境界戦機 ロストネイション   作:アンサングのフレンズ

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 今回もまた内容の情報量多いので前書きであれこれ言っても仕方ないので本編を読んでください(笑)
 一応アジア軍が新日本協力機構で北陸を手放した理由を描いています。
 もっと先の展開も書くつもりでしたがこの話は小出しにしていこうと思います。

 後半はかなり境界戦機らしさが出た内容になったと思います。


戦乙女 Janne Da Arc

 九州南部、オセアニア軍支配下地域。

 夜も更け、九州南部のオセアニア軍基地は形だけの警備をしながら基地内部ではカードのギャンブルに興じてる者もいた。

 実際日本の領土一部を占領下に置いてからは横暴な態度にも大した抵抗も無く、傭兵も混ざった練度や士気も低いオセアニア軍はたるみきっていた。

 

 そんな中、数台の車輌がオセアニア軍基地敷地内に向かっていた。

 

「我らは『薩摩隼人』!貴様らオセアニア軍に引導を渡してくれる!」

 

 そう拡声器で叫ぶと彼ら『薩摩隼人』はオセアニア軍の基地に向けて火炎瓶やらを投げつける。

 

「おいおい正気かアイツら?」

 

 それを見た警備の兵が笑いながらそれを眺める。

 

「バンイップを出せ」

 

 その指示と共にオセアニア軍のアメイン、バンイップ・ブーメランが出てくると車輌に向けて射撃を始めた。

 

「撤収!引け!引け!」

 

 薩摩隼人を名乗った集団は後退し、退散していく。

 

「単なるこけおどしか」

 

「だが見ろ。やってくれたな」

 

 火炎瓶の投擲により基地内の数ヵ所で火が上がり、物資も燃えている物がある。

 

「よくもまぁ舐めた事をしてくれたな。ちょいと解らせてやるとするか」

 

 バンイップ・ブーメランは車輌を追いかけていく。

 

 

 

「敵のアメイン、釣れ申した」

 

「良か。そのまま引き付けい!」

 

 闇に潜み、屈強な男達がその様子を確認する。

 

「今じゃ!」

 

 合図と共にワイヤーが追いかけてきたバンイップの脚を引っ掛けると転倒する。

 そして倒れたバンイップに四方八方から爆弾が投げ込まれた。

 

「何だ?」

 

「レジスタンスの車が吹っ飛んだんだろ」

 

 爆発音がオセアニア軍基地にまで聞こえた。

 

「バンイップ1番機、反応消失」

 

「どういう事だ?2番機と3番機を調査に向かわせろ」

 

 続いて二機のバンイップが反応の消失した場所へと向かう。

 

「あれは1番機!やられました!」

 

 大破し炎上しているバンイップ・ブーメランを後続隊が発見した。

 

「状況によっちゃ運悪くそういう事もある!奴らアメインは持っていない!見つけて蹴散らせ!」

 

 二機のバンイップは周囲を警戒する。

 

「チェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇストぉぉぉぉぉ!!」

 

 その叫び声と共に北米軍のジョーハウンド二機が挟み込むように斬りかかって来るとバンイップ・ブーメラン二機は瞬時に真っ二つに斬られた。

 

「2番機、3番機、共に反応消失!」

 

「何だ?何が起きてる?」

 

 戸惑うオセアニア軍の指揮官。

 

 

「チェストおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 すると基地周辺にその叫び声が響く。

 

「行くぞ皆の衆!命捨てがまるば今ぞぉぉぉぉ!!」

 

「チェすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!!」

 

 顔に傷のある屈強な男の掛け声に呼応するように男達がそれぞそれ木刀に角材、釘バットに鉄パイプと手製の武器を持ち、オセアニア軍基地に一直線に向かって行く。

 

「何だアイツら!気でも狂ったのか?!」

 

 だがその気迫にやや怯むオセアニア軍兵士達。

 

「所詮原始的で粗末な武器しか持たぬ寄せ集めよ!全員撃ち殺してやれ!」

 

 そう叫ぶとオセアニア軍は銃を発砲する。

 だが倒れる者もいるが数発の銃弾を浴びながらも薩摩隼人の男達は脇芽も振らず一直線線にこちらへ向かってくる。

 

「何だアイツら!止まら……」

「チェストーーーーーーーー!」

 

 その掛け声と共にオセアニア軍兵士達は接近してきた男達に頭をかち割られ、ある者は袋叩きにされる。

 

「怯むな!『お嬢』ば見とる!チェストばすっど!」

 

「チェストぉーーーーーーーっ!!」

 

 顔に傷のある屈強な男は大太刀を振るい、次々とオセアニア軍兵士を斬り伏せていく。

 

「バンイップだ!残りのバンイップを……」

 

「チェスト!!」

「チェストぉぉぉぉ!!」

「ちぇすとぉぉぉぉ!!」

 

 格納庫は瞬く間に男達に制圧されていた。

 

「チェストーーーーーー!」

 

 男達はついに司令室までたどり着いた。

 オセアニア軍の将校達はは観念したのか両手を挙げて降伏の意思を示す。

 

「我らは『薩摩隼人』!きさんが大将か!」

 

 顔に傷のある屈強な男がそう問いかける。

 

「そうだ……。降伏したんだ、命は助けてくれるんだよな?」

 

 司令官は確認するように言った。

 

「ならばすぐに一席ば設ける。そこで腹ば切るが良か」

 

「何を!話が違う!何で俺が腹など……」

 

 司令官が言い終わる前にその首が飛ぶ。

 

「よか。腹ば召す器に非ず。その命だけおいて逝くがよか」

 

 顔に傷のある屈強な男は首を跳ねた太刀を血を拭い、鞘に納めるとその鋭い眼光が他のオセアニア軍兵士達を睨みつける。

 その迫力にオセアニア軍兵士達は言葉を失い、動けなくなった。

 それはかつて恐れられた薩摩の侍の姿であった。

 

 

 

「よか!よか死に様じゃったど!」

 

「よう死んだ!見事ばチェストじゃった!」

 

 戦いで命を失った薩摩隼人の仲間達へ男達は号泣しながら賞賛と悔やみの言葉を送る。

 

「トヨ様、こちらへ」

 

 参謀らしき中年の男が案内するのは小柄な少女だった。

 

「お嬢ぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉぉぁぉ!」

 

「お嬢言うな大山」

 

 号泣し、叫びながら少女に駆け寄ったのは先程の顔に傷のある屈強な男。

 名は大山という。

 

「お嬢!皆チェストしたぜよ!声ばかけてやってくれ!」

 

 少女は丁重に並べられた仲間の亡骸に目を向ける。

 

「皆、見事ばチェストじゃった。大義である」

 

「おはんら聞いたか!お嬢ば言葉!良かばのぅ!」

 

「泣くのは後じゃ!先ずはこの戦、勝ち抜かねばならん!だがまずは中馬!大山!勝鬨あげい!」

 

「ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉ!!」

 

「チェストーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 薩摩隼人達の声が響く。

 

 

 

 北米軍、駐留基地。

 

「南九州のオセアニア軍、実質的な壊滅と撤退か…」

 

 ブラッド・ワット大尉が入手した情報に目を通していた。

 

「ここ最近はレジスタンス『薩摩隼人』の攻勢が続いていたとの事。何でも新しいリーダーはまだ少女という噂で『九州のジャンヌ・ダルク』とも呼ばれていますね」

 

 ルイス少尉が知り得た情報をまとめ、報告する。

 

「戦乙女か。健気な少女を御旗にね。だがなりふり構わぬその強さ、本物だ。これぞ日本の『サムライ』という奴か」

 

 ブラッドは関心した様子である。

 

「いずれは彼女達とも戦闘に……」

 

 ルイス少尉は案ずるように発言した。

 

「隣接する勢力はオセアニア軍にアジア軍だ。暫くは我々は静観だろう。しかし、現状では戦力的にもそう長くは持つまい。最も『例のアメイン』なような物があれば話は別だが」

 

 

 

 アジア自由貿易協商管轄内、北陸の都市部。

 実行支配が進み入植者で満たされたその都市には一際背が高く見立つランドマークの高層建造物が都市を見下ろし、管理するように建っていた。

 実際にそこで北陸の入植者や実質的に亡命等で市民権を得た日本人の管理や政務が行われてる総督府となっている。

 

