RE:D Cherish!-Lost Crusade-   作:名無しのサイボーグさん

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「ここからは体験版以降のお話ですね」
「ネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨しますわ」
「それでも良かったら読んでくれよな!」
「では、どうぞ!」


再興~始動

「……手頃なのがない」

 

オレはネットのサイトや店にある時代遅れの求人雑誌から仕事を探していたが、どれも微妙だったことに軽く肩を落とす。電子化が進んでペーパーニュースなどの紙ものがかなり少なくなっているが、未払いなどでネットが繋げられない人も一定数いる為、少数ながらも存続しているのだ。

 

閑話休題。

仕事をすると言っても、一時的な稼ぎの為なので長期的に続けるつもりはない。それに吸血鬼の領域に足を踏み入れた二人を観察する必要もある。なので、そこそこの手取りで融通が利きやすい仕事に的を絞っているのだが……どれも給料が低いか、勤務時間が難しいかのどちらかで決めあぐねていた。

 

「あら、こんな場所で会うとは珍しいですわね」

 

そんな感じで求人雑誌とにらめっこしていると、後ろから声を掛けられる。聞き覚えのある声だったのでオレはおもむろに振り返ると、そこにいたのはやはりルージュであった。

 

「……休日か」

「ええ。そちらは時代遅れの求人雑誌を手に持ってるようですけど」

「……期間延長」

「?……もしかして、滞在を延ばしたのでして?」

 

探るようなその言葉にオレはコクリと頷く。肯定されたルージュはどこか冷めたような感じの、呆れた眼差しとなった。

 

「本当に言葉が足りませんわね。意味を理解するのに苦労しましてよ」

「……必要な言葉は伝えている」

「必要最低限すぎますわよ。後、あなたも雪光と同じお金のあるニートに落ちたのですね」

「……穀潰しと同じではない」

 

ルージュのニート発言にオレは真っ向から反論する。

こっちは通常料金で家賃を払っているんだ。同じ日本人のよしみで格安で住ませてもらっている雪光と一緒にされるのは心外でしかない。

 

「そういえばその穀潰しの雪光はどうしたのでして?この一週間ほど、何の音沙汰もなかったのですが」

「……悪いものを食って寝たきりだった」

 

ルージュが雪光について聞いてきたので、オレは嘘を混ぜて答える。死亡確定の状態でDD-mod感染で生き返ったなど、普通に話せる内容ではない。帰ったら雪光達に口裏合わすように伝えないとな。

 

「あら、そうでしたの。でも、食あたり程度でしたらすぐに治るのではなくて」

「……節約の結果」

「つまり酷い安物を買って大外れを引いたのですね」

 

勝手に結論を出したルージュの雪光に対しての評価がどんどん下がっている気がするが、些細な問題だ。でも、深堀されるとどんどん面倒になっていくので、話題をすり替える事にする。

 

「……そっちはどうだ?」

「わたしの方ですか?ふふっ、よくぞ聞いてくれましたわ」

 

話を振られたルージュは悪巧みに成功したいうな得意げな表情となる。よし、話題の転換は成功だ。

 

「近々、計画を実行に移してプリムヴェールをわたしのものとします。その時に改めてユニカさんを料理長として勧誘いたしますわ」

 

本当に諦めが悪いと言うか、めげないと言うか。ユニカはDDダイナーを復活させてそこで料理を振る舞うのが夢なのだ。その夢の為に、不向きなウェイトレスのバイトを続けて借金を返済していると桜子さんから聞いている。

志は立派ではあるが、治安がすこぶる悪いエリューテリアでは通用しない箇所が多いのが桜子さんの評価だ。治安が比較的いい場所でも流れ弾が飛んでくるくらいなのだから。

 

「……ユニカは絶対に靡かない。後、どんな理屈で自分の店にするんだ?」

「ふふふ……店の権利書とマスターキーがわたしのものになれば、母も何もできないでしょう?」

 

オレの疑問にルージュは得意げな笑みで返す。

店の権利書とマスターキーを手に入れるだって?それはつまり……

 

「……犯罪行為」

 

オレは完全に窃盗に手を染めようとするルージュに呆れた視線を向ける。それに対してルージュは何故か余裕の態度を崩さない。

 

