東方のシェフ   作:多聞丸

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冬の博麗神社。ケンはとある鬼に料理を振る舞うことになる。


#40 鬼の宴

ー博麗神社ー

冬の山の風は肌を刺すように寒い。厚着をしていなければ肌を貫かれるような寒さには耐えられない。この時期、妖精などはあまり出てこない。寒さによって皆、家に籠っているからである。妖怪や妖精が大人しくなるこの時期、ケンは博麗神社で霊夢に料理を振舞っていた。

 

ー博麗神社、居間ー

ケン「お待たせしました。『湯豆腐』です」

霊夢「ありがとうケン。この時期はやっぱり温かいものに限るわね」

ケン「湯豆腐は南禅寺周辺で作られている精進料理です。肉食を禁じていた仏教僧がタンパク質を取るために食べていたとか。神官も同じく肉食を食べなかったと聞き、巫女である霊夢さんにも合うと思いまして」

霊夢「ありがとう。と言っても、特に肉食を禁じていたなんて話は聞かないわよ」

ケン「そうなのですか?」

霊夢「私は別になんでも食べるしね。肉であれ魚であれ普通に食べるわよ」

ケン「そ…それは失礼しました」

霊夢「別に謝ることじゃないわ。さて…早く食べ…」

?「お~い、霊夢居るんだろ?」

霊夢「…この声は…」

萃香「なんだいるじゃんか、1杯やろうぜ」

霊夢「昼間から飲まないわよ、あんたに付き合ったら潰されるまで飲まされるんだから。それに今から食事だから帰りなさい」

萃香「ちえっ…いいだろ別に…ん?」

ケン「…どうしました?」

萃香「…お前、宴会の時居ただろ。色々幻想郷には無い料理を出した奴。ええっと…確か名前は…」

ケン「ケンと申します」

萃香「ああ、そうだケンだ。あたしは伊吹萃香、見ればわかる通り鬼だ」

ケン(鬼…という事は…)

ケン「萃香さんは勇儀さんを知ってますか?」

萃香「ん?ああ…あいつか…」

ケン「知っているのですか?」

霊夢「知っているというか腐れ縁よ」

ケン「よく勇儀さんにはカクテルをご馳走していますので」

萃香「かく…?」

霊夢「色々なお酒や水菓子(果物)を混ぜて作るお酒のことよ。私もケンに頼んで作ってもらったことあるわよ」

萃香「へ~…外の世界にはそんな酒があるんだね~」グビグビ!

ケン(…ちょくちょくお酒飲んでるけど大丈夫なのか?)

霊夢「あ~…ケン。こいつは根っからの酔っ払いよ。私も素面だったところなんて見たことないわよ」

ケン「そうなのですか?」

霊夢「ええ、萃香が持っている瓢箪があるでしょ。あの中に『酒虫』という虫の体液が入っていて少しの水から大量のお酒が出るようになっているのよ」

ケン(…鬼はやはり酒が好きなんだな)

萃香「んぐんぐ…ぷはぁ~。あ~…ケンって言ってたかい?あたしもあんたの料理に興味を持っていてね〜。何か作ってくれないかい?」

霊夢「普通酔ったまま頼むかしら?ケン、こいつのものは作らなくていいわよ」

萃香「霊夢はいつもケンの料理食ってるじゃないか!私にもくれよ~」ゆさゆさ←ケンを揺さぶっている

霊夢「ケンが困ってるわよ、やめなさい」

ケン「わかりました。少しお待ちください」ゴソゴソ…

霊夢「で…何か当てはあるのかしら?」

ケン「霊夢さんに渡すためのハムができたのでそれを使います」

霊夢「…ハム?」

ケン「肉の保存食です。今回は雉と鯉のハムを持ってまいりました」

霊夢「その…塊?」

ケン「はい、雉の肉に塩を振り大蒜や香辛料、ネギなどで作ったソミュール液(#32 輝夜の難題を参照)に5日間浸し、肉を乾かして燻製にし肉をボイル…茹でた物です」

霊夢「???」

ケン「鯉は三枚におろし身の10%の塩を振り、塩漬けした身を酢で洗い水分を拭き、サラシでまいた後に柿の葉で包んで5日間冷やしたものになります」

霊夢「??…柿の葉を使うの?」

ケン「はい、柿の葉はタンニンという防腐作用の成分が含まれています」

 

※お握りを笹の葉でくるむのは殺菌作用あるからなど昔の人の知識には感嘆が漏れます。柿の葉で魚を包んだ柿の葉は今から200年前の江戸時代に生まれたと言われています(つまり幻想郷の人間が知っているわけない。そもそも奈良の郷土料理ですし)。

 

霊夢「…ひとつ頂いてもいいかしら?」

ケン「どうぞ」

霊夢「…」パクッ…!

霊夢「…!美味しいわね。少ししょっぱくてお酒のお供に合いそうね」

萃香「あたしもひとついいかい?」パクッ!

萃香「! これはいいね~酒に合いそうだよ~」

ケン「ではこちらを料理していきます」

 

ハムにチーズと大葉を挟んで衣をつけてサッと揚げる…。

 

ケン「お待たせしました。『チーズハムカツ』です」

萃香「ん?これは宴会の時に出てきたヤツみたいだな…」

萃香「じゃあ早速…」ザクッ…!

萃香「!これは美味いね!気に入ったよ!」

ケン「こちらの鯉の生ハムはそのままでどうぞ」

萃香「!おお、これもまた滑らかな舌触りだな」

ケン「魚のハムは肉のハムとは違ってカラスミのような感触になります」

萃香「これはいいね〜、酒がどんどん進む」グビグビ!

霊夢「さて…こっちは片付いたようだし、こっちもさっさと食べちゃいましょう」

霊夢「ええと…ケンは薬味をかけて食べると美味しいと言ってたわね」パラパラ…

霊夢「これはなかなか美味しそうね、それじゃあ早速…」

萃香「あ、それ貰うよ」ヒョイ!

霊夢「あ!人の物を勝手に取るな!」

ケン「良ければ萃香さんの分も作りますよ」

霊夢「ケン!こいつの分は作らなくていいわよ!」

 

人が集まらない博麗神社ではあるが、日々賑やかな日々が流れていく。




#40はここまで。そろそろ折り返しですかね…?今回はハムの話について。生ハムは実は古代エジプトの時代からあります。元々は狩猟で余った肉の保存と言われています。ロースハムは1921年、第一次世界大戦時に日本に留められていたドイツ人のアウグスト・ローマイヤは、当時の中華料理店で使用されなかった豚のロース肉に目をつけ、これを活用して日本人の好みに合ったハムを造り、ロースハムとして広めたと言われています。他にも第1次世界大戦で日本に伝えられたものとしてはバームクーヘンなど戦争によって伝えられた料理も多いのです。

ケンは今後どうする?

  • 1 戦国時代に戻る(可能なら)
  • 2 現代に戻る(現実的)
  • 3 幻想郷に残る(これも現実的)
  • 4 その他
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