(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第75話

ベラミーとサーキースは、海賊狩りロロノア・ゾロという男を完全に見誤っていたのだと自覚するにいたっていた。特にサーキースはベラミーと一緒に暴走しがちな麦わらのルフィを諌める役割を持った、自分と似たような冷静沈着なNo.2が海賊狩りだと思っていた。

 

生贄の祭壇で不用意に出てゴーイングメリー号やトナカイを危険に晒したが、それは状況の理解が甘かったからだ。実際、似たような状況に陥ったら、ベラミー海賊団だって、サウスバードの飼育があるためもっと船員を残すくらいしか差はなかっただろう。

 

だから気づかなかったのだ。海賊狩りはしっかりしているようにみえるだけの狂犬なのだと。なんて初見殺しだ。致命的な方向音痴なくせに無自覚なもんだから、散歩が好きとか意味がわからなすぎて、ベラミーとサーキースはロビンの話を半ば拒否したくなっていた。麦わら一味新入りの考古学者が海賊狩りの方向音痴を完全に理解したのは、今回が初めてだというんだから仕方ないところはあった。

 

海賊狩りは真面目だ。麦わらのルフィを船長としてたてるし、ハンパをやるなら自分が抜けると周りを引き締める役割をおっているのをベラミー達は見ていた。一見クールキャラなのが初見殺しすぎる。

 

「......ハハッハハ、うそだろおい。トナカイも麦わらもおれと同じだから、海賊狩りが頼りだと思ってたのに。ファンタスティック迷子となると......お前だけかよ、まともなの」

 

「どうやらそのようね、ハイエナさん」

 

「ノーティス出身でよかったと思うの何度目だろうな、ベラミー。お前、暴走しがちだけど、ガチでやばいときは知ってるもんな」

 

「馬鹿はいらねえってドフラミンゴが言わなきゃ、ノーティス飛び出したってのに勉強なんかしねーよ」

 

「うふふ」

 

黄金都市を目指して南に向かうグループと、ゴーイングメリー号でぐるりと回り込んで黄金を積み込むグループにわかれたまではよかった。

 

想像を絶する大きさの大蛇に襲われ、ベラミー達は一度はぐれたのだ。南にいくのはわかっていたから、太陽の方角から現在地を把握して、とりあえずひたすら歩いていた。途中でやたらと神官の雑魚に襲われながら蹴散らしていたら、運良くロビンと合流できたのだ。

 

麦わら達はいつ合流するか聞いたベラミーに、ロビンが笑顔で無理かもしれないといったことから冒頭の反応にもどる。

 

「森がずいぶんと騒がしくなってきたわね」

 

あまりの襲撃の多さにさすがのロビンも疲れたようにため息をついた。

 

「明らかに昨日と状況がちげえな......神官1人しかこなかったってのに。いったい空島スカイピアで何が起こってやがる」

 

「ベラミー、それを知るために尋問したいんだから気絶させるなよ」

 

「ばーか。殺す気でくる奴らに、んな悠長なこと言ってられるか」

 

襲撃してきた神官達の身包みを剥ぎ、使えそうな道具やダイアル、武器を拝借しながらベラミーがいう。サーキースに投げつけられたダイアルはリュックにしまわれた。殺すには弾薬がもったいない。

 

「ここは都市から離れた民家ね。......やっぱり木に飲み込まれてる......古代遺跡は大丈夫かしら」

 

「まじか、どれだよ考古学者」

 

「あそこよ、ハイエナさんにビックナイフさん」

 

黄金都市の実在を確かめるのが目的のベラミー達は、慌ててロビンがいう場所まで向かうのだ。

 

「メー!」

 

がしゃあん、と豪快に民家跡を粉砕する神官が現れた。

 

「そこから降りなさい。あなたには、遺跡の歴史的価値がわからないようね」

 

「青海人だな!?このルートは神の社に続く道。これ以上足を踏み入れるのは無れ」

 

