RE:D Cherish!-Lost Crusade-   作:名無しのサイボーグさん

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再興II~ダシ

桜子さんからの予想外の言葉にオレが呆気に取られる中、いち早く現実に復帰したユニカが桜子さんに問い質した。

 

「え?それってガイさんをDDダイナーのスタッフとして雇えということですか?」

「ああ。ガードマンとしてとびきり優秀だろうからな」

 

ユニカの質問にそう答える桜子さん顔はにこやかな笑顔である。そこでオレは我に返って反論の声を上げた。

 

「……勝手な真似は論外」

「そう言うな。これはお前にも得がある取引だぞ」

「……どこに得が?」

「DD-mod保有者の雪光とユニカを自然に観察できつつ給料も手に入る。ほら、どう見ても得な取引じゃないか」

 

桜子さんが提示したそのメリットに、オレは思わず納得しかけてしまう。確かにDDダイナーのスタッフとしてなら、自然に二人の様子を確認できるし、滞在費を稼ぐこともできる。

それでも、頷くことは出来ない。

 

「……頃合いを見て発つから無理」

「は?万が一二人が暴走したら私一人で対処しろと?中々に非情じゃないか」

「……同時に暴走はしない、筈」

「筈だろ。第一、この手の力のリスクと対処はお前の方が詳しいだろうが」

「むぐ……」

 

何とか断ろうとしても、年季ゆえの言葉巧みさで逃げ道を塞いでくる桜子さんを前に、オレは唸るしかできなくなっていく。そんなオレと桜子さんの会話に雪光が加わっていく。

 

「前に桜子が心まで鬼になると言っていたが、それと関係があるのか?」

「……使えば黒い側面の感情が増幅し、支配されやすくなる。人間の“負”の境界は曖昧なのも一因だが」

「負、ですか?」

「そうだな……お前達は人間の“負”と聞いて何を思い浮かべる?」

「……一般的には欲望ですかね?」

「嫉妬や憎悪も含まれるか?」

「ま、それらが一般的だな」

 

雪光とユニカの返答に桜子さんはそう返す。だが、それらも一概に分別はできない。

怒りも見方によっては憎悪とも義憤とも取れる。夢も欲望と捉えられる場合もある。例を上げるなら、誰かの為に命を賭けるのは“善”であるが、それで大量虐殺に至れば“悪”となる。信仰でさえ行き過ぎれば狂信になるのと同じだ。

 

「……善悪の基準は酷く曖昧だ。善も度が過ぎるば悪になる」

「度が過ぎる?」

「……わかりやすくするなら、正当防衛と過剰防衛」

「ああ、それは確かにわかりやすいな」

 

同じ人を殴ったでも、状況次第では仕方なしと認められることもあるからな。エリューテリアでは賞金制度でその辺りはユルユルになっているが、日本人である雪光にはすぐに合点がいったようだ。

 

「確かにDD-modを使っている時、支配欲と破壊衝動に襲われますが……」

「つまり、DD-modを使いすぎると悪感情に陥りやすいのか?」

「……ああ。これは邪な力だけに限ったことではないが」

 

聖の力でさえ同調しない者を異端者として殲滅するという思考へと傾倒することがあったのだ。あくまでオレ個人の解釈だが、聖の力はその力の反動で、邪な力はその性質から悪感情に支配されやすいと考えている。

 

「……脱線した。とにかくオレは提案を呑む気はない」

「どうせ自分は化け物だからという理由からだろ。少なくとも私の目から見てお前は化け物じゃない」

「……理外の力を使う時点で化け物(フリークス)だ」

「それを言ったらここにいる奴全員同じだろうが」

 

オレの反論に桜子さんは呆れ気味にツッコミを入れる。元巫女で祓いの力のある桜子さんと吸血鬼の力を持つ雪光とユニカもオレの理屈で言えば確かに化け物(フリークス)だろう。

そんな中、ユニカが疑問の声を上げた。

 

「率直な質問なんですが、ガイさんはガードマン以外にできることがあるんですか?」

「……ない。日雇いの護衛や土木現場」

 

何せあちこちをふらついているからな。化け物狩り(フリークスハント)で大金を得ることもあるが、そこは一々説明する義理も義務もない。

 

