自分にとっては因縁のある北米同盟、ブラッド隊も出てきます(笑)
今回は2万文字くらいなので読みやすい内容かと。
しかし見切り発車なので誤字脱字、記入ミスはあるかもしれません。
「こちらブラッド隊、目的地に到着」
壊滅した叢の拠点に北米同盟軍のアメイン、ブレイディハウンドが空輸され、降下する。隊長のブラッド・ワット大尉機は青い専用カスタム機である。
「終わった後か……遅過ぎたな…展」
隊長のブラッドが現場の状況を察する。
不機嫌ながらも不穏な物を彼は感じていた。
「各機、周囲の状況を確認」
「了解」
「了解」
ワット大尉の部下の男女がそれぞれ返事をする。
「スキャン開始」
レーダーとレドームを積んだソフィア・ルイス少尉のカスタム機が周辺のスキャンを開始する。
ソフィア機は拠点内に並べられ、横たわる何人もの姿を確認した。生命反応は無い。上からシートが被せられている。
「……花………?」
埋葬こそされてなかったが遺体の側には花が添えられていた。
更に拠点のスキャンを続けると花畑を探知する。
備える為か、数ヶ所摘まれた場所がある。
「大尉、これをご覧ください」
ソフィアは花畑の画像を各機に転送する。
「花畑……?大尉は現在、現場検証中だ」
「………」
隊長のブラッド・ワット大尉はコクピットから出て
戦場跡の空気を感じ、観察していた。
「酷い跡ですね……これほどの戦闘だったのにも関わらず、我々の軍は静観してたと……」
部下のレイモンド准尉にもこの場所での戦闘がいかに苛烈で凄惨な物だったかは解る。そしてそれを静観していた軍にも疑念を感じていた。
「そうだ。だが、これは一機の手によるものだ」
ブラッドは戦場跡から感じた推察を述べる。
「たった一機のアメイン……例の、ヤタガラスの新型でしょうか?」
日本有数のレジスタンス『ヤタガラス』。
新型の人型兵器、『メイレス』を実戦に投入し、その勢力を拡大しつつあった。
しかし、アメインゴーストとの戦いで一機を喪失。
その後は徐々に敗走を始めている。
撃ち捨てられたニュウレンのライフルを見てブラッドはこう語る。
「アジア軍の武装を使った形跡がある。このような所業、闘争本能剥き出し戦いをする機体を私は一つしか知らない」
「まさか、………『ゴースト』?」
「さぁな……そこまでは解らない」
「だが、人間であったならまさに狂戦士だ。常軌を異している」
ブラッドは目を閉じ、少し間を置く。
「それに……ゴーストが一体だけとは限るまい……」
「何か他に見つけたか?」
ブラッドは自分の機体に乗り込むと周辺の探知を続けるソフィアに尋ねる。
「リアクターですね。これでレジスタンス拠点の維持に必要なエネルギーを賄っていたようです。現在、数機は停止しています。これ程の戦闘で暴走せずに済むとは……」
ブラッド機にも映像が転送される。
「それと、レジスタンスメンバーと思われる遺体は布やシートが被せられて花も……」
ブラッドは映像を見ながら考察する。
「ゴーストの可能性は薄まったな。奴は人間を弔うような事をしない……」
「………」
「レジスタンスのメンバーの生き残りがいるということだ。狂戦士もレジスタンスと関係があるのだろう」
「追跡しますか?隊長」
レイモンドがブラッドに指示を請う。
「いや……何もかも遅すぎる。目的は調査だ。それに……彼らが我々の敵とは限らんだろう……」
ブラッドは何か思うような事があるかの発言をする。
「大尉、この花についてなんですが……」
映像通信のモニター越しにレイモンド准尉は一輪の花を手にとりブラッドに見せた。
「レイ、花を愛でる趣味があったのか?」
「いえ、ですが少々気になる事が」
ブラッドは冗談交じりに言ったがレイモンドの返答にただならぬものを感じ取る。
「その気がかりは捨て置けんな。ソフィア、サンプルの回収を。鑑識に回す」
「了解」
太平洋海中、潜水艦『水靈』内。
ブリッジにて新しく艦長となったミコトがその席に座るも頭を抱え、うつむいたままだ。
「………」
『伊吹ミコト艦長、何かご指示は?』
モニター二映し出された水靈のサポートAI『ハル』がミコトに指示を仰ぐ。
「解らない……どうすれば……」
ハルは水靈の制御を行う為のサポートAIだ。
ある程度の会話のような事は可能だが自我や意志があるわけではない。助言までは出来ない。
新しく艦長となったミコトは悩んでいる。座り込み俯き、頭を抱える姿、普段の凛々しさからは考えられない程の表情からそれが伺える。
「他のレジスタンスに宛は無いの?」
ケンジがミコトに語りかける。
「無くは無いが全て前艦長の人脈だ……私達だけでは受け入れて貰えるか解らない……」
長身で逞しく、頼りがいのありそうなミコトだったが今は不安の表情が隠せないでいた。
「水靈とあの新型の性能は戦力としてなら十分有用だけど実質、壊滅したレジスタンスの残党に過ぎないからね……ヤタガラスは?」
ケンジの口から出た『ヤタガラス』は日本でも屈指のレジスタンス組織だ。人道主義を掲げ、メイレスと呼ばれる新型アメインを有している。
「略奪と殲滅を行ってきた我々は人道主義を掲げるヤタガラスとは距離がある……」
ミコトの言う通り、特にヤタガラスのスポンサーであり代表でもある『宇堂キリュウ』は人道主義であり穏健派だ。敵兵相手とはいえ過激な行動は忌み嫌う。来るもの拒まずの姿勢もあるがヤタガラスからは敵視されていても何ら不思議はない。
「それに、今は押されてるって話だしね。メイレスも一機、喪失したって話だし」
潜水艦水靈、医務室。
そこには身体中を包帯で巻かれ、点滴を繋がれたハナがベッドに横になっている。
「おかしいわ……死ぬ程ごっつ痛い筈やったのに感覚があらへん………」
「痛み止めが効いてきたね……今はゆっくり休んで」
ユミは哀しそうに微笑みながら優しくハナにそう言った。
『負傷具合と設備から考えて彼女が助かる可能性は無い。無駄に医療品を使う事は……』
「黙れ!ペンギンモドキのポンコツが!」
非情ともとれるギンペイの言葉にミヤコは激昂した。
「ミヤコ、大声出すな……眠れんわ……」
