(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第99話

16年前から14年前、あるいは8歳から10歳の3年間。ローは世界の闇のシンジケートを確立し七武海になるまでのドフラミンゴファミリーの自称医者として、実際は居候として船に乗っていたことがある。

 

ドフラミンゴは世界最先端にして最高峰の船に乗れたことを感謝しろといっていたが、まったくもってその通りだった。

 

ドフラミンゴファミリーは、ウミット海運の深層海流を使って地理的要因を完全無視して東西南北、偉大なる航路の楽園から新世界に至るまで数時間単位で移動することができた。

 

偉大なる航路に限っていえば、ウェザリアの天気予報がつかえるから非常に安全な航海ができた。

 

全員が悪魔の実の能力者で覚醒者はドフラミンゴだけだったが、新世界で仕事をすることができる水準があったのだ。

 

その全員に3年間だけとはいえ、師事していたことが北の海でハートの海賊団を立ち上げたときに、これだけ効果が如実に出るとは思わなかった。

 

最初期のスワロー島でウミット海運とドフラミンゴファミリーと顔を合わせたことがあるメンバーであるベポ、シャチ、ペンギンはともかく。あとから気に入ってスカウトしたクルー達とロー達の知識の落差がまず大きかった。

 

ドフラミンゴ達が日常的に会話していたその全てが、北の海だとよほど腕のいい情報屋に、多額の報酬を支払わないと入手できない情報だらけだったのだ。

 

そういう意味ではハートの海賊団を立ち上げるまで航海術を学ぶためにウミット海運に入り浸っていたベポは一級品といえる成長をした。非常に悪筆だが慣れてしまえば問題ないし、敵に奪われても難易度が高い海図になってしまう。

 

ハートの海賊団は、優しさ、仲間への信頼が込められた『心』という言葉から命名した。もちろん海軍や海賊からドンキホーテファミリーにおける永久欠番のハートを北の方言でコラソンということから、由来を勘違いされることは知った上での命名だ。

 

デザインはウイルスに似ており、潜水艦で相手を沈没させるなど、海上戦を得意としたため、「死の外科医」というローの通り名となった。マークはスマイルであり、ドフラミンゴのものと似ているが、打消し線がない。勘違いされるのは知った上でのデザインだ。

 

北の海はドフラミンゴファミリーの支配下にある。勘違いしてくれる雑魚避けにはちょうどよかった。勘違いしない奴らは極寒の北の海で、魚人でもないのに海戦を得意とする意味のわからないハートの海賊団の初見殺しにして、基本戦法に陥落した。

 

仲間が揃ったとなったあたりで、ローは決断した。

 

海賊王を狙う上で北の海の支配者であるドフラミンゴファミリーやウミット海運に喧嘩をうらないのは間違っている。それはハートの海賊団の認識だった。北の海の闇に守られてきたローやベポだからこそ、庇護から抜けると偉大なる航路新世界にいるドフラミンゴにしらせるべきだと考えた。

 

だから、あえて人攫いや人間屋を攻撃し始めた。

 

やはり最大の敵はウミット海運かドフラミンゴファミリーの傘下の海賊。あるいは儲け話にかかわる関係者。人堕ちホーミングから海軍本部に報告された次の日からは、海軍すべて。こちらの基本戦法はつうじなくなった。

 

特にウミット海運は、魚人かミンク族がでてくる。魚人は海戦で最強を誇るし、ミンク族は覇気と電気を伴う戦い方で船を物理的に破壊できる。

 

潜水艦に乗っているハートの海賊団は改良を重ねることで人魚よりは遅く魚人よりははやく逃げられるようになった。潜伏は意味をなさない。ウミット海運の魚人もミンク族もソナーの役割をした奴が必ずいて、こちらがどこにいるのか特定して攻撃してくる。これは非常に参考になったから使わせてもらっている。

 

相手は世界の海の海流を知り尽くし、こちらより先に目的地につき待ち構えるだけのスピードを誇るウミット海運だ。ここまでくるとウミット海運は必ず殺す気で来た。覇気もなにもかもが一級品の部隊が来るのだ。逃げられないなら応戦するしかない。

 

こうして、ハートの海賊団は死に物狂いで偉大なる航路楽園を航海してきた。ドフラミンゴファミリーの傘下にある非加盟国では指名手配扱いだから絶対に上陸できない。必死で別の航路を探し、時には冒険し、新たな仲間や潜水艦の強化、覇気などを修得した。