「あー!!」

 

「てめーら、ビルカの神官だったくせに、遺跡壊すんじゃねーよクソッタレがァ!ただでさえ、てめーらはドフラミンゴに泥塗りやがって許せねえのにぶっ殺す!」

 

言い終わる前に神官は2人がかりで即覇気に吹っ飛ばされてぼこぼこにしていた。

 

「酷いことするわ......」

 

ロビンはめちゃくちゃになった民家跡をみて、悲しそうに呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大戦士カルガラに誓い、シャンドラの灯(ひ)を灯せ」

 

それは敬愛するカルガラに倣い、ワイパーがシャンディアを率いる時に標榜している言葉だ。この言葉自体は400年の月日を経て、ふたつの意味を内包するに至っている。

 

シャンドラの灯(ひ)とは、国の繁栄・滅亡を「灯火」に例えている。シャンディアにとって、

「火が灯る」という事は、「人間の生活圏の証明」でもある。「火が灯る」は、すなわち「シャンドラの繁栄」を表している。

 

だが、シャンドラの「灯火(ともしび)」は400年前に消えた。大地(ヴァース)を始め、黄金都市をスカイピア人に奪われ、鐘楼は喪失。シャンドラの生活圏は全て奪われた。

当時の「鐘楼」の役割は、先祖の魂が迷わぬよう「身縒り木」に呼ぶこと。そして、友ノーランドが迷わずまた来れるようにという、2つの意味があった。

 

それは「船乗り」が無事に島に辿り着くように立つ「灯台の灯火」の役割と一緒で、「鐘楼」と「灯火」が一緒の意味で掛かっている。

カルガラは、シャンドラの灯を消せばノーランドが迷う!決して消させるな、鐘楼を奪われるな、シャンディアは滅亡していないと青海のノーランドに唯一知らせる手段なのだから!おれ達は空にいるとノーランドに知らせるために鳴らせ!鳴らし続けろ!そのために奪われた大地を取り戻せ!という意味で叫んだといわれている。

ワイパーにとっては、滅んでしまったシャンドラの再興は、鐘を鳴らす(火を灯す)事で証明される。そして青海の偉大なる航路のどこかにいるはずのノーランドの末裔のために、シャンドラの存在を証明してやりたい。だから鳴らしたいという意味につながる。

今、空島スカイピアは今までになく荒れている。たくさんの青海人のせいだ。その中には、たしかにいるのだ。400年間うそつきノーランド呼ばわりされる偉大なる海の戦士の冤罪を空島スカイピアで証明するために、ジャヤの真相に辿り着き、黄金都市を探しにきた青海人が。カルガラの悲願を果たすなら、会いに行くのが最善だ。

 

しかし、ワイパーがその個人的な願望(ゆめ)を優先させることはまずない。青海人達が引き起こしている一連の動乱は、神官2名の陥落という前代未聞の好機をシャンディアにもたらしている。エネルの首を狙う絶好のチャンスである。ゆえに、ワイパーは決断した。

 

「チャンスがまた来ると思うな!おれはこの機を逃さない!覚悟のない者はここに残れ!責めやしない。万が一青海人が来たら歓迎してやれ。途中で倒れた者を見捨てる覚悟はあるか!仲間を踏み越えて前に進める者だけがついてこい!───────今日おれは、エネルの首をとる」

 

その決断は率いる仲間たちの士気をあげ、ワイパーの内心をよくしるアイサに「うそつきはアンタじゃない」と罵声されることになる。

 

だから。

 

「あ、お前」

 

どこぞの神官のようにうっかりと。

 

「......貴様、ここで何してるッ......」

 

いるはずのない麦わらが意味不明な歌を歌いながら能天気に散歩しているからって。

 

「黄金都市にいくんじゃなかったのかッ!?黄金都市は南だ、西じゃねえッ」

 

思わず反応してしまったのは断じてワイパーの落ち度ではない。

 


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