RE:D Cherish!-Lost Crusade- 作:名無しのサイボーグさん
「まだ二話でしょう。そのテンション、うざいです」
「いいじゃないか。話が続くのは良いことだ」
「そういうものでしょうか」
「……で、なんでお前逹は私の部屋に来たんだ?雪光もユニカも自分の部屋があるだろ?」
「実は……」
桜子さんの当然の疑問に対し、雪光が事情を説明していく。
「……というわけで、折衷案で桜子の部屋で話し合うことになった」
「ふむふむ、なるほど……なわけあるか!どこにも折衷要素がないだろうが!」
雪光の説明を聞き終えた桜子さんは抗議の声を上げる。人の部屋を勝手に話し合いの場所にされたから、当然の反応である。
「それにしても小汚い部屋ですわね。しかも椅子がありませんわ」
「小汚いは余計だ。後、座る場所は目の前にあるだろ」
金髪の少女の文句に対し、桜子さんはオレが胡座をかいている畳と座布団が敷設された炬燵を指差す。それを見た彼女は心底嫌そうな表情をする。
「ええぇ、そこのびっくり人間のように地べたに座るなんてイヤですわ」
「……失礼だな。後、地べたではなく畳と座布団の上だ」
日本では靴を脱いで家に上がるのがマナーだったからな。日本の和の
それに、国よっては本当に地べたに座る場所もあるのだ。それと比べれば、しっかりとした敷物がある日本は美意識が高い。
「は?どう見ても地べたでしょう?来客の為にソファーを用意しておくのは最低限のマナーでなくて?」
「おい雪光、こいつ今日本の文化をバカにしたぞ。指摘されても勘違いを正せない小娘に、日本の作法をじっくり教えてやれ」
「ああ、了解だ」
桜子さんの要請に雪光は二つ返事で頷くと、腰に携えてあった機械パーツで構成された刀にゆっくりと手を掛ける。明らかなOHANASHIを前に金髪の少女は冷や汗を流し始める。
「く、口が滑りましたわ!床に座るのも意外と悪くない文化ですわねっ」
金髪少女はそう弁明すると、素早い動きで空いていた座布団の上へと座る。日本文化のOHANASHIをちらつかせた二人にオレは呆れるも、口には出さずに不味い茶を啜る。
「あら、お茶がありますの?でしたらわたしにも淹れてくださいな」
「飲んでもいいがクソ不味いぞ。期限が先週で切れてたやつだし」
「……なんでそんなお茶をこの人は飲んでますの?」
「現実逃避」
この面倒な雰囲気となったことに対してな。全員が炬燵の前に座り(雪光はすぐ隣で)、ユニカであろう銀髪の少女が本題を切り出していく。
「それで、私に話ってなんですか?」
「用件をお伝えする前に、まずは自己紹介をさせていただきますわ。わたしの名前はルージュ・ウェントワース。プリムヴェールの準オーナーです」
ルージュと名乗った金髪の少女は優雅にそう挨拶する。プリムヴェールの準オーナー?そんな役職とかあったのか?
