幻想郷に広がる大空   作:味噌漬け

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レッツ死ぬ気タイム♪


第七弾 ”死ぬ気で二人を守る!!”

 

「(お願いだから無事でいてくれ二人とも……)」

 

 祈りながら走り続ける綱吉。

 彼は今、何とか人里から抜け出し、慧音たちの救出にへと向かっていた。

 

「(二人の元に早く行かないと…!)」

 

 慧音は言っていた。恐らくアキは病気の母親のために授業にあった“薬草を取りに向かった男”の話から、薬草を取りに森へ向かったのではないかと。根拠が残っていた足跡の方向、そしてアキが借りていた薬草の本、そしてやたら注意深く授業を聞いていたことくらいな薄いものだが。心当たりがそれくらいなのも確かだ。

 慧音は自分の授業がキッカケでこのような事態になったことに少なからず後悔していた。それは綱吉も同じようで。

 

「(あの時、もっと問い出していれば……)」

 

 綱吉は校舎で隠れんぼの鬼をしている最中、アキと会話した時を思い出していた。

 

「(俺は…なんであの時、もっと真剣にアキちゃんと話をしなかったんだ…!)」

 

 あの時、アキが悩んでいたことはわかっていたのにも関わらず、先延ばしにしていた。綱吉はいつ外の世界に戻るかわからない身だ。

 だから、中途半端に深入りするわけにはいかないと考えていた。

 つまり迷ったのだ。

 下手に関われば……巻き込んでしまえば、(こちら)側に引き込んでしまうキッカケになると……そう思った。彼らのように……。

 だが、もっと相談に乗ってあげれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

 

「(くそ…!)」

 

 綱吉は心中で悪態を呟きながら、歯噛みする。

 しかし、今はそんな風に後悔している暇すらない。

 今、重要なのは、あの二人に追いつくことである。

 綱吉はとにかく走る。いつもの鈍臭さからは考えられないほどの身体能力だ。

 

「(……うん。ここなら人目はつかないよね。何となく、慧音さんたちに近づいた気がするし……)」

 

 今は人里の外。

 そう簡単に別の人間と会うことはないだろう。

 そして綱吉は懐から何か青い錠剤が入ったケースを取り出した。

 

「これを飲むのは嫌だけど……」

 

 綱吉は心底、嫌そうにケースを見る。

 正直に言えば、出来ることなら飲みたくはない。

 人前でこの力を使いたくはない。

 何せこの力は決して…決して()()()()()()()()()()のだから。

 

「でも……今、手を伸ばさなくちゃ後悔する。だから――」

 

 錠剤を飲むため、いつものように2()()を取り出そうとすると――

 

 

 

「……って!んなぁぁっっ!!?」

 

 

 

 今までにないくらいの綱吉の悲鳴が森の中でこだまする。

 綱吉の顔は今までとは別の意味で真っ青に染まっていった。

 そんな彼の手のひらには――――

 

「い…1()()()()()ーっ!!?」

 

 いつもなら何錠かストックがあるはずなのに、ケース内には一粒しかない。

 振っても覗いても、その影も形も見当たらない。

 

「(な、なんで!?最後に見たときはまだあったのに…!!もしかして…どこかで落とした?ま…不味い…。こんなことリボーンに知られたら…ネッチョリじゃすまない…。というか…このままじゃ慧音さんたちがっ!!)」

 

 この錠剤は2錠を服用することで真価を発揮する。

 今までにない事態に綱吉の脳内は混乱を極めていた。

 それでも、足が止まっていない辺り、リボーンの訓練の成果が伺える。

 

「ゲギャァァァァァッッッ!!」

 

「……っ!!」

 

 森に響く咆哮にビクッ!と震える綱吉。

 昔の彼ならば間違いなく逃げたであろう…しかし今の綱吉にそんな選択肢はなかった。

 恐怖を押し殺しながら…木々を抜けると――――

 

 

「慧音さんっ…アキちゃん…!」

 

 

  そこには倒れた十数体の異形……。そして、最後に残ったであろう不気味な人外の魔の手からアキを庇う慧音の姿。

  それを見た瞬間………綱吉は躊躇いなく、最後の1錠を飲み込んだ。

 

◇◇◇

 