ハナはそう言うと置かれているタブレットPCに映し出されるギンペイの姿を見る。
「見た目とは裏腹に面倒くさいやっちゃな……でもコイツ、頼りになるで……。ウチが死んだ後はええようにつこたり……」
「アホな事言うたらあきまへん!死んだらアカンどすえ!」
ミヤコがハナの前で叫ぶ。目には涙が浮かんでいた。
「あの……コレ……」
メアリーが拾ってきたハナのピンク色の眼鏡を差し出す。偶然にも傷一つ無かった。
「ええ眼鏡やろ?……やるわ……それ。メアリっちに似合うと思うで……せっかくエエもん持ってんねんからもっちっと……オシャレに気ぃ使い………」
ハナはもう身体はほとんど動かなくなったのか
包帯の巻かれてない片方の目だけわ自分を見るようにうに動かす。
「あーあ……、この塩梅じゃもう男も落とせへんなぁ………」
「しっかりしなはれ!ウチが先にええ男捕まえてもええんか!?」
ミヤコはハナの手を握る。
「ミヤコ……もうなんも聞こえんわ……だんだん暗くなってきおった……眠いんや……」
「死んだらあきまへん!死んだらアカン!ハナァァァァァァァッ!!」
「ゴメン……な……おおきに……」
ハナは小さな声でそう言うと目を半開きのまま事切れた。
『彼女の生体反応の停止を確認……』
「黙りんしゃい!」
「ギンペイ、少し黙って」
メアリーは険しい表情で言った。
『了解した』
夕暮れ時の海、太平洋の何処かは解らない。周囲には陸地も見えない場所。
水靈は浮上し、一同がその上に並ぶ。
「ハナ……」
ミヤコが静かにハナの冷たくなった顔を撫でる。
ハナは整備用の備品で作られた簡易な棺桶のような物に入れられ、一人一人、その中に花を添えていく。
そして、その棺桶は海へとゆっくり沈んでいった。
「桜ハナ、そして大海ウミヒコ艦長を始めとする苦楽を共にし、散っていった仲間達に……」
ミコトは感情を殺しながら弔いの言葉を発する。
そして一同は敬礼する。
「うあああああああああ!ハナァァァァァッ!!」
ミヤコは叫び、泣き崩れる。
「アサミ……泣かなかったよ……偉い?」
アサミは涙を堪え、今にも泣きそう声でそう言った。
「そう、頑張ったね……」
ユミは優しくそう応える。
だが、メアリーはアサミの前で屈むと肩に手を置き
「今は……、泣いていいんだよ」
と優しく言った。
「うっ………うぇ、ああああああああああああ!」
その言葉にアサミの気持ちが緩んだのか、アサミは泣き叫ぶ。
「ああああああああああああああああああああ!」
まるでアサミが抑え込んでいたものが一気に爆発したようであった。
無理もない。
アサミは両親も失い、そして今度は優しくしてくれた仲間達を失ったのだ。子供ながらにも配慮するように今まで無邪気に振る舞って来た事が伺える。
「今は……いっぱい泣こう……ね……」
メアリーは優しくアサミを抱き寄せる。
メアリーの瞳からも涙が溢れる。
貰い泣きではない。
短い間だったかメンバー達の人間性は解る。
メアリーも心の底から悔やんでいた。
「ハナちゃん……ダイゴさん……」
それを見たユミも口を抑えながら涙を流す。
「くそ……ちきしょう……」
レンも涙を流しながら歯をくしい縛り拳を握る。
他のメンバーも感情を堪え切れて無い様子だ。
「………ッ!」
マイアが涙を流しながらも鬼の形相で軍手を叩きつける。
「ドチクショウが……」
マイアは静かにそう言うと軍手を拾い、艦の中へ入る。
泣きつかれたのか、レンとアサミは寝付いていた。
「何じゃ?話ってのは」
呼び出された事についてマイアが口を開く。
子供を覗く一同が水靈ブリッジに揃う。
「決まっとるどす。カチコミどすえ。亜キョンか?オセ公か?ユ助?米公でもどこでもええどす」
「落ち着けミヤコ」
マイアが興奮気味のミヤコに静かに言った。
「皆に話して起きたい事がある。今後についてだ。だがその前に言って置く必要がある」
ミコトはそう言うと天井を見上げ、深呼吸をする。
「我々叢水軍は………実質的には北米同盟の私掠船だ……」
「しりゃくせん……?」
マイアは難しい顔をして言った。
『私掠船……いわば国が認める海賊だ。敵国の船を標的にして襲う』
「なんやて……せやったらウチらは米公共の手先やったいう事どすがなッ!」
ミヤコは声を荒らげ、叫んだ。
「正確には北米同盟は我々の存在を黙認していたという事だ。表立って支援すればテロ支援国家となる。国内外からの批判は免れない。北米同盟は襲わず、そして情報交換、支配地域内での拠点の黙認、物資の調達の代行……」
「結局はええように使われとった言うことや!ミコトはん!どういう事や!説明しなはれ!」
ミコトが話し終える前に声を荒らげたミヤコが割り込む。
「今、説明した通りだ」
「同じどす!レジスタンスだのいうても結局は占領軍の手下やったんどす!」
ミヤコはミコトに詰め寄り、飛び掛からんとする勢いだ。
「落ち着けミヤコ」
見かねたマイアがゆっくりとミヤコに近づく。
「せやったら連中は襲撃の時に何もせぇへんかったんや?ええように使われとっただけやないか!」
「落ち着け」
「もうええ!カチコミに行ったらええどす!どうせみんな敵どす!せやろ?!」
「それはできん。装備も物資も無い。子供だっているんだぞ」
ミコトもミヤコも譲らない。
「どうせみんな死ぬだけどす!玉砕どす!」
「ミヤコ」
「さっきから何どす!みなだんまりしよってからに!ヒヨったか!?」
ミヤコがそれぞれの顔をみるように叫んだ。
そしてマイアが黙ってミヤコの眼前に迫る。
「おぶぇ!!?」
マイアはミヤコの腹部に拳を入れる。
思わずミヤコは腹部を抑えながら崩れ落ち、倒れた。
「おどれ、ええ加減にせえ……」
マイアは妙に落ち着いた声で蹲るミヤコを睨みながら言った。
「うっ……マイ…ア……」
ミヤコは意識を失う寸前だった。
『加減しろ。もう少しで内蔵に影響が出るとこだったぞ』
「加減はしたつもりじゃが?」
『………』
「で、どうするの?」
ケンジが話を進めるように促す。
「………」
『迂闊だったな艦長。組織の事情を暴露するのはいい判断だと思えない。メンバーでないメアリーもいるのだぞ?』