「次の入植者の数は?」

 

「二千程です」

 

「居住区の確保は?」

 

「現在整備建造中ですが間に合いません」

 

「僻地の日本人を立ち退かせろ。市民権を剥奪しても構わん」

 

「承知しました」

 

 最上階、総督の部屋での総督とその秘書の会話だ。

 北陸の総督は葉巻を口に加え、秘書がそれに火を付ける。

 

「植民地の管轄といえど楽な仕事では無いな。北米共の領土も隣接してるしユーラシア軍も油断ならん」

 

 総督は振り返り、都市の景色を見下ろしながら葉巻の煙を吐く。

 

「だが我々アジア自由貿易協商が日本を得た暁には功績次第で私は日本全土の総督になる事もできる。その時の為にも上層部への根回しも怠るな」

 

「かしこまりました」

 

 総督と秘書は薄笑いを浮かべながら己の野望を語る。

 

「何だ?!あれは?アメイ……」

 

 その時、窓の外に突如目の前に降り立つメイレス、セイレンがグレネードランチャーの銃口を総督府の最上階に向ける。

 叫ぶ間もなく総督府の最上階から爆発音が響き、煙をあげた。

 

 

 

「今回の獲物は北陸のアジア軍に配備されたという新型試作機だ。連中得意のいわば模倣、メイレスモドキだ。ランドマークの建造物を破壊し、奴等を誘い込め」

 

 鬼曽の簡潔なブリーフィングだった。

 

 補助用の大型ブースターを空中でパージし、バズーカにグレネードランチャーの大型火器を装備したセイレンが北陸の都市部に降り立つ。

 

「この都市もウジ虫共の巣、入植地だ。日本人はいない。自由に暴れてこい」

 

 総督府の爆発にパージした大型ブースターの爆発により都市部は既にパニック状態である。

 警報が響き渡り、アジア軍のアメイン、ニュウレンが有人、無人問わず出てきた。

 

『雑魚ばかりか。ナギ、指揮車に迎ってくれ。コントロールを奪う』

 

「了解」

 

 ギンペイは指揮車のポイントを示す。

 ナギの操縦するセイレンは途中の有人機ニュウレンをグレネードやバズーカで操縦席ごと吹き飛ばし、駆逐しながら向かう。

 

「グワァァァァァァッ!!」

 

 通信回線から時折有人の破壊した指揮車やアメインから断末魔が響くがナギはそれを気に留める事もなく有人機を優先的に次々と撃破していく。

 セイレンは撃ち尽くしたグレネードランチャーをパージすると左腕の高周波ブレードで指揮車を斬り裂いた。

 

『コントロール制圧、動けるニュウレンは全て動かす』

 

 制御不能となったニュウレンは無人有人問わず暴走し、無差別に攻撃を始める。

 

『未確認のアメイン反応だ。例の新型か』

 

 振り返るとその先には三機の新型と思われるアメインが高速道路を脚部のローラー機構を使い、迫ってくる。

 

「未確認の敵だって話だが新型が負ける訳ねぇだろ!いくぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 威勢の良い一機が前に出てくる。

 セイレンはバズーカを向け放った。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!!」

 

 直撃し、先ずは一機、撃破。

 

「新型の虎人(フーレン)の装甲といえどあの大型の火力には耐えられん。散開し挟撃するぞ!」

 

「了解!」

 

 隊長の指示の通り2体のフーレンは散開し、セイレンを挟撃する。

 フーレンには標準装備された機体の各所のブースターにより重装甲ながら瞬発力のある高機動性を確保しており跳躍も可能となっている。

 

『メイレスをベースに模倣されたアジア軍のアメインだな。だがそれ故にニュウレンとは比較にならないスペックだ。総合的に北米軍のブレイディハウンドを上回る。気をつけろ』

 

 ギンペイはフーレンの分析し、警告する。

 高火力のバズーカで首尾良く一機撃破出来たがバズーカの残弾はもう無い。

 左腕のグレネードランチャーは回避、もしくはフーレンに装備されてる大型の盾で防がれてしまう。

 

 ナギの乗るセイレンは撃ち尽くしたバズーカとグレネードランチャーを投げ捨てるとハンガーのアサルトライフルとマシンガンを手に持つ。

 両手での射撃を巧みに操りながらフーレン二機を牽制する。

 

「このぉ!!」

 

 アジア軍の女性パイロットが乗るフーレンが装備されているロケットランチャーを放つ。

 切れ目なく速射され、ナギのセイレンは回避に専念する。

 

『ニュウレンには搭載出来なかった武装か。厄介だ』

 

「貰った!」

 

 隊長のフーレンからもミサイルが放たれる。

 性能的にはニュウレンに搭載されていた物と同じだがフーレンには搭載数が多くなっており、ミサイルの弾幕がセイレンを狙う。

 

 セイレンの機動性を活かし回避し続けるもミサイル郡はセイレンを追尾してくる。

 

 セイレンはミサイルから逃れる姿勢、前を向いたままマシンガンをミサイル目掛けて放つ。

 

 すると数発ミサイルに命中し、爆散。

 誘爆も起こりセイレンを追いかけるミサイルは無くなった。

 

「なんて性能なの……」

 

「アレを使うぞ!」

 

 そういった隊長のセイレンの胸部からワイヤー付きのアンカーが発射される。

 寸での所でセイレンは回避するがフーレンからの再び機銃の弾幕がセイレンを狙う。

 アンカーワイヤーに機銃、ロケットとミサイルの弾幕。それらに徐々にセイレンは防戦と回避に追い込まれていく。

 

「やった!」

 

 女性兵のフーレンのアンカーワイヤーの一本がセイレンに絡みつく。

 

「んくッ!」

 

 しかしセイレンの出力が勝るのか完全に拘束はできずフーレンは引っ張られている。

 

「なんてパワーだ……しかし動きは鈍っているぞ!」

 

 そう言った隊長のフーレンからもアンカーワイヤーが発射され、セイレンに絡みつく。

 すかさず女性兵のフーレンは後ろからセイレンを羽交い締めにする。

 

「いいぞ!そのまま抑えておけ。弾は切れてしまったが仕留めるにはこれで充分だ」

 

 隊長のフーレンはボロボロになった盾に内蔵されてる鈍器状の格闘武器を構え、近づいて来る。

 

「これで終いだ!」

 

 隊長機はセイレンのコクピット目掛けて振りかぶる。

 

 その時、ナギはセイレンのブースターの出力を全開にし、組み付いたセイレンごと隊長機目掛けて体当たりする。

 

「ぐわぁ!このっ!まだ足掻くか!?」

 

 驚く隊長とその機体目掛けてセイレンの肩のブースターノズルが向く。

 

「!!」

 

 そしてブースターから推進エネルギーが噴射される。

 

「グワァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 三機が絡み合う中、高熱の噴射が隊長機のコクピットを焼いた。

 コクピット部分は焼け焦げ、隊長の身体は炭化していた。

 

『指揮官機の生命反応は消えた』

 

 ギンペイの報告を聞くとナギはブースターの噴射を停止し、動かなくなった隊長機を離すと今度はセイレンの全てのブースターを噴射させる。

 

「な?!ちょ待っ…!」

 

 組み付いたままのフーレンを周囲の建物に体当たりし擦り付けるようにしながらセイレンは空中へと登る。

 

「いいっ!?この高度じゃ……」

 

 動揺する女性パイロットに対してナギは冷静に左腕の高周波ブレードを展開し、機体に巻き付いたワイヤーを切断する。

 

『ナギ、今なら振りほどけるぞ』

 

 ギンペイの言葉を聞くと即座にナギはセイレンの機体を錐揉みさせるとワイヤーは外れ、フーレンは叩きつけられた。

 

「うごぉがぁぁぁぁ!!」

 

 コクピットの防御力は強化されてるとはいえその衝撃は凄まじく、パイロットは血反吐を吐き悶る。

 まだ息はあるものの全身の至る所が複雑骨折といった所か。

 

 セイレンはホバリングし、銃を真下のフーレン目掛けて構える。

 

「や、やべて………っ!」

 

 容赦無い銃弾の掃射がフーレン目掛けて浴びせられる。

 装甲が強化されたとはいえ、動けず棺桶と化したソレは対アメイン用の銃弾の雨には蜂の巣にならざる得なかった。

 

