(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
ベラミーは今宴会から抜け出して、部屋の一角でモックタウンで売ってたかぼちゃのタネを小さな袋に小分けして封をしているところだった。ドレスローザに帰ったらクリケットのサインと共にトンタッタ族に渡す予定の記念品、あるいはおみやげを制作中なのだ。
400年前にドレスローザからノーランドによりジャヤに伝わったかぼちゃ。今ではこんなふうにジャヤで適応して品種的に改良されてきたかをトンタッタ族にみせながら土産話をするためだ。
ちなみにこの宴会に不参加なベラミー海賊団の数名は、ニュー・ウィッチ・ベロ号に沢山積み込んだサウスバードの世話に追われている。空島スカイピアにいっても船番もかねて何人も残ることになるだろう。
なぜかサウスバードなのに別の方向を向いているやつが何羽か混じっているが、なにかに使えそうだから帰還したらドフラミンゴに献上する予定だ。
「あなたは加わらないの、ハイエナさん。船長さんと盛り上がるの好きそうなのに」
「てめーのせいだッ!」
「私の?」
「はやく読ませろよ、ノーランドの航海日誌の原本ッ!うそつきノーランドの元になったファン垂涎のお宝、いつまで独占してんだッ!!こっちは、今か今かと待ってんだぞ!?考古学者とかいうから待ってんのに!こっちはおかげで今やらなくていい内職、暇つぶしにやってんだぞこっちはァ!!」
「あら、そうだったの。ごめんなさい」
ふふふ、と笑いながらロビンはまだまだ読み進める気満々でベラミーに回す気ないようだ。
「髑髏の右目に黄金を見た」
気づいたら超至近距離でロビンをみているクリケットにロビンもベラミーもギョッとする。酒が回り出すと完全に暗記しているノーランドの航海日誌をそらんじはじめるクリケットである。だいぶ酒が回っているようだ。
瓶ビール片手に立ち上がると、クリケットは宴会の真ん中にそのまま向かい、一気に飲み干した。
「涙でにじんだその文章がノーランドが最期に書いた文章......その日、ノーランドは処刑された。この言葉の意味はジャヤに来ても全くわからねえ。髑髏の右目だァ?コイツが示すのはかつてあった都市の名か。それとも己の死の暗示か。後に続く空白のページは何も語らねえ。だから俺たちは潜るのさ、夢を見るのさ海底に!」
ノーランド!ノーランド!とすっかり出来上がった野郎どもが歓声をあげる。クリケットは不意にベラミーをみる。
「おれはわかってるぜ、ハイエナのベラミー」
そしてにやっと笑うのだ。
「七武海天夜叉ドフラミンゴがドレスローザに偉大なる海の戦士ノーランドの冤罪をうったえてるってなら!国民がもしもを信じ始めてるって話が本当なら!てめーに託された目的はただ一つだ、ハイエナのベラミー!天夜叉ドフラミンゴが、てめーに入団試験として空島スカイピアの黄金を名指ししたのはほかでもねえ!かのホーミングですらなしえなかった!ノーランドが見つけられなかった黄金都市消失の理由が!地盤沈下じゃなく、ノックアップストリームによるもんだと証明する確固たる証拠を持って帰還することだ!それができた暁にゃあ、ドフラミンゴファミリーにだって入れるだろうよ!!さすがは天夜叉だ、とんでもねえ儲け話だな、あっはっは!!!」
そして、長年の潜水による戦利品を周りに見せるよう、マシラ達に声をかけて持ってこさせるのだ。大事に大事に包んでいる白い布をひらけば、インゴットがでてきた。
「黄金の鐘のインゴット3つ!サウスバード1つ!これがおれ達が見つけた10年分の戦果品だ!!この程度じゃなんでもねー遺跡からでも出てきやがる。黄金都市の証明にはならねえだろう!だが!ルフィ!お前らが見つけたっていうスカイピアの地図があった沈没船は、黄金都市があったころのジャヤの時代から空を彷徨ってたわけだ!!なにか関係があったとしか思えねえ!!てめーらがここでこうして、おれ達と会ったのは、運命だとしか思えねえ!明日、絶対に航海を成功させて空島スカイピアに行きやがれ、馬鹿野郎!幸運を祈ってるぜ!!かんぱい!!」
「かんぱーい!!」
絶好のタイミングで酒を持っていなかったベラミーは、かぼちゃのタネを代わりにかかげることになる。
「うふふ」
ロビンはうれしくて、つい笑ってしまうのだ。紆余曲折を経て、また夢を見ることになってしまい、麦わら一味の船に乗った。そしたら、最初に冒険することになるのが空島スカイピアなんて思わなかったのだから無理もない。
「かの物理学者ウイリー=ガロンはいったわ。人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実であるって。ほんとうかもしれないわね」
「悪魔の実の間違いじゃねーのか、それ」
「?」
ぼそっと呟いたにしてはやけに意味深な言葉だった。北の海ノースティ出身で、尊敬するドフラミンゴから馬鹿はいらないといわれてから、本を読むことが嫌いではないらしいベラミーは、意外と博識だ。ロビンは思わず振り返る。
「なんだよ、はやくよこせ航海日誌」
「いやよ、まだ読んでないもの」