「そうだな……。だが皆、苦楽を共にしてきた仲間だ。隠していても仕方ない。それに後が無いなら隠す意味も無い」
ミコトは立ち上がると一人一人の顔を見るように言った。
「信頼してるからといって全てを話せばいいという訳では無いよ?」
ケンジは真剣な表情でミコトに向かって言った。彼にも思うとこがあるようである。
「皆の意見を聞きたい。どうしたい?どうすればいい?」
ミコトはその場にいる全員に向けて聞く。
「とにかく先ずは生きる事だね。でも他のレジスタンスも北米同盟もアテには出来ないね」
ケンジはナイフを回しながら最初に答えた。先ず最優先とする事を述べる。
「『鏖禍刻(オウマガトキ)』はどうでしょう?」
ユミは手を軽く上げ、とあるレジスタンスの名をあげる。
「あれはレジスタンスの中でも一、二位を争う過激派だ。我々が言えた義理ではないが暴徒集団、犯罪組織だ。我々女子供を受け入れる人道的な考えは皆無だろう」
略奪と殲滅を行ってきた叢水軍だが日本のレジスタンス武装組織の中でも最も危険視される組織の一つ、鏖禍刻の悪行には躊躇がある。
危険薬物、売春等、あらゆる犯罪、裏ビジネスで資金を集め、その活動も徹底的な非人道的破壊や殺戮に従事している。
「ワシは誰が味方でも敵でも構わんが……亜キョンは無理じゃ。『指名手配』にもなっとるしの」
マイアはアジア自由貿易協商の支配下だった広島の出身だった。叢に入る前は広島で相当暴れ回っていたらしい。
「私は……ミコトさんの……皆さんの判断に従います」
イオは落ち着いた声でゆっくりとそう言った。
「私もです」
イオに続き、カエデもそうとだけ述べた。
「ナギ、おま……」
「ただ従い、ただ敵を殲滅するのみ」
ナギは聞くまでもないといった感じだ。
「ミヤコ、お前は?」
ミコトはゆっくりと立ち上がるミヤコを見ながら改めて聞く。
「もうなんでもええ………でも『鏖禍刻』に行けるんやったらウチは行くどすぇ……」
ミヤコはゆっくりと立ち上がりながら苦しそうに言った。
「あの……いいですか?」
メアリーは軽く挙手するとミコトの目を見ながらそう言った。返事こそ無いが周りは黙っている。発言を許可するという風に受け取って構わない様子だ。
「北米同盟ともう一度交渉出来ないのでしょうか……?」
「『仲介人』との連絡は取れるかもしれないが……」
ミコトは難しい表情をする。こうなった以上、北米同盟との取引はもう出来ないという皆の考えだ。
「知っての通り、私は北米議会、ネイソン・デント上院議員の娘です。人質としての価値はまだ十分あると思います」
メアリーは自分を観ろと言わんばかりに胸に手を当て、凛とした顔つきでそう言った。
「しかし北米同盟はそれをわかっていながら拠点の襲撃を黙認した。軍の目が届きにくい場所だったとはいえな……」
「何か……問題があったのかもしれません……その『仲介人』の方にもう一度コンタクトは取れませんか?」
『可能性は低いが出来ることはそれしか無いかもしれない。今度は僕も手土産という事をアピールすればいい』
話に入ってきたギンペイの提案に皆が驚く。
『僕は貴重なサンプルだ。悪いようにはしない筈だ』
感情の無いAIとはいえ自分の身を挺して叢のメンバーを救うというのだ。そしてギンペイもそれに全く抵抗が無い様子である。
『だが、君達も北米同盟に投降する事になるだろう。議員関係者の身柄、高性能潜水艦、メイレス、そしてアイレス。向こうにとっても悪い話ではない。上手く行けば悪いようにはしないだろう』
「デントおじ……デント上院議員!どうして此処に?」
北米軍日本の基地に帰還したブラッドは見知った顔を見かける。
「ブラッド君か!随分立派になったな」
「大尉、デント議員とお知り合いで?」
ルイス少尉はブラッドに問う。
「孤児院にいた頃、世話になった」
「彼らは?」
デントはブラッドの傍らに立つ二人を見る。
「私の優秀な部下達です」
ブラッドが笑顔でそう言うと二人は敬礼し
「副隊長のレイモンド・ハーディ准尉です」
「ソフィア・ルイス少尉です」
と自己紹介をする。それに合わせてブラッドも敬礼する。
「ネイソン・デントです。上院議員をやらせて貰っています。いつもブラッド君がお世話になってます。皆、楽にしてくれ。私は軍人では無いのだから」
デントも敬礼を返し、改めて自己紹介をする。
挨拶を終えるとブラッドが話を切り出した。
「デント議員、メアリーは元気ですか?」
「実はその件で日本に来た。私の娘、メアリーが日本で行方不明だと」
世間話のつもりだったがその内容がデントが此処に入る理由だった。
元々何かしら動揺が伺えるデントの発言でブラッドにも動揺が走る。
「何だって!?メアリーが?」
「………」
女の名前を聞いたソフィアに軽く動揺が走る。
「アジア軍とオセアニア軍の襲撃を受けた海賊レジスタンスの人質になっていたらしい。居ても立っても居られなくてね……」
「デント議員、これは私の推測と考えですが……彼女はおそらく生きています」
ブラッドはゆっくりとデントにそう告げた。
「何だって!?」
デントは思わずブラッドの両肩を手で掴み、迫った。
「現場は激しい戦闘の後でした。多くの遺体も残されていました。しかし、僅か生存者の痕跡もあります。おそらく逃げ果せたのでしょう」
ブラッドは落ち着いて自分の考えを述べる。
「娘は?メアリーは何処に?」
デントは必死の形相でブラッドに聞く。
「そこまではわかりません。しかし、彼女は貴重な人質。何かしらコンタクトもあるでしょう。私からも掛け合って見ますが父が、スピアーズ副司令官が自国民の、人命を軽視する判断をするとは思えません」
「それに、デント議員は孤児院に多くの援助をし
て頂いております。父もその恩には報いる為に尽力するでしょう」
「ああ、ありがとうブラッド君」
ソフィアが前に出て落ち着いた声でデント議員に語りかける。
「デント議員、一先ず落ち着きましょう。休憩室にご案内します。コーヒーでもいかがですか?」
「ああ……頂こう……」
レイモンドは二人を見送ると
