01〃ファーストコンタクト
東京の何処にでもある道で1人の高校生がトラックに跳ねられ、病院に運ばれるも昏睡状態のまま長い眠りにつく事となる。
それから17年後の2012年、少年は〝おじさん〟と呼ばれる外見にまで成長した状態で目覚めた───異世界の力を持って。
実は日本には数百年も前から危篤状態───死にかけた人間の意識が別の世界で新たな肉体を再構築されて、更に神に望んだ力を与えられてその世界───{グランバハマル}に飛ばされる。
{グランバハマル}に飛ばされた者は元の世界に帰ってくる事はなく、大抵の人間はそこで新たな幸せを掴んで生涯を終える。
だが、少年───嶋㟢陽介は違った。美男美女と言う美形揃いな{グランバハマル}でオークと侮辱され、迫害を受けながらも信頼出来る人物達との出会い、ゲーム〝SEGA〟への情熱が元の世界への帰還を可能にした。
帰還を果たした彼は唯一の親族である甥───高丘敬文の元へ同居し、〝YouTube・異世界おじさん〟として活動している。
「プロ野球で稼ぐのどうです?」
「「・・・・・・・・・・」」
〝異世界おじさん〟の正体を偶然知り、嶋㟢陽介の記憶を敬文と共に視聴している幼馴染の藤宮澄夏がそう提言する。
藤宮曰く、嶋㟢の魔法の力を使えばYouTubeをやらなくても覆面選手として億単位の年俸を取得できるとの事。
「どうです?それなら今より生活楽になりますよ?今アメリカじゃ〝アイアンマン〟がいるからあんまり目立ちませんよ」
「・・・・・高校時代、俺は野球部員が苦手だった」
「!」
「教室で我が物顔で煩かったからな」
「だったら「けど連中が炎天下で毎日汗を流しているのを知っている」!」
「連中の流した汗をズルして踏みにじる真似は・・・・・したくないな」
((おじさん・・・・・))
嶋㟢の言葉を聞いた今時の若者である2人は感心する。特に藤宮は自分の軽はずみな言動に恥じた。
しかし───
「俺も小6の冬から高校2年まで約6年間!エイリアンソルジャーに打ち込んで汗を流してたから気持ちが分かる・・・・・!」
「(わかるなよ!全球児に謝れ!)」
「(おじさん本気で言ってるからな、これ・・・・・)」
───ゲーム知識や経験で人生を見ているおじさんの心からの熱い言葉に呆れながら脱力する2人。
そこで嶋㟢は先程藤宮が自分を説得するのに語ったアイアンマンという単語に気づき、質問する。
「それより藤宮さん、さっきアイアンマンって言ってたけど・・・・・何それ?」
「あぁ、そう言えばおじさん知らないんだっけ?」
「4年前にアメリカにある大企業、スタークインダストリーズの社長のトニー・スタークって人が当時のテロリストに誘拐されたんですよ」
「∑何それ、恐っ!!」
「そこから色んな現実を見たトニー・スタークが武器製造や販売をやめ、悪党の手に渡ってしまった兵器を壊すためにパワードスーツを作ったんです!」
「それこそがアイアンマン!まさに鉄人だよ!!」
そう言って敬文はパソコンを操作してアイアンマンの動画を見せる。スタークエキスポのパフォーマンスやテロリストとの戦闘シーンなどが載っていた。
「はぁ〜、今の科学ってこんなの作れるのか?」
「と言っても世界中探してもトニー・スタークだけだと思うよ?」
「それにアメリカじゃここ数年で色んな事が起きてるみたいですよ」
藤宮もスマホのネットを使って情報を見せる。〝ハルク〟と呼ばれる3m近い巨体の大男やハンマーを持った男とデカイ鎧が戦ってる姿、そして第二次世界大戦でアメリカ最強兵士の〝キャプテン・アメリカ〟等の画像を見せた。
「え、もしかしてこの世界も異世界の様に変な力が働いてる事があるの?」
「ははは!いやおじさん、流石にそれは無いよ・・・・・」
「そうそう、流石にね〜・・・・・」
藤宮から画像を見せてもらった嶋㟢のフとした疑問に笑って否定する若者2人。しかし、目の前に異世界から帰還した上にその力も持ってるおじさんが目の前にいる為、強く否定できない。
