(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第74話

探索から帰還したナミ、ゾロ、ロビンを迎えたのはノックアップストリームから船が見えなくなって行方不明になっていたベラミー海賊団のツートップだった。

 

「ベラミーにサーキースじゃない!生きてたの!!よかったー!!」

 

「なんだ、死んだのかと思ったぜ、0か100かで負けたとばかり」

 

「あなた達もここまで連れてこられたのね。船が見当たらないけれど、他の場所にあるの?」

 

三者三様の反応だが、0か100かのノックアップストリームから船が見えなくなって消息不明だったのだ。空島スカイピアの門の前にいた老婆に聞いても、犯罪者認定の烙印を押した男達があげる数も、青海人は麦わら一味だけだと表していた。うすうすベラミー海賊団は運悪く全滅したのではないかと思い、口外しないようにしていた矢先だった。好き勝手いっていても笑っているやつしかいない。

 

「一気に話すな、わかんねえよ。つーか、海賊狩り勝手におれ達殺すんじゃねえよ。人が心配して来てみりゃ好き勝手いいやがって」

 

「おれ達は普通に入国したんだ。だから会わなかったんだろう。おまえ達がハメられたと聞いてベラミーが殴り込みしようとしたから、とりあえずおれだけついてきた。晴れておれ達も犯罪者だ」

 

「......そういうこった。感謝しろよな」

 

エネルの見聞色で常時監視されている以上、下手にガン・フォールの元部下達の隠れ里を明かすわけにもいかない。ベラミーの言葉を被せるように説明するサーキースに、意図を把握したベラミーは途中から語気を弱めた。まるで同時通訳の副音声状態になってしまい、ナミが笑い始める。ベラミーがいきなり語尾が小さくなるから、バツが悪くなったんだろうと勘違いしたゾロはにやにや笑っていた。ロビンはすでに2人が見えた段階で笑っている。

 

「ゾローッ!!生贄は3人以上外に出たら死刑になるって、さっき神官に襲われたんだからなー!?おれが襲われたのゾロのせいじゃないかー!!ゾロがナミ達唆すからー!!」

 

猛抗議するチョッパーの登場で一気に雲行きが怪しくなったのはいうまでもない。

 

そして、ルフィ達も試練を無事脱出して、合流することになる。ルフィ達は知る由もないが、試練は実は終わっていない。中断しただけである。

 

ただ神官側の優先事項が変わっただけなのだ。なにせ先住民シャンディア達が襲ってきたが神官を半分も落とされたため、残りの2人で迎撃するはめになっている。

 

「ベラミーがなッ、ピンチに陥った空の騎士助けてくれたんだッ!でも空の騎士、爆風のせいで頭打ったみたいで」

 

出迎えるのが遅れた理由をナミに問われたチョッパーはそう答えた。診断結果は心身の疲労によるものが大きいようで、ぐっすり寝たら目が覚めるだろうとのこと。とりあえずは一安心である。

 

「ベラミー達にもお礼に見せてあげるわ、これよ!これがノーランドの航海日誌の最後にあった髑髏の右目に黄金を見たの正体よ!」

 

完成したばかりの空島スカイピアの海図に古代のジャヤの地図を重ねて、ナミは自慢げに見せつけてくる。

 

「これが400年前の黄金都市ジャヤの姿よ!」

 

それはたしかに髑髏の形をした黄金都市ジャヤの姿だった。ノーランドがいいたかったのは島の全形なのだ。

 

しかし、再び足を踏み入れたジャヤは不幸にも黄金都市のエリアごと空にいってしまい、残されたのは髑髏の歯の部分だけ。まさに臼の字のような地形しか残らなかったのだ。

 

勢揃いした麦わら一味を見渡して、ルフィは考えた。

 

「よし、探すか黄金!」

 

「ばかいえ、明日にしろ。それよりキャンプファイヤーのが先だろ麦わら!」

 

「そうだ、夜だ!そっちのが大事だな!!」

 

「よし、麦わらァ!明日がいよいよ正念場だぞ!北の海で今なお辱めにあってるうそつきノーランドの黄金都市を証明してやろうぜ!!」

 

「おー!!!」

 

なにはともあれ、キャンプの始まりである。そして、あまりの喧しさに目を覚ましたガン・フォールは麦わら一味に語るのだ。この神の島がどんな歴史を辿ってきたのかについて。

 

 

 

 

 

雲隠れの村にて

 

同じ空の下、今日も悲願の故郷奪還が叶わなかったものの、青海人達が2人の神官を落としたことで確かに手応えを得た先住民シャンディア達。

 

アイサが夜な夜な神の島アッパーヤードに入り込み、ヴァースを集めて帰っていた。それを咎める代わりにリュックいっぱいのヴァースを持ち帰っていたことが発覚した女戦士がワイパーの怒りをかった。いつもなら激怒して手がつけられなくなるはずなのだが、昨日からワイパーの様子がおかしい。なぜかあっさり許してくれたのだ。

 

アイサはおそるおそるワイパーをみる。そして、怒られなかった理由を悟るのだ。

 

「昨日の青海人はまだ生きてるか」

 

「うん、マントラ、ずっと聞こえてる」

 

「そうか。なんていってる」

 

「北の青海で、ノーランドがずっとうそつき呼ばわりされてる。黄金都市を見つけたら、その汚名がはらせるから探す。明日が正念場だってさ」

 

「......」

 

「青海人みんな、今一緒のところにいる。今日あったっていう麦わら帽子、その青海人と仲良さそう」

 

今日攻撃した麦わら帽子を被った青海人が脳裏をよぎる。ワイパーは血の気がひくのがわかった。青海人だろうが誰であろうが今までのワイパーなら攻撃してきた。神の島アッパーヤードに足を踏み入れる者は誰であれ許せなかったからだ。

 

ワイパーはたまらなくなって、敬愛する先祖カルガラの銅像を見上げた。

 

こんな形でカルガラが最期まで懸念していたことを知る羽目になるとは思わなかった。400年もの間、カルガラの親友ノーランドはジャヤが空にいったせいで、きっと嘘つき呼ばわりされ続けているのだ。そして、400年ぶりに北の海から偉大なる航路をとおり、青海人がその冤罪を証明するためにきていることが判明した。世界広しといえども、さすがにここまで一致していて、別人のことではあるまい。

 

その青海人の友人を自分は殺そうとしたのだ。ワイパーはその日、全く眠ることが出来なかった。


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