RE:D Cherish!-Lost Crusade- 作:名無しのサイボーグさん
―――雪光サイド
ここ数日、辺りを散策して生活圏内を調べたり、服や日用品を揃えたりしていた。それらも一段落したので、そろそろ本気で仕事を探さないといけないんだけど……
「どうしたものかな」
日本に帰ることが出来ない以上、このエリューテリアで新たな生活基盤を作らないといけないことは分かっている。にも関わらず、やる気が起きていないのが今の俺の現状だ。
「何もしないと暇なんだよね~」
眠くもないのにゴロゴロとベッドの上を転がり、怠惰を貪る俺は有り体に言ってもダメ人間だな。日本にいた頃はもっと勤勉だったんだけどな……
「せっかくだからユニカの冷やかしに行くか?いや、最近マジでストーカーじみてきたし……」
本当にどうしたものか。
「……ガイの方に顔を出すか。この時間なら屋上にいるだろうし」
一時的にこのアパートで寝泊まりを始めた住人に会いに行くことを決め、自室を出てアパートの屋上へと向かう。屋上の扉を開けると、ガイは片手で
「やあ。相変わらず精が出てるな」
「……習慣だ」
俺の挨拶にガイは本当に最低限でしか言葉を返さない。ギリギリ日課だと理解できるが、意味を紐解くのに苦労するよ。
サイボーグの肉体は基本的に衰えることはないが、生身の肉体は違う。使わなければ萎縮し、筋力も低下する。ガイは日雇いの労働や傭兵のような仕事をこなしているようなので、その根幹となる身体作りや鍛練を欠かせないのは理解できる。理解はできるが……
「完敗した身分としては、複雑だしなぁ……」
昨日、興味本意から桜子からの許可をもらってこの屋上でガイと軽く手合わせをした。さすがに武器を使うわけにはいかないので格闘で挑んだのだが、モノの数秒で地面に伏す結果となった。
「……合気道は有用だからな」
「護身術が殺人術にされてるのも複雑だけどな」
ガイの呟きにオレは肩を竦める。
合気道は小さな力で倍の体格を持つ相手ですら投げ飛ばさせる、由緒正しい日本の武術だ。それをフランスの護身術であるサバットを始めとした、複数の武術と組み合わせて使ってくるから余計にタチが悪い。例を上げるなら、投げ飛ばした後に顔面すれすれで震脚を叩き込んできたといった具合だ。
いや、あれは本当に肝が冷えたよ。避ける間も与えられなかったからな。
「しかし
そもそも剣は斬る為の武器ではなく、衝撃によろめいた隙に鎧の継ぎ目へと突き刺す為の武器だ。
代わりにかなり重く、サイボーグでも片手で振るうにはキツい。そんな重量武器を片手で平然と振るえるから、ガイの身体能力は相当高いのが窺える。
「……昔いた場所の都合だ」
「場所の都合って……どんな場所にいたんだ?」
「……首を斬ろうが、頭を押し潰そうが、ミンチにしようが五体満足で元通りになる存在を聖伐する場所」
「……は?」
ガイのその言葉に俺は目が点となる。
首を斬っても頭を押し潰しても元通りになるって……完全に化け物じゃないか。
「……ちなみにどんな見た目なんだ?」
「……姿形は人間と変わらない」
「さすがに冗談だよな?」
「…………」
ガ、ガイさん?どうして無言を貫くのカナ?冗談だよな?冗談だと言ってくれよ。
「……冗談だ」
だ、だよなぁ。さすがにそんな化け物がいたら、もっと話題に上がっているだろうし。聖伐という言葉は若干気にはなるが……冗談ゆえの言葉のあやだろう。
「そうだ。これから一緒に出かけないか?」
「……構わない」
こうして俺はガイと一緒に街の方へと向かうのであった。
―――ガイサイド
「……行き先は?」
「プリムヴェールだな。ルージュの様子が気になるし」
二人で出かけているのもあり、バイクではなく徒歩で街中を歩いていたオレは雪光の告げた行き先に肩を竦める。
先日のルージュはあの後、頑として首を縦に振らないユニカに根負けして帰っていった。去り際に『絶対に諦めませんわっ!』と捨て台詞を吐いたので、ある意味逞しいと感心したくらいだ。
「いってえなぁ……おいコラ、ぶつかっといて謝罪もナシかよ!」
「なになに?テメェ、ここでデスりたいの?」
