(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第62話

「作戦の決行は2日後の朝7時。手配は済んだのか?」

 

「ええ滞りなく…......といいたいところだけど、囮のビリオンズは全滅したから50名だけね、ナノハナで待機済みよ」

 

「分散して入る手筈なのに三分の一か......まあ、生き残っただけマシか」

 

「私じゃないわ」

 

「そんな心配、今までしたことねえだろう。王直の部下は新世界の猛者共だ。見聞色常備だからなアイツらは。全滅しなかっただけマシだ。案外優秀だな、アイツら」

 

「Mr.2を呼び戻しておいたわ。どうやらMr.3が捕まらなかったようだから。オフィサーエージェント達の集合は今夜。スパイダーズカフェに8時」

 

「......」

 

「ミスター?」

 

「......んあ、......結構だ。なんでもねえ。ナノハナのビリオンズへの伝達はどうする?」

 

「アンラッキーズの帰りを待っていては手遅れになるので、代わりに派遣しておいたわ。エリマキランナーズを」

 

「おい、前伝令忘れた奴はクビにしたんだろうな?」

 

「もちろん。ここ一番の仕事に失敗はダメだもの。たとえあなたが調教を頑張ってきたとはいえね」

 

「......まあ、順調な方か」

 

なにやら思案顔のクロコダイルを背にロビンは時計を見た。5時を回っている。そろそろエージェント達がいつもは司令書を受け取るスパイダーズカフェに集合しだすころだろう。ロビンはそろそろクロコダイルにも夢の街レインベースに行くよう促そうかと考える。レインベースのオアシスの真ん中にある最大のカジノ、レインディナーズまで彼らは裏口まで輸送され、一室に入ることになっているのだ。

 

「いや、お前は先にいってろ。Ms.オールサンデー」

 

「あら、また?」

 

「あァ、まただ」

 

次の瞬間にはクロコダイルの姿は消えていた。

 

「......苦情入れてるわりには、いつも楽しそうよね。ミスター」

 

絶対にクロコダイルは認めないだろうが、少なくともロビンにはそう見えていた。

 

ロビンがクロコダイルと出会ったのは6年前のことだ。

 

クロコダイルはかつて22歳の時に海賊王の処刑を見届け、新星として偉大なる航路を攻め上り、20代前半という若さで七武海に就任した。

 

その後白ひげに戦いを挑んで惨敗を喫したことでしばらく大人しくしていたが、古代兵器プルトンの話を何処からか知り、アラバスタ王国に野心の矛先を向け、表向きは「海賊を狩る英雄」として活躍していた。

 

そして、「歴史の本文」を解読できるロビンと接触してきて協定を結び、秘密犯罪結社「バロックワークス」を立ち上げる。

 

「Mr.0」のコードネームで社員を操り、ダンスパウダーを使って国民の国王への不信感を募らせ、国王軍の仕業に見せかけた乱行などを社員に命令、国民のフラストレーションを溜めさせ、国王への信頼をじわりじわりと崩れさせていき、国民の反感を煽動、反乱軍の内乱を惹起させた。

 

その目的はアラバスタ王国の王となり、「歴史の本文」を解読して古代兵器「プルトン」を手に入れ、政府をも凌ぐ軍事国家を構築することであった。

 

表向きはアラバスタ国内の繁華街レインベース最大のカジノ「レインディナーズ」のオーナーを務め、七武海として海賊の襲撃から何度も王国を守っている。

 

国王からも信頼され、民衆からは英雄として国王以上とも言える熱狂的な支持を受けていた。

 

6年前のあの日、初めて出会った日、クロコダイルは全てを失った男だった。ロビンとよく似た目をしていた。互いに深入りはしないようにしていたが、なんとなくロビンはそう思ったのを覚えている。

 

14年間西の海にも偉大なる航路前半の海楽園にも歴史の本文を記すものはどこにもなかった。ロビンにとって新世界はあまりにもハードルが高く、単身では限界がある。だから、軍事国家が設立された暁に歴史の本文がある国を侵略して強奪する計画は、久しぶりにみた眩しいほどの夢だった。賭けようと思った。

 

クロコダイルが最終計画を理想郷建国と名付けていたが、それはまさに新世界に行ったことがある人間だからこそ建てられる計画でもあった。偉大なる航路前半が楽園と呼べるくらい新世界は世界の闇が濃縮し、ひしめき合っているようにロビンには聞こえた。オハラがバスターコールで滅ぼされたような手軽さで、世界の不条理がまかり通っているような世界にしか思えなかった。

 

もし、軍事国家が樹立したら、エージェント達は相応の地位が約束されていると今夜8時に話すのだ。

 

非加盟国出身者、あるいは加盟国なのに圧政で苦しんだり、貧困に喘いだり、理不尽な理由で虐げられている世界から脱するために闇の世界に堕ちた人間が、それを聞いたらどう思うだろうか。海に出るしかなかった人間が聞いたらどう思うだろうか。

 

たとえクロコダイルの本意が全く別のところにあるのだとしても、賭けてみたいと思う様な最終計画であることは間違い無い。人の心を掌握することは悪魔的に上手い男であることは間違い無い。

 

ただ、ロビンは無性に不安にかられることがあった。バロックワークスの設立に気に入らないという理由だけで一切関わるのを許さなかった男がいる。クロコダイルがいうにはアラバスタで英雄を始めたときから嗅ぎつけてきて、儲け話を持ちかけられたが拒否したそうだ。それ以来、王直に依頼して嫌がらせのような頻度でアラバスタに新世界の海賊を送り込み続けているという。

 

デンデン虫を手にするとき、あるいは衰えることのなかった見聞色で自分しか絶対に倒せないし下手をしたら死にかねない敵がみえたとき。ロビンに夢を見せてくれたあのクロコダイルは死ぬ気がしてならないのである。

 

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