ギバーソン社長曰く、スカイピアの入り口の老婆がいうには40代らしい。それが本当なら空の上からウラヌスがからくり島に攻撃するところをどこかで目撃したのだろうか。

 

ギバーソン社長が見せてくれた写真をみても、空島ビルカから移住した人々にこの男がいた記憶はない。失われゆく遺跡と共にいると神官達一部の民が残ったが、ギバーソン社長が見せてくれた写真にはその面影を感じる男が数人いる。この写真を撮るために何人か犠牲者が出たらしい。

 

やられた。ゴロゴロの実をどこかに隠していたのか。あるいはすでに能力者で見聞色で私の思考を読んで移住を拒否したに違いない。問答無用で全員移住させればよかった。40代が本当なら移住計画が本格化したときはまだ青年だったろうに。惜しいことをした。

 

突如現れたその男の名はエネル。故郷ビルカを消滅させ、部下を引き連れて現れ、先代神ガン・フォールを叩きのめして追放した上で、6年自らの持つ強力な悪魔の実の能力と強力な見聞色を用いて支配しはじめたそうだ。そして自らを唯一神と名乗り、それまでのスカイピアの過去の権威を否定したらしい。

 

「考えうる限り、最悪のパターンかもしれん。内紛の勢力が共通の敵を持って和解する可能性がでてきた。困ったもんだ。もとは同じ先祖をもつ者同士だ、団結できたら強いぞ。エネルには長いこと神でいて欲しいもんだが......」

 

「空島ビルカを滅ぼして何をする気なんですかね?」

 

「さあな......探りたいのは山々だが、あいつの見聞色が強すぎてな、下手にスカイピアに近づけなくなっちまった。入国者を犯罪者に仕立てて裁きの地に誘導するよう義務付け、国民の罪の意識を煽ってるそうだ。非常にタチが悪い。おかげで今は入口の婆さんが唯一の取引の窓口になっちまった。こうなってくると、天然モノのダイアルはもう潮時かもしれないな」

 

「そうなんですか......なら、ゴロゴロの実は諦めた方がよさそうですね。デメリットがあまりにも大きい。さいわい、ダイアルの養殖は上手くいっていますからよかったです。そろそろバロンターミナルから青海の温暖な島を見繕っていくつもりでしたから」

 

「そりゃいい。詳しく話を聞かせてくれるか、ホーミング。もうすぐ取引が死ぬほど忙しくなるからな、少しでも気が紛れるような話が聞きたい」

 

「世界会議ですからね、もうすぐ」

 

「その単語を出すな、地獄の1週間の始まりなの忘れたのかホーミング」

 

「嬉しいの悲鳴の間違いでは?」

 

「それはそれとしてだ!」

 

世界会議とは、聖地マリージョアにて4年に一度開催される大規模な会議である。

 

会議の参加権を持つのは世界政府の170にも及ぶ加盟国の国王たちであり、毎回代表の50か国が出席している。王たちは巨大な円卓を囲み、世界中の種々の案件について討論する。

 

会議が始まる前には50か国の王族が1か所に集まるためちょっとしたお祭り騒ぎになる。しかし世界会議はいつも大事件を呼ぶとも言われており、会議の終了後には世間を驚愕させるニュースが飛び交うことが多い。

 

今回はイルシア王国のタラッサ・ルーカス国王が持ち回りの議長。貧乏軍隊改め革命軍総司令官にして、世界最悪の犯罪者とされるモンキー・D・ドラゴンに関する議題をあげる予定。そうオトヒメ様から聞いている。

 

リュウグウ王国から久しぶりに出席する王族がいて、さらに重要な議題を持ってくるとなるとかなり話題になっていると思われる。迎えに来たのが案の定ガープ中将だったし、会場にはミョスガルド聖がいるからきっと大丈夫だろう。なにかあればCP0のリストがまた更新されることになるから、なにかしらの配慮を五老星はしてくれるはずだ。

 

会議の流れとしては各国の王たちは2つある赤い港のポンドラを利用してマリージョアまで移動し、会議が行われるパンゲア城の内部にある「虚の玉座」の前で「独裁をしない」という誓いを立ててから、会議に臨む。

 

会議は1週間という長い時間をかけて行われる。

 

王族の護衛には世界中の国の王族がマリージョアに集うため、各国の屈強な護衛に加えて三大勢力の一角を担う海軍本部が最高戦力の大将まで動員して護衛を担当する。

 

私達がこれから地獄の忙しさになるのは、この会議により悪影響を受ける各地の警備に関係がある。世界会議の会議期間は1週間であり、王族がマリージョアに到着するまでの移動時間も含めれば非常に長い。

 

その間海軍はマリージョア及びその付近の防衛に戦力を回すため、各国やその周辺の海は警備が手薄になる。そのため海賊や国の無法者たちが国を襲撃する可能性が高くなり、かつてのドフィのように天上金を狙った海賊に襲撃される可能性が非常に高くなる。また海上で襲撃されれば王族の誘拐事件が発生する危険性もある。

 

つまり、今が稼ぎ時でなければ、一体いつが稼ぎ時なのだという認識が全世界の犯罪者達によって共有されて久しいのだ。

 

しかも今は大海賊時代である。ロックス時代やロジャーの頃とは全ての規模が全く比較にならないほどに大きい。そのため海賊や犯罪組織が活性化すれば、闇の五大帝王であるギバーソン社長はもちろんウミット海運も非常に忙しくなるというわけだ。

 

世界会議では必ず何かが起こると言われているが、会議室だけでなく世界中で何かが起こる1週間でもあるのだ。

 

「ドフィ大丈夫だろうか」

 

「息子の心配する暇あったら、早くダイアルの話をしてくれホーミング。はやくしないとデンデン虫が鳴り止まなくなるんだぞ」

 

「ああ、はい、わかりました。ギバーソン社長、この企画書を見ていただけますか?」

 

私はトランクから書類を取り出した。

 

さすがに心配になった私は後日ドフィ宛に手紙を書いた。さすがに忙殺されていたのか返事が届いたのは世界会議が終わり、ガープ中将によりオトヒメ様たちが無事にリュウグウ王国に帰ってきたころだ。あとで手紙を読もうと鞄に入れて、オトヒメ様たちの迎えにいったところ、上機嫌なガープ中将と再会した。やはり天竜人にまともな存在が現れたから嬉しいのだろうか。

 

「ホーミング、北の海で長らく過ごしたお前はしらんじゃろうがな?東の海にはな、こんなことわざがあるんじゃ。恋はいつでもハリケーン」

 

「いきなりなんですか、ガープ中将」

 

「いい言葉よね、ホーミングさん。恋はいつでもハリケーン」

 

「オトヒメ様までどうなされたんですか?随分とお気に召したようですが」

 

「お孫さんが生まれたらぜひ会わせてね、約束よ」

 

「ホーミング、孫はいいぞぉ」

 

「だからなんの話をしているんですか、ふたりとも。たしかにうちの息子達はもういい歳して独身ですが、私のワガママに付き合わせて苦労させてきましたからね。私はとやかくいうつもりはありませんよ」

 

意味がわからなかったのだが、ドフィの手紙にドレスローザを上納金稼ぎの拠点にしたことを後悔する旨の内容があった。なにかあったんだろうか。


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