そうしていると、通りの向こうから喧嘩腰の荒々しい声が聞こえてくる。エリューテリアではこういったいざこざは日常茶飯事なので、取り合うだけ無駄というものだ。わざわざ首を突っ込む必要性もないし。
「面白え、やったろうじゃねーか!―――ぐわああああああぁぁっ!?」
「なんだぁコイツ、イキッてたくせにザコっしょ」
最初に因縁をぶつけていたらしい相手は、啖呵を切ってすぐにボコボコにされたようだ。あの自信はどこから来たんだろうな。
「マック兄、どうする~?」
「ナメられても困るな。カタにはめておくか」
一緒にいたが手を出さなかった魚介類顔のサイボーグ二名はそう呟くと、喧嘩を売ってきた男を引きずってどこかへ連れて行こうとする。内容からして海の底に沈められるだろうが、自業自得だ。
「ちょっ……そこの人たちっ、オレを助けてくれ~っ」
ボコボコにされた男が誰かに助けを求めているが、オレには無関係の話だ。自分が蒔いた種を自分で片付けられないのに喧嘩を売ったんだからな。
「おいコラ、無視してんな!特にそっちのお前は知り合いだろうがっ」
「えっと……キミ、誰だっけ?」
男の呼び掛けに雪光が答えたので、オレもその場で立ち止まる。
「ブルータスだよ!ほらこの前、うちの姉さんと早撃ち勝負をした時に一緒にいた!」
……どうやらこのブルータスという男は雪光とは知り合いらしい。顔見知り程度のようだが。
「なになに?テメェら、コイツのフレンズ?」
「いや、違うよ?」
「……会ったことすらない」
メンチを切って睨んできた単眼サイボーグ男の言葉に、雪光は秒で否定する。オレは完全にとばっちりなので、もちろん関係を否定する。
「違うってさ~、スカ兄」
「チッ、じゃあさっさとエスケープってくれ」
「……そうさせてもらう」
スカ兄と呼ばれた男の言葉にオレは同意し、雪光も頷いて踵を返して立ち去ろうとする。しかし、それにブルータスは待ったをかける。
「待て待てっ、オレたち親友だろっ!?見捨てるなんてそんな安い関係じゃないよな!」
「お前は追い剥ぎで、俺はその被害者だったんだけど」
雪光のその一言でオレはこの二人の関係を察した。つまり、加害者と被害者の関係か。完全助ける義理はないな。
「いいのか?ここでオレを見捨てたら一万チェリーは永遠に返ってこないぞ!?」
「……手切れ金でいいだろ」
「そうだな。そう考えれば一万チェリーは安いもんだ」
「お願いだから見捨てないで!?」
ブルータスは涙目で訴えかけているが、犯罪者を庇う理由は一切ない。そもそも自分から売った喧嘩なんだから、最後まで自分で何とかしろ。
「お金借りてるんだ、じゃあフレンズだねぇ」
「ただのフカシじゃないのか?」
「面倒くせーよ、もうどっちでもいいんじゃね?コイツらもシメればいいだけの話っしょ。つーことで、そっちからエンブレムよろしく!」
……完全に巻き込まれたな。力づくで叩き潰してもいいが、そうなると後が面倒になる。なので、平和的な方法で解決することにする。
「……決済コードを教えろ」
「は?何で教えなきゃいけねぇんだよ?それより早くエンブレムを出せよ。バトるならエンブレムコールはマストっしょ」
「……迷惑料だ」
「ふーん……一応はわかってるみたいだな。いいぜ、特別に教えてやる」
単眼サイボーグは一先ず矛を治め、自身の決済コードを教える。オレは端末を操作して、その単眼サイボーグにお金を送金する。
「……え?300万チェリー?マジで?」
「……文句はない筈だ」
大金が振り込まれて目が丸くなっている単眼サイボーグにオレはそう返すと、間抜けな顔となっている雪光の腕を掴んで立ち去ろうとする。
「え?オレを助けてくれないの!?」
ブルータスが信じられないといった表情で叫んでいるが、オレはお前を助ける気は微塵もない。自業自得のケツを他人に拭かせようとするな。
「……は!?いーや待て。迷惑料としては全然足りねぇなあ?せめてこれの三倍は追加でもらわねぇとなあ?」
単眼サイボーグは我に返ったように言葉を発すると、更なる金銭を要求してくる。大方、サイボーグでない奴なら脅せば簡単に金を払うと高を括ったんだろうな。実際、因縁を付けられて大金を払ったし。