「準オーナーとは?」
「今はわたしの母、ベラドンナがプリムヴェールのオーナーですわ」
へー。プリムヴェールのオーナーの実の娘さんなのか、彼女は。つまり……
「自称か」
「自称と言わないでくださる!?母になにかあれば、わたしが新たなオーナーになるのは当然の流れですので!」
オレの溢した呟きに、ルージュは盛大に噛み付く。それを見た雪光は苦笑いし、銀髪の少女は呆れ、桜子さんは笑いを堪えている。
「……ごほんっ。ユニカさん、プリムヴェールはご存知かしら?」
「知ってますよ、当然でしょう。あそこは元々DDダイナーだったんですから」
「そう!あなたはあのお店の元オーナーですわ!」
?ユニカがDDダイナーの元オーナー?オーナーはルシオさんだった筈だが。
その疑問も、ユニカの次の言葉で解消される。
「オーナーは父ですけど」
父?つまり、ユニカはルシオさんの娘なのか?初耳だし全然似てないな、この娘。
「……あの、何で私のことをじろじろ見てるんですか?」
「……すまない。ルシオさんの娘と聞いてつい」
「あなたも父のことを知っているのですか?」
「……後で話す。今は彼女との話を進めてくれ」
オレはユニカにそう返してルージュとの対話を促す。二人が再び話し合う中、雪光がオレに小声で話しかける。
「お前もあの店を知っていたのか?」
「ああ。本当に美味しかった」
実際、彼処で食事するまでは必要な栄養素を取るだけの生活だったからな。美味しい食事は心が休まるものなんだと改めて知ったくらいだ。
そうしてオレは再び二人の会話に耳を傾ける。
「あの店はもうあなた逹のものでしょう?」
「ええ、その通りです。わたしは持てるもの、あなたは持たざるもの。その差は明白と言っていいでしょう!」
ルージュは胸を張ってユニカにそう告げるが、オレにはそれがどこか自分にも言い聞かせているように感じる。親の存在感が大きい故のプレッシャーからかもしれない。
「わざわざマウントしたくてここまで来たんですか?でしたら間に合ってます。さっさと帰れ、メス犬」
「メス犬はやめてくださる!?」
文面だけ取ればただのマウント取りなので、ユニカにはウザいの一言に尽きたようだが。
そんなメス犬呼ばわりされたルージュはめげることなく、言葉を続けていく。
「わたしは今日、あなたにとってこの上なく魅力的な提案を持ってきたのです。そんなわたしを邪険にしていいとお思いですの?」
どうやらルージュはユニカに魅力的な提案をしに会いに来たようだ。本当に魅力的な提案かどうかは不明だが。
「何ですか、魅力的な提案って」
「それをお話しする前に、まずはテストをさせていただきます」
「はあ?」
「聞いた話によると、あなたのお父様は三ツ星レストランのシェフも顔負けのサイバーフードを作れたとか。何でも構いませんわ、あなたが一番得意なものを作ってちょうだい。あなたの料理の腕を見てから話すかどうか判断します」
……何となく察したよ。要はスカウトというわけか。
「なるほど、そういうことですか」
「理解が早くて助かります。ではユニカさん、さっそくお願いしますわ」
「イヤです」
「ふふ、何が出てくるか楽しみです……ってイヤ!?イヤってどういうことですの!?」
予想とは違うユニカの返答に、どんな料理が出るか楽しみにしていたルージュはすっ頓狂な声を上げる。まるでコントだな。
「何で私があなたに料理を作らないといけないんですか」
「テストですもの、当然でしょう?」
「イヤです」
「ど、どうしてですの?」
「勝手に押し掛けてきて『今からテストします』とかいう上から目線のブロンド女に作る料理などありません」
この上ない正論だな。まあ、ルージュの方にもそれなりの打算と思惑があるからかもしれないが。
「なっ、なんて生意気な子なんですの……!」
「お互い様じゃないですかね」
「いいから作りなさい!」
「イヤで~す」
作れ、イヤの応酬で話は平行線。どっちも折れる気配はない。そんな状況を打破しようとしたのか、ルージュの顔がオレと雪光の方へと向いた。
「ちょっとそこの二人、この頑固頭の小娘を何とかなさいな!」
「何で俺が……?」
「……初対面で図々しい」
雪光はまだしも、オレは完全に初対面なんだぞ。執り成して素直に聞いてくれる保証はどこにもないぞ。
