ハンターは辛いよ   作:荒北龍

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天使と言うより悪魔

 

 

「カティちゃん、これを受け取ってくれ!これはリオレイア希少種から取れた卵なんだ、ぜひ食べてくれ!」

 

リオレイア希少種。

リオレイアの通常種とも、亜種とも異なる黄金のリオレイア。

その黄金の体色から『黄金の月輪』とも称されるモンスター。

そしてただ黄金に輝くリオレイアと言うだけでなく、その黄金の甲殻は黄金と同じ硬さと価値を持ち、そのブレスはあまりの熱で石をも溶かす。

無論危険度もずば抜けているうえ、存在自体が希少なモンスター。

確かな実力と、ギルドからの信頼があって初めて任せられるクエストである。

 

そしてそんな希少な存在の卵は、卵の重さと同じ金の重さで取引される。

無論竜の卵はでかい。軽くても30キロはある。

 

つまり30キロ以上の金塊をこのバカは少女にプレゼントしてるのだ。

 

「私からはリオレウス希少種の逆鱗から作ったドレスをあげるわ!ぜひ着てみて!」

 

リオレウス希少種。

リオレウスの通常種とも亜種とも異なる白銀のリオレウス。

古参ハンターですら見たことがないと言われるモンスターであり、古文書や伝説上に出てくるリオレウス。

まるで本物の白銀を思わせる輝きを放つ甲殻に、触れたもの全てを溶かす業火。

その白銀の姿から銀火竜と言われ、伝説のモンスターと言われている。

 

そんな銀火竜の逆鱗を使ったドレスは、一体どれだけの価値があるのだろう。

銀火竜の逆鱗は噂で街と城を建ててもお釣りが来ると言われている。

そんなドレスをこんな少女にあげてどうすんだこのバカ。

 

こんな感じで次々次々とバサルモス亜種の涙のネックレスとか、ジエン・モーラン亜種の天鱗で作った髪飾りとか、もう頭おかしくなりそうなほど高価なものばかり送られてくる。

なんなのこのハンター達。価値観クック先生にクンチュウと一緒に食わせたか?

 

さて、一通りカティちゃんへのプレゼントを貰い終わったのだが。

 

「多いね」

 

「···············はい」

 

「これとかダマ・アマデュラの鱗酒じゃん。初めて見た」

 

一応こう見えてカティちゃんは成人している。

竜人族は成長が普通の人間と比べて著しく遅い傾向がある。故に、カティちゃんが幼く見えるが、こう見えて18歳である。

まだまだ若いね。

 

「問題はこれをどうするかだよなぁ····················」

 

「うぅ、せっかく貰ったのに、突き返すのも····················」

 

「とりあえず食べられるものだけ食べちゃおうか。腐るともったいないし」

 

「はいっ」

 

俺はこうしてよくカティちゃんに届くプレゼントを処理したり整理したりするのを手伝っている。

と言うのもあるが、実はもう1つある。

 

「やっと片付いた」

 

「あの、それじゃぁ····················」

 

「····················そうだったな」

 

実は俺とカティちゃんはとても人に言えない関係だ。

絶対に人には言っていけない、見られてはいけない関係。

 

それは

 

「ほらほら!片手剣のコンボがバラバラだぞ!」

 

「はい!」

 

「違う違う!もっと回転の力を生かせ!」

 

「はい!」

 

「片手剣使うなら盾を持ちながらアイテムを使うなんて当たり前だからな!」

 

「はい!」

 

「回復薬は苦くても飲む!死ぬぞ!」

 

「はい゛ぃ゛!」

 

カティは片手剣を構えながら、涙目になって回復薬を飲んでいるが、いまだ苦くてちゃんと全部飲みきれていない。

薬草とアオキノコは両方とも苦い。無論苦いものと苦いものを混ぜればむっちゃ苦い。

だが生死の駆け引きの中で、苦いから回復薬が飲めねぇとかバカみてぇなやつは紫毒姫のサマーソルト食らって死ねって『狩場は我が家』って言う本に書かれてた。

 

さて、なぜカティちゃんが俺の指揮の元、ハンターの訓練をしているかと言うと、俺が酔った勢いで自分の武勇伝(笑)を語ってしまい、それを聞いたカティちゃんが、俺の弟子になりたいと言ってきた。

俺もその時だいぶ酔いが回っていた為、二つ返事でOKしてしまい、今の状況に至る。

 

でもどうしよう。

 

カティちゃんのマイハウスに行く度に他のハンターの恨みを買ってしまい、狩場で隙あらば殺されそうです。

その度にレージーナが俺の事守ってくれて、正直俺が女だったら確実にレーギーナに惚れてるわ。

 

俺はカティちゃんのマイハウスの庭ことオトモ広場のベンチでカティちゃんの片手剣さばきを観察する。

 

正直筋はあるし、もうハンターとしてやっていけそうだ。

 

だからこそ不思議なんだ。

 

「·························なぁカティちゃん」

 

「はい!」

 

「別に教わるなら俺じゃなくて良くね?」

 

「·············································ぇ」

 

「だって俺の主な武器って言ったら大剣と操虫棍だよ?確かに片手剣は何度か使った事あるし、猫パンチ?で古龍もぶっ殺したことあるけどさ、カティちゃんの腕ならもっと凄腕の片手剣使いに教えてもらった方が伸び代もあるって言うか····················」

 

そこで俺は気づかなかった。

ガシャンッ!と片手剣を地面に落とし、唖然とした顔で両目からボロボロと大粒の涙を流しながら泣いているカティちゃんに。

 

「ほえ?」

 

「やっぱり、わたしじゃだめですか····················?」

 

「あの、ちょっ」

 

「やっぱり私みたいな小さな身体じゃ、ジャックさんを満足させられませんか?」

 

「ハンターとしての話だよね!?こんな小さな体じゃハンターになれないって事だよね!?」

 

「私頑張ります!今は小さいかもしれませんけど、今よりも大きくなって、絶対にジャックさんを満足させるからだになります!」

 

「カティさん!いえカティ様!俺が悪かった!だからその物凄い語弊のある言い方をやめてもらえないでしょうか!」

 

「だから、だから私を捨てないでぇ·························」

 

「あの、ですから───」

 

ドシュッ

 

「·························」

 

次の瞬間、俺の頬を貫通弾Lv3が掠め、そのまま後ろにいたマタタビでラリってるアイルーの尻の穴に思いっきり直撃して、後ろのアイルーが「にゃア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」と断末魔をあげていた。

 

これは警告だ。

 

───次はテメェの穴だ。

 

という警告なのだ。

 

「····················これからも師弟関係を続けさせてください」

 

「··············私の事、捨てませんか?」

 

「はい」

 

「一生私の傍に居てくれますか?」

 

「待って、それは誤解を産むといいますか···············」

 

「私の事捨てるんだぁ···············」

 

次の瞬間、どこからかガチャンッとたまが装填される音が聞こえた。

 

「一生傍に居させてください」

 

「本当ですか!?やったぁ!えへへ、これからもよろしくお願いします!ジャックさん」

 

何故だろう、とても可愛らしいはずの笑顔が、とても怖い。

俺がカティちゃんが苦手な理由、わかっていただけたでしょうか。

 

「私の事、捨てないでくださいね」

 

皆が言う天使とは程遠い、妖艶な悪魔のような囁きが俺の耳に囁かれた。

 

 

 

 

 

 

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