「うわっ、完全に社会不適合者じゃないですか」

「……そもそも、雇う金すらない」

「うぐっ」

「結局そこなんだよなぁ……」

 

オレの起死回生と言える一手にユニカは詰まったように声を上げ、桜子さんは溜め息を吐く。そう、結局は金がなければ何もできない。金にシビアである桜子さんが出資することもないから、このまま流れるのは確実だ。

 

「……金の当てならある」

 

その流れを、雪光がサムライが放つ一刀のごとく断ち切ってきたが。

 

「それは本当か?」

「ああ。実は、日本に一億くらいの貯金があるんだ」

 

日本に一億も貯金があるだと?その貯金は間違いなく日本円だろうから、為替で多少は減るだろうが、店の開業資金としては十分すぎる金額だ。

 

「そ、そんな大金、どうやって!?」

「俺が所属していた組織は給料がすごく良かったし、個人の裁量で使える裏金とかあってさ。そういうのを全部、いざという時のために取っておいたんだ」

 

マジか。こっちはそういったお金もなく追い出されたってのに。

そういえば雪光はそこでポカしてエリューテリアに亡命したんだったな。つまり……

 

「……使えない金」

「本当に鋭いなぁ」

 

俺の言葉に雪光はやれやれといった感じで肩を竦める。やはりその一億円は引き出せないお金だったか。

 

「使えない金ってどういう意味だ?」

「……そのままの意味」

「俺は日本でやらかして逃亡中の身だから、その口座は凍結されていて引き出せないんだよ。ガイの言う通り、今は使えない金なんだ」

「ああ……確かに口座を凍結させて、身動きを封じるのは定石か」

 

雪光が理由を話したことで、質問した桜子さんは納得したように頷く。すでに日本にいないにしても、逃亡資金に使わせないようにするのはどの国でも基本だからな。

 

「……雪光さん、それって銀行ですか?」

「銀行系とか暗号通貨系、あとは金とかの現物だな」

 

ユニカのその質問に雪光が答えると、ユニカは僅かに笑みを浮かべる。その笑みにオレは嫌な予感を覚えた。

 

「暗号通貨もあるんですね。それでしたら何とかなるかもしれませんよ」

「凍結を解除できるのか?」

「私、そういうの得意なんで。ハッキングは私にとってホビーの領域です」

 

悲報。ユニカは凄腕のハッカーだったようだ。そういえば、初見でオレの機械部分が内臓だけと見抜いていたし……

 

「お前、料理以外の特技もあったのか。銀行のハッキングができるなら、そっちで食べていけばいいんじゃないのか?」

「それじゃただのサイバー銀行強盗じゃないですか。ブラックハットになるつもりはありませんよ」

「その辺はきっちりしているんだな」

 

一応の礼節や分別はあるみたいだが、凍結させられた口座から金を引き出す時点でアウトだからな?いや、法の規制がユルユルなエリューテリアではグレーなのかもしれないが。

 

「けど、大丈夫なのか?下手したらCIAとかサイバー部隊に狙われて、リクルートされる可能性が……」

「そんな生易しいものじゃないです。ヘタを打つと誘拐されたり殺されたりしますよ。実際、私の知り合いのハッカーも拉致られ、最後のメッセージは『クラウド上に貯め込んだアレなメディアの削除を頼む』でしたし」

 

……身体がサイボーグとなって好き勝手いじれる時代になっても、その辺りは欠片も変わらないんだな。彼処はそういったのはご法度で、バレれば丸三日の説教コースだったそうだが。

 

「ですが、その辺りは今回は大丈夫です。日本企業は手を出しても安全ですから。日本のサイバーセキュリティはかなりマイナーなんで」

「そうなのか?」

「ええ。日本のシステムをハッキングした、なんてハッカーの間では自慢話にもなりませんから」

「具体的にはどうやってハッキングするんだ?」

「内部のエンジニアの買収ですね。それが成功率が一番高い方法です。日本のシステムはそれなりに堅牢ですが、人的管理がすごく杜撰ですからね」

 

