前に友人と小説の読み合いしたら、お蔵入りした小説が面白いと絶賛されました。当作品とは違い、東方のオリ主ものですが投稿しようか迷います。読みたい?(読者に丸投げスタイル)
「ふむふむ……。あなた方が出会った経緯にはそんなことが……。運が良いのか悪いのかわかりませんね」
「は、ははは……」
綱吉は誤魔化すように笑う。
実際、幻想入りして直ぐに人喰い妖怪と遭遇。そして、命からがら逃走して、偶々哨戒していた慧音に保護されるなど、運が良いとも悪いとも言い難い。いや、この場合は悪運が強いと言うべきか。
「いや...まぁ、追いかけ回されたのは辛かったですけど……。でも、慧音さんと出会うことが出来ましたから、全然不幸なんかじゃありません。むしろ、これ以上ないくらい
綱吉は続ける。下心も、気取ることもなく、ただ思ったことが口から自然と漏れ出すように。
「…………そう考えると、慧音さんはまさに
「……っ!」
綱吉の言葉で慧音の顔が赤く染まる。
神仏の概念がより深く浸透している幻想郷において"女神"呼びは反則である。
しかも慧音は吉兆の象徴たる神獣白沢とのハーフ。狙って言ったようにしかみえない。
下心がないことが、その口調から分かるからか余計に心に響くのだ。綱吉のような人畜無害な少年から言われたのだから不意打ちにもほどがある。
流石は来孫とはいえ、イタリア人の血を受け継ぐ男。息を吐くように女性を褒める。
そんな綱吉に、あやはジトっと湿った視線を送った。
「……貴方、幼い顔立ちしている癖にとんだ
「んなっ!た、誑しってなんですか!?しかも、幼いって………!」
人が気にしていることを――と綱吉は憤る。
しかし、子猫がプンスカ怒っても、まったく怖くない。
現にあやも全く気にしていないようで。
「あーはいはい。しかも鈍感と……」
綱吉の抗議に対応する気がないのが丸わかりである。
その証拠にあやは綱吉と目を合わせず、ただ淡々とメモしていた。
「無視ですかーっっ!?」
あまりに淡泊な対応に、思わず大声でツッコむ綱吉。
綱吉達以外に客のいないためか、団子屋では綱吉のツッコミがより響き渡ったという。
◇◇◇
その後、団子屋の女将さんに睨まれたり、それで綱吉が縮こまったりしたものの取材は続いた。
綱吉が外来人であることも明かしている。慧音は止めるつもりであったが、下手に追及され、綱吉の事情に踏み込まれるよりはマシだろうと綱吉が話したのだ。
「それにしても綱吉先生ですか…… 。外来人を保護するためとはいえ、まさか雇うとは」
「綱吉くんにはそれだけの能力があるからな」
「へぇ…。貴方がそこまで言うなんて…」
あやの品定めするような視線に綱吉は「ヒッ…!」と小さい悲鳴を上げる。
そして綱吉は謙遜するように両手を振った。
「い…いやいや。俺なんて慧音さんに迷惑かけてばかりですから。俺、ドジばっかりしますし。この前だって、紙をぶちまけちゃいましたし」
「ほうほう…新任教師はドジっ子ですか……。まぁまぁなネタですね」
綱吉は気恥ずかしさからか、顔を赤くする。
そんな綱吉にあやはクスクスと笑いながら万年筆を走らせた。
「この通り、謙遜が過ぎるところが偶に傷だがな」
「謙虚は普通、美徳なはずなんですけどねぇ…。中々ないですよ。美点が"傷"なんて言われるの」
「どんなことでも、度を越すのは良くないということだ」
「(なんで、俺こんなこと言われてんのー!)」
慧音とあやの会話に心中でショックを受ける綱吉。
なぜインタビューが綱吉の愚痴り会になっているのか。
しかも本人を目の前にしてである。
すると綱吉を見て流石に罪悪感を抱いたのか、慧音は申し訳なさそうに口を開いた。
「す…すまない。君の前だと、どうしても話しやすいというかな……」