「あれがネイソン・デント上院議員ですか……その非の打ちようの無い人格から『聖人』とも呼ばれ、国民からの人気も高い。まさか近くで目にする日が来るとは……」
と、始めて直に見た人気の政治家との対面の感想を口にした。
「ああ、彼はまさに『聖人』だ。彼が大統領になれば我々の国の安泰は確実だろう」
「尊敬しておられるのですね」
とレイモンドが言うとブラッドは目を閉じ
「私が最も尊敬するのは父であるスピアーズ副司令だ。彼は昔から……まさに聖人が行き過ぎて遠く思える存在でもあったよ……」
と、思い出を語るように言った。
「そして政治の世界で生き残る議員らしくしたたかさもある。まさに完璧ですね」
「したたか?」
「ええ。以前発言が問題視された時の事ですよ。マスコミ相手のあのパフォーマンスは見事だと。それでデント議員の人気に拍車がかかったという……ご存知無いのですか?」
ネイソン・デント上院議員、自宅前。そこには多くのメディアレポーターが待ち構えている。
すると中からデント議員とその妻が両手にコーヒーの入ったカップの乗せたトレイを両手に抱えて姿を表す。
「こんにちは皆さん。ご苦労さまです。コーヒーをどうぞ」
デントは笑顔でそう話しかけてきた。
「こんにちはデント議員。発言についてですが……」
「コーヒーはいかがですか?」
デントはレポーター達にコーヒーを進める。
「いただきます」
レポーター達は出されたコーヒーのカップを手に取る。
「デント議員、発言についてですが。発言を後悔しておられますか?」
「いいえ」
デントは笑顔でそう応える。
「何故我々の前に?」
「僕が此処に来たのは皆さんにコーヒーを飲んでもらいたからです。ミルクも砂糖もありますよ。いかがですか?」
「ありがとうございます。コーヒーを飲んだら我々の質問に答えて頂けますか?」
「いいえ。僕が今、此処にいるのは人道支援の為です。皆さん我慢強く何日も待っておられる。お気の毒で仕方なく、せめてコーヒーを飲んで頂けたらと」
デントの表情は心配そうである。レポーターやカメラマン達の身を案じてるのだ。
「発言についてですが……」
「僕からはもう言える事は何も無いので、こうしてコーヒーをお出しすることしか出来ないです」
北米内では有名な出来事である。動画は世界中に拡散され、この出来事を知るものは少なくない。
「レイ、あれはデントおじさんの地だ。何の脈略も無い」
ブラッドは真剣な表情でこう言った。
ブラッドからすれば特に面白い話でも無いらしい。
「え?」
「デントおじさんは昔からああなんだ。それ故に『聖人』とも呼ばれる」
「………」
「生存しておられましたか。この度の襲撃、痛みいります」
艦内のブリッジの中央の大型モニターに『仲介人』である女性の姿が映し出される。金髪の長髪にスーツ姿の理知的な女性だ。リモートでの通信が行われている。
「『仲介人』の方ですか?私です!ネイソン・デント議員の娘、メアリー・デントです」
「メアリー・デント……声紋の一致を確認しました」
『仲介人』は手早い動きで声紋の照合を行った。
「新しく艦長になった伊吹ミコトだ」
「キャプテン・ウミヒコは?」
『仲介人』は変わらぬ表情で質問する。
「……亡くなられた」
「お悔やみ申し上げます」
仲介人は短い間目を閉じ、黙祷した様子だがその言葉は淡々として冷たい。
「それで……襲撃と人質引き渡しの件だが……」
「何かしらトラブルがあったようですね。申し訳ありませんがアジア軍とオセアニア軍の襲撃に関してはこちらも何も解らない上に対処致しかねます」
「しかし、メアリー・デントさんの身柄の確保は最優先だと判断します」
「ですが、残念ながらは貴方達には投降して頂く事になります」
『仲介人、いいか?』
「?」
『僕は戦闘サポートAI、アイレス、ギンペイだ』
「アイレス……まさか……」
ギンペイの登場に仲介人は表情こそ崩さず、言葉も相変わらず淡々としてるが微かに動揺がみられた。
『望むなら君達にも協力しよう。ただし、条件次第だが』
「………」
『彼女達、叢メンバー達への処遇だ。身柄の安全と高待遇を条件とする』
「善処しておきます」
『言っておくが無理やり僕を操作しようと考えない事だ。その時は君達の電子管理の軍事やインフラシステムを破壊し、共々滅びる事にする。僕には自滅プログラムがある。彼女達への待遇次第ではそうさせて貰おう』
「………」
『ブラフだと思うなら試してみればいい』
「ギンペイ……」
『君達人間の感覚からいうと『面白くない』という事だ。北米軍の一方的有利はそう判断した。好ましく無いという事だ』
「解りました。しかし身柄の引き渡しの指定はこちらに従ってもらいます。しばしお時間を」
「解った………」
「ネゴシエーターよりブローカーへ。海賊との通信内容を報告せよ」
「こちらブローカー。メアリー・デントの身柄引き渡し交渉の継続を判断。新型アメインに加え、メンバーの武装解除と投降、潜水艦水靈の譲渡を追加。新型時間、場所はこちらが指定するものとする」
「ふむ、良いだろう。場所は?」
「日本の管轄領土を提案。周囲を封鎖し機密を……」
「それは駄目だ。管轄内では海賊、及びレジスタンスとの繋がりが漏洩する可能性がる」
「機密、工作は徹底し…」
「ダメだ。その提案は受け入れられない。それに湾岸は軍を動かす事になる。敵を刺激する事になりかねん」
「それで、どのように?」
「身柄の引き渡しは非戦闘地域の中立地帯で行う。東北のな。ユーラシア連には引き渡しの間、停戦するよう交渉しよう。人道的な問題だ。連中も応じない訳にはいかない」
「………」
「馬鹿か!メアリーの身柄の引き渡しは中立地帯だと!?」
身柄引き渡しの情報を得たブラッドは激昂する。
「中立地帯なんて名ばかりだ!そのエリアこそが『境界戦』の主戦場だった場所だ!今もな!」
あまりにこの話がめちゃくちゃなのはブラッドにも解る。ブラッドの中で様々な感情が入り乱れ、抑えきれない様子だ。
「場所によっては日本人の難民キャンプがあります。日本人はそこにしかキャンプは許されない……」
