幻想郷に広がる大空   作:味噌漬け

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※注意 
本小説は沢田綱吉が可愛い女の子や妖怪たちと面白おかしな幻想郷ライフを送るギャグ小説です。









…………そんなギャグ小説になるはずだったんだ。(次回からはほんのりギャグに戻ります)


第十四弾 黒い無翼の天使/白い豪翼の悪魔

 

「(………ここは一体、どこだろう?)」

 

 視界に入るのは砕かれた小さい箱。そこから今、綱吉がいる時代について想像がつく。

 ここは恐らく、10年後の世界。慣れ親しんだ並盛か、それともボンゴレファミリー結成の地イタリアか。

 いや、今更どちらでも良い。いずれにせよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

『なんで…なんで、こんなことになるんだよ……!』

 

「(この声は……)」

 

 ビルが倒壊。

 大地は焼け野原。

 そんな世界の中心に"彼"はいた。

 彼が身につけるスーツは焼き焦げている。

 破れたスーツの隙間から見える裂傷やブクブクに爛れた火傷が痛々しい。

 しかし、今の綱吉にそんな"彼"の姿を目撃することはできなかった。なぜなら…綱吉が見ているのは"彼"が目にしているものと同じなのだから。

 目に映るのは"彼"が愕然としながら見る絶望そのもの。

 もはや性別すらわからないほどに朽ち果てた無数の死屍累々が無惨に散らばる地獄絵図。

 

「(ひ、酷すぎる……。うっ…おえ――」)

 

 そのあまりに惨い光景に綱吉は吐き気を催し、口に手を当て蹲る。

 だが、一向に吐ける気配はない。へばりつくヘドロの如き何かが身体の中を蠢いた。

 

『俺はただみんなを守りたかっただけだっ!!死なせたくなかっただけだっ!!』

 

 夢だ。間違いなく夢だ。

 しかし…だからといって、綱吉には他人事のようには思えなかった。

 "彼"のその姿がまるで自分が辿る未来のように見えたからだ。

 これは夢にしては現実(リアル)過ぎたのだ。

  

『ほんとナンセンスだね●●くん♪』

 

『貴様は……っ!!』

 

 突然降臨する白き翼を持った悪魔。

 それと同時に"彼"の視界が赤く染まっていく。"彼"の怒りと憎しみを表すかのように。

 笑顔の白い悪魔と憤怒の黒い天使。ここには正反対の二人が相対していた。

 

『「なんでこんなことになるんだよ」だっけ?不思議なことを言うもんだなぁ。君が彼らを(こっち)側に連れてきたからじゃないか♪』

 

「(お…俺のせい?俺がみんなを巻き込んだから…?)」

 

 顔を青くし、目が泳ぐ。

 悪魔の一言一言が綱吉の心を揺さぶっていく。

 対して、悪魔と相対する“彼”の心はその怒りのあまり、その声は震えていた。

 

『なんだと!?お前たち、ミルフィオーレが攻めてきたから…。関係ない人たちまで巻き込んだから!こんな戦いにっっ!!お前がこんな戦争を引き起こさなければ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(…っ!!)」

 

 改めて“彼”の口から出た“死”という単語に綱吉は改めて動揺する。

 

「(や…やっぱり…。みんなは……し、死んじゃっ――――)」

 

 予感はしていたのだ。しかし、信じたくなかった。

 周りにバラまかれているのは、獄寺隼人を始めとする守護者達、そして笹川京子や三浦ハルといった大切な仲間達(ファミリー)達が無惨に引き裂かれ、蜂の巣になり、原型も留めずに黒く焼き尽くされた肉とすらいえない物体なのだと。

 眉間に皺を寄せ、拳を握り締め、涙が枯れ果てた眼で睨みつけながら、言葉(怒り)を叩きつける“彼”。

 だが、悪魔はそんな“彼”の言葉にも一切気にせず、ただその飄々とした笑みを浮かべ続けていた。

 

『酷いなぁ…●●くん。確かに戦争を起こしたのは僕だけど、だからって仲間が死んじゃったことまで僕のせいにしないでよ』

 

『んなっ……』

 

「(な、なに言ってるの…?)」

 

 悪魔の開き直りと言うにも酷すぎる態度に、綱吉と“彼”は最早、次の言葉すら出てこない。

 そんな一人(二人)に構わず悪魔は続ける。

 

『この世界で“死んで欲しくない”なんて甘い戯言が通じると本気で思っていたのかい?巻き込まれた人間が一般人と同じように生きていけると思っていたのかい?死んで欲しくないなら、最初から関わらなきゃ良かったじゃないか。違うかな?』