部屋の中が気まずい雰囲気に包まれたところで来客のインターホンがなった。
「宅配かな・・・・・でも注文して覚えは無いし・・・・・?」
「おじさん、俺が出るよ」
そう言って隆文は席を離れ、来客を迎える為に玄関へ出てドアを開ける。
「初めまして少年。僕はトニー・スターク、よろしく?」
そこに居たのは今まさに話題に出していた人物であり、世界一の金持ち兼天才発明家と名高い男、アイアンマンことトニー・スタークだった。
「(
まさかの張本人の登場に石の様に固まる敬文。そんな彼に少し心配そうな顔になるトニー・スタークは内心、自分のようなビッグなスターが来たらそうなるかと自画自賛する。
「ちょっと敬文ー?結局誰が来たのー?」
「やぁ♪」
「(・・・・・っ!!?)」
「あ〜・・・・・お邪魔しても?」
敬文の様子を見に来た藤宮もトニー・スタークがいた事に驚いて固まり、このままじゃ埒が明かないと判断したスタークは取り敢えず入室の許可を伺う。
side:リビング
「コーヒーです」カチャ
「ありがとう・・・・・うん、美味いなこれ!」
「あ・・・・・ありがとうございます・・・・・」
玄関からようやく中に入れてもらったスタークは隆文の淹れたコーヒーを飲み、絶賛する。
敬文は緊張しながらも有名人に褒めてもらって事に嬉しそうに笑う。
しかし隆文はもちろん、同席している藤宮も内心穏やかじゃなかった。
「(何でこんな有名人がこんな所に来てんだよっ!?)」
「(知らないよ!!)」
「それで?貴方ほどの有名人が何の用で来たんです?」
「「((∑どストレートに聞いた!?))」」
「(成程・・・・・これは骨が折れそうだな・・・・・)」
トニー・スターク程の有名人であり、実力者がしがないYouTuberでしかない日本人にわざわざ会いに来た。
問われたスターク本人は嶋㟢がかなり警戒している事に気づき、 言葉を選んで話す。
「実は此処へ来る前に君達の動画を見てね・・・・・中々興味深かったよ」
そう言ってスタークはパソコンを借りてYouTubeを開いて嶋㟢達の〝異世界おじさん〟のチャンネルの動画を見せる。
そこには今まで投稿してきた〝光の剣を作ってみた〟や〝氷対天然ガス〟などの動画があった。
「この動画にある〝光の剣〟に氷、中々見事なCGだ。アメリカでもここまで精巧な物は作れない」
「えぇ、それCGじゃなくて魔法だから「「∑おじさんっ!?」」あ・・・・・」
「ほう、魔法・・・・・」
トニー・スタークにCGと言われて少しムッとした嶋㟢はアッサリと魔法と言ってしまった。
敬文達が叫ぶが既に遅く、トニー・スタークは険しい顔になって嶋㟢を見る。
「この動画を調べて分かったんだが・・・・・これ等には加工された跡が無いんだよ」
「だから不思議に思ったんだ、
「「((もうそこまで調べられてるっ!!!))」」
ここまで調べられてる事実に敬文と藤宮は改めてトニー・スタークの凄さに驚嘆する。
一方嶋㟢はここまで詰められながらも冷静にトニー・スタークを見る。
「・・・・・それで?結局何の用でここに来たんだ?」
「誤魔化さないか・・・・・良いね、話を進めやすくて助かる」
そう言ってスタークは早速持ってきたタブレットをテーブルに置き、ホログラムを展開する。
そこから映し出された物は幾つかの戦闘を録画した映像だった。アイアンマンになったトニー・スタークや緑の大男、戦場を駆け抜けるキャプテン・アメリカに男女のスパイ等が映されていた。
「ここ数年僕を含めた超人達が現れ始めた・・・・・勿論そこに君も入っている」
「・・・・・」
「君達が動画を投稿し始めた時からある組織が既に目をつけていた・・・・・あぁ、一応言っとくが別に犯罪組織とかでは無いぞ。世界の安全を守る為に動いてる組織だ」
「だがそこの長官はかなりの曲者でな・・・・・何の後ろ盾もないと良いように使い潰されるぞ」
「・・・・・」
「話を戻すが・・・・・その組織がある悪党に〝4次元キューブ〟という物を奪われたんだ。そこで組織はある計画を実行しようとしている」