ソフィアも疑念と義憤からか、険しい顔つきで言葉を放つ。
「父は……、スピアーズ副司令とエドガー総司令は?」
ブラッドは司令官達に真意を問うつもりでいる。
だが、その言葉に答えるように上官がブラッド達の元に現れた。
「指揮の為に西側へ行った。今回の作戦は私が指揮を取る」
「ラミレス中佐……」
ブラッドは睨むようにラミレス中佐を見るとそう小さな声で呟いた。
このラミレス中佐という男は元より評判が悪く信頼もない。黒い噂も絶えず、実績よりもコネでのし上がったのが見て取れるような男だ。
「ユーラシア連の停戦条件は護送用の装甲車、新型機用の輸送車、有人のアメイン3機までだ。それ以上は攻撃とみなすとの事だ」
「ならば身柄受け取りと護衛は我々ブラッド隊に!」
「護衛はクリード隊が行う。それはユーラシア軍の連中にも伝えてある。作戦内容の変更は認められない」
「クリード大尉の……」
ブラッド隊の見知った者か、多少は安堵の様子が現れる。
「クリード大尉の部隊は優秀だ。心配はない」
そう告げると中佐はブラッド達に背を向けてその場を去る。
「何だこの作戦は?納得出来ん!」
ブラッドはその憤りを抑えられずにいた。
「メアリー・デントの身柄引き渡しの場所が決定しました。東北の中立地帯になります」
「なんやて……んなアホな……」
仲介人の報告を受けたミヤコは思わず声をあげる。
「北米管轄内では色々問題があるとの事です。人道的交渉に応じる事を示すためには他勢力の目の届く範囲で行う狙いがあると」
いつも通り冷静かつ淡々と喋る仲介人だったがなんとなくその言葉からは疑問のようなものも伺える。
「中立地帯……名ばかりで境界戦の主戦場だったエリア……。今も各勢力の実質的戦場だ。しかも場所によっては日本人の難民キャンプもある」
ミコトは不安を口にする。
『だがしかしこれが最後の機会だろう。拒否する余地が無い』
「ああ……解っている」
『もしもの時の為にセイレンの調整をしている。水靈の戦闘は可能か?』
「武装、弾薬は積んである。一度の戦闘ならなんとかなる」
『水靈のAI『ハル』だったか。アイレスと比較すれば旧式だが十分だ。念のためにこちらでアップデートしておく』
整備状況の確認の為、ミコトは班長であるマイアに通信を行う。
「緋浦、セイレンの調整はどれ位で出来る」
「知るか」
怒りの混ざったマイアの即答が返ってきた。
『メイレスは継続的な戦闘を想定されている。慣れた者なら整備は難しくないが皆、メイレスは始めて触るしメカニックとしても緋浦以外は日が浅い。僕のサポートも手伝って万全の状態にするには14時前といったところか』
ギンペイは想定の時間を割り出して伝える。
「11時までにやれ」
「あ゛ぁ!?無理じゃ!」
ミコトの指示に対してマイアは感情剥き出しの怒鳴り声で返す。
「ケンジまで手伝ってイオもカエデも不眠不休でやっとんのじゃ!急かして中途半端になったら機体が吹き飛ぶぞ!水靈や北米軍巻き込んでな!そんなんじゃったら決裂せぇ!」
マイアの怒鳴り声が響き渡る。通信無しでも艦内に響き渡る程の勢いがあった。
「……緋浦が言うならそうなる。聞いた通りだ。時間は……」
「14:30で調整しておきましょう」
想定外とはいえブローカーは淡々と応じる。
「すまん、助かる」
「『仲介人』が譲歩してどうする!?」
ネゴシエーターの呆れと怒りの混ざった声がリモート通信からブローカーへ届く。
「新型も潜水艦も我々の軍も吹き飛びますよ?」
「くっ!」
ブローカーの言葉にネゴシエーターは不機嫌に通信を切った。
だが、ネゴシエーターは不敵な笑みを浮かべる。
「まぁいい……その方が連中の準備も整う……」
14時過ぎ、太平洋沿岸。
潜水艦水靈が浮上する。
「ハッチ、開け!セイレン、出るぞ!」
水靈の格納庫の分厚い天井が開く。潜水と水圧に対する為に何層にもなり、複雑な構造であった。
『全システムチェク終了。不慣れながらよくやってくれた。優秀なメカニックチームだ』
セイレンのコクピット内でギンペイがそう呟く。
『セイレンは本来一人乗り用だ。狭いが短い間、我慢してくれ』
メアリーはナギの後部に跨がる。完全にナギとは密着状態だ。
「う……迫っ……ナギちゃんは大丈夫?」
「問題無い」
「瀬戸ナギ、セイレン、出る」
発進可能の合図が送られるとセイレンは水靈の格納庫から飛び出した。
「ウヒィ!!」
あまりの速度にメアリーが悲鳴をあげる。
『スラスターユニット、巡航モード。ナギ、メアリーは負荷に耐えられないだろう。速度を抑えろ』
『了解』
「うひょおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
陸地に向かう途中、
『ユーラシア軍のアメイン用空母1隻を確認。随伴艦は2。牽制か』
セイレンは指定された座標に降り立つ。
『境界戦』の戦場となった場所。
破壊され、朽ち果て残る建造物から、かつてはそれなりの街や都市があったであろうが廃墟と荒野になっていた。
地面に転がるボロボロの子供用のぬいぐるみがその凄惨さを物語っている。
「流石は日本人、時間通りだ。しかも早い」
北米軍のアメイン、ブレイディハウンドの小隊、隊長らしきパイロットがセイレンを見てそう言った。
「あれが新型アメイン……」
その中の女性隊員が驚きの表情でセイレンを見つめる。
「飛ぶ黄色いヤツに似てるが違う。速すぎる。無人機か?」
更にもう一人の男性隊員がセイレンを見ながらそう言った。
「北米軍、クリード大尉だ」
ブレイディハウンドから出てきた中年の北米軍隊員がそう告げる。
「隊長、ユーラシア軍のアメイン空母が1隻、護衛の艦が2隻」
クリードの部下である男性隊員がユーラシア軍の海の戦力を報告する。
「あちら側にもアメインの輸送車が」
さらに女性の部下が地上にもユーラシア軍の戦力を確認し、報告する。
「クソったれが!連中に一方的に有利過ぎる条件だ」
クリード大尉は睨みつけるようにユーラシア軍を見るとそう吐き捨てる。
「……こういう状況だ。さっさと済ませよう。メアリー・デント嬢の身柄と新型アメインの引き渡しを」
