(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
「ガン・フォール、ひとつ聞きてえことがある。空島スカイピアにかぼちゃは伝わってんのか?」
かぼちゃはノーランドがドレスローザから世界に広めた事実がある以上、空島スカイピアにもかぼちゃが伝わっていれば大事な証拠になるはずだ。そう考えたベラミーは、空島スカイピアにいく道中でガン・フォールに聞いた。目的地までは結構距離があるのだ。
「かぼちゃか?あるぞ、我が家の畑に沢山植えてある。今年は特に出来がよいのだ」
「あんのか、かぼちゃ」
「うむ、もとは聖地アッパーヤードにあったものだと聞いておる」
「アッパーヤード?」
「空島は島雲でできておる。青海では当然の大地が存在せぬ。我々はヴァースと呼び、永遠の憧れの対象となっておるのだ。ヴァースがなければ存在しない鉄やカボチャもまた、アッパーヤードからもたらされた。それは400年前から続いている争いの始まりでもあった」
「もしかして、島がノックアップストリームで飛んできたのか?」
「さすがはドフラミンゴが派遣した若人だけある......その通りだ」
ガン・フォール曰く、約400年前、青海に存在した島の一部がノックアップストリームによりスカイピアに運ばれた際、空島の民スカイピア人は思いもよらない莫大なヴァース(大地)の出現を神からの贈り物だと考えた。
そして、先住民シャンディアをスカイピア人は武力制圧。それ以来、スカイピア人は本来空島にない大地(ヴァース)を確保するため、ジャヤの先住民シャンディアはその故郷を奪還するため、長い戦いを繰り広げているという。
そして、スカイピア人は島の一部を聖地アッパーヤードと呼んでいる。故郷を追われたシャンディア達は、スカイピア人の住むエンジェル島とは反対方向にある雲隠れの村で暮らしている。
「......じゃあ、アッパーヤードにありそうだな」
「そうだな、今はそれどころじゃないが」
「他にも、空島スカイピアにお前たちが来た目的があるのか?」
「あァ、あるぜ。そっちの方が大本命だっていっていい。麦わら一味のが先だが。ドフラミンゴから、空島スカイピアにかぼちゃをもたらした偉大なる戦士が、冤罪で処刑されたのを証明するよう言われてんだ」
「なんと......アッパーヤードにかぼちゃをもたらした者が冤罪?」
「うそつきノーランドって絵本で今でも辱められてんだ。末裔が空島スカイピアの真下のジャヤって国で、先祖の冤罪を晴らすために青海に潜ってる。地盤沈下で沈んだ黄金都市があると証明したくてな」
「黄金都市か......」
「なんかしらねーか、ガン・フォール」
「......それは、シャンディアの者達の方が詳しいであろう」
ベラミーとサーキースは顔を見合わせた。
麦わら一味の動向を確認したところ、ガン・フォールによれば不法侵入者は神の島アッパーヤードに船ごと拉致され人質になる者と実際に裁かれる者にわかれるらしい。後者は元空島ビルカの神官達が試練という名目で待ち受けており、処刑される運命にある。
どちらを優先すべきかという話になる。これからエネルの見聞色で常時監視下におかれることになるので、やばい話は空島スカイピア入国前になるだろう。
「......そりゃあ、人質だよなァ。サーキース」
「......そうだな、そっち一択だベラミー」
「「麦わら、ゴム人間だもんな」」
「だいたいバロンターミナルの奴らと神の神官とエネルは同郷なワケだろ?絶対ゴム知らねえよな、あんだけ風船狩りわくわくなんだし」
「よし、人質助けに行くか。だいたい裁かれる側はたぶん海賊狩りもいるんだろ?処刑なんてされるわけがない」
そんなことを話していると、ガン・フォールが人質は祭壇から3人以上でなければ大丈夫だといってきた。ベラミーの脳裏に麦わら一味がうかぶ。
「やべえな、おれなら絶対でてる。麦わらの一味もいねえだろうな、たぶん」
「さすがに船番くらいはいるんじゃないか?」