 

『そ…それは…!』

 

 仲間を殺したのは間違いなく悪魔だ。

 そんな奴の言葉など聞くにも値しないはずなのに、常に心のどこかで思っていたことだからか“彼”は否定することができない。

 

『君と関わることが無ければ、ただのクラスメイトとして人並みの幸せは手に入れただろうにね。まっ、僕には人並みの幸せとかよくわからないけど♪』

 

「(俺と…関わらなきゃ…みんなが幸せに……)」

 

 悪魔の言葉に益々顔を青くし、項垂れる綱吉。

 これは綱吉がいつも考えてきたことだ。綱吉が関わることがなければ、山本は殺人剣など習わず、野球一筋で大成していたかもしれない。了平は妹である京子に心配させるようなことはなかっただろう。

 少なくとも物騒な殺し合いなどすることはなかった。

 山本があんな一生に関わる大怪我を負うことはなかった。未来で父親が殺されることはなかった。

 家族や友人たちが狙われることはなかった。

 輝く表舞台で悪役(マフィア)ではなく、みんなの英雄(ヒーロー)として生きただろう。

 ランボも雷の守護者などに選ばれなくても、十年後の未来では楽しく過ごしている。

 何よりも…京子やハルといった一般人まで危険に巻き込むことはなかった。綱吉が関わらずとも、あの心が清らかで見た目も美しい二人なら変わらず元気に過ごしているに違いない。

 

『ふざけるなっ!みんなを殺したお前がなんでそんなことを言えるっ!?』

 

『言えるよ。断言してあげる。別に僕がどうこうしなくても、君の仲間とやらはみ~んな死んじゃう。君と関わりマフィアなんて道を歩んだばかりにね』

 

 認めたくないと言わんばかりな“彼”の必死な否定も悪魔には通じない。

 悪魔は確信めいたように“彼”の言葉を一蹴した。

 

『僕は色んな世界にいる君の個体を見てきた。それに伴って、君の仲間とやらもね』

 

『な、なにを言っているんだ?』

 

「(パラレルワールドのことだ…)」

 

 “彼”にはわからなかったようだが、綱吉は悪魔の言うことに心当たりがあった。

 平行世界(パラレルワールド)。それはある世界(時空)から分岐した、それに並行して存在する別の世界(時空)のこと。

 人間のありとあらゆる選択肢から生まれた無限ともいえる数の世界には当然、別の世界と異なる選択をした綱吉たちも存在している。

 悪魔の能力(ちから)はその無数の世界の自分と知識を共有すること。それはたった一つの…奇跡とも言っていい出会いを果たした世界線にいる、この綱吉しか知りえないことだった。

 

『毒殺、暗殺、事故死、戦死、病死。僕が…いやミルフィオーレが手を下さずとも君たちが死んだ世界なんてそれこそ無数にある。あ~!そういえば、君が射殺された後に君の仲間たちが()()()()()()()世界もあったね♪もちろん…女の子たちも含めて…さ…』

 

『「……っ!!」』

 

 仲間の自殺…それは何よりも仲間の命を優先する綱吉と“彼”にとって、一番あっては欲しくないことだった。

 自分と関わったばかりに皆が自殺した…そのショックのあまりの大きさに“彼”の脚は砕け、その顔は先ほどまでの怒りに満ちた表情から一転した蒼白としたものとなり、綱吉は大粒の涙を流す。

 

『さて、話はここまでにしようか。所詮、君はゲームの敗者』

 

『ゲーム……だって…?』

 

『そっ7³(トゥリニセッテ)を巡る争奪戦のね♪結局、この世界の君も僕には勝てなかったようだ』

 

 心の底からつまらなそうに“彼”を見下ろす悪魔はその手の平に濁った橙色の炎を集中させる。

 余波で空気が震えあがり、建物の残骸が吹き飛んでいくほどのエネルギーが“彼”にへと向けられた。

 

『ぐっ……』

 

 “彼”も抵抗しようと何とか立ち上がり、右手を後ろ、そして身体を開き左手を前に構えた。

 右手からは支えとなる淡い橙色の炎、そして左手には己の全力の炎を集中させる。

 その収束される炎の大きさは悪魔にも匹敵しうるほどだった。

 

『へぇ…。まだこんな力が残ってたんだ…。うん♪これなら少しは楽しめそうだね』

 