クリードは冷静になるとそうセイレンに向けて告げる。
セイレンのハッチが開くとメアリーがゆっくりと降りてくる。
「女……いや大人びてるがあれはまだ子供じゃないのか?」
クリード大尉はメアリーを確認したが彼女を見送るようにセイレンの上に立つ少女が気になった。
「メアリー・デントさんですね?」
ブレイディハウンドから降りたクリードはメアリーと対峙する。
「はい、あの……これを……」
メアリーは身分証明書にもなるブレンゾンの社員証のカードど大尉に渡す。するとクリード大尉は持っていた小型の機械でプラカードをスキャンする。
「照合を確認しました。メアリー・デントさん、あちらの輸送車へ。案内します」
輸送車から出てきた兵士がメアリーを輸送車へと先導する。
「君がその機体のパイロットか?」
クリード大尉はナギに向けて質問をする。
「そうだ」
「こんな少女が……俺の娘とそう変わらん年だぞ……」
思わずクリード大尉はそう呟いた。
「大尉、どうします?」
「海賊は皆、投降する手はずだ。現場の判断であの娘も来てもらう」
歩兵の質問にクリード大尉はそう答える。
そしてセイレンの上に立つナギを見上げながらこう言った。
「君も一緒に来てもらう。構わんな?」
「了解」
「ハラショー!連中の戦力、通達と違うな。交戦の意志有りだ」
ユーラシア軍、地上のアメイン部隊の指揮官であろう男がそう叫んだ。
妙なテンションの上がり方から何かしら知ってるような様子にも見える。
「?通達の通り北米軍のアメインは3機では?新型は海賊から回収するものだと」
副隊長らしき人物が隊長に問う。
「よく見ろ。4機だ。今、北米軍の物になったという事だ」
「ハラショー!」
副隊長も思わず声をあげる。
「アメイン空母にも伝えろ!交戦開始だ!奴らは通達を破った!」
ユーラシア軍の兵たちはアメインに次々と乗り込んでいく。
「あの……少しだけいいですか?彼女にお別れを挨拶をしたくて……」
メアリーがクリード大尉に向かって言った。
「構わんが急いでくれ。連中が殺気立ってる」
クリード大尉は渋々それを了承した。
「あの……ナギちゃん……」
「私、必ず実現してみせるから……日本人を救う事を……」
『待て。ユーラシア軍の動きを探知した』
ユーラシア軍のエリアから迫る粉塵、そして空母から飛び立つアメイン輸送ヘリ達。それらは
「なんだ?……あいつら!」
「ユーラシア軍、来る……ッ!」
ナギはそう言うとコクピットへと戻る。
ユーラシア軍は北米軍の態勢が整う前に砲撃を放つ。
「!」
その砲撃により護送用の装甲車が吹き飛ぶ。
メアリーは歩兵に守られる形でかがみ込む。
「各員、戦闘準備!!」
クリード大尉はそう命令を放つ。
「こちら北米軍、クリード大尉だ!まだ時間内だ!停戦を要求する」
クリード大尉は大声でユーラシア軍に通信を入れる。
「こちら大ユーラシア軍、バルコロッチ大尉だ。貴殿らは通達を破り、攻撃の意志ありとみなした。停戦、及び投降は一切認められない」
バルコロッチ大尉からは思わず歪んだ笑みが溢れていた。
「連中め……!やはりそう来たか!」
クリード大尉がそう吐き捨てるとユーラシア軍の輸送ヘリから次々とアメインが降下して来た。
指揮官用のゼリーゼジアマンに重装型四脚のソボーテジアマン、腕部がそのまま武器になってる物もあった。
その中の一機はバルコロッチ大尉の搭乗機たる重装型ゼリーゼジアマンがあった。
「ハラショー!狩りの時間だ!」
バルコロッチ大尉がそう叫ぶとユーラシア軍のアメインは散開した。
「こちらクリード小隊!援軍を要請する!ユーラシア軍が停戦を破った!至急援軍を!」
「………」
クリード大尉は応戦しながら基地への通信を発する。だが、通信は繋がらない。
「応答せよ!援軍を!」
『通信妨害か。これは基地側で意図的に行われてる』
ナギはセイレンをメアリーの元へ向かわせるとコクピットハッチを開いたまま、傾いた姿勢ですれ違いざまにメアリーを回収する。
「うわぶっ!?」
かなり強引でメアリーはコクピットに投げ込まれるような形で回収された。
「ああっ!眼鏡っ!」
その時の激しい動きでメアリーの眼鏡が外れ、地面に落ちた。
「君達は退避しろ!ここは俺達が食い止める!」
クリード大尉からの音声スピーカーからそう発せられた。
セイレンは射撃をしながら後退する。
「通信不能?!状況はどうなってる!?」
基地内でブラッド・ワット大尉が苛立っている。
「こちら側はクリード小隊のアメイン3機とアメイン用の輸送車両と装甲車のみ……一方的に不利過ぎる……」
レイモンド准尉も感じていたきな臭さを口にする。
「ラミレス中佐、納得行きません!説明を!」
北米軍の仲間達がラミレス中佐に詰め寄る。
「説明の必要は認められない。全軍待機だ」
だがラミレス中佐はそれを一蹴した。
『この周辺なら大丈夫だろう』
メアリーは廃墟の中に降ろされる。周辺は建造物から元々日本だった頃の名残りがある。
「ナギ……どうした?!何があった?!」
ミコトから通信が入る。
『ユーラシア軍が戦闘を始めた。空母が厄介だ』
「こちらでも確認した。ミサイル巡洋艦もいる」
『先ずは空母を落とす。援護、出来るか?』
「ああ、出し惜しみは無しだ」
『EPMミサイル、有効射程範囲』
水靈に搭載されたサポートAI、ハルがそう告げる。
「EPMミサイル、撃て!」
「これでもくらいなはれ!」
水面から垂直に水靈のミサイルが発射される。
それはユーラシア軍艦隊の上空で爆散した。
直接的な攻撃性は無いがそのミサイルからはEPM攻撃作用の破片がばら撒かれたのだ。
たちまちコントロールを失ったユーラシア軍の無人機は停止する。
「噂に聴くEPM攻撃か!アメインを有人仕様に切り換えろ!」
空母ではユーラシア軍兵士達がアメインに乗り込んで行く。
『敵艦艇、魚雷攻撃範囲内』
「魚雷発射!テェ!」
ハルの報告と共にミコトは命令を叫ぶ。
「往生しなはれぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
