(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
ただいま、現在進行形でゴーイングメリー号はたくさんの魚人とゾオン系悪魔の実の能力者と思われる集団に完全包囲されていた。極寒の旧ドラム王国のため全員がコートを着ているが胸と背中に碇マークが目立つように刺繍されている。代表と思われるジャガーの獣人が前に進み出てきた。
船番のゾロは間が悪いことに寒中水泳をしていたため、3本の刀は甲板に立てかけてある。
「東の海から来た奴らで冬島の極寒の海で寒中水泳ができる人間がいるとは思わなかった。お前、海賊狩りのロロノア・ゾロだな?ということはこの海賊旗をみるに麦わら一味か。ここがウミット海運のシマだと知って上陸したのか?一体何のようだ」
ゴーイングメリー号の出航を妨げる形で碇マークの旗をかかげた船が停泊している。
「おまえらがウミット海運か?」
「そうだ」
「うちの航海士が熱を出したから、医者を見せにあの山に登ってんだ。用が済んだらすぐ帰る。ログは1日でたまるんだろ?なら問題はねえはずだ」
ゾロはそういいながら、冷や汗をどうにか刀がある甲板まで行けないか周りを見渡すが、誰も隙を見せるような様子はない。こんな紙切れでほんとうになんとかなるのかと思いつつ、ゾロは紙切れをジャガーの男に渡した。
「......お前の血判はどれだ?」
「これだな」
ゾロは真っ赤な指紋のひとつに重ねてやった。
「なるほど、どうやら本物らしいな。わかった。航海士の治療が間に合うといいな。それでは失礼する」
ジャガーの男は一礼して、包囲している男達に声を掛ける。
「お前ら、そういうわけだから今月分の荷物を全て運び出して、配達を始めろ」
男の一声でゴーイングメリー号の横に停泊した船に男達が乗り込んでいく。滑車やクレーンがでてきて、碇マークが描かれた大小様々な荷物の下ろしを始める。慣れた様子で彼らは配送業を始めた。
「ところで、そこに沈んでいる超カルガモは大丈夫なのか?氷漬けだが」
「えっ!?」
ゾロが振り返ると何故か冬島の極寒の海に今にも沈んでいきそうなカルーがいた。
「なんで飛び込んでんだ、お前!!」
あわててゾロはカルーをひきあげる。凍死寸前である。
「お前が溺れたと思って助けにいったといってるが」
「おまえなにしてんだ、カルー!!」
「このままじゃまずいな、うちの船にこい。お湯くらいなら貸してやる」
「いいのか」
「さすがに死なれたら寝覚めが悪いからな」
笑うジャガーの男にゾロはカルーを担いでついていくことにした。
「......おまえ、カルーのいうことがわかるのか?」
「能力を極めるとわかるんだ」
「そういうもんか」
「それよりお前は大丈夫なのか」
「なにが?」
「大事な刀、いつまで放っておく気だ?」
慌ててゾロは愛刀達を取りに行くついでに服を着ることにした。さすがにそのまま船には乗らないでくれとジャガーの男に怒られたからだ。
旧ドラム王国にして名前のない国となっている冬島と七武海ドフラミンゴファミリーの取引は、
旧ドラム王国が世界的に有名な医学の国だった頃にまで遡る。
ドフラミンゴファミリーはドレスローザという世界政府加盟国を中心に、北の海全域、北以外にはいくつかの非加盟国に拠点をもつ海賊である。天夜叉ドフラミンゴは、闇のシンジケートの頂点に君臨しており、海賊というよりは闇のブローカーの頂点といった方が正しい男だ。拠点というが七武海の支配下におくことで国を守る代わりに経済特区を設けることを条件にするあたり、金を稼ぐのが好きな男でもある。
ドフラミンゴはある時ドレスローザの新しい経済特区に先駆的な医療施設をつくる計画をたてた。そして、当時先進の医療大国だったドラム王国から数名の医者を招致することにした。
当時、ドレスローザとドラム王国は交流があったのだ。
しかし、ドラム王国には父である先代国王に甘やかされて育った経緯から非常にわがままかつ卑劣な性格で、国民・家臣よりも何より我が身を第一に考える利己的主義者に育った王子がいた。
先代国王の急死により、若くして王座についたワポル王は、王国のものはすべて自分の所有物という考えを持ち、「医者狩り」をはじめとする様々な悪政をしいて国民を苦しめはじめた。
こんな男なので思慮も浅く、感情に任せた後先を考えない行動に出ることも多く、その都度側近の家臣団に放任する下劣な独裁者である。
「王様である自分の思い通りにならない者は死ねばいい」という考えを持ち、国民を圧政によって苦しめていた。
中でも国王直属の医師団「イッシー20」を設立すると共に、それ以外の医者を国外追放し、国民が医師の治療を受けるには王である自身に絶対服従しなければならないシステムを作り上げた。
元は国王の家臣だったドルトンに言わせれば「国中の患者を人質に取る犯罪同然の状態」とも批評される。実際、黒ひげ海賊団という無名の海賊に襲撃されたとき、ワポルたちが国民をおいて真っ先に逃亡した。そのせいで末期の王国は深刻な医者不足に悩まされていた。
ドラム王国もドレスローザも世界政府加盟国であり、世界会議で話し合いも持たれたのだが、内政干渉になるという理由でドレスローザは助けられなかった。外交問題になってしまうため、下手に行動を起こせない。そのため、代わりに行動したのがドフラミンゴファミリーだった。
追放された医者達の受け皿になってくれたのがドレスローザであり、希望する国まで送ってくれたのが七武海天夜叉ドフラミンゴの古巣であり、今なお強い繋がりをもつウミット海運。世界で一番有名なマフィアが運営している海運業者である。
国が滅んだあと、生き残った国民にドレスローザは移住を勧めたが、ドルトン達は断った。それならとドラム王国は滅びたから、ようやくドレスローザは公的にも私的にも支援することができるようになった。復興が進めば医者を戻す計画も進んでいる。
なお、ドラム王国を滅ぼした黒ひげ海賊団は新聞に載った1週間以内に、ウミット海運の血の掟により儲け話をご破産にしたことで船ごと海に沈められた。場所はリトルガーデン北西にある何もない島。島食いによって食べられてできたフンの島であり、ログは1週間でたまる。
ドフラミンゴファミリーの医療機関の計画には、ウミット海運も莫大な金を注ぎ込んでいたからだと言われている。
だから、ここに一筆書いて全員の血判を押してくれ、とドルトンはルフィ達につげた。いつワポル王達が王政復古を狙って襲撃してくるかわからないため、この国はウミット海運に強い海賊の撃退を頼むことがある。世界政府に新しい国として加盟するくらいまで復興するにはまだまだ時間がかかる。だから今は実質ウミット海運のシマになることで防衛している国でもある。独立した暁にはウミット海運は手を引き、支部をおくことがすでに決まっている。
それに定期的にウミット海運の支援船がくるため、血判状がないと海賊旗をかかげている船は、シマを荒らしたとして血の掟で皆殺しにされる可能性がある。事情を話せばわかってはくれるが確実性をとるなら、血判状を作っておいた方がいい。
血判状は世界政府にも認められた法的効力を持つ書状であり、契約や約束事において本人の意思を示す手段になり得る。
ドルトンが真っ先に親指の血判を押したため、麦わら一味は代表してルフィが一筆書いた。非常な悪筆だったが、真下に全員が血判を押したため完成したのだ。
いくらでも偽造できそうな紙切れ一枚でここまで納得して、優しくしてくれるなんて、血の掟ってやつはマフィアにはとても信用に値するものらしい。