(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第86話

スパンダムの紙絵をみるのは5年ぶりだったルッチは、そのまま手を上げた。サイファーポール0のステューシーに師事していた時より、腕を上げたのかもしれない。

 

「ほんとに麦わらと交戦したのか、ルッチ?相手は武装色に目覚めて、かなり日が経ってるはずだ。そんなくだらねェ番付にどこまで意味がある?」

 

いつもなら茶番劇に少しは興じてくれるはずのスパンダムが、ノータイムであれだけ嫌いなはずの人工悪魔の実の弾丸が入った銃を向けてくるものだから、正直ルッチは困惑していた。

 

「ったく、お前ら会ったとたんにくだらねェ番付はじめるくらいなら、これでも読んどけ。今すぐだ」

 

デンデン虫で人堕ちホーミングの落とし前の慣例行事を回避したと、あれだけ嬉しそうな声色でいっていたのに。いざ5年ぶりに再会したスパンダムは、まるで様子が変わっていた。ジャブラがルッチを挑発せず、フクロウが口にチャックをして、クマドリの刀がない時点で、なにかあったのは察しがつくのだが。

 

今のスパンダムは、人工悪魔の実の弾丸でヘッドショットされた同郷の血肉を、完全に落としきれないまま、ここに来た時みたいな顔をしていた。

 

突きつけられた資料をルッチがうけとる。読み始めたルッチの代わりにカクが応じた。

 

「お久しぶりじゃ、長官」

 

「よく帰ったな、お前ら」

 

「8年前のウォーターセブンで起きた政府高官への暴行事件より罪人カティ・フラム。20年前のオハラでおきた海軍戦艦襲撃事件における罪人ニコ・ロビン。滞りなく完了したぞ、現在扉の向こうにおる」

 

スパンダムは5年ぶりにエニエス・ロビーに集結したサイファーポール9を見渡す。

 

「世間の人間達は、今日の日のおれらの働きがどれほど尊くて偉大な仕事だったかを知らねえ。それが世界に知れ渡るのは数年後になるだろうなァ。ブルーノ、後で話があるから、ここにのこれ」

「5年間の任務ご苦労様だったな、早速渡してェものがある。来てくれるか」

 

カク達は世界政府が用意した悪魔の実を提示される。

 

「あいにく時間がねえんでな、ぶっつけ本番の運用になるだろうが......。お前たちを解放するぞ、CP9。お前たちで麦わら一味を惨殺しろ、おれが許可する。俺は俺の身を守る。おれの方に来たら、おれが惨殺する。麦わらのルフィとその一味の完全抹殺司令を下す。理由はそこに全部かいてあるから、後で読んどけ。さあ、まずは───────あいつらを連れてこい」

 

カク達は顔を見合わせたが、すぐに世界政府の新たな切り札となるはずの古代兵器のヒントをもつ2人を連れてきた。

 

「世界が危険視し、追い求め続けるてきた女、ニコ・ロビン。そして、8年前の事故でよくぞまあ、生きてたもんだな、カティ・フラム」

 

スパンダムはロビンを見下ろした。

 

「よかったな、お前を取り返しにきてる大馬鹿がいるぞ、ニコ・ロビン。おかげで完全抹殺命令を下してきたところだ」

 

「待って、約束が違うじゃないッ!私があなた達に協力する条件は、彼らを無事逃すことなはずよ!」

「ルッチ、おれ達が出した条件は正しくはなんだったか?」

 

「ニコ・ロビンを除く麦わら一味6名が、ウォーターセブンを出港すること」

 

「ああそうだよな、あいつらはウォーターセブンを無事に出航してここにきてんじゃねえか」

 

「そんなこじつけで協定を破るつもりなの!?」

 

「調子にのんじゃねえよ、犯罪者ども。そもそもおれ達は、約束なんざ守る義理はねえだろうが。騙し騙されてんのはお互い様だろ、何甘っちょろいこといってやがんだ。そんなもんが公然と口にできるのは、この海では、強者だけだッ!弱者に理想的な死なんざ選べるわけがねえんだよ!!だいたいこのバスターコールは大将青キジから許可証含めて託されたモンだ、ニコ・ロビン。自分の価値を理解しちまった女が、庇護から抜けて新世界に行くってのはそういう意味だ」

 

「......!?」

 

そして、カティ・フラムのところに近寄っていく。

 

「おれに言わせりゃ、犠牲を出さねば目的は果たせねェ。こちとら薄氷の上に成り立ってる平和のために身を粉にして働いてやってんだぜ。そのおれ達の邪魔をする愚か者どもは、大きな平和を乱す極悪人だ。おれ達がよこせという物すら、くだらねえ御託のためによこさねえ魚人は、正義への謀反人として処刑されて当然だ」

 

「───────ッ!!トムさんが命懸けで設計図を守ったのは、テメェみたいな馬鹿がいるからだろうがッ!!」

 

「わかったような口利いてんじゃねえよ、カティ・フラム」

 

背後をとられたカティ・フラムは、そのまま超至近距離からの嵐脚をうけて、片腕が切断されてしまい、バランスを崩して床に転がった。

 

「すでに渡ってんだよ、巨悪によォ。だから再三よこせっていったのに、なぁにがリュウグウ王国の大恩人だふざけやがって。あの時から気性は変わってネェようだな。もっと早くにお前が生きてて、設計図を持ってるとわかれば......こうも苦労することも......数多の犠牲を出すことも......なかった。お前なら過去の罪でいくらでもしょっぴくことが......可能だったからなァッ!!!」

 

カティ・フラムの切断された腕がそのまま粉砕される。うめくカティ・フラムにスパンダムは冷徹な目で見下ろしていた。

 

「お前がMADS跡地の船で改造したのは調べがついてんだよ。どうせ体のどっかに隠してんだろう?設計図?右足か?左手か?さすがに頭ってことはねえだろうが、MADSなんてなに仕込んでるかわかったもんじゃねーからな。破壊してきゃいつかはでてくるだろ。なぁ、カティ・フラム」

 


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