火器管制のミヤコの叫び声と共に魚雷が発射され、護衛艦2隻に命中する。
護衛艦は炎上し、轟沈していく。
その間をセイレンは輸送ヘリを落としながら空母へ向け飛んでいく。
セイレンは空母へ着艦しようとするとそこにはユーラシア軍のアメイン達が待ち構えていた。
「新型だかなんだか知らんが撃ち落とせ!」
アメインの一斉射撃が行われる。
セイレンはそれを空中で躱すと輸送ヘリを撃つ。
輸送ヘリは空母上にに墜落、爆発し、数機のアメインを巻き込む。
「まだまだ!この程度でこの装甲は……」
アメインの一機、ソボテージアマン四脚型はセイレンのブレードでコクピットを貫かれ、停止する。
『アタッチメント認証、解除』
セイレンは倒したアメインの武器の連射砲を左腕で拾うと乱射し、数機のアメインを撃破する。
『頑丈だが精度が悪いな』
撃ち切った連射砲を捨てるとまた倒したアメインの武器を拾い、アタッチメント認証を解除するとセイレンはアサルトライフルと合わせて回転しながら移動しながらに撃ちまくる。
空母上のアメインは瞬く間に一掃された。
撃ち尽くした連射砲を捨てるとセイレンが空母のブリッジに迫る。
「貴様……、大ユーラシア連に逆らうか……」
空母の艦長がそう言い終えると同時にセイレンはブリッジをブレードで薙ぎ払う。
「クソがァァァァァァァァ!!」
ボロボロになりながらも奮戦していた北米軍のブレディハウンドが一機、大破する。
「ジェイクゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
クリードがやられた仲間の名前を叫ぶ。
「このォォォォォォォォ!!」
まだ生き残ってる女性隊員のブレディハウンドが火気を撃ちまくる。
だが多勢に無勢、勢いで押され切り、砲弾により大破してしまった。
「ケイリーィィィィィィ!!」
クリード大尉の悲痛な叫びが響く。
しかし、大尉のブレディハウンドも脚部を破壊されて動けなくなってしまった。
「見たか!この重装型ゼリーゼ・ジアマンの力を!だがそれを乗りこなせる俺も大したものだがな!」
バルコロッチ大尉の重装型ゼリーゼ・ジアマンはクリード機にトドメを刺そうとする。
「バルコロッチ大尉!アメイン空母が!」
その時、副隊長からの通信が入った。
「なんだ!?艦隊が轟沈?!小娘の乗る新型にか?!」
重装型ゼリーゼジアマンは大破、炎上する空母の方を向く。
「ヌグォ!?」
その時だった。クリード機の射撃が数発、重装型ゼリーゼ・ジアマンに当る。
「教えてやる!死に引きずり込む魔物は少女の姿をしているのだ!」
被弾の弾痕こそある重装型ゼリーゼ・ジアマンにはダメージになっていない。
「この死にぞこないがッ!」
ゼリーゼ・ジアマンは振り返るとバルコロッチ大尉は若干苛ついたようにそう叫ぶと砲弾をクリード機に撃ち込んだ。
クリード大尉のブレイディフォックスは大破炎上し、沈黙する。
「……まさか、死の使いの鳥だとでも?」
艦隊を殲滅し、低空飛行で戻ってくるセイレンを見ながら思わずバルコロッチ大尉はそう呟いた。
ユーラシア連合やアジア自由貿易協商の国々では遥か古来より死の前兆、凶兆とも言われる伝説上の鳥、
『告死鳥』たる言い伝えがある。
セイレンの姿が微かにその死を呼ぶ不吉な鳥と被って見えたのだ。
「艦隊の壊滅は潜水艦による攻撃によるものだ!最新型とはいえ乗っているのは小娘だ!こちらも装備も数も勝っている筈だ!」
副隊長が部隊の士気を高める為の鼓舞の通信をする。
「アレを落とせば名誉は俺達の物だ!」
バルコロッチ大尉はそう叫んだ。
バルコロッチ大尉の微かな嫌な予感は己を鼓舞することによってかき消された。
「ウラァァァァァァァァァァァ!!」
部隊の叫び声が周囲に響く。
セイレンが降り立つとアメイン達はセイレンを囲むように位置取りをする。周囲からの射撃がセイレンを狙い撃つ。
しかし、セイレンはそれを躱していく。
セイレンは射撃を巧みに上下左右に躱しながらライフルを放ち、一機、また一機とアメインの数を減らしていく。そして、ブレードで副隊長のゼリーゼ・ジアマンを刺した。
『コントロール、奪取』
「なんだ?!どうなって?!」
副隊長のゼリーゼ・ジアマンは操縦を受け付けない。それどころか味方のアメインを撃ち始め、大破させた。
「うわあぁぁぁぁぁ!隊長ぉぉぉぉぉ!」
副隊長機は隊長機に襲いかかる。
だが隊長機はそれを何の躊躇も無く破壊した。
「小細工としては悪く無い。だが幾多の戦場を生き残ってきた俺には通じんぞ!」
バルコロッチ大尉の隊長機は背中のありったけのロケット砲を撃ち込んで来た。
だがセイレンはそれを匠に躱し、残存のアメインに当てる。
「甘い!甘い!」
隊長機は機関砲を撃ち込んで来た。
だがそれもセイレンはユーラシア軍のアメインを盾にして防ぐ。そして対メイレス用のアサルトライフルで反撃する。
重装甲の隊長機ですら仰け反り、装甲が凹んだ。
だが致命的なダメージは無い。
「この機体はその程度では落ちんよ!」
自身に満ちた隊長の音声が響く。
セイレンはクリード機のライフルを拾い、アタッチメント認証を解除する。
セイレンはバルコロッチ機のあらゆる攻撃を匠に躱しながら射撃を命中させる。俊敏に左右に、そして跳び上がり空中で翻りながらの三次元機動戦闘でバルコロッチを翻弄し、弾丸を浴びせながら確実に機体の装甲を削っていく。
そしてセイレンはクリード機のライフルに備わっていたグレネードランチャーを放つ。
隊長機の右腕部の関節部分に命中し、吹き飛んだ。
「馬鹿な!?この俺がッ!!小娘ごときにぃーッ!!」
隊長機は必死に抵抗を続けるもセイレンの接近を許す。
セイレンは零距離で左腕部関節に射撃を放つ。
バルコロッチ大尉の隊長機、重装型ゼリーゼ・ジアマンは両腕部無くした状態となった。
そこへセイレンは容赦無く銃撃を浴びせ、蹴りを放つと隊長機は吹き飛び、転倒した。最早動けない状態だ。
装甲がひしゃげ、コクピット内が露わになる。
満身創痍の少佐の眼前にはセイレンが北米軍のライフルを構え、迫っていた。
「待っ……」
