(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第42話

16年前、ドフラミンゴファミリーが主に金稼ぎの拠点として選んだ国だけあって、ドレスローザは華やかな国だった。

 

今まで戦争をしたことがなかった平和な国にある資源に目をつけた四皇カイドウに先手を打つ形でリク王国と会談したのが始まりらしい。

 

まもなく周りの国々がカイドウの傘下の襲撃を受ける中、唯一持ち堪えられたのはドフラミンゴファミリーの支援があったからに他ならない。

 

世界の仲介屋の頂点に君臨するドフラミンゴファミリーがドレスローザをあらゆる金稼ぎの拠点とするために中立地帯とすると宣言したのだ。それはドレスローザを侵略した勢力は、ドフラミンゴファミリーが牛耳る巨大なシンジケートから永久追放という制裁が下ることを意味する。

 

その瞬間にカイドウ傘下の海賊はもちろん、世界政府や海軍まで手を出すことができなくなった。そこまで世界はドフラミンゴファミリーの牛耳るシンジケートに侵食されていたのだ。

 

ドフラミンゴの見返りは金稼ぎというシンプルなもので、ドレスローザに経済特区を設けること以外はなにも要求しなかった。ドレスローザは七武海の支配圏だが主権はリク王国のままとなり、安全地帯となることが約束された。

 

安全が約束された国の一角に、税金などの優遇措置や高い賃金、ドフラミンゴファミリー直轄ゆえの特権がある場所が出現したらどうなるか。一気に繁華街と化した。賭博場やオークション会場、闘技場などが出来上がり、そのうちの何割かがリク王国に入った。

 

そのうち、それ以外の場所から不満が上がり始めると、ドフラミンゴファミリーは新しく設置された特区に工場を作った。あるいは栽培場所を作った。いくつかはドフラミンゴファミリーの機密に触れるためドレスローザの住人達は入れなくなったが、その土地から移住する金はドフラミンゴファミリーが全て出した。

 

そのうち働く場所はできても海賊が出てきたら不安だという声や娯楽が欲しい人間が出てきて、ドレスローザ名物の闘技場が繁華街から独立した。規模が大きくなり、ドレスローザの中心地になった。軍人達もここで鍛えているようだ。

 

周りの国は相変わらずカイドウ傘下の海賊達に襲撃を受けるが、ドフラミンゴファミリーがドレスローザで稼いだ金で武器を買い、支援するようになった。なかなか争いは終わらないが、一方的に略奪される恐怖から解放された人々が増えていった。

 

エースにはなかなか成り立ちが複雑で難しい国だったが、特権階級だけが富を独占して国民が搾取されるよりはマシに見えた。ゴア王国となぜここまで違うんだろう。

 

そんなことを思いつつ、エースは案内されたドレスローザの中心地にある闘技場の特別室に案内された。最強を極める人々が戦っている様子を最前線で見ることができる。今日の景品は悪魔の実だ。実際にゴルゴルの実が奪われたことがあるくらい本物を扱うことに定評がある場所なだけはある。警備は過剰なくらいだった。

 

エースが入ると天夜叉ドフラミンゴがそこにいた。

 

「ほんとに来やがった。ここまでくるとロシーのドジっ子が昇進妨げてる証拠にしかならねえな」

 

「え、なんの話だよ」

 

いきなり意味のわからないことを言われた。ドフラミンゴは笑って教えてくれなかった。

 

「なに、こっちの話だ。気にすんな。そんなことよりお前、シャボンディ諸島で七武海に誘われたそうだな。海に出て一年で東の海から偉大なる航路に入り、新世界までくるってのは普通じゃねえ。誇っていい。おれの知る中じゃ最年少だ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、サー・クロコダイルの記録を軽く抜いてやがる。あいつは22んときに海賊王の処刑をみて海賊になり、20代前半に七武海になった。3年以内にだ。白ひげに負けてからはなにしてるかわかったもんじゃねえがな」

 

「アラバスタの英雄だろ?」

 

「どうだかな。あのクソ真面目が白ひげに負けたくらいで引っ込むとは思えねえが。ちなみにおれは17で北の海を制して25で世界の闇のシンジゲートを確立し、七武海の肩書きが役にたつから入ったようなもんだ。それを考えたらお前らの快進撃は充分七武海入りに値するだろう」

 

「天夜叉にそんなこといってもらえるとは思わなかった。ありがとう」

 

「で、世間話をしに来たわけじゃねえだろう。はるばるドレスローザまできて、何のようだ火拳のエース」

 

ドフラミンゴが自分のことを異母弟と思っているわけではないと態度から明らかだった。それだけでエースは話がだいぶ楽になるので精神的に落ち着いた状態で話すことができる。エースはとりあえず手配書の間違いを直したいとドフラミンゴに直訴した。

