(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第80話

モンブラン・ノーランドの冤罪を証明したいという理由を説明する前に、なぜか断片的ではあるがこちらのことを把握されていたので説明の手間が省けた。さすがは6年間エネル達に敗れて身体を壊してからは、ゲリラ抗争を息子に引き継がせ、主導してきただけはある。シャンディアの族長は穏やかではあるが、それだけの男ではないらしい。

 

ベラミーをシャンディアの族長のところまで連れてきたのはガン・フォールだ。相変わらずベラミー海賊団を今は亡き空島ビルカの恩人ドフラミンゴが、空島スカイピアを助けるために派遣した先遣隊だと思い込んでいる。エネルによりスカイピア人もシャンディアも物理的に住んでいる場所を無くしてしまい、今は神の島アッパーヤードで避難している状態だった。

 

唯一見聞色がわかるはずのアイサすら、実はなにひとつあっていないし、当のドフラミンゴの発言の意図を誰も把握していないと気づけなかった。なにせベラミー海賊団は本気でドフラミンゴから託された任務を完遂できたことを喜んでいる。しかも麦わらの一味によかったなー!といわれて踊り出している。

 

そう、いないのである。

 

ドフラミンゴがベラミーに話した意図としてはこうだ。ファミリーに入りたいなら何度もいうがそろそろ主体性をみせてほしい。ノーティス出身なら非加盟国出身の幹部達より確実に学があるし、ベラミー海賊団全体が向上心もあるし根性もあるし勉強が嫌いじゃないのはよくわかった。

 

あとは長期的な儲け話になりそうなものを頭を捻って考えて、どんなに拙くてもいいからまとめて提出してくれたらそれでいい。その意図にベラミーが気づいて自分なりの儲け話をもってくることまでが入団試験だった。

 

断じて運命力と武力のゴリ押しで空島スカイピアにいき、黄金都市シャンドラをみつけて、うそつきノーランドの冤罪を証明するために黄金をもってかえってこいといったわけではない。というか話の途中でベラミーが飛び出していったため、最後まで話を聞いていない。

 

それでも、ドフラミンゴに無許可ですきあらばドレスローザの港で、モネの相性が悪い海賊が現れたとき、改良したダイアルを駆使して奇襲をかけるような自称ドレスローザの凶弾が自主的にいなくなるのはありがたいから放置したのはある。

 

なぜ戦闘に関する時だけは知能指数があがるのか。なぜ大幹部と話すときも保たれている知能指数が、ドフラミンゴを前にすると地に落ちるのか。2年の付き合いになるがドフラミンゴには理解できないでいる。

 

ドレスローザに帰還したベラミーから、ドフラミンゴはいろんな話を聞くだろう。

 

うそつきノーランドの冤罪を信じて疑わなかったあんたはすごいから始まり。東西南北揃ったサウスバードの有用性をなんか使えそう程度には理解していること。空島全土に今は亡き空島ビルカの恩人と知れ渡っていること。

 

空島スカイピアの復興を手伝ってほしいこと。うそつきノーランドの冤罪はらした証拠として、黄金を空島スカイピアの王直々に託されたこと。逆走するとき寄った島々で集めてきたトンタッタ族への土産であるカボチャの種。

 

ドフラミンゴファミリーとして絶対に無下に出来ないウミット海運に恩が売れそうな販路。闇の五大帝王達と組んでできる新しい儲け話が沢山できそうな空島スカイピアとのコネ。ひとによって喉から手が出るほど欲しいものをベラミーはたくさんドフラミンゴに献上することになる。ドフラミンゴのひきつった笑いがしばらく戻らなくなるのはまた別の話だ。

 

ベラミー本人が入団試験の意図を理解していないのに完遂し、ドレスローザ懐柔策として利用したにすぎないうそつきノーランドの冤罪を完全に証明するものを持ってかえってきたのだ。しかも、麦わらの一味と強い友情を結んで帰ってきた。もはやドフラミンゴがファミリー入りを認めないことはドレスローザから追い出されるレベルの偉業である。

 

しかし、ベラミー本人は入団試験の意図を理解していない。普通ならたったひとつの問いをするだけですむはずの入団試験がなぜここまで拗れたのかわからないと内心嘆くドフラミンゴから。ドレスローザの凶弾が公式認定されるのはそう遠くない未来ではある。

 

ベラミーに対する態度はど直球じゃないとダメなのだとドフラミンゴが諦め、必ずサーキースも呼び出して任務の裏側はそちらに説明することになるのは別の話である。

 

それはさておき。

 

 

 

ベラミーはトーンダイアルをシャンディアの族長の前にさしだす。

 

彼はシャンディアの人々が暮らす今は亡き雲隠れの村の長であり、シャンドラの伝承者。犬のような毛皮をかぶった族長は、雲隠れの村の子供たちに伝承を伝えるだけではなく、ポーネグリフを守る者としての役割も担ってきたという。独特の地形に守り人とセットで配置されているようにも見受けられるのが興味深い。

 

深入りするとバスターコールだと知っているベラミーは、自己紹介の件に歴史の本文はいれないでくれと頼んだ。歴史の本文の守り手なことは明かさず、シャンドラの灯を伝える者なことを話してほしいと話す。

 

歴史の本文の守り手の話は別のトーンダイヤルを考古学者に渡すから、話を聞いてくれと交渉はすでにすんでいるのだ。

 

彼のような男がこれまでもいたからこそ、今の今までシャンドラの灯は絶えず繋がってきたことはわかる。握手をかわしたあと、彼はうなずいた。そして、話し始めるのだ。

 

「私の遠い祖先、大戦士カルガラが......故郷をどうしても取り返したかった理由がもう1つある......。そう、それこそが、カルガラにとって1番の無念......。カルガラには......1人の親友がいたのだ......。それは400年前に遡る......。カルガラのもとを訪れた彼の名はモンブラン・ノーランド。私の好物はカボチャのジュースなのだが......それは彼がもたらしてくれたものでもあるからだ......。ノーランドは......冒険家だったが植物学者でもあり......交流の証として......島の風土に適した植物の種を......贈ってくれたという......」

 

「吾輩も、かぼちゃのジュースが......好物である!!」

 

「おい青海人ッ、ベラミーといったかッ!?さっき考古学者の女から聞いたぞ!?おまえだったのか、ノーランドの冤罪はらしにきた北の海の青海人って!?先にいってくれ、いってくれたらおれはあんな態度絶対にとらなかった!お前とは話したいことがあるんだ!」

 

トーンダイアルの録り直しになったのはいうまでもない。


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