「記者としてはありがたい限りですけどね」
「えぇ……」
二人の言葉に綱吉は肩をガックシ落とす。
気を落とした綱吉に慧音は苦笑いしつつも優し気な視線を向けた。
「だが…綱吉くんのそういう大らかさが寺子屋の子供達に良い影響を与えているのも確かだ。それだけは私にも真似出来ないからな」
「慧音さん……」
慧音のフォローに綱吉は顔を上げる。
そんな二人を他所にあやは今までの会話をメモに書いていた。
すると、あやは何か思い出したかのように口を開く。
「あぁ……そういえば寺子屋といえば……。先日、どうやらトラブルがあったようですねぇ…。慧音さんも怪我をしたとか」
「……」
急な話題の方向転換に慧音は訝しげにあやを見る。
綱吉も空気の変化に戸惑っていた。
「里から抜け出した子供を貴方が救出したと他の方からお聞きしましたよ。流石は人里の守護者。手傷を負ってでも子供を守るとは」
そう先日のアキが里から脱走した事件。綱吉が慧音とアキを妖怪の魔の手から救出したというのが事実なのだが、綱吉自身が目立ちたくないと、功績を慧音に譲ったのだ。
「余計な世辞は良い。何が言いたい?……いや、何が聞きたい?」
腕を組み、眉間に皺を寄せる慧音。
そんな彼女にあやはその顔に取り繕ったような笑みを浮かべた。
「ふふっ…。いえ、取材の最中に興味深い話をお聞きしましてね」
そして、あやは万年筆をくるりと一回しすると、その瞳を獲物を見つけた鷹のように輝かせる。
「あなたが子供を探しに行った後、一人のまた別の子供が死に物狂いで走り去るところを里の何人かが目撃していまして……。それも茶色い特徴的な髪形をしていると。ちょうど…あなたのような…ね……」
あやの視線が綱吉にへと向けられる。
矛先が綱吉に変わったことであやの真意に気が付いた慧音は苦虫を嚙み潰すような表情を浮かべた。
「(最初からこれを聞くのが目的か)」
「(この人、俺のこと調べ尽くした上で接触してきたなぁ……。わざわざ偶然を装ってまで…俺たちに会いにくるなんて……)」
綱吉はあやの性格の悪さに心中でため息を吐く。
まぁ、綱吉からしたら壁を消し飛ばしたり、殴りかかってきたり、身体を乗っ取ろうとしたりと、初手に暴力を振るわないだけ、まだマシなのだが。
しかし、下手に否定してもこの記者は諦めないだろう。外堀を埋めるべく、それこそ寺子屋の子供達を巻き込んでいくかもしれない。それだけは綱吉も慧音も避けたかった。
「あはは…慧音さんが心配で飛び出しちゃいまして……」
「綱吉くんは心配性なんだよ」
綱吉が誤魔化すように言うと、慧音も追従するように頷いた。
しかし、あやの目つきはますます鋭くなるばかりで……。
「……ええ、そうですね。沢田さんが大慌てで寺子屋から抜け出したことは、その場にいたお医者さんからも聞いていますよ。ですが、
あやは続ける。
彼女が向けるその眼は烏を超え、もはや鷹の如き威圧感を放っていた。
「沢田さんのその後の目撃者は一切なし。次に目撃されたのは慧音さん共々、里に帰還された時です。……慧音さん程の手練れが手傷を負うなど、それ相応の戦闘があったということでしょう?ですが、その戦いを見た者はおろか、
少なくとも、あやの調査では見つからなかった。血の気の多い妖怪達や、こういうトラブルに目ざとい人間の魔法使いさえ知らなかったという。これはもうあり得ないと言っていい。
そう……誰かが
「そんなことが出来る者はこの幻想郷でも限られています。あなたもその内の一人ですよね?歴史…すなわち起きた出来事を隠す能力を持つ上白沢慧音さん」
つまり、あやは疑っているのだ。
森で起きたであろうトラブルを周りに知られないように慧音がその能力を使って歴史の闇にへと葬り去ったのだと。