 セイレンが地上に降り、反転し離れると同時にフーレンは爆発を起こした。

 

『自爆機能か?それとも不備か仕様か……』

 

 そんな皮肉をギンペイは呟く。

 

「こちらナギ、目標の撃破を確認」

 

 

 

 

「そうか、良くやった。残るは雑魚ばかりだ。始末しておけ」

 

 ナギの報告を受けた鬼曽はそう伝え、通信を切る。

 

「さて、こちらも手早く終わらせるとしよう」

 

 鬼曽は義手や義眼、そして身体から繋がれたケーブルで神経接続した一際大きいアメインに搭乗していた。

 そしてそのアメインはカラーリングは白だがかつて『ゴースト』と呼ばれたアメインに酷似しており、より異形な形の右腕にはアジア軍の新型、フーレンの頭を掴み持ち上げている。

 

「そのアメイン……まさか……?!」

 

「お前は知らずともよい」

 

 アジア軍パイロットの言葉をそう返すとアジア軍のフーレンの頭を掴んだままその白ゴーストは異形の右手で握りつぶす。

 倒れ込むフーレンにすかさず白いゴーストは左腕に持つ対アメイン用ショットガンがコクピット目掛けて放たれる。

 

 此処はアジア軍の北陸の基地拠点。

 ナギの任務は陽動だったようである。

 鬼曽が率いる鏖禍刻の部隊の強襲が本来の目的だったようだ。

 

 数機のアメインがローラー移動で白いゴーストを囲む。

 それらは北のレジスタンス、際の極光で使われていたビャクチに似ており、改修量産型だと思われる。

 

「御前、こちらも掃討が終わりました。後はあの格納庫だけ……」

 

 その時、一際大きい格納庫からレーザービームが放たれた。

 

 その先には通常のアメインの数倍はあろう巨大な多脚の機動兵器が格納庫を自ら破壊し、姿を表す。

 

「貴様らぁ!此処が我らアジア軍の重要拠点と知っての狼藉かぁ!」

 

 複座の操縦席の高い位置の後部中央には司令官が座し、スピーカーで怒鳴りつけて来る。

 

「ふん、貴様ら蛆虫共が好きなドブ臭いエビモドキの外来種か……外来種は駆除せねばな」

 

 鬼曽は大型アメインを観るとそう呟き、自分の搭乗機の右腕を構える。

 

 鬼曽の言う通り、その体躯は長く、アジア軍のカラーの赤に染め上げられ、多脚で前腕は大型の鋏状になっている。

 

「テロリスト共が!我らがアジア軍本国の防衛拠点で運用される大型アメイン『ロンシャー』の力、思い知らせてくれる!」

 

 大型アメイン、ロンシャーの前腕、右腕の大型のハサミ状の腕が開くとエネルギーが充填され、再びレーザービームが放たれる。

 新型のアメインといえどこれを喰らえばひとたまりもない。

 各機は散開し、回避する。

 

「ドブ臭くて喰えんがあれは私の獲物だ!お前達は他の害虫共を潰せ!」

 

「御意!」

 

 鬼曽がそう指示を出すと部下の量産型ビャクチはその場を離れる。

 

「逃すか!テロリストの小虫共がぁ!」

 

 ロンシャーの海老の尻尾状の後部の装甲が開くとそこから数発のミサイルが垂直に発射される。

 

「各機、フレア発射!」

 

 量産型ビャクチの指揮を取るメンバーがそう指示を出すと一斉にミサイル回避のフレアが放たれる。

 

「ふん、随分と気前の良いことだな」

 

 鬼曽はそう言うと機体背面のジャミング機能の出力を上げる。

 

 フレアとジャミングによりミサイルの雨は次々と標的を反れる。

 数発、目標に向かうものもあったがどれも各機が撃ち落としていく。

 

「これでも喰らえ!」

 

 ロンシャーの左腕の鋏からは連装のロケット弾が放たれる。

 だが鬼曽はその弾幕をものともせず回避しながらロンシャーへ迫る。

 

「吹き飛べぇぇぇぇぇ!!」

 

 だがそこへ司令官の叫びと共にロンシャーの右腕から再びレーザービームが薙ぎ放たれる。

 

「これがアジア軍の力だ!」

 

 レーザービームが放たれた後は焦土と化した。

 しかしそこには鬼曽のアメイン、白いゴーストが右腕を構えて立っている。

 

「馬鹿な!あのレーザーを受けて無傷だと?!」

 

 白いゴーストは動き出し再びロンシャーへ向う。

 

「撃て撃て!どうせ運良く外れただけだ!」

 

 再びロンシャーからロケット弾とミサイルの嵐が吹き荒れる。

 だが白いゴーストはその弾幕を掻い潜って来る。

 

「アンカーを放て!」

 

 ロンシャーの前面から複数のアンカーワイヤーが放たれた。

 だが白いゴーストはそれを躱し、束ねて右腕で掴む。

 

「馬鹿め!パワーならこのロンシャーの方が……」

 

 ワイヤーを引き戻そうとするが白いゴーストはビクともしない。それどころかロンシャーが徐々に引っ張られている。

 

「自慢のドブカスアメインもこの程度か」

 

 鬼曽は皮肉を吐き捨てると白いゴーストはアンカーワイヤーを引き千切る。

 そしてロンシャーの左腕に接近するとロケット発射口へ向けて左腕のショットガンを放つ。

 

「左腕大破!」

 

「レーザーを使え!粉微塵にしてやれ!」

 

 ロンシャーの右腕のレーザー発射口から光が放たれ、充填が始まっていた。

 そこへ白いゴーストはその異形の右腕をぶち込む。

 するとそこから凄まじいエネルギーの衝撃波が放たれ、ロンシャーの右腕は金属とは思えぬ膨張をし、破裂し爆発を起こす。

 

「何だ!?あの攻撃は!?」

 

 ロンシャー内部の搭乗員はその状況に一同呆然とする。

 本国で未だ無敵を誇った大型ロンシャーが完膚無きまでにここまでやられた事に。

 

「もう芸のネタは終いか?では滅っせよ」

 

 鬼曽がそう言い放つと白いゴーストはロンシャーの上部に飛びかかり、異形の右腕で抑え込むように触れる。

 そして再びそこからエネルギー衝撃波が放たれる。

 

「退避だ!退……」

 

 内部のアジア軍搭乗員は一瞬にして膨張、破裂した。

 ロンシャーの本体も同様だ。最早脚部意外は原型を留めていない。

 白いゴーストの異形の右腕のパーツが開き、冷却の蒸気が吹き出す。

 

 マイクロウェーブ・パイル

 通称M・W・P

 

 白いアメインゴーストの異形の右腕に標準装備された兵装だ。

 マイクロウェーブの衝撃波を打ち込み、内部から膨張させて破壊するシステム。

 輻射波動とも呼ばれる。

 至近距離でしか使えない欠点はあるが先程のように大口径のレーザーを防御する事も出来る。

 機体と神経接続され、鬼曽のような胆力があってこそなし得る技である。

 

 

 

「基地との通信が繋がりません!」

 

「何故だ?一体どうなってる?!」

 

「ぐわあああああ!」

 

 司令部を失ったアジア軍は総崩れとなり次々と撃破されていく。

 

『目標は達成したが雑魚ばかりとはいえ数が多い。こちらのでコントロール出来るアメインの数も限られてる』

 

 混乱した状態とはいえアジア軍のアメインは数が多い。

 突破し退避するのは容易ではない。

 

『何だ?!未確認の機体反応?新手か?!』

 

 そこへ一機のアメイン、蒼暗いカラーリングのメイレスであろう機体が乱入し、次々と二刀の刀でアジア軍のアメインを斬り伏せて行く。

 

「………」

 

『敵では無いようたが……?』

 

『やはり同胞でござったが。拙者らも助太刀致す』

 

 乱入したメイレスからであろう、独特の喋り方の通信が入る。

 

『これの搭乗者、フブキは訳あって口が聞けぬでゴザル。拙者達も鏖禍刻の傘下の組織故、お主らの味方にゴザルよ』

 

 通信相手はギンペイと同じアイレスだ。

 映し出されたヤモリのマスコットがそれを語っている。

 

 更にアジア軍の無人アメインが痙攣したような動きをすると暴走をはじめ、無差別に攻撃を始める。

 

