ブラボの狩人が異世界召喚されたら〜? みたいな。他にもそんな作品あるかと思いますが、ゆるーく書いていきます。
いつまで明けない夜に浮かぶのは大きな月と、夥しい血と獣の匂いが充満するそこは、ヤーナム市街。
そしてその獣を狩るのは狩人と呼ばれる市街の元住人たち。
しかしいつしか獣を狩り続ける狩人達はその多量に浴びる血に酔い、獣を殺すことに快楽を覚え、最早血を浴びる為に罪の無い人々に手を掛ける輩も現れた。
そしてそこに現れたのは夢を見る狩人。
彼はそのヤーナム市街にてとある一つの目的のために来ていた。
「▆▅▄▃▄▅▃▇█ッ!!」
それは苦しみか、発狂か。耳を劈く奇声を上げる獣と成り果てた一人の聖職者。
それは現れた狩人に襲い掛かり、巨体による凄まじい力と連撃によって狩人を容赦なく吹き飛ばす。
「無理無理無理ッ!? はぁーっはぁーっ! やっぱり勝てねえ! なんなんだよコイツ!」
彼はこれと言った記憶は無く、なんとなくいつ書いたのかも分からない自筆で書かれたメモにあった『青ざめた血』を求めて此処にきた狩人。
そして彼は現在、恐れ多きヤーナム市街を必死に駆け抜け、聖職者の獣と対峙していた。
大きな腕に吹き飛ばされるは、叩き潰されるはで、血が異常な程の速さで失われていき、その度に輸血液の入った袋に付いている針を勢いよく太腿に突き刺す。
彼は一応『二周目』という記憶だけを頼りに、右手にはガスによって超圧縮された機構を凄まじい反動と火花で爆発的に放出する武器"パイルハンマー"を持ち。
左手には獣を狩る為だけに作られた水銀に血を練り込ませた水銀弾が充填された"獣狩りの短銃"を持っていた。
しかしそんな浪漫を感じさせるような威力は愚か、聖職者の獣と戦うのはこれが二回目だというのに、苦戦を強いられていた。
前ローリングやサイドステップで獣の攻撃を避けるも避けるも、相手の圧倒的なリーチの差をなかなか掴めず、離れすぎてしまい巨大な腕によって吹き飛ばされる。
輸血液で何度回復してもその数に限りはあり、物の数分で使い果たし、水銀弾も残り僅か。
「たしかコイツは頭に二発、頭に二発……当たれえぇい!」
その巨体には似合わぬ俊敏な動きで狩人を翻弄する獣は、狩人が狙う頭部をなかなか見せてはくれず、上手い当て方も知らない狩人はがむしゃらに銃を撃つ。
ただ獣に勝てないと恐れても、まぐれはあるものだ。
最後の一発を発射した狩人の水銀弾は獣の額に直撃し、その反動でついに獣は膝から一気に体勢を崩し頭を垂れる。
「今だッ! いっけええええ!」
普通の狩人なら此処で獣の眼球と脳を抉り出す内臓攻撃を繰り出す物だが、彼は浪漫を求めるあまりかパイルハンマーを変形させてから、思い切り振りかぶる。
「正義のパイルハンマアァァァッ!」
そこから放たれるは、ガスと火薬が入り混じった破壊的な一撃。まさに片腕が吹っ飛びかねないその反動は、大砲のような轟音とも対象を吹き飛ばす。
のが想定の景色。
実際は、あまりにも大袈裟なモーションによる攻撃の出の遅さによって獣は既に立ち上がり、パイルハンマーは空に向かって快撃を繰り出すのだった。
そしてその直後、死を覚悟したのは狩人の方だった。
同じく大袈裟に振りかぶった獣の両腕は、狩人を真上から容赦なく叩き潰し、狩人は一撃で肉塊と化す。
すぐに狩人は目を覚ます。そこは華やかも儚くも感じさせる白い花が満開に咲き誇る花畑と、その儚さを一層強める多くの墓。
そして目線を上に向ければ見えるのは古びた工房。