つまり、リアルトロイの木馬か。日本人である雪光には耳が痛い話だろうな。桜子さんはつまらなさそうに軽食を食べているので論外だ。

 

「結局、金の方は何とかなりそうなのか?」

「ええ。細かいところは詰める必要はありますけど」

「そうか。なら、店舗探しは私に任せるといい。もちろん……」

「ええ。ガイさんをスタッフとして雇用します。もちろん、ガードマン以外の仕事も覚えてもらいますが」

「いいぞ。存分にコキ使ってやれ」

「よし!DDダイナー再興に大きく前進したな!」

「……待て」

 

人の意思を無視してトントン拍子で進めていった三人にオレは待ったをかける。オレはそこで働くとも了承するとも言っていない。

 

「……勝手に話を進めるな」

「どうせブラブラするなら、店で働いても同じだろ」

「……それでも、だ」

「……しょうがない。最終手段を使うか」

 

桜子さんは仕方なしと言わんばかりに立ち上がると、部屋の片隅に置かれていた少し大きめの箱を持ち上げる。

 

「……それは」

「お前が一方的に私に預けていたものだ。このまま頷かないなら、これをお前に無理やり返すぞ」

「……卑怯者」

 

まさかの手段にオレは拳を握りしめて桜子さんを睨み付ける。対する桜子さんは澄まし顔だ。

 

「お前の父ちゃんの形見を勝手に押し付けた奴が卑怯とか言うな。知り合いの品じゃなけりゃ、とっくに売り捌いているぞ」

「ぐっ……勝手にしろ」

 

オレはそれだけ吐き捨てると、逃げるように桜子さんの部屋から出ていくのであった。

 

 


 

 

―――雪光サイド

 

ガイが投げやりに近い言葉を吐き捨てて部屋から出ていった後、脅しとも取れる手段を取った桜子は盛大に息を吐いた。

 

「はぁ~……本当にアイツは面倒くさいな。こうまでして頷かないとか、意固地にも程があるぞ」

 

桜子はそう言うと手にしていた箱を元の場所に戻す。そんな桜子にユニカが話しかける。

 

「失礼を承知で聞きますが、その箱には何が入っているのですか?ガイさんにとって大切なものなのは理解できますけど」

「説明するより見た方が早いだろ。アイツも見せるなとは一言も言ってないし」

 

桜子はユニカにそう言葉を返すと、その場で箱の蓋を持ち上げる。その箱の中には、銀色に輝く大型のリボルバー式の拳銃が収められていた。

銃身に何かしらの文字が刻まれたその拳銃を視界に収めると、俺の目にジリジリと焼かれるような感覚が襲いかかったのですぐに視界から外す。焼かれる感覚が消えた俺はロザリオのようなものかと思いつつ、桜子に問いかけた。

 

「それはロザリオのようなアンティークの類か?」

「半分不正解だ。こいつは伝承にある聖剣や霊刀……対怪物(フリークス)用の武器だ。こいつで撃った弾は『銀の弾丸(シルバーバレット)』や『破魔弾(アッシュバレット)』……吸血鬼への必殺の弾丸と同等になる、特級クラスの聖銃だ」

「銀の弾丸に破魔弾……吸血鬼を始めとした化け物を倒せる必殺の弾丸ですね」

「ああ。もちろん心臓に撃ち込むという前提が付くけどな」

 

桜子はユニカの言葉にそう返すと、蓋を閉じてその拳銃をしまう。ユニカはその銃を普通に覗き込んでいたが、大丈夫だったのだろうか?

いや。そういえばガイは能力に強弱があると言っていたな。もしかしたら弱点にも強弱があって、俺の場合はあれらがとびきりで弱いだけなのかもしれない。どちらにせよ、ユニカが大丈夫なら別にいいか。

 

「ちなみに売るとしたら、1億以上になるぞ」

「1億!?そんなに高額なんですか!?」

「当たり前だろ。こういった品は全部が手作りの上、元となる素材も相応の年月を懸けないと出来上がらないんだ」

 

桜子はさも当然と言わんばかりに告げるが、その辺りの知識が皆無と言っていい俺にはいまいち実感が湧かない。値段に驚いたユニカも似たり寄ったりの反応だ。

 

