フリューゲル・エクス・マキナ   作:AIに超克される程度の雑魚

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第1話

 首狩族と名高い最強種、フリューゲル。

 高い身体能力と魔法適正を持ち半永久的に活動し続ける事が可能な『自律術式』として『最強という概念』によって創造された神殺しの生物兵器。

「天撃」と呼ばれる技を始めとした様々な特殊能力を保有し、並みいる種族の大半を単体で凌駕する程のチートスペックを保有している大量殺戮兵器群。

 種族単位で首の収集を行っており、それらに等級を付けて自慢し合うことをコミュニケーションとする異常者の集団でもある。

 

 そんな超越的気違い種族の一員であるシェムトは、彼女らフリューゲルが住みかとする浮遊島──幻想種アヴァントヘイムの上空で黄昏ていた。

「うーん。首が足りないですぅ。この際レア度は気にしないから、誰かくれる人いないかなぁ」

 彼女は可愛らしい声で呟いて、対照的な冷めきった視線を遥か下方の地上に向ける。

 無駄な徒労だが。

 

 普通に考えてそんな酔狂者がいるわけない。

 そもそも彼女がどうして首を欲しているのか皆目見当もつかないが、フリューゲル内で彼女の戦績があまり芳しくない事は確かだ。

 

 全ては偉大なるアルトシュ様のため。

 神霊種の奉仕種族にすぎない彼女にとって、自身の貢献度の低さは死活問題に繋がるものだった。

 

「むぅ、やっぱり見つからない」

 警戒心もなく地上にノコノコ顔を出すような愚行は貧弱な猿でも犯さない。

 かといって、闇雲に探し回っても直ぐに気付かれて逃げられるだけ。

「ぶっちゃけ詰んでるのですぅ」

 彼女は溜め息を吐いて空を見上げた。

 

敵を殺せない兵器に存在価値はない。

ドワーフ八名、エルフ二名、猿十三名、吸血種一名。

シェムトが製造されてから今に至るまで集めた首の数だ。

この程度の戦績で自身の価値を誇れる程シェムトは能天気でなければ恥知らずでもなく、けれど現状を覆せる程──自身の存在価値を証明できる程、状況に恵まれているわけでもなかった。

誕生してから三十年、一向に戦績が上がらないという事実も彼女の焦りに拍車をかけていた。

 

「私も覚悟を決めるか」

口調が変わる。無理のあるキャラ付けとわざとらしい口癖が鳴りを潜める。

真剣な声色で覚悟を決めたような顔でシェムトは思案する。

「一先ず目指すは合計レア十。地上に降りるか」

このままアヴァントヘイムの上空で悩んでいても状況は好転しない。幾ら戦績が上がらないといえど消去される事はないが、戦略に起用される機会は格段に落ちるだろう事は想像に難くない。

そして、神殺兵器として製作されたフリューゲルが戦えないのは鳥に翼が無いのと同じこと。

 役立たずの無能、意味のないガラクタ、フリューゲルの恥さらし。呼ばれたことはないが、きっと誰もが否定しない。否、出来ない。

フリューゲルであるならば、そろそろ腹を括る頃だ。

「逃げたら逃げたで地の果てまで追ってやる。エルフがなんだ、ドワーフがなんだ、そんな奴ら歯牙にもかけず葬ってやる。私の屍はきっと誰かが拾ってくれるさ。神にだって臆するものか、ドラゴニアすら屠ってやる」

シェムトは固く決意する。

妥協はしない、この身朽ち果てても殺し続けると。

目標は立てたが端から達成出来るとは思っていない。

そんな力があれば、こんな無様な状態に陥ったりなどするわけがないのだから。

けれどもシェムトは躊躇うことなく今生の別れと覚悟を決めて宙に飛び上がると、高高度に位置するアヴァントヘイムから遥か下方の地上目掛けて滑空した。

 

 

同族の注目を集めることはなく、平穏無事に地上に降り立ったシェムトは、アヴァントヘイム直下に広がる荒れ果てた大地を超えて南西に向けて飛翔する。

容赦なく吹き付ける熱風、煩わしく淀んだ大気、眼下に広がるは不毛の大地。

生命活動の証し足りえる精霊反応は一切関知できず、大量のクレーターがすり鉢状の底面をグツグツと泡立たせている高温地帯。

フリューゲルであるシェムトにとっては無いに等しい誤差でも、貧弱なエルフは勿論のこと、ドワーフですら直面すれば生存困難に陥る事は一目瞭然に違いない環境異常。真っ当な生き物が訪れる事などあり得ない魔境。

例外的に機鎧種や酔狂な猿がいるかもしれないが、前者は常に集団で行動するから対処が面倒で、しかも此方の技を模倣して学習と成長を繰り返す悪質な種族なので余り相手をしたくないし、後者は弱すぎて手柄にならない。そもそも猿の首はどうすれば自慢になるのかすら見当もつかないほどレア度が低い。

「どうしてドワーフの一匹もいないのです?公害上等の環境破壊兵器は何処にいったのです?雑魚のエルフはこの惨状だから逃げ出しちゃったのは仕方がないですけど、公害モグラが逃げる理由はない筈なのです。一々地面に穴掘って、必死に役立たずのガラクタ兵器を造ってるだけの引きこもり種族風情はこの私に奉仕するくらいが丁度良いのです。そもそも、速やかに参上して首を差し出せないとか下等種族として終わってるのです。もしかしてドワーフって雑魚の癖にフリューゲルを舐めちゃってるのですぅ?」

 

シェムトは目をぐるぐると回して半開きの口から際限なく戯れ言を垂れ流しながら空を飛ぶ。

飛べども飛べども誰一人索敵に引っ掛からない事実にパニックを起こして精霊の制御が一部乱れる。

頭上の光輪だけでなく全身に張り巡らされた精霊回廊すらも忙しなく明滅を繰り返す。

輝きながら亜音速の一歩手前くらいの速度で前進するシェムトの姿は地上であれば一筋の流星に見えたかもしれない。

燦然たる日の光は宙を舞う粉塵に妨げられて、雄大なる空は何処までも黒く染め上げられていた。

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