オレのそんな雰囲気を察してか、双方に面識のある雪光が仲裁へと入った。
「なあユニカ、作ってあげたらいいんじゃないか?」
「イヤです」
「そんなこと言わないでさ。これでいいよって条件くらい出してあげたらどうだ?」
「……どうしてもって言うならお金を払ってください」
雪光が提示した妥協案に、ユニカはしぶしぶながら条件を出した。そして、ルージュの方へと顔を向ける。
「私に向かって偉そうなことを言うくらいですから、さぞ金額もはずんでくれるんでしょうね」
「あら、お金が欲しかったんですの?言ってくださればすぐにお支払いしたのに。ユニカさん、決済コードを教えてくださいな」
ユニカの暗な嫌みに気付くことなく、ルージュはお金を支払う為に決済コードを教えるよう告げる。そうしてユニカに支払われた金額は……
「……ちょっ、10万チェリーですか!?」
「それだけあれば大抵の食材は手に入るでしょう?」
10万チェリーも手元に入ったことに驚くユニカに、ルージュは大した出費ではないといった様子で平然と告げる。
大方、はした金であったなら散々弄った挙げ句断るつもりだったのだろう。だが、一回の食事に対しての十分すぎる金額を前にその目論見は崩れてしまったようだ。
「……アテが外れたな」
「ん?……ああ、そういうことか」
オレの呟きに雪光が一瞬首を傾げるも、すぐに察してか肩を竦める。雪光はそのままユニカへと話しかける。
「ユニカ、これはもう作るしかないな」
「ぐぬぬぬ……何だか嵌められた気がします」
悔しげに唸り声を上げるユニカだが、十分すぎるお金を貰ってしまった手前、断ることができなくなったようだ。
「ついでに私の分も作ってくれ」
「じゃあ俺も頼もうかな。ガイもどうだ?」
「……いい。厚かましい」
雪光の提案にオレはそう返す。さすがに初対面の相手にご飯を作れはいくら何でも厚かましすぎるからな。
「ガイさん以外は本当に図々しいですね……まあ、どうせ三人でも四人でも同じです」
「……すまない」
注文してきた三人分だけでなく、オレの分まで用意してくれることにオレは軽く頭を下げる。
「いえ、別に。あなたは何も悪くありませんから」
「ガイへの対応が俺逹と違うんだが……」
「そう思うなら、もっと遠慮してください」
雪光の呟きにユニカは冷めた視線と共に言葉を返す。妥当な対応である。
「ユニカさん、お願いしますわ」
「はいはい、わかりましたよっ」
ユニカは不承不承といった感じで炬燵から上がり、キッチンの方へと向かっていく。ユニカの料理が出来上がるまで少し時間が掛かるため、必然的に残りの四人で会話をすることとなる。
「そういえばガイはどうしてエリューテリアに?」
「……あちこちを放浪しているだけだ。行く先で仕事を受け、終わったらまた放浪する。それだけだ」
そう。オレは行く宛も帰る場所もなく、ただ流されるままにあちこちを行き来しているだけだ。かつて居た場所は、内臓が機械になったという理由だけで追い出されたのだから。
「なあ、ガイ。その放浪はバイクで行っているのか?」
「……ああ。ここにも、バイクで来た」
「じゃあ、外に停まっていたあのバイク……ガイのバイクなのか?」
「……?スカイラビッツL2なら確かにオレのバイク―――」
「あなたが諸悪の根源だったのですね!!」
「……は?」
突然雪光との会話に怒りを露に割って入ってきたルージュにオレは意味が分からず目が点となる中、ルージュは鼻息を荒くしてオレを睨み付けてくる。
「おいおい。諸悪の根源ってどういう意味だ?」
「言葉通りの意味ですわ!そのバイクのせいで、この優雅で素晴らしいわたしがいない者として扱われたのですから!」
「……言いがかりか」
桜子さんの疑問にルージュが律儀に答えたことで、言いがかりと知ったオレは溜め息を吐く。それ、悪いのは完全に雪光とユニカの二人だけだろ。
「あれ?確か最近の乗り物は、電脳によるバイパスが必要じゃなかったか?」
「……端末とキーで起動するタイプに改造している。代償で自動操縦はできない」
サイボーグ化は基本的に脳を電脳に置き換えているが、オレは必要最低限のサイボーグ化だから脳はそのままだ。なので、ネットの閲覧や決済は端末を用いなければならない。一切不便に感じていないが。
「あなた、ちぐはぐですわね。サイボーグ手術を受けておきながら、電脳に置き換えていないなんて」