「知らないんですの?家族のいざこざに警察は介入できないのでしてよ」

 

確かに警察は民事不介入の場合が多いが、オレはそういうことが言いたいんじゃない。

 

「……従業員に訴えられればアウト」

「それも問題ありませんわ。その前に母の息がかかったスタッフは全員解雇するので」

「……不当解雇。後、権利書には所有者のサインがある筈」

「そちらも大丈夫ですわ。退職金は色をつけて渡しますし、権利書も紙ではなく電子ですから変更も容易いですわ」

「……公文書偽装。明らかな刑事案件」

「うぐっ……そ、それも大丈夫です。母は自身の経歴に傷がつくのは避けたいはずですから。……それが、あの人ですから

 

最後の方は小声だったせいで聞き取れなかったが、どちらにせよルージュの店の乗っ取り計画は穴だらけで成功率はお世辞にも高いとは言えなかった。この分なら頓挫してお叱りを受けるオチで終わるだろう。

 

「……怒られた後の愚痴くらいは聞く」

「失敗前提にするのは止めてくださる!?わたしのパーフェクトな計画に、失敗の二文字はありませんわ!!」

 

ルージュは憤慨しつつ威張るが、説得力は全然ないからな?後、本当に自己評価が高いな。その根拠の乏しい自信がどこから来るのか、一度聞いてみたいと思うのであった。

 

 

――――――

 

 

―――数日後。

 

「これよりDDダイナー再興の、作戦会議を行う!」

「わ~ぱちぱちぱち」

 

桜子さんの部屋で、雪光は声高に宣言し、ユニカが棒読みで囃し立てる。後から聞いた話だが、ユニカの借金は30%の高額利子で莫大な額になっていたそうだが、雪光が取り立てていた連中とOHANASHIしたことで利子は存在しないという事となり返済完了。そして、雪光はユニカの夢に本格的に協力することになったそうだ。

 

かなりグレーではあったが、利子の説明も金額の詳細も意図的に伝えなかった向こうにも問題があるし、ヘソクリで貯めていたお金も渡したのだ。なので、イーブンでいいだろう。

だからユニカの借金問題や雪光の助力は別にいいんだが、それとは別の問題がある。

 

「……呼ばれた理由が不明」

「そもそも会議は自分たちの部屋でやれ!なんで私の部屋に集まってくるんだ!?」

 

何故そのユニカの夢に無関係と言っていいオレと桜子さんまで巻き込まれているのかが、全くと言っていいほど分からない。雪光からほとんど一方的に桜子さんの部屋に来てくれと言われ、仕方なく来てこれなのだから本当に分からない。

 

「だって俺の部屋に行くのはイヤだってユニカが……」

「当然です。男の人の部屋で二人きりなんて、襲ってくれと言ってるも同然ですから」

「……偏見」

 

男の部屋で二人きり=性的襲撃の構図というユニカの発言にオレは半ば呆れる。いや、そういう仲と勘ぐられたくないと言われればそれまでだが。

 

「だったらユニカの部屋でやれ!」

「恋人でもない男を軽々しく部屋に上げろと?私は変態でも軽率な女でもないので絶対にしません」

 

桜子さんの真っ当な反論にユニカは澄まし顔で返す。その言葉、桜子さんにおもいっきり喧嘩を売っているからな?

 

「ほほう。つまり、私は変態で軽率な女ということか?ユニカ」

「え?……!ち、ちがっ……!」

 

絶対零度の眼差しとなった桜子さんの詰問に、ユニカは自身の失言に気づくも遅い。これが俗に言う後の祭りというやつか?

 

「純情乙女を気取ったクソガキにはキツい灸を据えないとな?具体的には、ここでお前のヴァージンが奪われるといった、な」

「奪うって、どうやって?」

「実は私の身体って股間に極太の息子スティックをエクステンドできるんだよね~。触感は人間の2048倍だ」

 

雪光の当然の疑問に対し、桜子さんは悪どい笑みを浮かべて詳細に説明する。オレはそれを聞き流しつつ、炬燵の上にある軽食をカフェオレ片手にかじっていく。

桜子さんの身体は全身サイボーグだからな。つまり、簡単かつ自由にいじり放題。男が持つアレも玩具ではなく生体パーツで装備可能だ。なので、冗談でも脅しでもなくガチである。