 

いよいよシャボンディというあたりで、ドフラミンゴファミリーの永久欠番のコラソンが埋まったという新聞記事がでた時には、ローは舌打ちをした。ハートの海賊団はちょっとテンションが下がった。

 

ドフラミンゴの右腕たりえる優秀な部下ができたのか。はたまた既成事実をつくり、居座り加入みたいな強行突破をした奴がいたからか。次からは無しだという意思表示なのかもしれない。

 

その時点で、ハートの海賊団は、ドフラミンゴファミリーとの関係を疑われなくなった。北の海の旗揚げから最初にしたのが、ドフラミンゴファミリーとウミット海運の拠点を襲撃することだった。だからなおのこと恨んでるんだと思われた。よほどのものがあるんだろうと。

 

恨みではない。ドフラミンゴに言われたのだ。

 

「海賊王になりたいってやっと言えたお前に最後の餞別だ。これはおれが10の時に、復讐するために飛び出す直前、父上に言われた言葉だ。やりたいようにやれ。その全てを肯定してやる。ただし、おれ達の儲け話の邪魔をするなら、血の掟に従い、全力で殺しにいくから覚悟しろ。庇護から抜けるってのは、そういう意味だ」

 

嫌というほど実感したが、仕方ない面はある。16年前というハンデはあるが。ローはドフラミンゴファミリーの手の内を知っているから、その気になればいつでも入り込める。さらにいえば何をされたら一番困るか知っている。

 

 

 

ハートの海賊団は、シャボンディ諸島に上陸してから真っ先にコーティング屋のレイさんを探した。残念ながら賭博場に行って帰ってこないらしい。借金抱えて奴隷として売り飛ばされたんだろうといわれた。ドフラミンゴにくっついてちょろちょろしていた子供がこんなに大きくなって、と懐かしむ年齢不詳の女主人に昔のよしみで別のコーティング屋を教えてもらえた。

 

ローはウミット海運の支部を訪ねて、血判の返却をもとめた。散々ウミット海運の船を沈めてきた嫌味をいわれたが、ちゃんと通行許可証をもらえた。これでようやくウミット海運の血の掟の処刑から解放された。

 

次は仲間達総出でドフラミンゴファミリー傘下の海賊達を探した。オークションのさくらだったり、監視役だったり、表立ってはいないが確実にいる人間を調べ上げた。ローは確信した。規模こそ大きくなっているが、16年前と最高責任者は変わっていない。

 

このシャボンディ諸島のオークションを取り仕切る裏の頂点にいるのは、怨念のカルディア。ニビニビの実を食べ、鬼火を自在に操ることができる「鬼火人間」になった男だ。

 

鬼火で直接攻撃するだけでなく、斬撃などに鬼火を乗せて威力を高めることが可能。 さらには死者の形見を媒介としてその人物の鬼火を呼び出し、身にまとうことで姿や声をその人物そっくりに変化させることが可能。 また、鬼火の記憶を読み取ることで本人しか知り得ない情報を獲得できる。

 

この死者を再現するというのがこのオークションで活用されているのだ。

 

ドフラミンゴファミリーはウミット海運と繋がりが深く、魚人島と人魚、ミンク族がオークションに出てこないシステムになっている。常に出てこないのは不自然だから、たまに出すのだこの能力で出た偽物を。そして、さくらが競り落とす。

 

主要なやつらは2人しかいない。

 

ディスコはシャボンディ諸島1番GRにある「人間屋ヒューマンショップ」(表向きは「職業安定所」)で行われていた人間オークションの司会者だ。

 

つぎにランボル・ブギーニ 。ドフラミンゴファミリーの幹部の1人で、ドレスローザ国外にて名目上は武器生産の為の奴隷集めをしてた。人々を奴隷にして地下で武器を作らせ、強くなりたい者は改造して、傭兵に仕立て上げる儲け話を持ち込み、採用されてファミリー入りしたはずだ。

 

まずはカルディアにあたるべきだろう。ローはベポだけ連れて、オークション会場の裏に入っていったのだった。

 

「誰かと思えばロー坊やか、元気にしてたか?」

 

「誰が坊やだ!」


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