「……オレの意思じゃない。大怪我を負って目が覚めたら、そうなっていた」
ルージュの呆れにオレはそう返す。ある理由で内臓が破裂する大怪我を負い、利用目的で命を繋ぎ止める為のサイボーグ手術を施さしたにも関わらず、やっぱり不都合だからと追い出した。サイボーグ手術も追放も、全部向こうの都合だ。
「あ……すいません。今のは出過ぎた発言でしたわ」
「……いい。慣れている」
どこか申し訳なさそうに謝罪したルージュにオレは気にしていないと返す。実際、どこでも似たような反応をされたからな。
「一応の知り合いとしては、どこかで腰を下ろしてほしいんだがな。何れくらい滞在する予定なんだ?」
「一週間……もしくは一月程度」
桜子さんの質問にオレはそう答える。桜子さんなりにオレの事を心配してくれているのは分かるが、どこかに腰を下ろすのは無理だ。だってオレは、
「そうか。なら、しばらく空き部屋を貸してやる。宿泊代は当然戴くけどな♪」
「……どうも」
桜子さんの提案にオレは会釈して返す。治安の悪い安宿でも構わないが、せっかくの提案を無理に断る理由もないからだ。
そうこう話している内に料理を作り終えたのか、ユニカが出来上がった料理を順次炬燵の上へと並べていった。
「お待たせしました。ホロサーモンのグリル、ライスとミソスープ添えです」
「やったぁ、日本食だ~!」
日本の純和食料理に桜子さんは満面の笑み、雪光は声にこそ出していないが口元が緩んでいる。桜子さんはもちろん、雪光も名前の羅列からして日本人だろうから、日本食は大歓迎なのだろう。
「……意外だな」
「意外って何がですか?」
「どうせ日本食が出たことに対してだろ」
「ああ、そういうことですか。桜子さんからよくオーダーされるので覚えただけです。本当に言葉数が足りないですね」
桜子さんの説明で意味を理解したユニカは呆れた表情をする。そんな中、出された日本食にルージュは少し不満げだった。
「日本食でしたらスシにしてくれればいいのに」
「……勉強不足だ。スシは厳選な衛生管理と保存で始めて実現する」
スシもそうだが、日本の生食文化は徹底した安全管理の下で始めて実現可能となっている。生卵を食するのも、同様の理由からだ。
そんなオレの指摘にユニカは頷く。
「その通りです。スシは新鮮なサイバーフィッシュじゃないと作れません」
「しかし意外だな。ガイが寿司に対しての知識を持っていたなんてな」
「……不向きのサイバーフィッシュでスシを握っていた店があった」
「「「ああ……」」」
オレの言葉に雪光、ユニカ、桜子さんは納得したように頷く。サイバーフィッシュにもスシに向き不向きの種類もいる。それを知らずにスシを作るエセ料理人も存在するから、変なイメージが出てきてしまうのだ。
そんなこんなで、オレ達はユニカが作った日本食を食べたのだが……
「……美味い」
ホロサーモンの旨みがしっかりと活かされている事に、オレは素直に感想を溢す。少々塩辛い気もするが、この程度なら許容範囲内だ。むしろライス―――白ご飯との相性が良い。
「……うっまっ!」
「うんうん。これぞ正に日本食だぁ!!」
日本人の雪光と桜子さんも笑みを浮かべて掻き込むように食べていく。そして、雪光は何を思ったのか、満面の笑みを浮かべてユニカの方へと顔を向ける。
「……ユニカ」
「何ですか、雪光さん」
「君は将来、いいお嫁さんになれる!!」
「い、いきなり何を言ってるんですか、冗談はやめてください!」
「冗談なんかじゃない。ユニカ、キミは日本の一流サイバーフード料亭の料理長にも匹敵する程の腕前だ」
べた褒めだな。そんなにユニカが作った日本食が美味だったのか。
「……それ程なのか?」
「ああ。ガイも知っているだろうが、サイバーフードが最も苦手とするのは、“郷土料理”なんだ」
「……確かに。土地ごとに微妙な違いがあるからな」
「そうそう!外国の日本料理はどうしても違和感を感じるんだが、ユニカの料理にはそれが微塵もないんだ!」
「あ、ありがとう、ございます……」
世辞でも何でもなく、本当に純粋な雪光の評価に、ユニカは頬を赤らめながらもお礼を告げる。
「ああ、叶うなら俺の為に毎日作って欲しい……」
「おいおい雪光、それもうプロポーズだぜ~?」
「ユニカ、俺と結婚しよう」