「さて…二人ともお聞かせいただきましょうか?慧音さんが隠蔽しなければならないほどの何が!あの森で起きたのでしょうかっ!?」
解決フェーズに突入した名探偵の如き推理を披露したあや。その貼り付けた笑みの裏には慧音が隠した(と思っている)真実に到達したことによる達成感、勝利を確信した自信に満ち溢れていた。
しかし、その推理を聞いていた二人は……
「「………………」」
戸惑いのあまり、言葉を発せずにいた。
そして、二人は互いに顔を見合わせると、まず初めに慧音が口を開く。
「……すまん。一体、何の話だ?」
「は……?」
次はあやが言葉を失った。
実際、あやの推理は筋が通っており、状況証拠のみになるが説得力自体はある。
しかし、慧音は本当に覚えがないのか、困惑のあまり少し混乱しているようだった。
「あの日、私は能力なんて使っていないぞ。確かに戦い自体はあったが…隠すほどでも無かった」
慧音は戦いが終わって直ぐの時点では隠すことなど考えてなどいなかった。
綱吉から戦ったことを人里の皆に知られたくないと相談を受けたのも帰還した後のことである。
「というか慧音さん、そんな便利そうな能力持っていたんですね」
「そういえば言っていなかったな」
歴史を隠蔽するというとんでもない能力を前に"便利"の一言で済ます綱吉に、慧音は苦笑を漏らした。
そして、あやはというとまだ疑っているのか確認を重ねる。
「……本当に心当たりが無いのですね?」
「ああ。というより本当なのか…?森へ行った私たちが目撃されていないなど……」
慧音も戸惑いを隠せない。
勿論、帰還には気を使った。帰りの道中に襲われでもしたら堪らないからだ。
しかし、そこまで好戦的ではない妖怪くらいには目撃されるだろうと思っていたが、それすらもないとなると……。
「他に…誰かいた……?」
「「……っ!?」」
綱吉から漏れた一言が二人の視線を集める。
それに気が付いた綱吉はわたわたと慌て始める。
「え?…え?ふ、二人ともどうしました?」
慧音もあやも怪訝そうな表情に綱吉は混乱していた。
「誰かがいた?貴方、何か知っているんですか?」
「……私からも聞かせてほしい」
「え…いや、その……」
綱吉は慌てるばかりであったが、二人の真剣な目に彼は何とか必死に言葉を紡ぐ。
「お…俺、別に思ったことを言っただけで、そんな"知っている"とかそんなんじゃあなくて……」
彼女達の追及に綱吉はしどろもどろになりながらも続ける。
「なんていうか…多分、誰かが俺たちを陰から見てたんじゃないかなって。敵か味方かは分からないけど、悪意とかは感じなかったら多分、大丈夫かと…。勘ですけど…」
「勘ですか……」
最初の方は注意深く綱吉の話を聞いていたあやだったが根拠が勘であることを知ると、拍子抜けだったのかいつもの余裕そうな表情も一瞬だけ崩れたようだった。
慧音はというと、あやとは正反対に今も真剣に耳を傾けているようで。
「綱吉くんの勘は本当によく当たるからな……。もしかすると……」
「あなたがそこまで言うほどですか?」
「私が知るだけでも百発百中だ。事実、綱吉くんの勘にはこの数日の間よく助けられた」
「ふぅむ……」
綱吉の超直感はやはりそう簡単に信じられるようなものではないのだろう。
あやも疑わしそうに顎に手を当てていた。
それを見た綱吉は冷や汗を掻きながら口を開く。
「えーと…その……。うちの家系、初代から代々勘が冴え渡っているそうで……」
「……代々の博麗の巫女が持つとされる勘のようなものですか」
流石のあやも心中では巫女の勘ほどではないのだろうと思ってはいるが、他に近い例えがない。
そして、これまでの会話から思うところがあったのだろう。彼女は徐に立ち上がる。
「貴方のその家系について、もっとお聞きしたいですが……。今はよしておきましょう。もっと調べたいことが出来ましたしね」
