FEトラキアから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第02話 トラキア統一

飛竜の鱗は生半な剣や槍などは弾き返すほど強靭だが、脆い部分もある。それが翼だ。ここを正確な射撃で射抜かれると、途端にバランスを崩して墜落する。飛竜や天馬が弓に弱い理由だ。魔法にも注意しなければならない。特に風使いは天敵に近い。気流を操作されて翻弄され、翼を斬られて地に落とされる。

 

そういった講釈を口にしているのは、俺の上官である竜騎将(ドラゴンマスター)のマゴーネだった。

 

「貴様の役割は分かったな?」

「はい。心得ています」

 

要するに弓兵や魔導士を優先的に排除しろということだ。弾丸もどきの的当ては調練でも披露している。今回は俺も前線に配置される。

 

「ところでマゴーネ将軍。ひとつ献策があるのですが……」

「ほう。一応聞いてやろう」

 

子供の戯言とでも思っているのだろう。マゴーネは脇に置いてあったワインを呷った。

俺は気にするでもなく、その作戦を口にした。

 

メティオという遠距離炎魔法がある。天空より巨大な隕石を召喚する大魔法だが、俺が行ったのは天から炎の飛礫(つぶて)が降り注ぐメティオもどきだ。威力はそれほどでもない。熟練の魔導士なら軽く撃ち落とせる程度のものだ。

だが敵に魔導士は少ない。城内に混乱を引き起こすことはできた。

最後にありったけの魔力を込めた特大の火球を放って城門を破壊する。

役目を終えたファイアーの魔導書は灰となって消滅した。

 

「これがファイアーだというのか……」

「要は使い方ということですよ。威力は本物(メティオ)とは比べものになりませんがね。少し魔力を使い過ぎました。後はお任せします」

「あ、ああ。後方で休んでおけ。竜騎隊、出撃するぞ! 歩兵隊との連携を怠るなよ!」

 

マゴーネが次々と指示を飛ばす。俺は重い身体を引きずるように後方へと下がった。

マジで魔力使い過ぎた。いやーきついっす。

俺はなんとか天幕まで辿り着き、そのまま眠りに落ちた。目覚めたのは夕方だった。その時にターラ城が陥落したことを知った。

 

「おめでとうございますマゴーネ将軍。たった一日で城を攻め取るとは」

「世辞はいい。此度の戦功第一は貴様だ。トラバント王には委細報告しておこう。期待しておけ」

「身にあまる光栄です」

「何人か負傷者が出た。回復したなら診てやれ」

「承知しました」

 

俺はその足で救護室へと向かった。

そういえば、王城の文官と話す機会があって、その時に聞いたのだが、メティオやサンダーストーム、ブリザードのような戦略級の魔法は誰にでも扱えるようなものではないらしい。

これらの高位魔法の魔導書にはプロテクトがかけられており、術者が限定されているらしいのだ。

まあ妥当な処置だと思う。あのレベルの魔法が誰にでも使えるってのは危険だし。

たぶんダイムサンダもその類だな。術者が限定された専用魔法だった覚えがある。

救護室には何十人かの負傷兵がいたが、ほとんどは対処済みにみえた。

 

「ああ、ブラックさん。来ていただけましたか」

 

ブラック。俺の名前だ。黒目黒髪だからブラック。覚えやすいだろ?

声を掛けてきたのは中年の従軍僧侶だ。外見は髪の毛の生えたリフみたいな感じ。

 

「どんな感じですか」

「おおむね落ち着きました。想定よりも負傷者が少なくて、私たちだけでもなんとかなりましたよ」

 

一日で城を落とすという電撃作戦だが、マゴーネは慎重に事を進めたようだ。まあ、戦はここで終わりじゃないし、損耗は避けたかったのだろう。

それでも少なくない兵が命を落とした。敵兵も多く死んだだろう。賊退治とはやはり違うな。だが自分で選んだ道だ。このトラキアという厳しい大地で生きていく為には、割り切らないといけない。割り切れなければ、俺が死ぬ。

悲しいけどこれ戦争なのよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンスター王国はトラキア半島の最北中央に位置している。南側から攻め上がるルートは二つあり、俺たちはその西側を任されている。

ターラを攻め落とし、メルゲン地方からレンスターに攻め上がる。

 

そして東側のルートはトラバント自らが指揮する本隊が侵攻している。ミーズ城からマンスターへと攻め上がり、コノートからレンスターを強襲する。つまりレンスターを挟撃するのだ。

兵力の分散については議論があったようだが、結局はこの策が採用された。

 

アルスターは中立を貫いている。トラバントが現状維持を認めると言ったのが大きかったのだろう。

トラバントは戦闘狂ではない。狡猾な策略家なのだ。自国を豊かにするのが目的であり、闇雲に戦火を広げるのは望むところではない。

 

ぶっちゃけターラも戦わずに降伏するものだと思っていた。原作だとグランベル帝国が北トラキアに進攻してきた際、帝国に逆らわないことでターラは自由都市の命脈を保ったからだ。

しかしそうはならなかった。トラキアは甘く見られたのだ。まあこれまでの評判が良くなかったというのもあるのだろうが。

だが市長であるターラ公爵家の降伏のタイミングは見事なものだった。

結果的に犠牲は最小限に抑えられたのだから。

 

俺たちは休息もそこそこに北上し、予定通りメルゲン城へ進攻した。

そしてメルゲン城を制圧して十日が経った頃、コノートを制圧したトラバントから連絡の飛竜がやってきた。

いよいよレンスターを挟撃する時が来たのだ。

 

「出陣する! これがトラキアの未来を左右する締めの戦だ。諸君らの奮起に期待する!」

 

城を守備する最低限の兵力だけを残して、俺たちはメルゲン城を出発した。

同盟国であるシアルフィに対する救援はまだ伝わっていないはずだ。レンスターからシアルフィへ行くにはこのメルゲン地方を通過しなければならない。関所では厳しく持ち物検査をしているし、関所外では斥候を放っている。

 

それに、グランベル王国はシアルフィ公国公子シグルドをウェルダン遠征軍総司令官として任命している。例えレンスターから救援を求められても、ウェルダンを平定するまでは動けないはずだ。

しかしキュアンたちだけなら帰ってくる可能性はある。それまでにレンスターは落としておきたい。

 

トラバントが自ら指揮する飛竜部隊の活躍は目を見張るものだった。絶対にトラキア半島を統一するというトラバントの覚悟が伝わってくるほどに。

しかし敵も手強い。大陸最強とも名高いレンスターの槍騎士団(ランスリッター)は、総指揮官(キュアン)不在でも噂に違わぬ奮戦ぶりだった。

 

だが騎兵がもっとも活躍するのは野戦だ。飛竜が城を囲っているのに、攻撃に集中することはできなかった。

いかに鍛えられた軍馬でも雷撃(サンダー)の衝撃には耐え切れず、泡を吐いて失神する。

威力は抑えて、魔力を節約する。そして大技を放つ。俺が放った花火(ファイアー)を合図に、飛竜が一時撤退する。

 

「――トルネード!」

 

メルゲン城で眠っていた風の上級魔導書の力を解放する。城壁の弓兵が風に巻かれて舞い上がる。何とか踏ん張っている兵も、手に持っていた弓矢は風の渦に攫われていった。

 

身体の中からごっそりと魔力が失われるのを感じた。

このレベルの魔法はちょっと早かったかもしれん。でもなんとか使えたからヨシ!

風が治まった頃合いを見計らって、飛竜の攻勢が一気に強まる。

程なくして、レンスターは降伏した。

 

 

 

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