『広範囲のハッキング!?何だ?』

 

 ギンペイはハッキングの元を辿る。

 

『おや、オイラを探知するなんてやるじゃ無い。やはり同じアイレスは違うね。にしてもアジア軍のセキュリティざっこwww』

 

「ボクら味方だよ。援護する。巻き込まれるよ。君は退避してね」

 

 それは口の悪い狸型のアイレスと電子戦特化のメイレスに乗った少年によるものだった。

 

 

 

『射線上、標的周辺に味方機無し。撃てます』

 

 都市の外側付近に待機しているジョウガンベースのメイレス。

 それの搭乗者に梟型のアイレスが淡々と通達する。

 

「こういうのは本業じゃ無いンだけどね。まぁいっちょ派手にやりますか」

 

 淡々とした梟のアイレスの報告に飄々とした態度でそう応えたパイロットは発射トリガーを引く。

 背中の大口径レーザーキャノンが噴煙を上げている総督府へと放たれる。

 レーザーキャノンは総督府の下部を抉り取ってく行く。

 

『総督府を?それよりも退避だナギ』

 

「了解」

 

『総督府の倒壊率100%www』

 

『各機、全速で退避』

 

「………」

 

『支配の象徴たる塔の崩壊にゴザルな』

 

「御前ッ!終わりましたぜ!」

 

 参戦した者達の通信が飛び交う。

 

「解った。こちらからも見える」

 

 報告を受けた鬼曽は搭乗機の白いゴーストを総督府の方へ向け確認する。

 

「見ろ十七番、あれが破綻した設計と権威の末路だ」

 

「了解」

 

 超高層建造物である総督府は根本がくずれ、そのまま倒れると同時に崩壊していく。

 噴煙に爆発、火災とそれに伴う建物の破壊と都市の被害は甚大な物となっている。

 

『鬼曽、さっきの連中は何だ?味方ではあるようだが』

 

 ギンペイは疑問を鬼曽にぶつける。

 

「そういえば話して無かったな。連中も私の傘下だ。『夜刀神』(ヤトノカミ)という。本業は戦術部隊では無いがそっちの方もなかなかのものだぞ」

 

『成る程、しかし援軍の通達は無かったが?』

 

「喰えん連中だ。あまりアテにはするな。途中まで静観していたのだろう」

 

 

 

「しかしまぁ俺もだが派手にやったもんだ」

 

『都市機能、インフラ、共に壊滅です。死傷者多数』

 

「まぁ連中のお上が何とかするでしょ。それはもういい塩梅に」

 

 崩壊していく都市の遠目に見つめるメイレス。

 ジョウガンベースの機体だ。

 総督府の脚元をレーザーで薙ぎ払った機体。

 その後ろには参戦した二刀の近接格闘型と電子戦特化型のメイレスが控えている。

 渋々ながらも戦闘に参加し、この状況を楽しんでる様子の

男がこのヤトノカミのリーダーなのであろう。

 

 

 

 レジスタンス『ヤタガラス』の拠点。

 

「みんな聞いてくれ。これより君達には九州へ向かって貰う」

 

 代表である宇堂キリュウが直接それを伝えに来ていた。

 

「九州……中国地方から撤退するって事ですか?」

 

 射撃戦特化メイレス、ジョウガンのパイロットである鉄塚ガシンが同様しながらもその事を確認する。

 

「一時的にだ……すまないがヤタガラスの戦力だけでは中国地方の戦線を維持できない」

 

『確かにそうだ。このままでは一方的に消耗するだけだからな』

 

『やはりガイ達が居ない戦力不足は響くか……』

 

 アイレスのナユタ、ケイが端末を通じて応える。

 

「だが悪い話ばかりではない。これは九州で勢力を拡大してるレジスタンス、薩摩隼人からの要請でもある」

 

 ヤタガラスの戦闘指揮官である熊井ゴウケンがもう一つの意味を説明する。

 

「薩摩隼人……リーダーは私達と年も然程変わらない女の子だって噂もあるね……」

 

 ヤタガラスのメイレス、レイキのパイロットであるシオンが知り得た噂を口にする。

 

『九州のジャンヌ・ダルク……事実ならば一度お目にかかりたいと思っていた所だ』

 

 レイキの支援AIであるナユタが興味津々にそう言った。

 

「あくまで噂だ。リーダーたる島津の当主やその臣下に以前会った事があるが屈強な男達ばかりだったぞ」

 

 熊井ゴウケンの傍らにいる馬崎が苦笑しながら言った。

 

『宇堂、他には?』

 

「……瀬戸内、及び日本の海域で活動する海賊レジスタンス『叢』(ムラクモ)も参加するとの事だ」

 

「海賊レジスタンス……」

 

『瀬戸内や太平洋周辺で略奪行為を行っていた連中だ。壊滅したという噂もあったがまだ健在だったか』

 

「でも何で宇堂さんはどうしてこの話を?宇堂さんは確か……」

 

 ガシンは不思議そうにキリュウに問う。

 

「敵であろうと略奪や殺戮は認める訳にはいかない。それは大義に反する事だ。大義無くしては人はついて来ない。仮に日本を取り戻せたとしても大義無き者は再び戦いの火種を起こす」

 

 キリュウは毅然と己の思想を語る。

 

『うむ。大義あるからこそ、人も集まろう』

 

『それ故に姫も私もヤタガラスに身を置いている』

 

 キリュウの思想にはケイもナユタも賛同している様子だ。

 

「遺憾ではあるが我々だけではこの窮地を打破出来ない。薩摩隼人との共同作戦はアジア軍に捕まっている日本人の救出だとの事だ。それにムラクモも海賊とはいえ無辜の民に略奪や虐殺は行っていない。譲歩や妥協の余地はある」

 

 キリュウは不本意そうではあるが同盟には賛成してる態度を示す。

 

「これが鏖禍刻(オウマガトキ)や夜刀神(ヤトノカミ)なら話は別だが」

 

『うむ、同意だな』

 

『論外だ。連中は破壊者と暴利を貪るならず者に過ぎないからな』

 

 ナユタとケイは頷いた。

 

『しかし九州までの移動はどうする?人員だけならまだしもメイレスの補給と輸送は?』

 

 ケイはキリュウにそう質問する。

 

「その事なら心配いらない。先程ジェルマンの名義で支援物資が届いたとこだ。あちらへの手土産にもなる」

 

『行方をくらましたと思ったら突然?どういう事だ?』

 

 ナユタもジェルマンの行動には疑問を持っている様子だ。

 

「相変わらず彼との連絡はつかないが見捨てられたという事では無いのかもしれん。そういう事で至急、九州の方へ向かってくれ」

 

 

 

 九州南部、薩摩隼人による実質的な領土奪還が進み薩摩隼人が支配下に置いた港の基地。

 その沿岸付近に叢の潜水艦、水靈が浮上する。

 

「あれが噂に聞く潜水艦、水靈(ミズチ)か」

 

 薩摩隼人の大山がその姿を観て驚き、やや興奮している様子だ。

 

「日本製最後の潜水艦。試作型を北米軍が管理してたという噂もあったが余計な詮索は無しにしておけ」

 

 中馬がはしゃぐ大山に釘を刺すように言った。

 

「来た!あれはヤタガラスでごわす!」

 

 見張りの双眼鏡の先には輸送車両の隊列があった。

 そこには数機のアメインらしきの姿も。

 

「例の新型アメイン、みせて貰うとしよう」

 

 レジスタンスが集う中、ゴウケンが先にムラクモのミコトに向け先に挨拶に行く。

 

「熊井ゴウケンだ。よろしく頼む。ヤタガラスの戦闘指揮官をしている。代表の宇堂キリュウが来れなくて申し訳ない」

 

「渚ミコト、ムラクモでミズチの艦長をやっている」

 

「渚……それじゃ君は彼の……。お父上や村上元提督は?」

 

 その名を聞いてゴウケンは何やら思うことがある様子だ。

 

「二人共戦死しました。父や艦長をご存知で?」

 

「そうか……残念だ。昔ちょっとな……」

 

 

 

『こっこっは!楽園ッ!ッではッないッかッ!』

 

 ムラクモのメンバー達を見たヤタガラスのアイレス、ナユタは突如叫んだ。

 女性メンバーの面々を見ての反応だ。

 