 

「そいつをユニカの下の穴に無理やりブチ込む!泣いて謝っても許してやらないからな!」

「ひいいぃっ、か、勘弁してくださいっ」

 

桜子さんのガチ発言にユニカは恐れ戦いたように身をすくませる。ある意味自業自得なので助けるつもりはない。

 

「痛いのは最初だけらしいぞ。だから頑張って耐えろよ、ユニカ」

「いや止めましょうよ!」

 

雪光とユニカのやり取りを無視し、オレは手持ちの端末で雪光の言葉が本当なのかを確認していく。

えーと……確かに痛いのは最初で……ん?ABで十分に濡れてないと……

 

「ガイさんも我関せずで無視しないでください!私のヴァージンが無惨に散る危機なんですよ!?」

「……ユニカ」

「な、なんですか?」

「……いきなり入ると相当痛いそうだ」

「私のヴァージンが桜子さんの手で散らされる前提!?」

 

ユニカが信じられないといった表情で叫ぶが、軽率な発言で桜子さんを怒らせたユニカが悪いからな。

 

「そうなのか?確かにそんな話もあったけど……」

「……ネット情報」

 

オレはそう言って端末に表示されている画面を雪光に見せる。対する雪光もフムフムといった様子で画面を覗いている。

 

「これ、学術的なやつだな。やっぱり濡れてないと中を傷付ける恐れがあるのか」

「いやいや、男二人してそんな話をしないでください!私のヴァージンが危機に瀕しているんですよ!?」

 

ユニカが赤裸々にツッコミを入れるが、オレは無関係だからな。雪光は知らんけど。

 

「……関係ない」

「俺はユニカの恋人じゃないからなぁ。部屋にも上げてもらえない男だし」

「ガイさんは情がないんですか!?雪光さんは私が言ったこと根に持ってますよね!?」

「うんまあ、少しだけ」

 

ユニカの抗議混じりの詰問に対しオレはカフェオレ飲みながら無言でスルー、雪光は軽く頷いて肯定する。

まあ、雪光は身を挺してユニカの為に戦ったようだから、多少の信用してほしいといった感じか。

 

「分かりましたよっ、雪光さんは今度私の部屋に招待しますから!だから私の貞操も守ってください!」

「よしわかった。ユニカの処女膜は俺が必ず守る」

「その言い方、すっごくイヤなんですけど……」

 

貞操の防衛を優先したユニカの発言に、雪光はすごくいい笑顔で処女膜を守ると宣言する。その宣言に要請したユニカはドン引きしていたが。

 

「では話も纏まったし、改めて作戦会議を始める!」

「ぱ、ぱちぱちぱち~」

「結局ここでやるんかい」

「……強制参加」

 

結局雪光とユニカのDDダイナー復活の作戦会議に巻き込まれ、オレは仕方なしで加わることとなった。

 

「まず始めに議題を整理しようか。DDダイナーを再興するにあたって障害となることはなんだ?」

「単純にお金がありません。へそくりだった百万チェリーもダニーオルカスに取られてしまったので。」

 

雪光の質問にユニカが速攻で答える。商売するには初期投資はどうしてもいるからな。何事もお金がなければ始まらない。

 

ちなみに《ダニーオルカス》は港を縄張りにしているマフィアの組織名だ。この前コテンパンにした魚介顔のサイボーグ三人組もダニーオルカスのメンバーだったそうだ。そのボスであるダニエルという、巨漢で黒肌のサイボーグ男がルシオさんを殺したそうだが……その件は別の機会でいいだろう。

 

「それもそうだが店がないだろ、店が」

「……やるとしたら別の場所」

 

お金だけでなく場所もないことを告げた桜子さんに続くように、オレも意見を上げる。

元はDDダイナーだった場所はプリムヴェールが使ってるし、そもそも土地代がかなり高い。立地条件が良い彼処を手放すとも思えないし、買い取るとしたら倍の金額が要求されるのは確実だ。

 

「そうだな。現実的に考えるならそれが妥当だな。ルシオでさえトントンだったんだ、お前らじゃ店を回せずに破綻するのは見え見えだ」

「そうだな。第一の課題は店の場所だな」

 