 綱吉が森の中を走っているころ、慧音はアキを守らんと複数体の妖怪の群れを相手に孤軍奮闘していた。

 その妖怪はまるでぶくぶく太ったイモリのような生物が二足歩行しており、ギョロリと3つの眼が忙しなく動く…なんとも醜悪な見た目をしている。

 しかし、そこはこの人外魔境たる幻想郷において長年というには長すぎる時間、人間の守護者として人々を護ってきた慧音。

 その実力は折り紙付き。次々と妖怪共を薙ぎ払っていた。

 

「け…慧音せんせい……」

 

 そんな戦いをアキは震えながら見ていた。

 その手には何本かの植物がギュッと握りしめられている。

 

「(これで…最後だ!)」

 

 残った一匹の妖怪に光弾を叩き込む。

 妖怪は「グギャッ!!」と断末魔を上げ、木々の向こうにへと吹っ飛んだ。

 ひとまず妖怪たちを掃討した慧音は息を吐くと、アキの方へ振り向く。

 

「アキ、大丈夫かい…?」

 

「……あ……は、はい。そ、その先s――」

 

「落ち着きなさい…」

 

 罪悪感に満ち、青みがかった唇で何か言おうとするアキ。

 慧音は遮るように優しく声をかけた。

 

説教と頭突(はなし)は後だ。まずは帰ろう」

 

 そう言いながら、慧音は座り込んだアキに手を差し出す。

 アキがその手に安堵の息を漏らしながら掴もうとすると――――

 

「ゲギャァァァァァッッッ!!」

 

「「っ!!?」」

 

 木々の影から唐突に現れた、もう一体の異形。

 それは大きい咆哮を上げながらアキを襲いかからんと突っ込んでくる。

 妖怪は他の個体に比べて身体が大きく、発せられる妖気が明らかに違った。

 慧音はこの個体こそがこの群れのボスであると察する。

 

「(馬鹿な!これほどの巨体に私が気が付かないだと…。まさか、そういう()()()()…っ!!)」

 

 瞬時に分析する慧音だが、そんな時間は残されていない。

 その妖怪の鋭い爪がアキを引き裂かんと迫っているのだから。

 

「アキっ!」

 

 大物といえど、慧音であれば倒すことなど造作もないだろう。

 しかし、攻撃すればアキを巻き込みかねない。

 そして何よりも…人間の守護者たる慧音が真っ先に選択する行動とは…()()()()()()()であった。

 

「アグッ!!」

 

 慧音が咄嗟にアキを包み込むかのように庇う。

 そして、ザシュッ!と斬り裂く音が鳴ると、慧音の顔が苦痛に満ちた表情となった。

 

「け…慧音先生……?」

 

 慧音の両腕に抱きしめられたアキが何が起きた…?と’言いたげに慧音の名前を呟く。

 そして、慧音の背中から…赤い雫が地面に零れ落ちたことに気がついた。

 それを見たアキは顔をその赤に相反するように真っ青に染め上がる。

 

「け…慧音せ…せんせい…!」

 

 アキが恐怖と慧音に対する心配を込めた声で慧音の名前を呼ぶ。その血を見たからか、やがて、力が抜けたかのようにアキは気絶してしまった。

 

「(ま…不味いな。思ったより傷が深い)」

 

 庇う際、何とかダメージを抑えようと動いたが、それでも慧音が負った傷は深かった。

 背中に大きくついた引っ掻き傷とそれから流れる赤い血がなんとも痛々しい。

 半分人外である慧音であればしばらく休めば治る傷であろうが、今の状況には関係がない。

 

「ぐ……!…はぁっ!!」

 

「げぎゃっ!」

 

 残った力を振り絞るかのように手のひらから弾幕を放ち、なんとか妖怪を遠ざける。

 しかし、依然とピンチなのには変わらない。

 ちらりと見えた慧音の苦しい表情に妖怪は最後の抵抗であろうと察したのか、妖怪は醜悪な笑みを浮かべた。

 

「ゲッ!ギャッギャッギャッ!!」

 

「くっ……」

 

 余裕な表情で再び襲撃の構えをとる妖怪。

 対し、慧音は痛みを堪え、歯噛みしながら妖怪を睨み続けた。

 そして妖怪は慧音たちに向け、咆哮を上げながら飛びかかる。

 

「ゴギャァァァァッッ!!」

 

「(この子だけでも守らなくては!!)」

 

 覚悟を決め、なんとかアキを守ろうとする慧音。

 その姿はまさに守護者。大切な存在を護らんと誇り高い背中があった。

 だが、妖怪にそんなものは関係ない。ただ加虐心と食欲を満たすべく、その背中にその爪を振り下ろそうとする。

 この場にいる誰もが…慧音ですらも、引き裂かれるだろうと思った……思ったのだが…。

 