「ナユタ?!」

 

「どうしたんだ突然?」

 

『ふむ、どうやら壊れたようだ』

 

 シオンとガシンが心配する中、同じアイレスのケイは冷めた口調でそう言い放つ。

 

 

 

「ヤタガラスにムラクモの者ら!よう来てくれた!これよりお嬢が挨拶すっで!!」

 

「お嬢いうな大山」

 

 ムラクモ、薩摩隼人、ヤタガラスのメンバーが一同が相対する中、薩摩隼人の代表が高らかに名乗りを挙げる。

 

「おいが現島津家当主!島津トヨミにごわす!」

 

 小さい身体ながらもトヨミの声は大きくよく通った。

 

「何て気迫……これが同年代の子……」

 

 その姿にシオンを始めとするヤタガラスのメンバーは驚きを隠せない。

 

「オセアニアの雑兵共はおいの薩摩兵子が蹴散らし申した!」

 

「オセアニア軍は実質的に南九州より撤退を始めている。これより我々は北へ向かいアジア軍を討つ」

 

「じゃがその前に捕まった同胞の日本人ば助けねばならんばい!」

 

 トヨミ、中馬、大山が今回の同盟の目的を語る。

 

「アジア軍に拘束された日本人は大陸と日本を繋ぐための海底トンネル、『アジア協商トンネル』の工事で強制労働に従事させられている」

 

 中馬は用意していた地図で北九州の海沿いの地点を刺す。

 地図にも印がつけられていた。

 

「同胞ば救い出しこの忌々しい道穴さ潰して塞ぐばい!そん為にもおはんらの力ば貸して欲しか!」

 

 トヨミは叫ぶようにそう言うと仲間達と共に頭を下げる。

 

「承知した。我らムラクモはその為に来た」 

 

 ミコトは凛とした態度でそう応じる。

 

「勿論だ。我らヤタガラスも微力ながら力になろう」

 

 続いてこの場でのヤタガラスの代表の熊井ゴウケンも続く。

 

「あいがとさもす!心強いのう!ところでアジア軍に啖呵切ったヤタガラスのばかふともんはどこじゃ?紅白のに乗っ取ると聞いたのじゃが?」

 

 トヨミの言葉にヤタガラスの面々に沈黙が訪れる。

 

「………」

 

「彼は……その……」

 

「あの馬鹿は……俺達を守るために……」

 

 シオンは戸惑い、ガシンは俯きなら呟くように言った。

 

「チェストしたんでもすな!一度会ってみたかったが見事ばばかふともんよ!薩摩兵子に負けず劣らずじゃ!」

 

 トヨミはガシンの肩を叩くと満面の笑を浮かべそういった。

 ガシンは少し戸惑いつつも彼女が戦いの果てに散っていった彼の事を讃えてくれてる事が伝わる。

 

 

 

「みんな、聞いてくれ」

 

 リモート通信の宇堂キリュウの顔が端末の画面に映し出される。

 

「今すぐにでも海底トンネルで強制労働させられている日本人達を助けに向かわせたいが何せ準備がまだまだ整っていない」

 

 レジスタンスの三勢力が集ったとはいえど悪くいえば「寄せ集め」である。

 その事はキリュウだけでなくレジスタンスの面々も理解していた。

 

「そこで互いに協力しあい、作戦の立案、そしてその為の準備や装備を整えなければならない」

 

 リモートからでも伝わるキリュウの表情には緊張感があった。

 

「勿論それにはお互い理解し合い、受け入れる必要がある。

こちらからも食料だけでなく嗜好品の提供は惜しまない。お互いに親睦を深めてくれ」

 

 だがそれを告げたキリュウの表情は和らいだ。

 

「おお!そいばありがたいの宇堂どん!」

 

 トモミも笑顔でそれに応じる。

 

「提供に感謝する」

 

 ミコトもいつも通りの仏頂面で応じる。

 

「かつて侍の時代、九州と中部地方で同盟が結ばれたという。その同盟の再来といった所だ」

 

「………」

 

「この同盟が良き縁で有る事を願って」

 

 そう言うと宇堂キリュウのリモート通信が切れる。

 

 

 

 街の中にある廃工場の倉庫。

 そこではアメインのメンテナンスが行われていた。

 

「これがジョーハウンドの改造機……」

 

 ヤタガラスのメカニックがそれらを見上げて驚く。

 北米軍の旧式のジョーハウンドは日本各地のレジスタンスでも使われいるがそこにあるのは大胆な改修が行われていた。

 

「軽量化されて機動性が上がっている。薩摩隼人の戦法に合わせた改修ってとこか……」

 

「こっちのは腕部が機銃になってるぞ!」

 

 ヤタガラスのメカニックの面々が騒ぐ。

 同じく軽量化され両腕部がガトリング砲になっているジョーハウンド。

 

『手持ちの武器は交換は簡易だがアタッチメント認証がある。レジスタンス側からすればいっそこちらの方が効率的という事か。操作もその分容易になる』

 

 ケイがジョーハウンドの改造型のデータを閲覧し評価した。

 

『どうだガシン?ジョウガンもこういう改造は悪く無いと思うが?』

 

 感心を示したケイはジョウガンに提案をする。

 

「できればジョウガンはあまり大きな改造はしたくない。父さんの形見だからできればそのまま使いたい」

 

『そうだったな。それにガシンにはガシンに合った戦い方もある』

 

 ガレージで整備を受けるジョウガンに手を当てながらガシンは応える。

 父の形見であるこの機体に思い入れの強さが観える。

 

 

 

 

 

「ひとまずジョーハウンドの改造を優先じゃ!急ぎのはワシに任せや!」

 

 整備現場を仕切るマイアの声が響く。

 

「いやーどうもどうも、私、ヤタガラスの整備班の村松タケルと申します。以後お見知り置きを……。」

 

 下心丸だしのヤタガラスの眼鏡のメカニックの男、村松がその場にいたカエデに挨拶と共に握手を求める。

 

「………」

 

 カエデは嫌悪感丸だしの表情を村松タケル向ける。

 

「………アレ?」

 

 タケルはカエデの態度に戸惑う。

 

「……す、すみません」

 

 イオが割って入るとカエデに声をかける。

 

「……行こ、カエデちゃん」

 

 二人はそのまま村松タケルから離れる。

 タケルは呆然と立ち尽くす。

 

「おどれ、何か用け?」

 

「お、おどれ?いえ、挨拶をと思いまして·……」

 

 そのタケルにマイアが声をかけた。

 

「緋浦マイアじゃ。成り行きでムラクモの整備班仕切っとる」

 

「へへっ、どうも。ヤタガラスの村松タケルですぅ〜〜」

 

 村松は再び握手を求める。

 マイアはそれに応じ、強く握り返す。

 

「にぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!手が!手がぁぁぁぁぁ!」

 

 村松は転がり、のたうち回る。

 

「………?」

 

 

 

「あの、すいません。ヤタガラスの者です」

 

 アメインの改修作業を行ってるイオにヤタガラスの青年が声をかける。

 

「さっきはうちの村松が……その……あいつデリカシー無くて」

 

「……いえ、こちらこそ……」

 

「俺、馬崎っていいます。これ、お詫びの印に」

 

 馬崎は頭を下げながらちょっとした手土産である和菓子を渡す。

 

「あちらの子にも」

 

「待ってください。カエデちゃん、男の人苦手で………その……私も……なんですけど……」

 

 イオはカエデの元へ向かおうとした馬崎を制止すると緊張してるのか馬崎から視線を反らし話す。

 

「そうですか。では後で渡しておいてください」

 

 馬崎は微笑みそう言った後に周りを見るととある人物に目がいく。

 そこにはイオと同じようにマスクで鼻と口を覆い、サングラス二キャップ、フードと徹底的に顔を隠した姿があった。

 端末をチェックしながら色々と打ち込んでいる作業をしている。

 

「整備も大変ですもんね。臭いがキツかったり埃が舞ったり」

 

 馬崎は気遣うようにマスク姿のイオを見て言った。

 

「………」

 

「もう行きますね。邪魔してすみませんでした」

 

「あの……」

 

「私、柊イオっていいます。よろしくお願いします」

 

 イオは馬崎に向かって頭を下げる。

 

「俺は馬崎。こちらこそよろしくお願いします」

 

