(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第49話

ドレスローザの港は早朝から騒がしかった。

 

元奴隷にして黄金帝ギルド・テゾーロが君臨する巨大艦船であり、独立国家であるグラン・テゾーロが来航しているからだ。噂を聞きつけてやってきた客でごったがえしていた。

 

この船にある全ては黄金でできており、それ故にゴルゴルの実の能力者であるギルド・テゾーロの独擅場と化している。 船の全長はおよそ10キロであり、5年前テゾーロが36歳の時に完成して以来「世界最大のエンタテイメントシティ」として名を馳せている。

 

豪華なホテル、流行の最先端をいくショッピングモール、カジノ、アミューズメントパーク、巨大スパ、プール、水族館、劇場、ゴルフ場、遊園地、超一流のショーが設備として存在する。中心部に世界一の八星ホテルがあり、名前は『THE REORO』。

 

そしてこのグラン・テゾーロは世界政府公認の中立地帯であり、海軍はグラン・テゾーロ内では海賊に手を出してはいけない決まりとなっている。

 

ドフラミンゴとテゾーロはビジネス上の取引をしていて、時々こういったイベントを行っているのだ。

 

巨大なギガントタートルという亀が船を牽引しており、海流や風向きに関係なく世界のどの海へも行く事が可能。島ではないことから対応する記録指針および永久指針は存在せず、ここに来るためにはテゾーロ本人の情報が組み込まれたビブルカードによる誘導が必要となる。

 

映像電伝虫が街中の至る所に設置され、盗みや破壊行為をした者は街のルールにの則り地下にある牢獄へと落とされる。

 

そのテゾーロ自慢の巨大戦艦が突如真っ二つにぶったぎられたのだ。なおさら大騒ぎになった。

 

いつもならドレスローザに近づく前にモネが見聞色で判定し、相応しい者達だけが入港を許されるはずの七武海天夜叉ドフラミンゴのテリトリーである。

 

モネがドフラミンゴに報告をあげるから待っているよう言われたのだが、面倒だからという迷惑千万な来訪者が邪魔という理由だけでドレスローザ近海の海が真っ二つに破れたのだ。その先にたまたま停泊していた巨大戦艦が不幸にも餌食になってしまったのである。

 

モネが闘技場にいるドフラミンゴを訪ねるのと、またやられたとテゾーロが苦情をいいにくるのはほぼ同時だった。ようやく終わりの見えない仕事が終わりかけていたドフラミンゴは、また休日が暗礁に乗り上げたことを悟って犯人の名前を絶叫したのである。

 

「だから、何度言えばいいんだ、鷹の目ッ!おれはホーミングの窓口じゃねえ!そんなに暇が潰してェなら、昔みたいに大将クラスが出るまで延々海軍の軍艦切りまくればいいじゃねえかッ!天竜人切りにマリージョアにでもいったらどうだッ!!」

 

「七武海でなければそれもいいのだがな。そういう訳にもいくまい」

 

「そういう問題じゃねえよッ!!どーしてくれんだよ、修理費ッ!損失補填ッ!毎回毎回やりやがって世界政府からの使いか、お前は!」

 

「ちがうが」

 

「余計タチが悪いじゃねえか......あークソ、仕事増やしやがって......。で、今度はどこの海のやつらを殲滅する気だ?」

 

「なに、お前が数年前教えてくれた海上レストランを思い出したのだ。久しぶりに赤ワインに合う海鮮料理が食べたくなった」

 

「あー、接待でいったって話を前にしたような......バラティエのことか?」

 

「そう、赫足のゼフが腕を振るう東の海にあるレストランだ」

 

「いったのかよ、東の海にわざわざ?」

 

「いったが」

 

「フッフッフ、赫足のゼフもびっくりしたんじゃねえか?七武海がわざわざくるなんてよ」

 

「そうだな、あの男だけは気づいていたようだ」

 

「偉大なる航路を無傷で一周しただけはあるってか」

 

「そうだ」

 

「この海で一番自由な奴が海賊王だと聞いたことがあるが、そういう意味じゃお前が一番近いだろうよ。鷹の目」

 