オレと桜子さんの意見に雪光は頷くと、何もないところで手を動かしていく。雪光、ユニカ、桜子さんは電脳なのでARボードが普通に見えるが、生身の脳髄のままのオレにはただ手を動かしているだけにしか見えない。

まあ、ARボードの内容は手元の端末に映っているので問題ないが。

 

「店舗について、ユニカはどうしたいんだ?別の場所でやるか、それともあの場所でやるか」

「……父がやっていたあの場所に戻りたい、という気持ちは少なからずあります。ただ、お二人の言う通りで、私の実力でお店を回すことはできないと思います」

「やっぱり、別の場所でDDダイナーを始めるしかないか。そこで店を回せるだけの実力が身についたらその時に改めて検討する。それでどうだ?」

「いいですね。そうしましょう」

 

一つ目の店の場所に関しては別の場所で再興する方向に決めた雪光とユニカは、次の課題へと進んでいく。

 

「二つ目の課題は……」

「人手だろうな。一応聞くが、お前ら二人でやるつもりか?」

「そうだけど、何か問題があるのか?」

 

桜子さんの質問に、雪光は疑問を露に問いかける。そんな雪光に呆れながら、オレが問題点を指摘する。

 

「……ここは日本じゃない。エリューテリアだ」

 

治安がしっかりしている国なら確かに小さな店で二人で経営することも可能だろうが、ここは無法者や荒くね者が多くて治安も不安定なエリューテリアだ。そんなトラブルが絶えない場所で二人経営は、リスクが大きすぎる。それも経営初心者なら尚更だ。

 

「言葉が足りないぞ。この荒い奴らが多い場所じゃ、食い逃げや荒事は結構多いぞ。後ろ盾があればまだ別だが」

「なるほど、ケツ持ちというやつか」

「……お前達の場合、かなり喧嘩を売っている」

 

そのケツ持ちはマフィアの組織に頼むのが無難だが、そのマフィアの一つにおもいっきり喧嘩を売ったからな。まず守り代は高額になるだろうし、それでトラブルになることは目に見えている。つまり、自衛するしか方法がない。

 

「そうだぞ。だからお前達は店も含めて自衛しなきゃならない。そうなると何やかんやで人手が必要となるだろ」

「確かに……」

 

桜子さんの指摘に雪光は納得しつつ、ARボードに『人手』と書き込む。最低でも後二人はいるだろうな。

そんな悩む雪光に、ユニカが挙手をして自身の意見を述べる。

 

「お金さえあれば何とかなりますよ、雪光さん」

「というと?」

防衛砲台(セキュリティタレット)やミリタリードローンをたくさん配置するんです。そうすれば迷惑なお客さんをハチの巣にできます!」

 

ユニカは満面の笑みで雪光にそう自信満々に告げるが、オレと桜子さんはジト目でユニカを見やる。何せ、お金があっても現実的ではない方法だからだ。

 

「……初期でも二億以上飛ぶから論外。後、維持費も合わせれば飲食店では半年で破綻する」

 

そもそも飲食店は客商売……人の流れで売上は増減するのだ。人手が不足しがちで大きな収入が安定している大企業や軍の施設とかならまだしも、一個人の飲食店には身の丈にあっていない設備である。

 

「そうだぞ。タレットは最低でも一台4000万チェリー、ドローンは一機1000万チェリーだ。仮にタレット三台、ドローン十機配置したらガイの指摘通りほぼ二億チェリー。しかもメンテ代だけで月100万以上はすっ飛ぶぞ」

「うん。仮にお金があっても無理だな」

 

あまりの金額を前に雪光は現実的に不可能だとあっさりとユニカの案を否決した。ユニカは少し不満げではあったが。

 

「そもそも操縦する人間が必要になるだろ。どっちにしろ人を雇うなら、ウェイトレス兼ガードマンを雇った方がずっとマシだぞ」

「そ、そっちは私が操作するので問題ありませんよ!」

「……料理はどうする?」

「料理とタレットの操作くらい一緒にできますよ」

「もっと現実見て物を言え」

「できますよ。この子がいますから」

『ユニー』

 

ユニカがそう言って手を振ると、オレの端末にユニカをデフォルメしたような丸っこいARモデルが表示される。

 