少佐は両手を上げるように投降の意を示すようだったがそれはライフルの射撃音に消された。
『敵の殲滅を確認』
ギンペイは周囲のスキャンを終えるとそう言った。
程なくして水靈から通信が入る。
「ナギ、そっちはどうなっている!?」
「敵の殲滅を完了。直ちに帰投する」
『駄目だ。水靈迄の距離が遠すぎる』
ギンペイの探知によると水靈は戦闘の為に太平洋側へと航行していた。
セイレンのスラスターユニットを巡航モードにしても届かない距離だ。
「沿岸付近まで戻る」
ミコトはそう応える。
『いや、北米軍、ユーラシア軍両軍の動きを探知した。このままだと面倒な事になるかもしれない』
「ナギ、帰還を急げ!進路を……」
ミコトが言い終える前にギンペイが言葉を発する。
『いや、一旦別行動で別の地点で合流した方がいい。メアリーを回収する』
「……解った。後で連絡する」
ミコトは戸惑いながらもギンペイの案を採用した。
「了解」
ナギは一言そう応えると通信を終了する。
「何をしている?これはどういうことだ?」
緊迫した北米軍の基地に厳しい表情をしたジョウ・スピアーズ副司令とエドガー・フリーマン総司令官が基地へ戻ってきた。
「スピアーズ副司令……それにフリーマン総司令も……お戻りになられたのですか……?」
予定外だったのか、ラミレス中佐は動揺が隠せない。
「一段落ついたのでな。聞いてみればユーラシア軍との交渉が勝手に進んでおるではないか?基地への通信も繋がらない。これはどういうことか説明してもらおうか?ラミレス中佐?」
「それは……原因不明の通信障害が……臨時に私が指揮を取り……」
動揺しつつもラミレス中佐は説明を行う。
「出撃可能な物は全て出せ。クリード大尉の救援に向かう」
だがフリーマン総司令官はそう命令を発した。
「フリーマン総司令!」
思わずブラッドはそう声をあげる。
「ワット大尉、何をモタモタしている。早くいけ」
その場にいたブラッド・ワット大尉にスピアーズ副司令が指示を出す。
「はっ!ありがとうございます!」
ブラッドは急ぎその場で敬礼すると出撃の為に走り去った。
ジョウ・スピアーズとエドガー・フリーマンはその姿を見送るとエドガーは中佐の横を通りすぎる際、
「ラミレス中佐、軍法会議は覚悟しておいた方がいいぞ」
と、淡々と告げた。
「まさか……こんなことに……」
『急げ。両軍が迫ってる』
遠方では戦闘による煙がまだあがっていた。
メアリーはセイレンのコクピット内へと入っていく。
コクピット内で一息つく間も無く、メアリーの携帯端末から呼び出し音が響いた。
『通信を確認。ブレンゾンの日本支社、東北支部からだ』
「!」
メアリーは慌てるように電話に出る。
「はい!こちらメアリー・デントです!」
「メアリー君か!無事なんだな?私だ!ダイン・アダムスだ!」
「アダムス部長!」
「セレーナCEOから指示を受けた。君の安全を確保するために海賊……レジスタンスと交渉することになった。現在、セレーナCEOが交渉にあたっている」
「詳細や決定事項は折り入って連絡する。すまんがそれまで我慢してくれ」
「……はい」
『この先に使われてない別荘地帯がある。そこへ向おう』
セイレンはブースト移動で時々跳ねるようにしながら陸路を行く。
『お初にお目にかかります。わたくし、ブレンゾン北米支社でCEOをやらせて頂いております、セレーナ・デュフォンと申します』
水靈内のブリッジのスクリーンにリモートでセレーナの姿が映し出される。
「CEO……ブレンゾンの重役が何故……?」
ミコトは警戒する。
何故彼女が水靈への通信方法を知っているのかも疑問だった。
だがセレーナなその疑念を熟考する暇もなく、話を切り出した。
『率直に申し上げます。我々には貴方達への支援の用意があります』
「!!」
『勿論、そちらで確保している我が社所属のメアリー・デントとの身柄と交換になりますが』
「また間に合わ無かったか!クリード大尉なら持ちこたえると思ったのだが……」
現場にブラッド隊は一番乗りだったが既に戦闘は終わった後である。各勢力のアメインの残骸が周囲に転がっている。
「北米軍、こちらはユーラシア軍、キリル・ジルコフ少佐だ」
非武装の丸腰のアメイン、ゼリーゼジアマンがユーラシア軍側から現れた。
ブラッド隊は武器を構える。
「我々に戦闘の意志はない。間に合わなかったが同志の無意味な攻撃を止めに来た」
丸腰のゼリーゼジアマンからの通信だ。
「大尉、アメインにこそ乗ってますが武装はありません」
ソフィアはゼリーゼジアマンのデータをスキャンするとそうブラッドに報告する。
「……そうだな。司令部、判断を願います」
ブラッドは状況を司令部に報告。するとスピアーズが判断を下す。
「一時停戦には応じよう。ただし、調査、回収は我々が先だ」
「いいだろう。今回は我々にも否がある。判断に感謝する」
スピアーズの返答を聞くとジルコフ少佐のゼリーゼジアマンは反転し、ユーラシア軍のエリアに戻っていく。
「ユーラシア軍にもこういう奴がいたのか……」
ブラッドはその場から去るゼリーゼジアマンの背中を見ながらそう言った。
「各員、回収作業を急げ!」
スピアーズ副司令の通信からそう声が発せられる。
日も落ち、暗くなった山間部。
ナギ達はセイレンを枝や葉っぱで覆い、森へ隠す。
使われてないログハウスの別荘を見つけるとナギはドアを銃弾で無理やりこじ開け、二人は中に入った。
『元々富裕層の日本人の所有物だったが現在は使われていない。電気と水道は生きている。使用の痕跡はハッキングで消しておくので問題無い』
「ヒッ!!」
普段使われて無いせいか壁にゴキブリが一匹現れ、メアリーは悲鳴をあげた。
「!!」
するとナギはキッチンの果物ナイフを投げてゴキブリを仕留めた。
『利用するには問題無い。明日に備えて休んだ方がいい』
………To Be Continued.
政治とか軍内部の話、全くわかりません!
次回、ロボット戦闘ありません!
しかし、2話目投稿したあとに境界戦機公式の情報更新とはびっくりでしたw
極鋼ノ鋼鬼、楽しみですね。