「〝アベンジャーズ計画〟・・・・・僕やその映像に写っている者達を集めた地球最強のヒーローチームだ」
「(ヒーローチーム!?そんなアニメの様な展開が現実に!!?)」
「(スッゲーっ!!)」
「その話・・・・・もし断ったら?」
「・・・・・僕の見解では組織の把握していない犯罪組織や超パワーを持った悪党達がまだ何処かにいるだろう」
「そいつらが君の存在を知り、君を消す為に関わりのある者に危害を加える可能性はある」
「その時組織が彼等を守ってくれる保証は無いだろう」
「「((異世界だけじゃなくこの世界もやべぇ・・・・・!!!))」」
異世界だけでなく、この世界もキナ臭い事になって来たせいで敬文と藤宮の顔色が少し悪くなる。
話しを聞いた嶋㟢は少し間を開けた後、閉じていた口を開けた。
「俺は17年間・・・・・自分の身や知り合いを守る為にこの力を使って来た」
「全てはSEGAを再びやる為に・・・・・!!」
「(SEGA・・・・・?)」
「「((∑ここでもSEGAかよ、おじさんっ!!!))」」
「だがもし・・・・・俺がお前達に力を貸した結果、敬文達に危害が及ぶ可能性があるなら・・・・・」
そう言って嶋㟢はスタークの側まで一瞬で近づいて魔法陣を展開し、スタークに向ける。
「お前達全員を敵に回してでも戦う・・・・・!!」
そんな敵意を向けられたスタークは内心冷や汗を流しつつ、嶋㟢の決意ある目を見た。
「・・・・・OK合格だ!安心しろ、僕がそんな事にはさせないよ」
そう言ってスタークは両手を上げて降参のポーズをとる。嶋㟢もそんなスタークを見て、魔法陣を解く。
そこで敬文と藤宮も2人に近づき、嶋㟢に〝アベンジャーズ計画〟に参加する事を進める。
「おじさん入りなよ、そのアベンジャーズってやつに! 」
「そうですよ!アベンジャーズに入れば少なくとも安定した収入だって入れますよ!!」
「そこは僕が保証しよう。何なら僕が君達YouTuberのスポンサーになってあげてもいいぞ?」
「え、マジで?」
スタークのスポンサー宣言が効いたのか、嶋㟢はアッサリと勧誘を受ける事にした。
それからスタークから詳しい話を聞いたり、異世界の出来事をスタークにも見せたりなどの交流をしてから近くに待機させていた〝クインジェット〟に乗った。
「あ、敬文達も一緒にいい?」
「良いぞ、だがあまり勝手な行動をしない様しっかり言い聞かせてくれ」
「「わーーい!」」
───次いでに敬文と藤宮も見学者として同行する事になった。
side:???
「長官、トニー・スタークが例の男の勧誘に成功しました。現在クインジェットで此方に向かっているそうです」
「そうか・・・・・」
アメリカ上空に浮かぶ巨大空母──通称〝ヘリキャリア〟。
その中にある司令室でモニターを見ていた諜報員が黒人特有の肌にスキンヘッドに左目の眼帯と言った怪しい風貌の上司らしき男に報告する。
男の名はニック・フューリー・・・・・戦略国土調停補強配備局──通称S.H.I.E.L.D.の長官をしている曲者である。
フューリーは嶋㟢が〝異世界おじさん〟のチャンネルを初めて見た頃から目を付けており、トニー・スタークを通じて接触してきた。
トニー・スタークが嶋㟢の勧誘が出来たと聞いたフューリーは一先といった様子で溜息を吐く。
「長官、本当によろしかったんですか?力を持ってるとはいえ、彼は17年も病院で寝たったきりだったんですよ」
「分かってる・・・・・だが、我々にそんな事を議論している暇は無い。
フューリーは自身の副官であるマリア・ヒルに語り、司令室の諜報員達に新たな司令を下す。
「スタークとMr.シバザキに入電!ロキがドイツに姿を現した。現在キャプテンとナターシャが向かっている為、直ぐに手を貸しに行けとな!」
フューリーに言われた諜報員は直ぐさま連絡を入れる。その様子を見るフューリーはまだ見ない新たなヒーローに少しだけ期待をする。
「(Mr.シバザキ・・・・・君の力を見せてもらおう)」