「お前ら、全然理解してないな。ま、こういった品は本来、個人で持てるモノじゃないから無理もないけどな」

「そうなのか?」

「霊格の高い物体は結構限られているからな。剣や刀でさえ、管理されているのがほとんどなんだ。弾の方は基本使い捨てだし」

「ちなみに弾の値段は?」

「大体10万チェリー。ちなみに一発でな」

「すごい高価だなぁ……」

 

一発10万チェリーだとしたら、10発で100万チェリー。補充する度に100万も飛んでいくなら、確かにあの銃はすごい品物なのだろう。

 

「そのすごい品を、桜子さんがどうして持ってるんです?厳密にはガイさんのものですけど」

「アイツの父ちゃんの母ちゃん……祖母にあたるシエルも同じところいたからな。あの聖銃も、元はシエルが作り出したものだ。死ぬ前に正当な手順で継承させたから、現在の所有権はガイにあるんだよ」

「無理やり回収しなかったのか?」

 

そんな破格の品なら、何としても手元に置きたいと考える輩が出てきても不思議じゃないんだが。

 

「その辺りは色々といざこざがあったそうだ。中には無理やり回収しようとした輩もいたそうだが、本人曰く返り討ちにしたそうだ」

「結局、暴力で押し通したんですね……」

 

ユニカが少し呆れているが嫌悪感はなく、むしろ羨ましそうに感じている。そういえばユニカは借金によって全部取り上げられたんだよな。親父さんの形見の品すら手元に残せなかったユニカにとっては、羨ましいんだろうな。

 

「で、そういった経緯から手元に置けないからって伝手便りで私に押し付けたんだよ。そんな大事なら手元に置けと文句を言ったら、使えない上に壊れるのも嫌だとほざきやがった」

「え?ガイさん、銃はからっきしなんですか?」

「本人曰く、一メートルの距離でさえ大きく外すそうだ」

 

あれだけ近接に強いのに銃の腕はからっきしだったのか……いや、銃の腕前も一流だったらさすがにショックを受けるところだけど。

 

「まあ、アイツの話は一旦ここまでにしとくか。それで?どうやって買収するんだ?」

「普通に考えれば、ユニカが手引き……」

「私にそんな芸当ができると思います?」

 

うん、無理だな。ユニカにそんな話術や交渉ができるとは思えないからな。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

「日本に伝手のあるフィクサーを探してお願いするのが最善策ですね」

「目減りするがそれが妥当か」

 

ある程度資金調達の案が纏まったので、俺は人員問題を解決する為にスラム街―――『ブルヘッドコロニー』へとユニカと共に向かうのであった。

 

 


 

 

―――ガイサイド

 

桜子さんの部屋から逃げるように出ていったオレは、アパートにいるのも嫌だったので気分を変える為にバイクに乗って公道を走っていた。

 

「……クソ」

 

法廷速度を守ってバイクを走らせているオレは苛立ちを発する。爆走させたいところではあるが、それなりに車も走っているし、今の状態では万が一が起こる可能性もあるのでそれは避けている。

 

形見の品を使ってまで了承させようとした桜子さんに苛立ちを隠せないが、あくまで返すというだけで理不尽極まりないという要求ではない。

だが……

 

「……オレのような怪物が、俗世に馴染めるわけがないだろ」

 

オレはある時から怪物と人間の違いは何なのかについて悩んでいた。理解不能の力を振り撒くのが怪物だと組織は言っていたが、オレが振るえるこの力も何も知らない者から見れば、十分に理解不能な力だ。

組織にいた頃はそういった連中の集まりだったから今ほど差違を感じることはなかったが、追い出されたことでその差違を明確に自覚するようになった。加えて、長年戦いに身を置いたせいでそれ以外の生き方を知らない。そんなオレが普遍的な生活なぞ、できるわけがない。

 

だが、勝手にしろと言ってしまった手前、捉え方次第では了承と捉えられる。本当に嫌な気分だ。

そんな思考から逃げるように、オレはバイクを走らせ続ける。街中に海岸沿い……比較的治安の良い場所を中心だ。わざわざ治安の悪い場所を走らせてトラブルに首を突っ込む気はないからな。

