(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第94話

ホーミングはガレーラ本社に長居するつもりはなかったのだが、フランキーが飛び込んできたことで話が変わった。

 

ルフィが目を覚ましたと聞きつけて、ようやく五体満足の改造人間として完全復活したフランキー。

 

「宝樹アダムの木材を手に入れ、夢の船を造ること」が、麦わら一味を襲撃して2億ベリーを奪った真の理由である事を明かした。

 

フランキーはあの手この手でアダムを仕入れる元手を工面しようとしたものの、彼らの「宵越しの銭は持たねェ」という気っ風の良さが災いして一向に貯まらず、たまたま2億ベリーを預かっていたウソップをボコボコにして強奪したことが遠因でいくつかの騒ぎが起きる羽目になったらしい。

 

その2億ベリーで買った宝樹を使い、アイスバーグらと協力して造った夢の船になるだろう。ルフィ達のため新しい船を作りたいといいだしたのだ。

 

宝樹アダムは、世界に数本しかないが、何があろうと決して倒れないといわれる最強の大樹。ロジャー海賊団のオーロ・ジャクソン号はこれで造られている。

 

宝樹アダムは 「ある戦争を繰り返す島」にあり、たとえその島で戦争が起きようが、街が滅び、住民が死に絶えようが、ものともせず立ち続ける。そして人々はこの樹に寄り添うようにして街を起こし、国をつくるのだといいう。

 

そんな樹だが裏ルートで稀に流通するらしい。

ルフィ達は喜んだ。その裏ルートを牛耳る5大帝王の右腕が今ここにいるではないか。

 

「っつーわけで、さっそく闇のビジネスの話をしようぜ。ホーミングさん。金なら今用意した。アンタなら、倉庫老舗屋のギバーソンと直に取引できるだろ?」

 

「それは宝樹アダム本体の値段でしょう、フランキー。手数料や送料を考えたら、2億ベリーでは......」

 

「あ、はいはーい、それなら追加で予算だすわ!」

 

割り込んできたのはナミだった。空島スカイピアでガン・フォール達から黄金だけでなく、青海で高値で売れると聞いたものを沢山もたされていたのだ。

 

「あなたがウミット海運なら仲介の天夜叉ドフラミンゴ通じて販路があるから悪い話じゃないでしょ?どう?足りる?全部現金化したいの。人堕ちホーミング経由なら中抜き発生しないもの!」

 

「ははは、賢い人は嫌いではありませんよ。なるほど、ありがとうございます」

 

ホーミングはそういって、帳簿を取り出すと追加で何行か書いていく。ついさっきアイスバーグから受け取った支払い金からごっそり札束を抜き取るとナミに渡した。

 

「えっ、こんなにするの!?すごい!」

 

「今はなき空島ビルカ原産の天然ダイアルも入っていますね。これはまだ養殖できない品種でしてね、唯一手に入った空島スカイピアが内紛してたから価値が高いんですよ。さて、設計図はありますか?フランキー、具体的な材料の条件を聞きましょうか」

 

ホーミングはそのまま、アイスバーグの部屋に戻った。そちらに設計図を書く書斎があるらしい。戻ってみると先客がいた。アイスバーグだ。

 

「さっきからなんの図面ひいてんだ、お前」

 

「今回のアクア・ラグナの規模で市民は不安を抱いたはずだ。この島自体海に飲まれる日も近いんじゃねえかってな」

 

「......それで、どうすんだ」

 

「この島ごと海に浮かべる」

 

「......このウォーターセブンを......船みてぇに?できるのか、そんなこと」

 

「不可能を可能に変える偉大な男の背中をずっとおれ達はみていたはずだぞ。男ならドンとやれだ。なにも前例がないわけじゃない」

「は?前例があんのか?」

 

「ホーミングさん、あんたがさっき話してた七武海ゲッコーモリアが拠点にしてるスリラーバークは幽霊島だよな」

 

「!?」

 

「よくご存知ですね、たしかにスリラーバークは西の海から流れてきた幽霊島にゲッコーモリアが後から船にしたんですよ。ゆえに海を彷徨う島、スリラーバークとも呼ばれています」

 

「ウォーターセブンとスリラーバークの位置は、今、かなり近接してるって噂だ。今回のアクア・ラグナはあれだけ大規模な大津波だったわけだから、ウォーターセブン近辺の島に関してはかなりの甚大な影響を与えている。ましてや七武海の拠点が水没となれば大ニュースだ。だが今のところ、そんな話は聞かない」

 

「......つまり、乗り切ったのか」

 

「そう、おれは踏んでいる。そんなに昔から島が浮くんなら、人工的に浮かせることも可能なはずだ」

 

「......へへ、トムさんみてぇだな」

 

「幽霊島で思い出したんですが......。最近この辺りで急に嵐が来たかと思うと、忽然と船が消える事件が相次いでいるんです。おかげでウチも困っているんですが。なにかご存知ないですか?おふたりとも」

 

「アクア・ラグナに飲まれたじゃなくてか?」

 

「ああ、噂は知ってる。突発的なものじゃないのか?」

 

「いえ、ウェザリアに依頼しているんですが、今だに観測に成功していない謎の現象なんです。ウチですら被害は甚大だ。この街は海列車があるとはいえ、ウチみたいな業者と船のやり取りも0ではないでしょう。注意喚起してもらえると助かります」

 

神妙な顔をして頷く2人を見ながら、ホーミングはこの建物の近くに誰かいることに気づく。この覇気から察するに青キジが個人的にロビンに会いに来たんだろうか。オハラの本がエルバフまで運んであることを話すのか、はたまた親友サウロが生きていることを話すのか。ホーミングの見聞色はオハラは生きていると意味深な言葉を投げる青キジがいた。随分と抽象的な表現だ。こちらが見ていることに気づいたのか、挑発的に笑っている。たしかにエニエス・ロビーについてはホーミングの負けなので、素直に賞賛しておくことにした。

 

「ホーミングさん、ビジネスの話を再開しようぜ。アイスバーグが退いてくれた」

 

「わかりました、なにからお話しましょうか」


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