ここは狩人の夢。狩人に実質な死は無く、必ずこの夢で目覚め、狩人は墓石の前で現実でまた目を覚ますのである。
そして毎度のことながらその狩人を迎えるのは、美しく整った色白の肌と、淡く輝く銀色の髪を持つ人形。
それに生気などは感じられず、それでもまるで命があるかのように思わせる動きをする。
その姿と動きは狩人の見えざるものが見えてしまった狂気なのか。あるいは本当にこの人形に魂が宿っているのかは、知る由もない。
「お帰りなさいませ狩人様。何か御用がありましたら、なんなりと申し付け下さい……」
「人形ちゃあん……またやられちまったよ……」
狩人が人形に向かって事の嘆きを伝えても人形の表情は変わらず、無言で。心無しか優しく微笑むのみ。
そこに感情は無いと狩人も分かりきったことではあるが、それでも獣狩りの夜で確実に擦り減っていく狩人の心は少しだけ安らぐ。
そこで狩人はふと工房に入ると、そこにいつもいる車椅子に乗ったゲールマンと呼ばれる狩人と同じ姿をした老人が静かに口を開く。
「狩りは順調かね? もしなかなか進まず、なんども夢に戻ってしまうのなら狩人呼びの鐘を鳴らすと良い。
そうすれば、この夢と繋がる異界にいる他の狩人が君を助けてくれるだろう。その鐘で、異界に響く小さな鐘の音を探すのだ」
「やっぱりそれしか無いんですかねえ……。一回目は全部それで踏破したんですけど。やっぱり一人でやりたいという欲が……」
そう狩人はゲールマンに苦言を漏らすが、ゲールマンはただ苦笑するだけで以降は何も答えてくれなかった。
狩人呼びの鐘。それは鳴らすことで別の世界で同じく狩りをする狩人が鳴らす小さな鐘の音に共鳴し、呼びの鐘は狩人を呼び込み。小さな鐘は共鳴した呼び鐘の元に入れるという代物。
だから狩りが上手くいかない場合は、呼び鐘を鳴らすと良い。
狩人は二周目ならという小さな希望で立ち向かったが、ベテランでも無い彼には難しい物だった。
だから彼はやっぱり諦める。墓石の前で屈む事でもう一度ヤーナム市街で目を覚ませば、ポケットから狩人呼びの鐘を取り出し、軽く揺らすことで小さくも甲高い金属音が周囲に響き渡る。
「あ〜誰か手伝ってくれる狩人なんているのかな〜。しかもこれ二周目じゃん? 100レベル超えてて、ヤーナム市街で共鳴する訳が……」
とため息を吐きながら音を探していると、どこからとも無く小さな鐘の音が響く。しかしその音は共鳴する小さな鐘の方ではなく、呼び鐘の方で、狩人は慌てて別れの空砲を撃とうと、専用の銃を取り出す。
「え!? なんで呼び鐘に共鳴するんだ!? いや待て待て待て。俺は向こうを手伝う気は……あ、間に合わ……」
が、それ虚しく。狩人の視界は白く霞んで行く。
そして次に目を覚ます場所は、夜のヤーナム市街ではなく。どこか見知らぬ建物の路地裏だった。
「え!? 此処どこ!?」
「ぇ……誰?」
「召喚か! でも無駄だゴラァァ!」
見知らぬ建物、見知らぬ空、そして見知らぬ人。召喚されるや否や、鬼のような形相で殴り掛かっている男に対して、咄嗟の判断か、いつもの慣れか。
男の振り下ろす拳の挙動に合わせて獣狩りの短銃を撃つ。
「がはっ!? あ……?」
突然のことに男は膝から体勢を崩したので狩人は、勢いよく素手で男の腹を抉り、臓物を外側で撒き散らす。
それは大量の血を吐き出し、一瞬にして返り血が狩人の全身を染めた。
「ええぇ? え? え? なに!?」
そしてその一部始終を背後から見ていた年行かない少女は、思いっきり悲鳴を上げた。
「ひ、人殺しいいいい!!」
「えええええええ!?」