(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
ホーミングの話が終わったのは、話し始めてから1時間近くたったころだった。
ウミット海運はその仕事の関係で海賊や犯罪組織の標的になりやすい性質がある。海軍よりも圧倒的に遭遇率が高い。そのため、特に要注意だと思われる無名の海賊や犯罪者達が現れると数日のうちに情報提供を海軍本部に行っている。ウミット海運の血の掟がある関係で逃げ延びたり、手を引かざるをえない政治的な案件だと、海軍も警戒せざるをえない者達ばかりなためかなり有用な情報だった。
賞金額制度には金額を決めるための基準として、危険因子という項目がある。実はこれ、ウミット海運が関わっていると跳ね上がる仕組みになっている。ウミット海運から逃げ延びる時点で相当の手練なのは間違いないから暗黙の了解状態である。
ホーミングが代表して現れるため、律儀に手続きをしなくても、ホーミングはすでに顔パス状態である。
そんなホーミングが持ち込んだ海賊の話を聞きおえたセンゴク元帥は、いつもと違って戸惑いを見せている。その横にはホーミングが来ると聞くと、いつも頼んでもいないのに案内役を買ってでて、出された茶菓子に便乗するガープ中将がいる。
ガープ中将も食べかけの煎餅片手に訝しげだった。
ホーミングは血の掟で処刑済みの海賊の注意喚起にきたというのだ。今までこんなこと一度もなかっただけに、2人ともホーミングを不思議そうにみているのだ。ホーミングは話し終えたのでお茶を飲んでいる。
「んで、最終的に全員重石をつけて船ごと沈めたと。そこまでやってなんでそんな不安そうなんじゃ、お前さん。そんなに黒ひげというやつは頑丈な男なんか?」
「とうとうこの手で直接仕留めることが出来なかったからですよ」
「は?」
「ほう?」
「お前さんが?恐ろしい男もいたもんじゃな、ほんとに無名なのか?」
「だから血の掟に従い、真っ先に向かったんですよ、私は。0ベリーの男なんか、誰に逮捕しろといえばいいんですか」
忌々しげにホーミングはいうと、お茶を飲み干した。
「船にあった武器、ティーチに全部使い果たしてしまったので、仲間を確実に仕留めたか怪しいんですよ。情けないことに。イール達も頼りにはなりますが、あそこまで人外じみた男が仲間にした連中だ。無能力者しかいなかったから、1人や2人死に損ないが黒ひげを助けるため、わざと海に落ちた可能性がある」
よほど悔しかったのか、握り拳が白んでいる。センゴク元帥に勧められて、ホーミングは緑茶のおかわりを汲んで、そのまま一気に飲んだ。
「残念ながら無力化に夜までかかり、私は満身創痍、月獅子化で2人瀕死、催眠術から逃れるために負傷したイールがいたので、一度近くの支部まで撤退したんです。数日後、近くの海域を海流の流れも加味して探してみましたが、死体が1つも見つからなくて」
「ふーむ、世界の海流を熟知しておるはずの、ウミット海運すら見つけられなかった死体か。たしかに生きていれば警戒すべき男じゃな。本気の戦いで赤髪に傷をつけ、あの白ひげの船に20年も実力隠して乗り、悪魔の実を手に入れた途端に仲間殺しをして逃げ切った男か。もしお前さんが時間をかけても殺しきれず、そこまでやっても生きているとしたら、相当厄介じゃな」
「趣味が歴史研究も入れてください。ドラム王国を滅亡させたのは、万能薬のキノコが目的だったと明言していましたから。白ひげは仲間殺しをする前に誰1人本性を見抜けなかったことを特に危険視して、不気味だから落とし前をつけなかったそうです。もし行きたがる者がでたら、おそらく全力で引き留めていたと」
「ホーミング。お前がそこまで危険な男だというのなら、連れてきてくれたらよかったじゃないか。懸賞金がかかっていなくても、海軍はインペルダウンに送れるぞ?」
「0ベリーの男をですか?エースを七武海に勧誘するぐらい青田買いしたがっている世界政府に気に入られるために、億越えの海賊ばかり狩っていた男を?」
「まだ根にもってるな、お前。連絡が行かなかったのはすまなかったと言ってるだろう、ホーミング。上が直接勧誘の指示を出したらしいからな、担当中将に罪はない」
「お前の手綱を握りたかったんじゃろうなあ。リュウグウ王国の事件をきっかけに、お前さんにCP達はなんの意味もなさなくなったからのう」
「それはそれとして、またお話しましょうか、センゴク元帥」
「......やぶへびだったか」
「今はいいです。それより勘弁してくださいよ、センゴク元帥。あの男の性格的に能力者狩りを始めるか、仲間を増やして脱獄しかねない」
「また始まったか。何度もいうが、ホーミング。インペルダウンは歴史的に見ても、未だかつて、脱獄した人間はひとりもいない。それともあれか、その第一号になりかねないと?」
「..................ああそうか、今はまだいないんでしたっけね」
「前から思っていたが、お前のそのインペルダウンへの信頼のなさはなんなんだ」
「今だに鍛え続けてる鬼の跡目や瀕死だったのに無理やり生かすために最先端の治療をして復活した金獅子抱えてよく言えますね。おかげでウェザリアもうちも怖くて夜も眠れない日々を送っているというのに」
「ああ、その件か......それを言われると弱いな」
「お前さんずっと嫌がっとったもんなあ、インペルダウン行き」
「いつもなら公開処刑をやりたがる世界政府が今だに金獅子を生かしてる時点で目的がわかりやすくて困ります。やはりガープ中将の面目潰してでもあの時殺しておくべきだったか」
「がっはっは、安心せいホーミング。金獅子が復讐しにくるとしたら、真っ先にわしのところにくるはずじゃ。お前さん達のことは伏せておるからな。今度こそ決着をつけてやるわい」
「2人ともやめんか、縁起でもない。しかし、情報提供感謝する、ホーミング。お前がそこまで偉大なる航路で暴れられると困ると判断するのなら、無名ながら警戒するに値するからな。もし生きていて、また活動を再開したら懸賞金を検討しよう」
「そういっていただけて安心しました。ありがとうございます、センゴク元帥。どうしても0ベリーだと社員達に注意喚起するにしても、わかりやすい危険指標がないと教育に難儀するのでね」
ホーミングはため息をついた。
「やはりこの歳になると毎年失われていく力の代用になりそうな決定打が欲しくなる。ベガパンク博士の次回の研究に期待がかかりますね」
「利権ごと買われると、色々金が必要になるから次は勘弁してくれないか。世界政府からまたお願いがきてるんだが、ホーミング」
「私達が支援して、ようやく形になってきたMADS産の研究全部横取りするからですよ、何を今更。嫌ならそれ以上の金で私達から買い取ればいいんです。金と資源さえ渡せば納期は必ず守りますよ、ベガパンク博士は」
「限界があるからな、何事も」
我関せずといった様子でホーミングはせんべいに手をつけた。気づけば客人用に出したはずの煎餅がほとんどガープ中将が食べてしまった。おいこら、とセンゴク元帥はガープ中将を軽く叩いた。
「これ、おいしいですね」
「だろう?私のお気に入りなんだ。一枚一枚手作りで焼いてくれる昔ながらの煎餅でな。海軍とコラボすることになったから、気に入ったなら売店で買ってくれ。最近一番売り上げの定番の土産商品だそうだ」
「そうなんですか、知らなかったです。帰りにでも寄ってみようかな」