「……AIか」

「その通りです。私が使っている支援AI、名前はミニカです。この子を使えば、平常時でも並列で3つくらいのことは同時にできますよ」

 

ユニカは自慢げにそう告げると、ミニカは同意するようにクルクルと回転する。AIとしてはそれなりに性能が高いだろうが……

 

「それらを買うより人間を雇った方がはるかに安上がりだ」

「えー、人間は面倒くさいです。タレットがダメならヒューマノイドはどうです?」

 

桜子さんの最もな意見にユニカは心底面倒そうに声を上げつつ代替案を告げる。どれだけ人間を雇いたくないんだよ。

 

「……一体3000万で維持費は月60万。人を雇えば給料は20万」

「よし、人間を雇う方向にしよう。そっちの方が断然お得だ」

「人間安すぎ!ダンピング反対です!」

 

ユニカが雪光の決定に反対するも、初期出費をイタズラに大きくするのは論外だからな。金自体ないけど。

 

「そもそも私達は店を開くお金すらないんですよ」

「結局はそこだよな。桜子、エリューテリアで飲食店を始めるにはどれくらい金がいるんだ?」

「露店なら元手がいらないから100万チェリー、店舗を構えるなら最低でも1000万チェリーだな」

「露店ならすぐに始められそうだ」

 

初期投資の少なさから露店なら可能だと雪光は告げてユニカに顔を向けるも、当のユニカは慌てたように告げた。

 

「いやいや、待ってください。それでDDダイナーはおかしいじゃないですか」

「……ダフトドリームスタンド。略してDDS」

「お、語呂がいいな」

「良くないですよ!DDD、3つのDが並ぶから格好いいんです!DDSなんて論外です!」

 

オレはダイナーレストランでなくなるから改名案を出したが、ユニカには不評のようで問答無用で却下された。

 

「それくらい我慢しろよ、金がないんだろ」

「イヤです。妥協するくらいならお金貯めます」

「ホントに頑固なヤツだなぁ、お前は……!」

 

どうしてもDDダイナーとして復活させたいユニカによって露店案は否決となった。しかし、店舗を構えるのに必要な1000万チェリーはあくまで最低だ。場合によっては倍以上の金額がかかる可能性は十分にある。

 

「なら1000万チェリーを調達することが目標だな。二人はいくら出せる?」

「……それが理由か」

 

自然な流れで出資を要求してきた雪光にオレは半目で睨みつける。最終的に金が必要になると分かっていたから、金を持っているオレに出させる為にこの場に参加させたな。

雪光のにこやかな顔に聖浄なる鉄槌(セイクリッド・ハマー)を叩き込みたいと思ったが、吸血鬼に片足を突っ込んだヤツにそれはやり過ぎと思って我慢した。

 

「然り気無く出資させようとすんな。私は1チェリーも出さないからなっ」

「……同じく」

「ううん、ダメか」

 

当然桜子さんも出資はしないと告げ、オレも同意する。雪光は残念そうに呟くが、その目線が本当に?と問いかけており諦めてないのは見え見えだ。

 

「……そんな目をしても出さない」

「そうだぞ。タダでやれるほど私は金持ちじゃない。そもそも投資ってやつは回収の見込みがあって初めて成り立つ。それだけの信頼が今のお前らにあると思うか?」

 

桜子さんのその厳しい言葉の通り、雪光とユニカにはそこまでの信頼があるとは思えない。今回の復活計画も具体性を持たせようとしているところから始まってるし、穴が多いのが現状だ。

だからこそ、桜子さんの次の言葉には耳を疑った。

 

「けど、店舗探しくらいなら手伝ってやってもいい。もちろん、金の調達の目処が立ってからではあるけどな」

「え?本当に?」

「意外ですね。桜子さんが手伝ってくれるだなんて」

 

桜子さんからのまさかの提案に雪光とユニカはもちろん、部外者のオレも目を丸くしてしまう。そんなオレ達の前で、桜子さんは言葉を続けていく。

 

「もちろんタダじゃない。こちらが提示する条件を呑むことが、協力する条件だ」

「その条件とは?」

「なに、簡単な条件だ。ガイをお前らの店で雇え」

「……は?」

 

予想だにしなかったその条件に、オレは思わず手に持っていた軽食を落としてしまうのであった。

 

 

 

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