「取材はもう良いのか?」
「ええ。ご協力感謝します」
「そうか…わかった」
慧音が頷くと、あやは自分のお茶代を置いて茶屋から出ていこうとする。
暖簾に手をかけ最後に振り向くと、ちょこんと丁寧に頭を下げる綱吉が。
本当に
◇◇◇
「今回の一件、思ったよりも根深いわね……」
人里から離れた上空。
あや――改め
その姿も人里で見られたような様式の恰好ではなく、白の半袖シャツに黒いスカート、赤い山伏風の帽子という人里に住む人間にしたら違和感ばかりな姿。しかし、それは射命丸が
「(こんな特ダネ…。他の"天狗"達に盗られるわけにいかないわ)」
射命丸は心中で意気込む。
そう、人里に現れる『社会派ルポライターあや』とは仮の姿。
彼女の本当の姿は"妖怪の山"の広域を牛耳るとされる妖怪種族"天狗"の一人なのだ。
「(そしてカギを握っているのは、恐らくあの少年……)」
射命丸の頭に浮かぶのは、先ほど取材した茶髪の少年。
最初は人畜無害で鈍くさそうな人間だと思っていたが何か隠しているのは違いない。
本来ならもっと追及するところだが傍に慧音がいる以上、難しいだろう。
「(あの人間、本当に何者なのかしらね。私が人間ではないと気が付いていたようだし……)」
記者たるもの他者の動きには敏感である。
綱吉の僅かな緊張から、どんな感情を抱いているかくらいは容易に察せた。
「(まぁ…その上で取材に乗ったり、友好的に接するなんて、余程の馬鹿かそれとも底抜けのお人好しか……)」
ツッコミも含め、今回の取材で綱吉が見せた反応を思い出し、射命丸はクスッと笑う。
しかし、それも一瞬のことで、取材時の余裕げな笑みではなく、探究者としての鋭さを思わせる表情となった。
「(この事件はきっと幻想郷そのものを揺るがすようなスクープに繋がっているに違いない)」
綱吉の超直感や巫女の勘とも違う。
今までの経験によって裏打ちされた
「調査しがいがあるわね」
久しぶりの大物に興奮を隠しきれない射命丸。
彼女の行く先はがどうなるのか。それは大空の元、共に悠々と浮かぶ雲にでさえわからないだろう。
現在、仕事に関する練習のために23時くらいまで会社に残ってる味噌漬けです。10分でも筆を進めるこの時間が数少ない癒し笑。あ、ブラックじゃないですよ。自主的に残ってますので笑
ひとまず身の上話はそこまでにして、キャラ紹介入ります。
《沢田綱吉》
年齢…16歳
能力…全てを見透かす程度の能力?
属性…大空
本日の取材対象。めちゃくちゃ緊張しているように見せて、しれっと子供達に迷惑をかけないなどの条件を潜り込ませた(前話参照)、抜け目ない子。無自覚に慧音を口説きつつ、記者を絆す様はまさに人たらしである。
《上白沢慧音》
年齢不詳
種族…半人半獣
能力…歴史を食べる(隠す)程度の能力(人間時)
属性…霧
本日、地味に綱吉に口説かれた人。その美貌からして、口説かれるのには慣れているが、今回の綱吉の言葉には顔を赤くしてしまった。何故だろう?
《射命丸文》
年齢不詳
種族…鴉天狗
能力…風を操る程度の能力
属性…雲
とうとう正体を見せた謎の記者。え?バレバレだって?いやいや、そんなまさかー(棒読み)。
色々、綱吉に聞くつもりが、いつの間にか若干絆されてしまっている。本来、他者との間に壁を張る彼女にしては珍しいことであり、本人も自覚しているのか苦笑してしまった。それはそれとして、今回のことに関して面白おかしく記事を書くつもり。綱吉の胃に大ダメージを負わせるのはそう遠い未来ではない。
ちなみに本小説の射命丸は組織への帰属意識が薄く、実力もその気になればトップを狙えるくらいの強さを誇る。でも、しないのはただ面倒臭いから。