「……もう払う気はない」
「そーかい。じゃあ、痛い目を見てもらおうかあ……エンブレム極めんぞ!」
要求を却下すると、単眼サイボーグの言葉を皮切りに二人もポーズを取り始めた。
「俺たち新鮮イキがいい!」
「ザコは挟んで千切って磨り潰す!」
「今日のディナーは何だろな~!港で生きる海の男たち、その名も―――」
サイボーグ三名が呑気にポーズを決めて名乗っている間に、オレは付き合う必要もないのでそのまま背を向けて立ち去ろうとする。雪光はオレが立ち去ろうとしていることに微妙な表情となっていたが。
「ダニーオルカス……って、エンブレム無視して逃げようとしてるっ!?」
「テメェ、本当にいい度胸してるな!」
単眼サイボーグの怒声が飛ぶと同時に銃声が耳に届く。オレは振り向くことなく身体を捻って銃弾を躱し、間髪入れずに単眼サイボーグとの距離を詰める。
「な―――」
単眼サイボーグが驚きを露にしているのに構わず、奴の拳銃を持つ手首を掴み上げて身体を宙に舞わせる。上下が反対となって身動きが取れなくなった単眼サイボーグに、オレは中国拳法の一つである頂肘をそいつの腹へと叩き込んで黙らせた。
「……結局こうなるのか」
結局戦いになったことに雪光は溜め息を吐きながらも、自身の得物である
―――数十分後。
「いやあ~、本当に助かりましたよ!あざッス!」
顔が魚介類のサイボーグ三名をコテンパンにした後、ブルータスは調子良さげにオレと雪光の後に着いてきながら話しかけてきた。
「お前、調子がいいなぁ」
「……助けていない。後、300万はお前に請求する」
「…………え゛?」
オレの300万チェリーの支払い要求にブルータスは顔面蒼白で言葉を失い、雪光は御愁傷様と言いたげにブルータスに視線を送っている。
「いやいや。そのお金とオレは無関係ですよね!?」
「……闇市場で粗悪な身体と交換―――」
「分かりました。分割でお支払いします」
オレの脅しにブルータスは屈して分割支払いで300万を支払うと約束した。雪光は軽く引いていたが。
「にしてもびっくりしたッス。まさか銃を持った連中を倒すなんて。雪光のアニキは剣一つでですし、そちらのアニキは剣すら抜かずにステゴロですし。はっ、もしかしてサムライとニンジャッスか?」
「違う」
「まあ俺は日本人だからね。似たようなものかな」
ブルータスの勘違いにオレは即否定し、雪光は微妙な返答で言葉を返す。
「それはともかく……どうして俺たちのことを兄貴と呼ぶんだ?」
「チョー強くてカッコよかったからッス!特に雪光のアニキは惚れ直したッスから!」
借金持ちの男になつかれたか。雪光は色々と苦労しそうだな。何となく、女性に背中から刺されそうな気がするし。
「そうだ!助けてくれたお礼とお近づきのしるしで、今日はオレに何か奢らせてくださいよ!」
「……本音は?」
「媚びを売って利子は免除してくれたらと」
本当に調子がいい人物だことで。
「お前、追い剥ぎしてたのにそんなお金あるのか?」
「大丈夫ッス、オレはちゃんと働いてますから。金がないのは姉さんだけッス」
追い剥ぎ被害者である雪光の疑問に、ブルータスは働いているから大丈夫だと返す。働いているなら追い剥ぎする意味ないだろ。いや、その姉さんに連れられて一緒だっただけか。
「お前が働いているのに、何であの子は金欠なんだ?」
「オレからの金を受け取らないからッスよ。プライドが許さないみたいですし、ああ見えて姉さんはすっげー義理堅いッスから」
「子分の金には手を付けないけど、人から奪うのはOKなのか……?」
「……典型的な身内意識か」
「大体そんな感じッスかね。ええと……」
そういえば名乗ってなかったな。雪光たちとのファーストコンタクトと同じく。
「……ガイ・テスタメトだ」
「感謝するッス、ガイのアニキ。まあ、姉さんが何を考えているかはオレもよく分からないッスけど」
子分でさえ思考を把握していないのか。どうやら相当気難しい相手のようだ。
そんなわけで、ブルータスを連れてオレと雪光は当初の目的であるプリムヴェールへと訪れる。入口で身分証を要求されたのですぐに開示したら、あっさりと店内に入れたのには拍子抜けだったが。