もはや一周回ってすっかり冷静になったドフラミンゴは、机の引き出しから手配書の束を出す。ホーミングが定期的に海軍本部にあげている海賊の一覧だ。全てウミット海運の血の掟による皆殺しから逃げ切った海賊達である。有名無名とわず並んでいる。それを渡すとミホークはざっと中を確認した。

 

「ふむ......やはり低いな」

 

「そりゃそうだろうよ、東の海だぞ。世界最弱の平和な海だ。平和で安全なら海には出ねえよ、普通なら」

 

「なるほど、ここにいるのは普通ではない者達といいかえることもできるか」

 

鷹の目は暇つぶしに新世界から楽園、東西南北の海に単身逆走して、用事を済ませるついでに切りがいのある海賊を求めて航海する。闇雲に探すよりはある程度知っておいた方が暇つぶしになるので、その情報を求めてドフラミンゴのところを訪ねてくる。

 

本来ならウミット海運でホーミングを訪ねるのが筋なのだが、儲け話のために日々奔走している男はなかなか捕まらない。それより情報共有していて、高確率でドレスローザにいるドフラミンゴを訪ねる方がはやいといつも訪ねてくるのだ。

 

「平均賞金額が300万ベリーの海だ、偉大なる航路を目指す輩もそうそうねえが。まあ、こんなところか?」

 

偉大なる航路の新世界と楽園、東の海で最近名を上げ始めた海賊達の手配書だ。返却された半年前に渡した束は全て海の藻屑にしたとのことで、真っ赤な線が引かれているのがわかる。あとでホーミングにこの束ごと郵送しなければならない。ホーミングは海軍本部の定期報告にその話題をあげることになるだろう。

 

「早々に夢を叶えちまうのも考えものだな、鷹の目。赤髪が片腕になってから暇そうだ。ライバルがいなくなるってのは寂しいもんか」

 

「だから暇つぶしに航海に出るのだ。将来有望な剣士が1人や2人いるかもしれん」

 

「なるほど」

 

「貴様はどうなのだ、天夜叉」

 

「おれか?」

 

「貴様はいつぞやの赤髪のような顔をしている」

 

「うらやましいか、鷹の目。フッフッフ」

 

「......。先程の戦艦を切って思い出したのだが、金獅子のような海賊はいないだろうか」

 

「軍艦か?なら、おあつらえ向きの海賊がいるじゃねえか」

 

「む、見落としていたか」

 

「上から9枚目だ。首領・クリークあるいはダマし討ちのクリーク。1700万ベリー。東の海で最大の勢力を誇る海賊で、50隻の船と5000人の兵力を保有する海賊艦隊の提督だ。非情な殺戮者として恐れられ、偉大なる航路に入り、海賊王になるのが夢だそうだ。ここまでの規模は偉大なる航路でもなかなかねえな」

 

「50隻か、それはいい。久しぶりに切りがいがありそうだ」

 

「偉大なる航路に近々進出するって噂だ。今から出発すればどこかで必ず会えるだろうよ。なんせ50隻だ。下手したら見聞色使うより、目視の方が見つけられるかもしれないな。嵐が来る前にいけよ。ウェザリアの天気予報によれば嵐がくるはずだ」

 

「偉大なる航路初日が嵐か、軍艦には天敵だろうに。なんと運がない男よ」

 

「お前に確定で遭遇することが決まっちまった時点で、運命とかそういう次元じゃねえと思うが」

 

「弱き者の宿命よ。感謝するぞ、天夜叉。次の会議にもしクロコダイルが出ていたら、またお前との間に座ってやろう」

 

「フッフッフ、ありがとうよ鷹の目。事業がうまくいき過ぎて暇にならねえとこないだろうがな。もしいたらあのワニ野郎、隙あらばおれの書類砂にしようとしやがるからな」

 

「マリージョアの円卓で仕事をする方が悪いのではないか」

 

「おつるさんにも注意されるが、文句は世界政府にいいやがれ。おれだって好きでやってるわけじゃねえんだよ」

 


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