 しかし、そんな“彼”の炎を見てもなお、悪魔はその余裕の笑みを崩さない。

 そしてその笑みとは裏腹に凶悪なまでに禍々しいまでの色をした炎を解き放った。

 

『うぉぉぉぉぉぉっっっ!!!』

 

 対する“彼”も己の全力を振り絞った一撃を放つ。

 禍々しい炎と澄んだ炎の激突。

 この荒廃した世界を照らすほどの輝きと、余波だけで辺りの地面がひび割れるほどのエネルギーが衝突する光景はまさに最後の一騎討ちというに相応しい壮絶さであった。

 

『ぐっ……おぉぉぉぉぉ!!』

 

 最初は拮抗していた“彼”の炎が段々と押されていく。

 悪魔の炎の勢いに飲まれていくように、その澄んだ炎が濁り始めた。

 

『ぐっ!ぅぅぅぅぅ…っ』

 

 “彼”はなんとか踏ん張り押し返そうとするが、それでもこれ以上力がでない。それどころか押し負けていくだけだ。

 当然だ。“彼”にはもう仲間(支え)がないのだから。

 そんな“彼”を嘲笑うかのように悪魔はさらに炎圧を上げた。

 

『とっくに君はゲームオーバーしてるんだ。敗者は敗者らしく…ドロップ(アイテム)でも落としなよっっ!!』

 

 もはや“彼”の倍以上ともいえる大きさの炎圧。

 そのあまりの威力に“彼”の身体は後ずさりし、そしてその炎は遂に“彼”ごと飲み込んだ。

 

『う…うわぁぁぁぁぁぁっっ!!』

 

 断末魔を上げ、炎に身を焼かれていく“彼”。

 そんな“彼”が最期に思ったことは――――

 

『(みんな…ごめん……)』

 

 脳裏に浮かぶ仲間たちへと贈られる懺悔。

 “彼”はその後悔と共に…その魂ごと焼き尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!!」

 

 まだ暗い寅の刻。

 綱吉は勢いよく布団から起き上がった。

 布団は汗でびっしょりと濡れており、それによる寒さなのか…それとも恐怖によるものか…綱吉の身体は震えあがっている。

 

「み…みんなはっ!!」

 

 しかし綱吉は自分の体調を無視し、辺りを必死に見回す。

 だが…綱吉の周りには誰もいない。今は並盛ではなく、幻想郷にいることを思い出した綱吉はその寂しさのあまり膝を抱えるように丸くなる。

 リボーンや他のみんなの前では出来る限り平気なように振る舞っていたが、この場に誰もいない今、ダムが決壊したように綱吉の涙腺から涙が溢れ始めた。

 

「(みんな……)」

 

 綱吉は二年生に上がってから、このような夢を高頻度で見るようになった。

 夢故に全て憶えているわけではないが、シチュエーションは違う一方、結末はほぼ同じ。

 仲間が死に…そして、その後悔に苦しみながら自分が死んでいくというラスト。

 

「(会いたい…会いたいよ……。でも……)」

 

 心の底から会いたい。

 楽しく喋りたい。

 また一緒に帰りたい。

 花火を観に行きたい。雪合戦がしたい。

 あの頃のように遊びたい。

 元の世界に帰りたい。

 だが…そう思う度にあの荒廃した世界が邪魔をする。

 お前が関わればみんなが死ぬぞと脅してくる。

 

「う…うぅ………」

 

 綱吉は世界を拒絶するかのように布団に籠る。

 布団の中を濡らすのは寝汗か、涙なのか…それは本人にもわからなかった。

 

 

 




繁忙期にて肉体労働6連勤目の味噌漬けです。さぁ!クリスマスも正月も頑張って働くぞ!!
それはそれとして、今回のタイトルは個人的にお気に入り。言葉遊びは楽しいなーっと。

【キャラ紹介】

《沢田綱吉》
 年齢…16歳
 能力…全てを見透かす程度の能力?
 属性…大空
 
 ここ最近、こんな夢ばっか見てる不憫な子。当小説の綱吉くんが暗かったり、ネガティブなのは大体、この夢のせい。ぶっちゃけノイローゼ気味である。

《???》
 年齢…?
 能力…?
 属性…?

 自称“夢の管理者”な今回の隠れ被害者。
 「新しい住人が来たなー。しかも、可愛い子供。どんな夢見てるんだろ?よし、喰ったるかー」と軽い気持ちでいたら、ニンニク背脂超マシマシ家系ラーメンよりも、遙かにこってりクドイ夢をぶち込まれちゃって胃もたれナウである。
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