「あら、いらっしゃい。雪光。ガイ」
「調子はどうだ、ルージュ。店の乗っ取りは順調か?」
出迎えたルージュに雪光が経過確認すると、ルージュは慌てた様子で雪光に詰め寄っていく。
「ちょっ……大きな声で言わないでくださる!?この店のスタッフはわたし以外全員、母の子飼いです。万が一にでも察知されたら困りますわ」
「……全員気づいていると思うが」
顔見知り程度だが、ルージュは本当に色々と抜けているのが分かっているので、むしろあれでバレてないと思えるのが不思議なくらいだ。
「そんなことはありませんわ。このわたしの完璧な計画に一寸の隙もありませんから」
……本当にその自信はどこから来るんだろうな。
「で?そちらはどうなんですの?仕事は見つかりまして?」
「まだだね」
「……一時的な滞在だ」
「つまり、どちらも無職なんですのね」
オレと雪光の返答にルージュは溜め息を吐いて呆れている。社会不適合者で悪かったな。直す気は微塵もないけど。
「うるさいぞ、客の就職事情なんてどうでもいいだろ」
「お客の懐具合を知っておくことは大切ですわ。それによってオススメする料理も変わりますしね」
「……支払いはコイツがする」
オレはそう言ってブルータスを指差す。高級料理の奢りを二人分なので、大したものにならないだろうが。
「ウッス、任せてくださいッス!」
「ふぅん…………水とアルギンアイスがせいぜいってところかしら」
ブルータスを見定めるようにじろじろと見ていたルージュは、水とデザートが限界だとはっきりと告げる。身分証には現在の職業も記載されてるから、本当に懐事情を把握した上でのオススメなのだろう。
そんなルージュの判断に、ブルータスは正面から突っかかった。
「待てよウェイトレス、金ならたんまり持ってるっつうの!」
「あら、そうですの。ではこのお店で一番高い料理でもいいかしら?」
「おうよ、何でも持ってこい!」
どこか悪どい笑みを浮かべるルージュの確認に、ブルータスは気づくことなくことなく言葉を返す。気を大きくしていたブルータスは、ルージュの次の言葉でピシリと硬直することとなった。
「でしたらオススメがありますわ。少し前に新鮮なコボルビーフのシャトーブリアンを入荷しましたの」
「えっ……?」
「コボルビーフはカルフォニア産のサイバー赤ワインがよく合いますわ。ご一緒にいかが?」
「ああ、じゃあそれを頼むよ」
「ちょちょっ、雪光のアニキ!ちょっと待ったぁっ!」
ルージュのオススメに雪光があっさりと注文した直後、ブルータスが大慌てで止めに入る。どうやら予算オーバーとなるサイバーフードのようだな。
「うん?どうしたんだ」
「どうしたじゃねえッスよ!今のコボルビーフのグラム単価、分かってるんスか!?そんなの頼んだらオレの一ヶ月の給料が丸ごと全部、吹き飛んじまうッス!」
給料一ヶ月分ね……二人だと二ヶ月分か。それは大慌てするな。
「あら、先程は何でも持ってこいとおっしゃったのに、もう前言撤回ですの?情けないこと」
「くっ、うぐぐぐ……」
ルージュの挑発にブルータスはプライドが刺激されたのか、唸り声を上げている。
……仕方ないか。
「……コボルビーフのステーキを頼む。支払いはオレがする」
「ガイのアニキっ!?さすがにそれは……」
「……徴収はする」
「やっぱり!?」
オレの言葉にブルータスは膝から崩れ落ちる。雪光は同情するようにブルータスを見つめているが、約束はしっかり守らないとな?神も嘘は嫌うだろうし。
「ふふ、無職のくせに無理して大丈夫なんですの?」
「……八桁だから問題ない」
ルージュが嫌みをぶつけてくるが、六千万以上の蓄えがあるので多少の贅沢は許容の範囲内だ。それに、しっかり取り立てるしな。
「八桁って……一千万以上持ってるってことッスか?」
「少なくとも折り返しくらいは持っていそうだな……」
オレの言葉を理解したブルータスと雪光はこそこそ話し合っているが、それを聞いたルージュはまるで獲物を見つめたような笑みを浮かべている。
