(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第87話

10年前の話だ。

 

サイファーポール9と0のメンバーのリストの開示と更新するたびにウミット海運に送ること。天竜人のようにサイファーポール0と何故か9を使うことを許可すること。そして、人堕ちホーミングとサイファーポール9と0の間に何があっても世界政府は不問とすること。

 

この16年前に機密を巡る取引により、五老星が人堕ちホーミングに認めた特権が悪用されたのは、サイファーポールはもちろん五老星にとっても痛恨の極みだった。なにか企んでいることはわかっていた。ただ、握られている機密を考えると飲まざるを得なかった。

 

リュウグウ王国の秘宝ESの強奪に失敗した工作員がCP9とCP0に所属していた。当時在籍していたリストのメンバー全員が人堕ちホーミングに特権を行使して皆殺しにされたのだ。

 

のちにES事件と呼ばれることになる一連の流れが人堕ちホーミングの見聞色の精度と評価するか。ウミット海運の諜報部門が優秀ととるか。スケスケの能力者に関して、ホーミングが唯一外した見聞色を、猿も木から落ちると笑うか。七武海として得られる情報からフォローした息子ドフラミンゴとのつながりを危険視するか。評価する人間の立場により如何様にも変わりそうな事件である。

 

工作員達の落とし前の慣例行事に長官である父に同行したサイファーポール5主管スパンダム。その後五老星に直談判に現れるのは、ある意味当然の流れではあった。

 

ホーミングと繋がりがある場所とコネは当時から世界政府を悩ませていた。まずはモコモ公国(有事に協力の密約)。次にリュウグウ王国(表向きの協力国)。ドフラミンゴの繋がりからドレスローザ。ロシナンテの繋がりから海軍の英雄ガープ中将。空島全域(ポーネグリフを読めるビルカ人がいる経済の中心はホーミングが開拓したバロンターミナル)。ウミット海運の繋がりからウェザリアとエルバフ。今ならさくら王国、アラバスタが追加されることになるがそれはさておき。

 

「古代兵器ポセイドンがあるリュウグウ王国は押さえられ、古代兵器プルトンがあるワノ国には間接的に繋がりがある。そもそもワノ国が四皇の代理戦争の場として、今なお内乱と停戦を繰り返しているのは、あの男が海賊王と白ひげに密告したからではありませんか!」

 

スパンダムの主張はもっともだった。

 

「四皇に我々サイファーポールが関わるのは、あなた方の許可が必要な以上、限界というものがあります。そもそも現実的ではない。なので、御伺いにきました。古代兵器プルトンの設計図の入手について、許可をいただきたいのです」

 

五老星はこの男の主張だからこそ、この言葉に耳を傾ける気になったといってよかった。

 

「ウォーターセブンのもっとも優秀な船大工に代々継承される古代兵器プルトンの設計図。手に入れるのが難しいなら、作る方法を調べればいいのです。はい、当然この設計図を嗅ぎ回る海賊もいます。ただでさえ、現物が人堕ちホーミング、あるいは四皇押さえられている可能性がある以上。万が一、政府以外の誰かの手に設計図が渡った場合、もはや政府に太刀打ちする術はありません」

 

この男の目は本気だった。

 

「世にいう大海賊時代の幕開けから10年以上が経過し、海賊どもはみるみる力をつけ、数も増えるばかり。古代兵器復活の阻止などのんびりとしたことを言っている場合ではありません!ただでさえ、人堕ちは我々サイファーポールの戦力をいかに落とすかばかり考えている。しかも、歴史の本文が読める立場にいて、古代兵器の2つも射程にあり、息子が海賊をしていて、これだけの包囲網を作り上げ、海賊王に手がとどくくせに今だに表立ってうごかない。今のうちに、正義を掲げる我々こそこれくらいの牙をもたねば!」

 

牙などではすまないものが世界政府にはあるが、この男は当然知らない。知らない上で、真剣に考えた結果なのは明らかだった。

 

「古代兵器は我々が所有し、大海賊時代を打ち払うのです!」

 

だからこそ、一任したのである。古代兵器プルトンの設計図を持ってきたら、話を広げるつもりはいくらでもあった。

 

「......なぜ古代兵器プルトンの設計図はあるのに、肝心の男が今ここにいないのだ」

 

ドアドアの実の能力者を通じて、信頼おける将校に託されたそれは、たしかに古代兵器プルトンの設計図。10年の時を経て、それはたしかに五老星にもたらされた。偽物の可能性もあるから、先に掴まされていたものと比較が必要だし、文献による調査も必要だ。そもそも歴史の本文を読める人間は公的に認めていないため、外部に依頼することもできない。

 

慎重に動かなければならないが、もしこれが本物なら、それはそれで世界政府はようやく2つ目の切り札を手に入れることになる。

 

それなのに、肝心の、直談判する気概があった男が今ここにはいない。将校に全てを託したドアドアの実の能力者によると、麦わら一味の完全抹殺命令を出したため、最終的にはバスターコールでエニエス・ロビーごと自爆するためだと笑っていたという。自分はルッチほど強くないが、バスターコールの起動時間を稼ぐくらいはできるつもりだと。

 

馬鹿なのかと思わずこぼした五老星に、報告にあがった将校は、深くうなずいていた。初めからそのつもりだったようで、麦わらのルフィがエニエス・ロビーに侵入した瞬間に、全隊員に船での避難を命じたという。どうやら男の完全独断専行になるが、今手元にある戦果が全てを帳消しにする。エニエス・ロビーなどまた建て直せばいいだろうに。

 

ドアドアの実の能力者も同じ考えのようですぐエニエス・ロビーに戻ったという。

 

「......ドアドアの実で部下は助けられるか......部下達が真意に気づいて止めに入ればいいが......間に合うのか?」

 

ほかの五老星達は無言だった。

 

 

 


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