「イヤです。無職と結婚する趣味はありません!」
「分かった。すぐ仕事を見つけてくる」
「いや結婚しませんからね?」
まるで夫婦漫才だとオレは思いつつ、会話に一切参加していないルージュの方へと視線を向ける。
「…………」
そのルージュは、黙々と日本食を食べていた。試しに手を翳して視線を遮るも、瞬き一つしない。どうやらあまりの美味しさに夢中になっているようだ。
「……驚きましたわ。うちのシェフよりも数段美味しい」
ルージュはそのまま日本食を完食すると、箸を置いて居住まいを正して未だ夫婦漫才のようなやり取りを続ける二人―――厳密にはユニカに向かって告げる。
「ユニカ・ラスペランツァ。あなたを私の店の料理長として雇い入れます!」
「……は?」
いきなりの雇用宣言に、ユニカは『なに言ってんだ?こいつ』と言いたげな鬱陶しげな視線を向けている。それに対して、ルージュは高らかに再度告げようとする。
「ですから、あなたを私の店の料理長として―――」
「お断りします」
「…………え?」
遮るようにルージュの申し出をバッサリと切り捨てたユニカ。申し出を断られたルージュは慌てたように問いかけていく。
「ど、どうしてですの!?」
「あなたに雇われる気はないです。そもそも他人の店で料理を作る気はありません」
「よ、よくお考えなさい!あの店の厨房に立つことができるのですよ!?」
「私が料理の腕を振る舞いたい場所はDDダイナーであって、プリムヴェールではありません」
取り付く島もないと言わんばかりにユニカは平然と告げる。その言葉には、絶対に譲れない一線だという意思がひしひしと伝わってくる。
「な、何故ですの!?給金ははずみますわよ!?」
「世の中にはお金に換えられない価値、というものがあります。私にとっての料理は、まさに“それ”です」
「むううぅっ、そんなのイヤです、イヤですわっ!なんとしてわたしのものにしたい~っ!」
ユニカの毅然とした態度に対し、ルージュは駄々っ子のように声を上げる。炬燵の中で足をばたつかせて迷惑なので、オレは溜め息混じりに彼女へと話しかける。
「……ルージュ、君にも譲れない一線というものがあるだろ?それを強引に曲げられて、君は納得できるのか?」
「それは、納得しませんが……」
「そもそもの話、自称準オーナーの君に店の料理長を決める権限があるのか?」
「ぎくっ……も、もちろんありますわっ。プリムヴェールは将来、わたしのものになります。その時には母の息がかかっているスタッフを全員解雇にして、新たに雇い直す予定ですので」
それってつまり……
「……店を乗っ取る気なのか?」
「中々鋭いですわね。ええ、近い内にプリムヴェールはわたしのものとなります。実の娘に店を乗っ取られた母がどんな顔をするのか、今から楽しみですわっ」
ルージュはあっさりとそう告げ、悪い笑みを浮かべて高らかに笑い始める。本当に分かりやすい娘だな。絶対親御さんにもバレてるだろ。
「こんなに分かりやすく悪事を企む人、初めて見ました」
「なあ、これどうする……?」
そんなルージュにユニカは呆れ、雪光は困った顔でオレと桜子さんの顔を見る。
「……放置でいい」
「そうだな。面白そうだから放置しよう」
「いいのか、それで」
オレと桜子さんの返答に雪光は呆れているが、問い詰めたらあっさりとバラすほど、ルージュは脇が甘い。あれでは先手を打たれて失敗に終わるだけだ。
「ベラドンナは銀幕の世界を生き抜いてきた大女優だ。こんな小娘にしてやられるタマじゃない」
「……そして、偉そうな態度で泣きつく」
「……その姿が簡単に想像できるな」
オレと桜子さんのもっともな意見に、雪光はルージュが威張った態度で泣きついてくる姿を想像したのか苦笑いしている。
「わたしの野望は始まったばかりですわ~っ!!」
負け確定の出来レースであることに微塵も気付くことなく、ルージュは決して来ない未来図を浮かべたように高らかに宣言するのであった。
「またあたしの出番はなしかよ!?」
「この分ですと、デスの登場はまだ先になりそうですわね」
「こうなったらまた屋上で―――」
「拝啓。お父さん、お母さん、また変態の従業員が―――」
「そのネタ止めろーっ!!」
「いや、先に走ったのは姐さんですからね?」
「うっせぇっ!オメェは黙って風穴開けてろっ!!」
「ひぇっ!?」