(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
「お前達は出なくていい。避けるのが手間だから、島食いが来ないか確認しろ」
「ゼハハハハ、そうだよなァ。アンタなら能力把握してるか。さすがは懸命な判断だぜ。タフさには自信があるんでなァ!テメェの相手はもちろんおれだろ、ホーミング!島食いか。たしかにすぐ出て来れるだろうが、お互いせっかくの決闘の邪魔されちゃ興醒めだもんなァ」
「決闘?これは処刑ですよ」
「うれしいねェ。アンタが出てくるほど、おれァウミット海運に警戒されてるわけか」
「おかしなことを言いますね。四皇赤髪の目に傷をつけ、20年もヤミヤミの実を手に入れるまで潜伏し、白ひげの元から去ってもいい覚悟を決めたアナタを警戒しない理由がありますか?」
「ゼハハハハッ!よくわかってんじゃねェか。そう、おれァ賭けに勝ったんだ、ホーミング。今のおれは負けねェぞ。おめえらも勝手に手ェだして、死ぬんじゃねーぞ。おめェらじゃホーミングには敵わねえからなァ。悪魔の実の力は後からいくらでも付け替えてやれるが、体はひとつしかねーんだから」
チィーチの周りに突如実体を伴った闇が展開されていく。
「闇とは引力だ。全てを引き摺り込む力。光すら通さねえ。無限の引力でテメェの全てを受け止め切ってやるぜ、ホーミング。ものは提案なんだがよ。互いに万策尽きたら引かねえか?おれはまだアンタに負けはしねえが勝てるほど力を使いこなしてねぇんでな。なんのために赤髪避けたと思ってんだ」
「生き残ってからいいなさい、アナタ」
「おうわぁっ!?ぎぃやああああの!!」
見るからにヤバそうなマークが印字された容器が宙を舞い、武装色を纏った弾丸が撃ち抜いていく。ティーチの覇気を貫いたそれは関節を的確に撃ち抜いてく。
世界政府が戦争に使用を禁止しているはずの化学兵器の類いだと気づいたティーチは叫んだ。全て上からひっかぶったティーチは絶叫した。目が見えない、息ができない、痛い痛い痛いと叫び、見るからに苦しそうだ。ごろごろ転がっていく。
「船長!」
「うっせぇ、お前ら下がってろぉ!ハァ......ハァ......ほんとようしゃねぇなくそ......」
「相変わらず人外じみたタフさですね、アナタ。やはり即効性に問題ありですか。さすがは失敗作」
「ゼハハハハ......まるで見てきたみたいにいうじゃねェか。つうかなんだ失敗さくっておい」
ティーチは周囲に展開した暗闇でホーミングを捉える。ホーミングはそのまま引力に任せて近づくなり、超至近距離からヘッドショットをかます。
「いっでぇっ!」
ダイヤモンド並みの硬度を持っているため加工が容易ではなく、破壊も困難。鉄を溶かす程度では溶けない相当な耐熱性を有しているはずの海楼石の弾丸だ。
この石は「海と同じエネルギーを発する」と言う特性があり、作中では「海が固形化したもの」と例えられている。
悪魔の実の能力者がこの海楼石に触れると、海に落ちた時と同じ状態に陥る。すなわち、海楼石に触れている間、能力者は悪魔の実の能力を一切使えなくなる。
「いてえな、ちくしょう」
現在加工技術を確立しているのはワノ国の一部職人と世界政府ぐらいで、主に海軍が対能力者の海賊用の武装や、監獄として使用している。また、政府とつながりのある王下七武海の一部もその権限を利用して入手したのか、海楼石の設備を有している。
なお、その全てに物品を納入しているのがウミット海運なわけだから沢山あるのは当たり前だった。
なお、対能力者用に銃弾などとして量産すればいいのではないかと思うかもしれないが、希少であることやそもそも新世界クラスの海賊となると「能力を過信しないほど基礎戦闘力が高く、まず弾なんかに当たらない」ため、あまり意味のあるものではない。
当てられるホーミングだからこそ、意味がある弾丸なのだ。
「普通は立ってられないはずなんですけどね、ティーチ」
「くそ......覇気だけでも使えたら......」
動きが鈍くなるだけのティーチに舌打ちしたホーミングは、そのまま拘束して海に落とそうとするがティーチの手がそれを許さない。響いた弾丸の音は実に30発以上にも及んだ。
「期待はしてなかったですが、ストックに制限はないわけですか」
「これが噂の人工悪魔の実か?いてえじゃねえか」
「普通の能力者は一発くらっただけで爆散するんですけどね。一応、デメリットだけだったり、悪魔の実の成分だけ抽出したりしたんですが。やっぱりダメですか。ヤミヤミの実と
相性よすぎるんですよ、アナタ。ほんと腹たちますね。あたりなんか使うわけないでしょう、有効活用ですよ。アナタにはプレゼントになるじゃないですか」
「おい、ホーミング。おれのタフさは人体実験するためじゃねェんだぞ」
さすがに不満をもらすチィーチだったがホーミングは笑いながらいうのだ。
「死なないほどタフなのが悪いですね。死んでおきましょうよ、そこは。同じ人間として」
毒が回るたびにティーチはもんどりうっている。吐血しながらホーミングを見上げた。
「少しは吸ってんじゃねーのかよ、ホーミング。ゲホッ。なんで平然としてんだ、天竜人ってのは、毒に耐性でもあんのかッ」
「先に飲んでおくと結合しないようにできるタイプの薬なんですよ。無事に効いてよかった」
ティーチは舌打ちをした。
「小手先ばっか使ってんじゃねーぞ、ホーミング」
「おや、小手先じゃない方がいいですか、ティーチ?弾丸も数少ないですしね、やりましょうか。ガープ中将ほどじゃないですが、それなりに痛いですよ、私は」
「ゼハハハハッ、ロシナンテ中佐はおれよりちょっと下なだけじゃねえか。無理しねーほうがいいぜ、じじい」
「あ゛?誰がじじいだって?」
ギリギリまで引きつけてティーチが避けた先にあったはずの大岩が轟音をたててひびがいく。それはやがて無数のヒビが入り、粉微塵になってしまった。
「ちょうどいいな。冥土の土産に教えてやろう。(ロックスの)狙撃手が肉弾戦苦手なわけねえだろうが、クソガキ」
明らかに声色が変わったホーミングにティーチは顔を引き攣らせたのだった。