誰にだって理想の自分という奴があると思う。こうありたい、こうでありたい、そう望む気持ちは誰だって一緒だ。でもそうある事は思うよりもずっと難しい。
毎日毎日、明日はこうなろう、明日はそうなれる、そう繰り返すばかりの頃はもう終わった。でもなにか変わったという事はなくて、なにが変わったと言うならば、理想と現実のギャップに変わることはできてもなりたい自分になることは無理かもしれないのだと感じるようになったことか。
俺は子供の頃から精霊たちが見えていた。賑やかで愉快な、時々意地悪をしたりするヤツもいたけれど、そんな不思議な隣人は俺の一番の友達だった。どうしてそれが周りの人に見えないのか、いつもそれが不思議で堪らなかった。けれどいつしか俺は人前で積極的に精霊の話をしなくなっていった。誰もが俺を
人間と精霊との架け橋になるという夢を諦めたわけではなかった。最初から簡単な事じゃないなんて事はしっていた。でも、それは予想以上にずっと困難な事だったのだ。そもそも目に見えないものを人間という生き物は信じない。そしてそれ以上に大きな壁だったのは宗教だった。精霊という目に映らない生き物は、人の中の神と共存することは極めて難しかったのだ。その一方で、俺の言うことに盲信的に耳を傾けるのはオカルティストなどと呼ばれる存在だった。彼らにとっては精霊もグレイも等しく同じものだった。
思い知らされていく現実に、どう抗えばいいのかどんどん分からなくなっていく。俺の言うことにまともに取り合ってくれたのは本当に一握りに満たない人たちだけだった。俺は途方に暮れた。もうどう伝えれば聞いて貰えるのかすらわからなくなってしまったのだ。
なにをすればいいのかすっかり見失ってしまった頃、DA本校への留学の話が持ち上がったのは物凄いタイミングだったと思う。俺は二つ返事で留学を決めた。俺は俺を異端視するアークティック校からある意味逃げ出したのだ。すこし距離を置くのだと言う名目は、今思えば追いつめられていただろう当時の俺の目には酷く魅力的に映ったものだ。
DA本校は俺のいたアークティック校よりもずっとおおらかで、自由だった。日本と言う国柄だからか、宗教による差別もなく、異端視されていた俺でも少し変わったヤツくらいでみんな普通に接してくれるのだ。そして、何よりもここには仲間がいた。俺と同じ、精霊を目で見て、声を聞く事の出来る奴らもいたのだ。中でも十代はとりわけ変わっていたと思う。突き詰めた性格の方向性が似ていた所為か、俺たちはすぐに打ち解けた。
何気無い当たり前の顔をして精霊と話し、人と話す。みんなは不思議そうな顔をしながらもそれを受け入れてしまう。不思議な光景だった。どうしてとか、なんでとか、そんな言葉は出て来ない。それを納得させてしまうだけの奇妙な説得力が十代にはあった。その姿は、きっと俺の夢の、理想のあり方の一面だったのだと思う。
どうすればいいとか、そんなものは小難しく考える必要なんてきっとなかったのだ。飾らない十代を見ていて心底そう思った。きった、ただ愛せばいいのだろう。精霊も、人も、みんな同じ様に。
十代と全く同じ様にとはいかないだろうけれど、なりたい理想の自分の一端が見えた気がした。十代を見ていると自分の望む様に変われる様な、不思議とそんな気がしてくるのだ。
明日の俺は、今日よりも少し変われる気がする。
あすなろの唄
なりたい自分は今日とは違う、少しだけ違った明日の自分。
取り替えっこヨハンだと萌えるなと思ってやった
妄想は羽ばたく