そのままバイクを走らせ続け、適当な店でコーヒーを買ったオレはその場で一服していると、見知った顔が視界に入った。

 

「……あ」

 

その見知った人物―――ルージュもオレの存在に気付いたのか、大きめのトランクケースを持ったままこっちに顔を向けている。最初は何とも言えないような表情をしていたルージュは軽く咳払いすると、すぐに見慣れた尊大な態度となった。

 

「あら、こんなところで会うとは本当に奇遇ですわね」

「……そっちは長期休暇か?」

「えっと、それはぁ……」

 

オレの質問に何故かルージュは困った表情で言い淀む。大きめのトランクケースを手にする理由はどこかに旅行に行くか……あ。

 

「……クビになったのか?」

「ギクゥッ!?」

 

オレの指摘に対し、冷や汗と図星と言いたげな表情となったルージュ。ああ、店の乗っ取り計画は見事に失敗して追い出されたのか。しかし、実の娘に対して思い切った行動に出たな、母親さんは。

 

「……謝って減給程度かと思ったが」

「は?何であの人に謝らなければならないのです?」

「……追い出されて当然だった」

 

イタズラでは済まない犯罪行為に手を染めて反省ゼロでは、キツいお灸を据えられるのは至極当然の流れだった。

 

「母の肩を持つ気ですの?今まで懸命に働いてきた人間をあっさり切り捨てた人でなしなのですよ?」

「……持ってない。仮にお前が自分の店を取られそうになったらどうする?」

「そのような輩は爆破して木っ端微塵ですわ」

 

真顔で爆破すると言い切ったよ、この残念娘は。というか随分と過激だな、オイ。

 

「……は!?そうです!自分のお店を持てばいいのです!」

 

不意に何かを思いついたのか、ルージュは目を輝かせて高らかに告げ始めていく。

 

「わたしの名を冠するお店を開き、母が経営するプリムヴェールを越えるお店にする!そうすれば、母も大層悔しがるでしょう!」

 

……余計なことを言ったか?これ、オレが例えで言ったことが原因だし。

 

「そうと決まればユニカを……」

「……無理だ。彼女は今、雪光と共にDDダイナー再興計画を進めている」

「な、なんですって……?」

 

ルージュは虚をつかれたような、信じられないと言いたげな表情でオレを見てくるが、嘘でも冗談でもないぞ。

 

「……そもそも行き当たりばったり」

「一言余計ですわ」

 

オレの呟きにルージュは文句を垂れるが事実だろ。けど、このまま路頭に迷わせるのは、それはそれで寝覚めが悪くなるし……

そういえばルージュはウェイトレスとして最近まで働いていたんだよな。それも高級料理店で。

 

「……お前さえ良ければ働き口を紹介する。住める場所付きで」

「余計なお世話……と言いたいところですが、聞くだけ聞いて差し上げますわ」

 

オレの言葉に興味を示したルージュに、オレは今しがた思いついたことを伝えていく。

 

「……雪光とユニカは今、スタッフを探している。そこでウェイトレスとして働くのはどうだ?」

「それはつまり二人の下で働けと?冗談も休み休み言って欲しいですわね」

 

オレの提案にルージュはあまり乗り気ではないのか、冷めた反応で返してくる。

 

「……場所は桜子さんのアパートだが、嫌なら別にいい」

「え?彼処ですの?確かに彼処なら安心して暮らせますが……」

 

住む場所が分かった途端に食らいついたな。これならもう一押しかもしれん。

 

「……今なら家賃の値切り交渉も可能」

「その提案、乗りますわ!」

 

完全に釣れたな。住める場所に加え、月々の家賃も安く押さえられるのは相当魅力的だったんだろうな。

雪光はともかくユニカは難色を示すだろうが……雪光が上手く丸め込むだろう。仮に渋っても黙らせられるが。

 

「……なら、サイドカーに乗れ。そっちは括って載せる」

「ではお言葉に甘えさせてもらいますわ」

 

サイドカーにルージュを乗せ、バイクの後ろにトランクケースを常備していたロープで括って固定して載せると、オレは桜子さんのアパートへと帰っていくのであった。

 

 

 

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