 

「つまり、お前は海賊王ゴール・D・ロジャーの息子、ゴール・D・エースとして死にてえわけか。そんなに死にてえなら今すぐ殺してやる。その方が楽に死ねるだろう」

 

「えっ、なんでそうなるんだよ」

 

エースはあわてて飛び退いた。ドフラミンゴが武装色を纏いながら弾丸が入った銃に手をかけたからだ。話自体はちゃんと成立していたし、受け答えに変なことはいってないはずだ。ドフラミンゴがいきなり不機嫌になる理由が全くわからないのである。

 

「お前がポートガス・D・エースと世間に広まった瞬間に、海軍と世界政府はいつか南の海バテリラで死んだルージュという女がいつのまにか行方不明になったことに気づく。女の死体を暴き出す。墓は暴かれ、死体は持ち去られ、世界政府が保管してる海賊王の死体の情報からお前が海賊王の息子だと特定される。バテリラの親族は皆殺しだろうな。船大工すら死刑になり、お前の代わりに普通に子供を産むはずだった未婚や未亡人の妊婦が皆殺しにされたんだ。やるぞ、あいつらは。それだけ海賊王は世界を変えたんだ」

 

やけに実感のこもった言葉の数々だった。エースは思わず黙り込む。

 

「お前が母親の姓を名乗り、母親の名前で生きていきたいと考えるのは勝手だが、そんなあまちゃんな考え、今すぐに捨てろ。世界政府も海軍も許すわけがねえだろうが。せめてガープ中将がいってたようにロシーみてえに海軍に入れば、海賊王の息子が海軍なんて最高の宣伝材料だ。ガープ中将だけじゃねえ、五老星も大将の連中も喜んで受け入れただろう。だが、お前はもう海賊を旗揚げしちまった。このままバレてみろ。世界政府はもうお前を海賊王の息子としか世界に宣伝しない。お前が捕まった瞬間に、お前はポートガス・D・エースじゃなく、海賊王の息子ゴール・D・エースとして処刑されるんだ。そして世界中の人々にその名が永遠に刻まれるだろうよ。海賊王が始めた大海賊時代は、息子を処刑したことで終わったとな」

 

「ほんとにそうなるのか?」

 

「なる、間違いなく、なる。世界政府はそうやって不都合な人間をお得意の情報操作でレッテル貼って消してきたんだ。だからおれはお前が父上の隠し子であるかのように工作したんだ」

 

「なんでそんなことを?」

 

「父上はそのつもりだったみたいだが、もっと信憑性を持たせようと思ったからだ。かつて父上がおれとロシーに道を選ばせてくれたように、似たような環境にいるお前がさっき言った道しか選べねえのは違うと思った」

 

「ドフラミンゴ......」

 

「気に食わなかっただけだ、気にすんな」

 

「......」

 

「お前が人堕ちホーミングの息子とされて無事でいられるのは、父上がやったことを世間が評価したあとに生まれてきたことになってるからだ。元天竜人が迫害に耐えかねて非加盟国を滅ぼし、ウミット海運に入って社長の右腕として闇の帝王にのしあげた。人堕ちのきっかけのオトヒメを助けるために力をつけ、リュウグウ王国の後ろ盾となり、いろんな奴らを引き入れている。これだけやった男を今更元天竜人だからと迫害する奴はいねえだろう?」

 

エースはうなずいた。サボを殺した天竜人とは天と地の差のように思えたからだ。

 

「それ以前はひでぇもんだった。おれのように天竜人から人間になった前代未聞の生き物を父上にもつ子供に対する世界の殺意は海賊王の息子に匹敵したろうと確信できるぜ。だからおれは今もドンキホーテを名乗ってねえ。名乗る必要もない。今の地位と勢力と仲間は必死に生き抜く術を父上が教えてくれて、いちからのしあがって手に入れたからだ。これは絶対に誰にも奪われないおれだけの財産でもある。でも、お前にはまだなにもないだろう」

 

「そうか......?おれには仲間がいるんだけどなあ」

 

「仲間も大事だが、それを守れるだけの礎があるのか?今のお前はただの海賊だ。海賊王の息子だとバレた時点で吹き飛ばされてしまう程度のもんしか持ってねえじゃねえか。なにがお前を守ってくれる?なにだったら絶対に奪われないお前の力になる?それがわからねえうちは、おれはお前の扱いを変える気はねえ。出直してこい。これだけは覚えておけ、エース。この世界は弱い奴は死に方すら選べねえんだ。誰にも奪われない確固たるものがないやつには死しかない」

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