 馬崎もそれに応じ、丁寧に頭を下げた。

 

 

 

「痛てて……何なんだよさっきの人……。顔は綺麗だけどガサツなのは駄目だなやっぱ……」

 

 村松タケルは右手を抑えながら周囲を見渡しながら歩く。

 

「でもムラクモってよりどりみどりだからなぁ!他にきっと……」

 

 村松タケルはとあるスペースにたどり着く。

 そこではナギとミコトが筋トレに励んでいた。

 設備や資材を上手く使いダンベル運動を士たりぶら下がり、懸垂や腹筋に使っている。

 二人の肌からは汗と蒸気が浮かび、タンクトップ姿から鍛えられた筋肉の姿がはっきりと解る。

 

「………」

 

「何か用?」

 

 タケルに気づいたナギが声を掛ける。

 

「どうした?ヤタガラスに居た者だな?」

 

 ミコトもそれに気づく。

 無意識だろうが筋トレの最中のせいか妙に高圧的な物を感じる。

 

「いえ、し、失礼しました!」

 

 タケルは慌ててその場を離れた。

 だが慌てて走った故、不注意で歩行者とぶつかり、タケルは尻もちをついて倒れた。

 

「痛ぇな!気をつけろ!」

 

 不機嫌なタケルはそう叫ぶ。

 

「ゴメン、大丈夫?」

 

 タケルの目の前にいるのはムラクモの毒島ケンジである。

 心配そうにタケルを見つめる。

 

「………!」

 

 その姿にタケルは頬を赤く染める。

 ケンジの事を知らない者には大抵彼は可憐な美少女に見えるのだ。

 

「立てる?」

 

 ケンジはそう言って手を差し伸べる。

 タケルはその手を取り、立上がる。

 お互い手は握ったままである。

 

「大丈夫ですよ!俺も不注意でしたし!」

 

 打って変わって鼻の下を伸ばしたタケルの態度は豹変する。

 

「俺!ヤタガラスの村松タケルっていいます!整備を担当していて機械の事で困ったらいつでも言ってください!」

 

 手を握ったまま威勢よくタケルは自己紹介をする。

 

「ありがとう。ボクはムラクモの毒島アヤメ、よろしくお願いしますね」

 

 ケンジは偽名を語りタケルの手を両手で握った。

 

 

 

「……毒島アヤメさんかぁ……」

 

「しかし、俺には主任という人が……」

 

 自己陶酔に浸る村松タケル。

 ふと視線を感じる。

 

「おや?アヤメさん?お話ならそこでお茶でも……」

 

 振り返るとそこにはマスクにサングラス、キャップにフードという出で立ちの人物がいた。

 

「うわぁっ!びっくりした!」

 

 タケルは驚き飛び退く。

 

「え?何?静かにしろって?」

 

 グラサンマスクの人物はジェスチャーでそう伝える。

 

「えっと、俺、もしかして邪魔……?」

 

 グラサンマスクの人物は頷いて応える。

 

「はい、出ていきます……」

 

 村松タケルは静かに去っていく。

 ちなみに村松タケルは性格に難はあるがヤタガラスでも特に優秀なメカニックである。

 

 

 

 薩摩隼人の拠点にある道場にて。

 

「薩摩の剣術ね……。話には聞いてるけど実際に手合わせするのは始めてだな……」

 

 試合用の防具をつけながらシオンはそう言った。

 

『かの新選組に初太刀は筈せと言わしめ恐れられた剣術、しかし姫よりも小さな身でかの豪剣を振るえるというのか?』

 

 ナユタも色々とトヨミの使う剣術について調べている。

 

「ナユタ、手合わせといえど油断は禁物だよ」

 

 

 

「待たせ申したな紫々部どん」

 

 シオンとトヨミ、互いに防具を着け終え、木刀の木製の薙刀を構える。

 

「平然としててこの気迫……やっぱり出来る……」

 

 木製の薙刀を構えるシオンにも緊張感が走る。

 

「そんじゃ始めもすか」

 

 その言葉と同時にトヨミは従来の剣道の構えから薩摩剣術特有の構えに移る。

 

(あの構え、来るッ!!)

 

「チェストーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

(この踏み込み、速い!)

 

 トヨミの踏み込みは薙刀の間合いを瞬時に詰めた。

 シオンは薙刀で受け止めるようにしながら後ろへ飛び退く。

 その剣圧が防具の中まで伝わってくるかのようなトヨミの鋭い打ち下ろし。

 飛び退き躱すもそれを受けたシオンの薙刀は真っ二つに折れていた。

 

「凄い……これが薩摩の剣術……」

 

「いやー参った!おいの負けにごわす!見事ば身のこなしじゃってーーーッ!!」

 

「?」

 

 シオンはトヨミの言葉が飲み込めないでいた。

 

「薩摩の剣術は一撃必殺!躱されたらそれで終いじゃからのう!」

 

 己の負けを認めながらもトヨミの話し方は清々しい。

 

「いえ、武器を折られた時点で私の負け。お見事でした」

 

 トヨミに対しシオンもそう返した。

 

「不意に動けば二の太刀が来ると思って。それ程に隙が無かったんだよ」

 

『姫君達よ。今回は引き分けという事で』

 

 互いに譲らない雰囲気にナユタが口を挟む。

 

「何じゃこいは?何かのあやかしの類か?」

 

 端末から響く声に二人が歩み寄るとナユタの姿を見たトヨミは不思議そうに言った。

 

『アンジェロと申します。お会いできて光栄です、九州のジャンヌ・ダルクの姫君よ、以後お見知り置きを』

 

「ジャンにゅ……何じゃ?」

 

 トヨミには今ひとつ馴染みの無い通称の様であった。

 

「それはナユタ。支援AIアイレスだよ。私のメイレス、レイキの制御を担当してるの」

 

「珍妙にごわすな〜〜」

 

「そういえばメイレスらしき機体があったけどムラクモにもナユタの仲間がいたりするのかな?」

 

『おそらくは。我らの先輩らしい旧式AIの存在は観測できたがメイレスの方のはどうも通信や反応をブロックしているらしい。何とも無作法な奴だ』

 

「人見知りなんだよきっと」

 

 

 

「パパーーーっ!一緒に遊ぼ!」

 

 薩摩隼人のアメインの整備格納庫にガシンに懐いている少女の声が響く。

 

「邪魔だから向こうへ行ってろ。ムラクモや薩摩の子供たちと遊んでいてくれ」

 

 ジョウガンの点検を手伝っているガシンは自分を父親と思い込んでる少女にそう言った。相手をしている余裕は無い様子だ。

 

「随分若い父ちゃんだな……。何歳の時に産まれたんだ?」

 

「違う!」

 

 一緒にいたレンの言葉をガシンは必死で否定する。

 

「なぁこの父ちゃん将棋解るのか?」

 

 レンは少女に問う。

 

「俺はこの子の親じゃ無い……。だがいいだろう。少しもんでやるか」

 

 ガシンは何かに反応するように自信ありがな薄笑いを浮かべる。

 

『大人気無いぞガシン……』

 

 ケイは呆れた言葉を送る。

 

 

 

『十二手でガシンの詰みだ』

 

 ケイの盤上の展開から結果を予測し、判定した。

 

「がはぁ!?」

 

「やったぁ!七連勝!」

 

 ガシンは悲痛の声をあげ、将棋の相手のアサミは歓喜の声をあげる。

 

「この兄ちゃんクソ弱くねぇか?」

 

 ガシンに追い打ちをかけるようにレンが言った。

 

「パパ……弱い……」

 

 更に少女も悲しそうに言った。

 

「い、今までは手加減してやってたんだよ……」

 

 明らかにガシンの表情は強がっている。

 

「ホントかぁ〜〜〜?」

 

 レンは疑いの目をガシンに向ける。

 

「あんたら楽しそうやね〜〜〜」

 

 缶ビールを片手にミヤコがふらふらと破ってきた。

 

「ミヤコってお前、もう酒飲んでんのかよ!」

 

 レンが呆れた様子で驚く。

 

「ウチの仕事は終わったどすえ〜〜〜」

 

 ミヤコは缶ビールを少し口に流し込むと無理やりガシンの隣に座る。

 

「んふふふ〜〜お兄さん男前やわぁ〜〜〜。ウチの好みどす〜〜〜」

 