 

 

「…………?」

 

 

 全く攻撃がこないことに不思議に思う慧音。

 彼女が妖怪の方を振り向くと……そこにはとんでもない光景が映っていた。

 

「な………」

 

 想像もしていなかった事態に言葉を失ってしまう慧音。

 それもそうだろう。彼女の目の前には――

 

「つ……()()()()……?」

 

 そう…そこにいたのは綱吉の姿。

 しかも、振り下ろされた妖怪の屈強な腕を、その腕で()()()()()()という…いつものひ弱そうでドジな綱吉からは考えられない光景がそこにはあった。

 今の綱吉の顔は、ぽわぽわと優しい顔から一転、眉間にしわを寄せた荒々しい顔つきだ。そして、妖怪の腕を強く握り締めながら雄叫びを上げた。

 

 

(リッ)……(ボーン)ッッッ!!!」

 

 

 綱吉の額から(オレンジ)色の炎が灯る。

 ついでに服も弾け飛ぶ。

 彼の後ろには傷ついた慧音と恐怖に支配されたアキの姿。

 綱吉はそんな二人の壁になるかのごとく、妖怪の前に立ちはだかる。

 

「死ぬ気で……」

 

 透き通った橙色の眼は妖怪を燃やし尽くす勢いで見抜く。

 そのあまりの迫力に妖怪は先程までの余裕な表情から一転、わずかながら恐怖の色が浮かばせながら何とか綱吉の腕を振り解いて後退した。

 対する綱吉はその拳を握り締め、限りなく強い決意を表明する。

 

 

「死ぬ気で二人を守るっっ!!!」

 

 

 言葉に乗せ森中に轟く、綱吉の覚悟の源(誓い)

 この時、慧音は己よりも小さいその背中に……どこまでも広く暖かい“大空”を見た。

 

 

 




おはようございます味噌漬けです。いつもご感想ありがとうございます。感想書いていただく度に執筆意欲が湧いていきます。
歳をとって再認識した死ぬ気モードの格好良さ。ある意味ハイパーより好きかもしんない。
今日の自己紹介コーナーの後には自問自答コーナーも設けてありますのでどうぞ。

【キャラ紹介】

《沢田綱吉》
 年齢…16歳
 属性…大空

 今回、とうとう死ぬ気化した。幻想郷の問題に深入りするつもりはなかったが、守りたい者のためならば、それでも最後の1錠を迷わずに飲む。普段はヘタレな綱吉だが、その死ぬ気の覚悟は本物であり、それを持って幾度も危機を乗り越えてきた。今回もまた眉間に皺を寄せ、祈るように拳を振るうだろう。大切な人を、大好きな日常を守るために。

《上白沢慧音》
 年齢不詳 
 種族…半人半獣
 能力…歴史を食べる(隠す)程度の能力(人間時)
 属性…霧

  何気にアキを庇いながら十数体の妖怪相手に無双した実力者。
アキを見捨てれば割と余裕で勝てたが、それでも人間を護る選択をした彼女はまさに英雄で守護者としての誇りを守ったのである。
突然服が弾け飛んだ綱吉を見て、呆気に取られるも、本来自分が守るべきその小さな背中に頼もしさを感じてしまった。

《アキ》
 年齢…6歳
 種族…人間

 やらかしおった女の子。
 母親の病状が悪化し、医者にかかるお金がないことも自覚していた彼女は子供ながらに何とかしようと薬草を取りに行った。

《アキママ》
年齢…30歳
種族…人間

アキの母親。母親としての危険察知と言うべきか、アキが消えた際はそのいつ倒れてもおかしくない身体を引きづって彼女を探しに出た。
アキを寺子屋に行かせているのは、別に教育云々ではなく自分の身に何かあった場合、頼れる誰かを作ってほしいという親心からである。

【自問自答コーナー】

なんで死ぬ気モードなの?…好きだから。

 なんでツナは叫んだの?…ノリ。

なんで脱皮する原作式じゃなくて、アニメ式の服が弾け飛ぶバージョンにしたの?…ほぼノリ。後、自分の中で死ぬ気モードはアニメの印象が強くて、正直そっちの方が好みだから。この辺はアニメ設定優先ということで。

慧音が相手した妖怪ってそんなに強い?…そんなに強くはない。良くも悪くもパワーしか能がない。平常時の慧音なら余裕で完封できる。ただ今回は珍しく知恵を振り絞ったようで…。
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