(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
クリケットが麦わら一味に空島とはなにかについてレクチャーしているのをにやにやしながら見ているベラミー。すでに知っている知識は答え合わせする程度でいいのだ。それに気づいてむっとしたルフィがクリケットの話に頑張って耳を傾けるが、長い長い沈黙の末に、結局不思議雲で片付けてしまった。
いよいよ大本命のどうやっていくか、という話になった。突き上げる海流(ノックアップストリーム)だとクリケットはいう。それは「全員死ぬか全員到達するか」の「0か100かの賭け」だという。ベラミー海賊団をちらっとみてから、命懸けろよ、とクリケットが麦わら一味に覚悟を決めるよう促していた。
その正体は「偉大なる航路」の災害であり、空島へ行く方法の一つ。 発生した瞬間を捉えるのは危険すぎるため、その原理はしっかりとは研究されておらず、現在のところ解明されていない。 ただし定説としては、海底のより深くの大空洞に低温の海水が流れ込み、下からの地熱で生じた膨大な蒸気の圧力で海底の爆発を引き起こすとされている。
本来避けるべき災害によって生じた海流に乗って船ごと空を飛ぶ。時間にして1分間、海は空に上昇し続ける。しかも爆発する場所は毎回違う上に、頻度は月に5回。そのときにうまく空島が来なければ船は飛び損となり、大破するしか道はない。空島がある積帝雲という化石の中になければ結局は同じこと。
次回のノックアップストリームは明日の昼頃になる。いくならしっかり準備をしたほうがいい。
マシラとショウジョウが麦わら一味のゴーイングメリー号と一緒にベラミー海賊団のニュー・ウィッチ・ベロ号もノックアップストリームに耐えられるよう改造を施してくれるらしい。
「ありがとうなァ、クリケットさん。おーい!マシラ!ショウジョウ!うちの船をよろしく頼むぜェッ!」
「よろしくなー!!」
「「オーウッ!!まかせろ、おまえら!」」
「明日の昼か。ちょうどよかった。まあ、入団試験なんだから間に合って当たり前なんだけど、ドフラミンゴすげーなァ。このあたりじゃそれしかねーなら、実質一択じゃねえか。ほかに選択肢すらねえってやっぱここ楽園だなァ」
「ハイウェストの頂のこといってんのか、ベラミー?いやだぞ、おれは。あそこは空島いくつも通らなきゃならないじゃないか。それに100人いって数人なんて。確実性とるより、死ぬならもろともだろ」
「なにあたりまえのこといってんだ、サーキース。ノックアップストリームじゃなきゃ、麦わらに先越されちまうじゃネェか。ちげーよ、おれがいいてえのはあれだ、ウェザリアんとこのやつ。天候の科学で自由に地上と空を行き来してるあれだ、あれ。世界一安全なやつ」
「あー、あれか。あれあったら最強だよな」
「風船狩りの気球もなかなかだよな」
「やっぱすげえんだな、ウェザリアもウミット海運も」
「普通は命かけていくしかねーんだもんな」
「いやか?」
「なにいってやがる。退屈がいやで海に出たんだろーが、おれ達は。望むところだ。どのみちスカイピアの黄金持って帰らねえと、ドフラミンゴが話すら聞いてくれねえからな!一緒だ、いっしょ!」
「あー、それもそうか」
「クリケットさん、ところでログポース使わずに南なんてどうやっていくんだ?なにか動物か植物でもつかうのか?」
笑っているベラミーとサーキースのうしろで、ベラミー海賊団の優秀な航海士エディが至極真っ当な指摘をする。ここから南にいくにしても、ログポースはすでに別の方向を指しているから使えない。ログポースなしではろくな航海ができるわけないから、航海士としてはわりと切実な問題だった。
「あー、そういやそうだな。最近の若い奴らはしらねーのか。ログポースが普及する前はここいらじゃサウスバードを乗せてたんだよ。なんでか南しか向かない鳥でな」
サウスバードとは、偉大なる航路のジャヤに生息する巨大な嘴を持つ鳥で、 「ジョ~~~」 と奇妙で目立つ鳴き声を発するという。
森の生き物を鳴き声で操ることができ、自らの領域への侵入者を容赦なく迎撃させる。「森の司令塔」という異名を持つ程狡賢い反面、人間を悉く返り討ちにしてきた自信から慢心しやすい。
その名の通り南を向く習性を持ち、力づくで別の方向を向かせても自ら他の方向を向いても落ち着かなくなるためゼンマイを巻くかのように南を向かずにはいられない。
後ろが南ならば首を真後ろにしたまま平気で移動し続ける程徹底している。このためいついかなる時も南を向くサウスバードを利用した方角確認が昔から重宝されてきた。
特に偉大なる航路では島々が放つ磁気の影響で方位磁石が作動せず、ログポースはあくまで特定の島の方角を指すもので海や岩で構成されてない土地は目指せないのでこの鳥による確認はより有効的といえる。
話しているうちにあることに気づいたのか、クリケットがベラミーとルフィに近づいてきた。
「そういうわけだから、明日の昼までにサウスバード1匹捕まえてこい、おまえら。そうじゃないとノックアップストリームが起こる海域までいけねえからな」
「不思議ドリをか!?わかったぜ、ひし形のおっさん!」
「ケージってモックタウンに売ってんのか?」
「なあに、それくらい貸してやるよ。おれはおまえらみたいな馬鹿に会えてうれしいんだ。はやく捕まえてこいよ。メシの準備しとくからな。そしたら、一緒にメシを食おう。明日の昼までだ、早く捕まえれば捕まえるほどゆっくりできるぜ」
「なるほど......今は夢を見る時代じゃねェ……夢を手に入れる時代ってことだな、麦わらァ!!サウスバード捕まえんのはおれが先だァ!」
「いったな!いったな、ベラミー!負けねえぞ、おれは!」
「はしゃぐのはいいけど、ちゃんと捕まえられる格好してね、ベラミー。密林で未知の病原菌に感染しちゃいやよ」
「わーってるよ、ミュレ。心配すんな」
「だってベラミー、いわないと暑いってお腹だして歩き回るでしょ。馬鹿だから発症しなくても、保菌者になったら意味ないのよ?」
「すげーナチュラルにおれのことけなしたな、おい」