「あら、そうなんですの。でしたら、カルフォニア産のサイバー赤ワインは当店一番のものでもよろしいでしょうか?」
「……構わない」
「お願いだから止めて!?オレの借金がどんどん膨らんでいく!」
「承りましたわ、それでは少々お待ちくださいな」
ブルータスの悲鳴を無視して注文を受け取ったルージュはオレ達に一礼すると、その場から立ち去っていくのであった。
―――雪光サイド
ガイの金で食べたコボルビーフのステーキと高級サイバー赤ワインは本当に美味しかった。きっと滅多に味わうことが出来ないものだな。
「うう……コボルビーフのステーキは本当に美味しかったッスけど、45万の追加の借金が……」
ブルータスもやけくそのように同じ料理を食べたが、その合計金額を見て絶句。例の300万と合わされば、合計345万の借金である。ガイの決済コードも教えられているので、借金の踏み倒しは不可能だ。
「……おっ?なんだ、ブルータスじゃねーか」
そんな意気消沈しているブルータスに、先日早撃ち勝負をした少女―――デスが気付いて近づいてきた。
「あん?なんで意気消沈してんだ?そっちのお前はどっかで見たことがあるな」
デスはそう言うとじろじろと俺のことを見る。この前会ったのにもう忘れかけられていることに苦笑いしつつ、俺は口を開く。
「この前、俺と早撃ち勝負をしたじゃないか」
「……あっ、思い出した!あん時のヤツか!」
俺の指摘で思い出したのか、デスは得心がいった表情となり、すぐに上機嫌で語りだしていく。
「あの金であたし、ハンバーガーメッチャ食ったぜ。いやー、久しぶりにいいもん食った!お前にも奢ってやったしな、ブルータス」
デスは上機嫌でブルータスに話しかけるも、ブルータスは多額の借金のダメージから未だに抜け出せずに落ち込んだままだ。そんなブルータスの態度にデスはたちまち不機嫌となっていく。
「……おい、ブルータス。あたしを無視するとはいい度胸じゃねえか!」
「アブチッ!?」
デスは不機嫌を露にブルータスを殴り飛ばすと、ブルータスは悲鳴を上げてそのまま撃沈する。
「チッ……気絶したか。一体何があったんだよ?」
「あー……端的に言えば、彼は345万の借金を負う羽目になった、かな」
「は?借金?どういう事だよ?」
デスが子細を求めてきたので、今日あった出来事を説明していく。
「なっ……ステーキを食っただと!?」
俺がガイの立て替えでコボルビーフのステーキを食べた事も話すと、適当な相槌を売っていたデスは鬼気迫る表情でまだ気絶しているブルータスへと詰め寄った。
「おいブルータス!今すぐステーキを吐け!そんであたしに食わせろ!」
「人が食べたのを食べるのか?」
「うっ……それもそうだな。じゃあ、あたしにもステーキを奢れ!」
俺の言葉に冷静になって無理だと知ると、デスは今まで蚊帳の外だったガイに詰め寄っていく。対するガイは呆れた顔である。
「……奢っていない。立て替えただけだ」
「ぐぬぬぬ……」
ガイの当然の返しにデスは悔しげに唸る。実際、欠片も奢っていなかったし。
「そーだ!金は後で返すから、あたしにもステーキを食わせろ!」
「……踏み倒す気満々のヤツに貸す金はない」
「何でバレてんだよ!?」
デスは信じられないといった様子で叫ぶが、今のは俺でも分かったからな。
「そんなに食べたかったら、普通に働いて金を稼いだらいいのに」
「は?あたしは人から命令されんのが大嫌いなんだ。なんであたしより弱えヤツの言うことを聞かなきゃいけねーんだよっ」
俺の呟きにデスは不機嫌を露に言葉を返す。そのタイミングで、ガイはボソリと呟く。
「……それが出来ないなら、どこかで野垂れ死ぬだけだ」
「あ?じゃあそういうお前はどうなんだよ?」
「……同じだ。どこにも定住せず、あちこちを行き来して危険に飛び込んでいるからな」
ガイはデスにそう返すと、そのまま一人で先に帰っていってしまう。その背中が一瞬、今の俺と被ったように見えたのであった。
「あたしの出番これだけかよ!?」
「まだいい方じゃないッスか!オレなんて借金持ちッスよ!」
「アンチヘイトのタグが活きてるなあ」
「他人事のように言わないで!?」