 酔ったガシンに言い寄るミヤコ。

 しかしガシンは嫌がる素振りを見せながらも顔を少し赤らめている。

 

「なぁ?この後ウチと遊ばへん?」

 

「えっと……その」

 

 ガシンは緊張し、言葉が出てこない様子だ。

 

「え……兄ちゃん、そんな酒臭いペタンコが好みなのか…?」

 

 レンはドン引きした様子だ。

 

「ちげぇし!」

 

『ガシンは女に免疫が無いからな。こういう積極的なタイプは苦手だろう』

 

 ガシンの様子を見てケイはそう言った。

 

「ミヤちゃん!もう!ヤタガラスの人に迷惑だよ!」

 

 そこへケンジが割り込んで来る。

 

「なんや〜〜〜ケン……ゔっ!」

 

 ミヤコが名前を呼ぼうとした瞬間、ケンジの手刀がミヤコの首を打つとそのままミヤコは意識を失った。

 

「ケン……何だ?」

 

「ミヤちゃん酔ってるからね。ゴメンね!この人、酒癖悪くって」

 

 ケンジはガシンに手を合わせ謝罪をする。

 

「いや……俺はかまわ無いが……」

 

「ボクは毒島アヤメ、えっと……」

 

「……鉄塚ガシンだ」

 

「おいケ……」

 

 ケンジの名を呼びそうだったレンに対して怪しげな笑みを浮かべ人差し指で沈黙の仕草をしながらレンを見る。

 レンはケンジからただならぬ恐怖を感じ凍りついた。

 

 

 

 薩摩隼人が奪還した街の建物の一角、そこの診療所には多数の人が群がっていた。

 皆、ヤタガラスが抱えているメンバーや日本人の難民の負傷者や病人である。

 

「はい、これで大丈夫よ」

 

「ありがとう!ユミ先生!」

 

 診察と処方を受けていた親子連れの子供がユミに向かって手を振る。

 ユミはそれらの診察と治療を引き受けていた。

 

「次の人」

 

 そう呼ばれて入って来たのは熊井ゴウケンだった。

 

「ヤタガラス第二部隊の指揮を取ってる熊井ゴウケンです。私はどこも悪い所はありません。診察が一段落したようなので宇堂さんや仲間に代わって感謝の意を伝えに来ました。」

 

「潮ユミです。それでわざわざ……」

 

「ありがとうございます。とても助かっております」

 

 ゴウケンは丁寧にユミへ頭を下げる。

 

「何か不足してるものがあれば遠慮なく言ってください。約束は出来ませんが我々の支援者には医療に詳しい者がおりまして……」

 

「薩摩隼人の皆さんがある程度確保してくださってるので大丈夫です」

 

 ユミはゴウケンに微笑みそう言った。

 

「そうですか。何か困った事があったらいつでも言ってください。それでは……」

 

「お待ちください」

 

「?何か」

 

「折角来ていただいたので診察を受けてください。さぁ、上を脱いでください」

 

 

 

「……俺も年だな……気をつけねば……」

 

 診察結果が何か引っかかったのか、ゴウケンは独り言をぼやきながら歩く。

 

「しかし医者とはいえ若くて美人の前で服を脱ぐのは緊張するな……」

 

 ゴウケンは診察時に間近に迫ったユミの顔を思い出す。

 

「いかんな……別れたとはいえ愛する妻子がいる身としては」

 

 気分を切り替えるとゴウケンはとあるムラクモのメンバーであろう一人に目を向ける。

 フードにキャップ、サングラスにマスクをした装いのメンバーだ。

 

「しかしながら薩摩隼人もムラクモも個性が強い……」

 

 ゴウケンの口からその言葉が出る。

 

 

 

「北米人、一つ言っておかねばならん事がある」

 

 九州でのレジスタンス合流前、悪名高いレジスタンス鏖禍刻の拠点にて。

 概要説明の後、それらを纏めるボスである鬼曽がメアリーに声を掛ける。

 

「今回の作戦で協働するレジスタンス『ヤタガラス』のオーナー、宇堂キリュウは日本でも極左、反北米思想主義者だ」

 

「という事は……」

 

 高圧的な鬼曽に動揺しながらもメアリーにとっては良くない話であると解った。

 

「つまりお前が同行するのは不味いということだ。お前の身はこちら、鏖禍刻で預かる」

 

「えーーー……」

 

 メアリーはあからさまに嫌そうな顔をする。

 鏖禍刻のメンバーは統率こそ取れているが見るからに荒くれ者達の集まりだ。誰もが己の身を心配する事だろう。

 

「お前は大事な人質だ。悪いようにはせん。丁重に扱ってやる」

 

 鬼曽の表情に冗談を言ってる様子は無い。

 だがメアリーにとっては不安しか無い。

 

「教官、発言の許可を」

 

 ナギが挙手し、発言する。

 

「ほう?お前が私に意見があるとはな。何だ?言ってみろ」

 

 鬼曽はほくそ笑み応える。

 

「メアリーは我々にとって必要な存在です。同行を許可願います」

 

「……ほう?」

 

 鬼曽にとっては意外だった様子だ。

 ムラクモのメンバー達も少々驚きを隠せない。

 元よりの無愛想ながらナギは仲間は相応に大切にする事は皆解っていたが高圧的で意見をいい難い鬼曽にそれを言うとは思わなかったのである。

 

「鬼曽さん、私からもよろしいですか?」

 

 艦長のミコトも話に入ってくる。

 

「何だ?」

 

「彼女は人質ではありますが同時に我々の仲間でもあります。それに彼女はアメインのシステムメンテナンスの作業も担当しています」

 

 ミコトはナギの言葉を補足するように言った。

 そういった事でムラクモメンバーの意見は皆同じだと思われる。

 

「そういえば北米のブレンゾンの所属だったな」

 

 メアリーの事を議員の娘としか認識していなかったので失念していた様子だ。

 

「重要な作戦だからこそ彼女が必要になります」

 

『鬼曽、ボクもナギ、渚ミコト艦長の意見には賛成だ。彼女がいないと大きく効率が下がる』

 

「……いいだろう。どうせ宇堂の奴も直接は来ないからな。元より寄せ集めの協働だ。ヤタガラス連中とも元より上手くやるつもりはない。精々バレないように工夫する事だな」

 

 意外にも鬼曽はあっさり承諾した。

 荒くれ者達故に強引なまとめ方をしていると思われたが曲りなりにも人望はあるようで一理ある意見は取り入れてるようだ。

 

「ありがとうございます」

 

 ナギは鬼曽にそう感謝の意を伝える。

 

「まさかお前が自分の考えと意見を持つとはな。なかなか主体的に考えるようになったじゃないか十七番」

 

 すれ違い様にナギに告げると鬼曽はその場を後にする。

 

 

 

 そういう訳でフードにキャップ、サングラスに黒マスクといった出で立ち人物はメアリーである。

 ブロンドの髪に碧眼、白い肌のメアリーはひと目で日本人でないと解る。

 何らかの繋がりがあったムラクモでもミヤコやレンといった元より北米勢力を嫌っている日本人も少なく無いのだ。

 

 

 

「整備面では連携が取れてるな。即席寄せ集めにしては上々といったところが」

 

 巡回し、状況を確認して回る熊井ゴウケンはそう呟く。

 すぐ側ではケンジがヤタガラスの男達二囲まれ談笑していた。

 

「ねぇ、おじさまはヤタガラスの人?」

 

 腰掛けて脚をパタパタさせていたケンジがゴウケンに声をかける。

 

「ああ、第二特務隊の指揮をとってる熊井ゴウケンだ」

 

 男達に手を振り、別れると興味津々の様子でゴウケンに駆け寄る。

 

「ボクは毒島アヤメ、よろしく」

 

 妙に色気づいた仕草でケンジはゴウケンの手を取り握る。

 

「ああ、お互い上手くやれるといいな。ところで……」

 

「?」

 

「毒島アヤメ君、君は何故そんな格好をしている?」

 

 

 

 北米のネイソン・デント議員の自宅の自室にて。

 電灯もつけられていないその部屋にはデント議員が項垂れて下を向き、精根尽き果てた状態で座っていた。

 見るからにやつれ、目の下にはくまができ、顔には無精髭も生えていた。

 周囲には数本の酒瓶が転がっており部屋も荒れている。

 