空島スカイピアにいる老婆に1人10万ベリーを支払い、ベラミー達は入国した。遅かれ少なかれ麦わら一味のように不法侵入者扱いされるだろうが、その時までエネルは裁きを下さないだろうし、神の軍団率いるガン・フォールの元部下達の追っ手もかわせる。助けに行くなら効率的に行くべきだ。捕まったらミイラ取りがミイラになってしまう。
ひとりくらいはいるはずの船番を助けるべく、ベラミー達は生贄の神殿に向かった。そして、紐の試練なるものを行う神官とガン・フォールの一騎打ちがはじまった。
「ガン・フォールになにすんだ、てめえ」
ベラミーの見聞色が超至近距離からダイアルをぶち込まれて倒れるガン・フォールをみせる。咄嗟にバネバネの実の機動力で庇い、不発のダイアルから大爆発がおこる。風圧などものともせず、ベラミーはピエールのところにガン・フォールをとどける。バネバネの能力は物理攻撃は実質無効だ。まして武装色を纏えるベラミーならなおのこと。無傷なベラミーに能力者と察したのか、神官はニヤリと笑った。
「不法侵入者のリストにはないはずだが、犯罪人を庇うか青海人よ。なら貴様も死刑だ。ガン・フォール共々死ね」
「やってみろよ、神官。おれはノーランドの冤罪晴らすまで死ぬ気は絶対ねーからなァッ!」
雲隠れの村にて
「......お前のマントラが本当にそういったのか、アイサ」
「うん......近くにガン・フォールと......あ、神官のマントラが1つ消えた」
「......勝ちやがったのか......知らないマントラってことは青海人だろ?」
「......うん、たぶん」
9歳ながら生まれながらにして高度な見聞色(マントラ)が扱えるアイサから聞かされた男は思わず先祖の銅像を仰ぐ。アイサの見聞色は空島スカイピア全土に及び、拙いながらもそこにいる人間の声を断片的に拾うことができる。それは故郷を取り戻すために日夜ゲリラ戦を繰り広げているシャンディア達の貴重な情報源だった。
今、不法侵入者が沢山空島スカイピアに入り込んでおり、これを契機として過激派のこの男は神も神官もスカイピア人もろとも排除しようと考えていたのだ。
男の名はワイパー。シャンディアの戦士達のリーダー格であり、大戦士カルガラの子孫。異名は「戦鬼(せんき)」。
非常に好戦的、かつ邪魔する者を容赦なく排除しようとする過激な性格。右肩と顔に刺青があり、常にタバコをくわえている。先祖であるカルガラを絶対的な「保持神」と崇めており、「シャンドラの灯をともせ」を合い言葉に、戦士達の先頭に立って戦う存在。故郷の奪還という悲願と、祖先への強い思いを胸に秘めており、悲願達成のためなら己が身をも省みない不屈の信念を宿している。
幼少期に酋長からカルガラの無念を教えられ、いつの日か黄金の鐘を鳴らしシャンドラの灯をともすことを目指すようになった経緯がある。
そんなワイパーがらしくない行動をしているのは、アイサのマントラが拾った「ノーランドの冤罪」という言葉が原因だった。
ワイパーが敬愛するカルガラは、シャンディアの大戦士にしてワイパーの先祖だ。かつて青海の偉大なる航路ジャヤにいた男である。
村に疫病「樹熱」が蔓延し多くの村人が犠牲になった際、樹熱を知らないためこれを「呪い」とし、神に生贄を捧げることで解決しようとしていた。
島に侵入し儀式の邪魔をしたモンブラン・ノーランド一行を、初めは他の侵入者と同様に殺そうとしたが、ノーランドが命懸けで島を救ったことで彼とは無二の親友となる。
その後ノーランド達が住民にとっての命とも言える林を切り倒したことで一旦は仲違いするが、それすらも村人達を想っての行動だったことを知り、出航直前にノーランドと和解。
先祖のために鳴らしていた鐘を、再び来るノーランドのために絶やさず鳴らし続けると誓った。
しかし、ノーランド達がジャヤを後にした4年後、空島へと打ち上げられたジャヤを空の人間に奪われてしまう。それでも、再びジャヤを訪れ自分たちがいないことに狼狽えるであろうノーランドのことを思い、自身らが空にいることを伝えるために何としても鐘を鳴らそうと戦い続けたが戦死したのだ。
敬愛するカルガラの親友ノーランドの名を口にし、冤罪を晴らすまで死ねないと叫んだ青海人がいる。全くの偶然とはワイパーには思えなかったのだ。