(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第84話

偉大なる航路前半に位置する世界政府の直轄地。司法の島と呼ばれ、世界政府が直轄する裁判所が設置されている。

 

島の中央部を囲む海に巨大な穴が空いており、そこに海水が流れ込むことで滝を作り出している。穴の底は見えず、それゆえ島はまるで浮いているようにも見える。

 

1年中夜にならない「不夜島」としても有名であり、別名「昼島」とも呼ばれている。

 

創設以来800年間1度も侵入者も脱走者もいなかった鉄壁の施設で、ここに連行された者は名ばかりの裁判を経て海底監獄インペルダウンか海軍本部へ連行される。

 

つまり、ここに連れて来られた事が決まった時点で犯罪者の烙印を押されてしまうのである。

 

このいい加減な司法制度の根源は、死刑囚により構成された陪審員の存在にあり、彼らが罪人を道連れにしようと、罪人に対して有罪判決を下してしまうからである。

 

頂点に世界政府の諜報機関CP9がおり、その下に同裁判所の裁判長や下級役人が在籍している。このCP9は、政府でも有数の超人的戦闘能力を持った暗殺者集団で、エニエス・ロビーが過去一切の侵入者も逃亡者も出さなかったのはこのCP9の存在が大きい。

 

最高権力者はCP9司令長官スパンダム。

 

「あーくそ、なんだ、さっきのカリファの報告はー!?」

 

今日は5年ぶりにサイファーポール9全員が顔をそろえるめでたい日だというのに、いつものように勝手な行動をするルッチにキレていた。

 

「新人は弱すぎて使えませんでしたってなんだー!?貴重な人材使い捨てにすんじゃねーよ!?ネロはたしかにまだ六式全部使えてねえが、教育前提でいれてんだからなぁ!?足手まといかもしれねーけど、まだ動けてたんだろ!?それにしたって肉盾くらいには使えるだろーがあ!?ウチが今どんだけ人材不足に陥ってると思ってんだよー!!!人堕ちの落とし前回避したこと教えてやったのに、あいつらあァァ!!

 

「人堕ちがこないとわかった途端に元気だな、アンタ」

 

「あたりまえだろうがァッ!!」

 

「つーかそれルッチにいえよ、おれ達にいわれても知らねえよ」

 

ジャブラに至極真っ当なことを指摘されてしまい、うっとなったスパンダムは盛大なため息をついた。そして、新聞をひっつかむと、バサっと広げるのだ。

 

「じゃあ知ってることいえ、ジャブラ。なんで革命軍支部長暗殺計画は3人消せば事足りるのに23人も消えちまってんだ!!めっちゃ三面記事出てるじゃねーか!いいわけがあるなら言ってみろ!」

 

「よよよいッ!もーォオオしわけありあせんー!!長官全ておいらの責任でェ!!」

 

「てめーには聞いてねえッ!!つーか隙あらば切腹しようとするんじゃねーよ、クマドリッ!!人材不足だっつってんだろーがァ!人の話を聞けえ!!」

 

繰り出された超高速の蹴りによって衝撃波、飛ぶ斬撃がクマドリの刀を木っ端微塵に粉砕した。鉄塊なのはわかっていたので、ついでにまだ話を聞いていないのに、横入りしてくるクマドリがそもそも邪魔なのでソファから吹っ飛ばした。

 

「これからおれが成り行きを長官に説明するから座ってろ!」

 

「ふっとばしてからッあ、いわないでぇええほしい!!」

 

「おれ達ァ、指令通りの期日に暗殺しに潜入したんだ。ところがよ、誰も知るはずもネェ計画が漏れてたんだよ」

 

ずっと素知らぬ顔で視線をそらしていたフクロウがしれっとチャックを開けようとした。引き攣った笑顔を浮かべたまま、スパンダムはそのまま押し返そうとする。だが、天性のおしゃべりはなんとかしゃべろうと開けようとする。ぐぐぐと押し問答が始まったあたりで、げえ、とジャブラは顔を歪めた。

 

「また、てめえか、フクロウ!!お前の口のチャックは何のためについてんだ!!そしてその口の軽さはいつ治るんだ!機密厳守の諜報機関だぞ、おれ達はァ!!」

 

「やっぱりてめーかあ、フクロウッ!!これで何度目だ、あァッ!?しまいにゃその口直接縫い付けるか、南京錠つけんぞ、てめえ!!」

 

「いやそれはさすがに死ぬからやめてやれ、長官」

 

「ふざけんのもいい加減にしやがれ、フクロウ......。なんでお前は生き残れたんだろうなァ、フクロウ......。それだけがおれには理解できねーんだ......。いくら尊敬する父の判断とはいえ......おまえがあんとき代わりに死んでりゃ......もっと優秀なサイファーポールがここにいたはずなのによォ......。それだけがわからねえぜ。あん時はおれにはまだ人事権なかったからどーしようもねェが......もしあったら......あったらァ......クソッタレがァ......」

 

だんだん涙声になってしまったことを自覚したスパンダムは、フクロウのチャックから手を話して後ろを向いた。乱暴に涙を拭う。いつもこの流れで部屋の空気がお通夜状態になってしまうのだが、スパンダムにはどうしようもない。幼少期から刻まれたトラウマなどなかなか消えるはずもないのだ。落とし前の定例行事は、サイファーポールの長官にとっては未来永劫つづく儀式のようなものだ。

 

「もういいお前ら、出ていいぞ」

 


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