「デント議員、通信が入っております」

 

 秘書からの通達が入る。

 無気力でとても応じれる状況では無いが業務上報告してるといったとこか。

 

「ブレンゾン北米支社CEO、セレーナ様からです。お繋ぎしますか?」

 

「………ああ」

 

 力無くデントは応えた。

 

『デント様、具合はいかがですか?』

 

「見ての通りさ……。しかし一方的にこちらが有利の示談を提示してきたとはいえよくもまぁ何度も連絡を寄越してくるとは豪気な事だな……。せめて直接会いに来る位はしたらどうだ?」

 

『……』

 

「まぁ一方的にこちらが有利な示談のお陰で私には怒りを向ける矛先が自分しか無い。この通り私はもう廃人だよ……」

 

『メアリー様……娘さんの件は大変申し訳無く思っております。我々に出来る事があれば何でも仰ってください』

 

「それでは酔える強い高価な酒を貰おうか?この通りいくら飲んでも酔えないんだ。それと日本で流行っているという噂のドラッグは用意できるか?」

 

 デントはやつれた顔で薄笑いを浮かべそう言った。

 

『……善処しましょう』

 

「冗談だ。酒にも逃げれん状態はむしろ私の罪と向き合う良い機会だ。しかし君はただの商売人とは思えぬな。だがその強引で類をみないやり方こそが北米で業績を伸ばしている理由か……?」

 

「一体何の用だ?私に取り入っても何も得られる物は無いぞ?」

 

『改めてご挨拶とお見舞いを。それだけにございます』

 

「ならばもう結構。私の残りの人生を飲んで暮らせるだけの賠償を頂く事になったからな」

 

『恐縮です。お身体にお気をつけご自愛ください。それではご機嫌よう』

 

 その言葉を最後にセレーナからの通信が切れる。

 だがふとした疑問からそれまで覇気の無かったデントの様子が変わった。

 

「単なる噂だと思っていたが……彼女、例のドラッグの流通を知っているのか?いや、社交辞令か……。今の私にはどうでも良い事だが……」

 

 

 

 薩摩隼人が奪還した領地にはまだ機能している大衆浴場、銭湯がある。

 現在の拠点からも近く、メンバー達がそこでの入浴を行っていた。

 

「えーっと……今は他のヤタガラスのメンバーはいないよね?女の人少なくて良かった……」

 

 キャップにフード、サングラスとマスクを外すとその下はメアリーだった。入浴前の脱衣所で警戒している様子だ。

 

『メアリー、近くに反応がある。急いで顔を隠せ』

 

「え…ちょ……ま……」

 

 メアリーは慌てて再び変装をしようとするも間に合わず

 

「脱衣所にヤタガラスから浴衣の支給があるのでもし良かったらそれに着替えて貰って……」

 

「あ」

 

 そこへムラクモのメンバーと薩摩隼人のトヨと一緒に入って来たヤタガラスのシオンと目が合ってしまった。

 

「北米の……人?」

 

「えーっと……」

 

「おはんがそうじゃったか。話ば聞いとるばい」

 

「トヨちゃんは知ってったんだ……」

 

 シオンには寝耳に水の様子だ。

 ヤタガラス全体には知らされて無いらしい。

 

「ヤタガラスには知らせられなんだか。じゃけんどもおはんは大事な人質ばい。それに仲間でもあると聞いとる」

 

『心配する事は無いレディ。姫は口が硬い故に』

 

 シオンの端末から気取ったナユタの声が発せられる。

 

「え、アイレス………」

 

 メアリーはシオンが掲げて見せた端末画面のナユタに驚いた様子だ。

 

『アンジェロと及びくださいレディ』

 

「ナユタです。私は紫々部シオンです」

 

『僕はギンペイ。こっちはメアリー。お互い余計な詮索は無しにしよう』

 

「にしてもやはり珍妙ばいね……」

 

 トヨミはアイレス達を難しく眺める。

 

 

「そげな事より風呂ばい!汗ばかいたでのぅ!」

 

 トヨミはそう言うと一足先に脱衣場で瞬く間に服を脱ぎ捨てると浴場に入っていった。

 

「大体の人は理解してくれると思うけど……宇堂さんには秘密にしといた方がいいかな」

 

「そうして貰えると助かります……」

 

『ところでメアリー、僕のこの端末のカメラをもっと見える所へ移して貰えるか?』

 

「………」

 

『人間の雌個体の裸体をしっかり観察出来るいい機会だ。島津トヨは位置が悪く、速すぎて捉える事が出来なかった。この端末は防水だから浴場の中でも大丈夫だ。それとそれぞれの個体をカメラに抑えたい。君は適当にカメラを向けるだけで……』

 

「………」

 

 メアリーは無言で端末を持つと脱衣所の空いているロッカーを開ける。

 

『どうしたメアリー?気にする必要は無い。僕達アイレスには性別は無……』

 

「フンヌッ!!」

 

 ギンペイの端末をロッカーに放り込むとメアリーは勢いよくロッカーの扉を閉め、鍵を閉めた。

 

『フッ、紳士としての作法も知らぬ愚か者めが』

 

 シオンはナユタの端末に目を向ける。

 

『姫、私はあのような破廉恥な者とは違い……』

 

 シオンも黙って開いてるロッカーにナユタの端末を入れると扉を閉め、鍵をかける。

 

『ああ!姫!せめて……せめてロッカーは衣類と……下着と一緒に……!』

 

「………」

 

 シオンはふと、浴場の二人組に目をやる。

 

「♪〜♪〜♪〜」

 

 アサミがナギの背中を洗っているのだ。

 

「ナギちゃん、流すよ」

 

 アサミはナギの頭から湯をかけると泡が流れ、そこからナギの鍛え抜かれ引き締まった身体といくつもの傷が露わになる。

 

「……凄い傷」

 

 シオンにはそれが痛々しく感じた表情を浮かべる。

 

「あまりジロジロ見ないで貰えます?」

 

 ナギを見つめるシオンにカエデがキツめに注意する。

 

「え……あ……すみません……」

 

 気まずいシオンはその場を離れようとする。

 

「あ、ヤタガラスのおねぇちゃん!」

 

 アサミはシオンに声をかける。

 

「今度はアサミと将棋で遊んでね」

 

「うん、また後で」

 

 シオンは軽く手を振る。

 

「うへぇ〜〜〜極楽じゃ〜〜〜」

 

「大きい……」

 

「なんじゃ、こいのこつか?」

 

「それだけ大きいとこう……色々大変そう……」

 

「まぁそうじゃのう。肩ばこる。じゃけん悪いこつだけでもなかよ?」

 

「肩ばこるけんども勝手に鍛えらればもす。こうしておいの小さい身体でも薩摩の剣術ば形になりもした」

 

「荒々しいけど綺麗な剣筋だったよ」

 

「おはんも良か身のこなしじゃったばい。また手合わせお頼みもす」

 

 

 

『人間の雌個体の身体をじっくりと観察出来る機会だったがこうなってしまうとは想定外だ』

 

 ロッカーの中の端末でギンペイがそう呟く。

 

『フッフッフッ……だが私は緊張時に備え、村松タケルに指示を出し、女湯に数台のカメラを仕込んでおいたのだ!紳士として女性の安全を守るためにッ!』

 

『そのカメラは既に全部撤去してある』

 

 ナユタが自慢気に語る中、ケイが通信に割り込んで来た。

 

『全く……紳士が聞いて呆れる……』

 

 そのままケイは通信をガチャ切りした。

 

『おのれケイ!あの白ギツネめ!』

 

 

 

『何をやってるんだアイツらは……』

 

「どうしたケイ?何かあったのか?」

 

 ガシンは銭湯へ向かう道中だった。

 

『何でも無い。こちらの話だ』

 

 

 

「お風呂、お先に頂きました」

 

「あ、どうも」

 

 ガシンが銭湯の入口に入る丁度手前、風呂上りのケンジとすれ違った。

 すれ違い様、ヤタガラスから支給された浴衣姿も相まって細身ながらも独特の色気と心地良い匂いが漂うその姿にガシンは頬を赤らめる。

 

「………」

 

 ガシンは見惚れるようにその姿を見送った。

 

「毒島アヤメ……だったか……」

 

 銭湯へ入るとガシンはケンジの偽名を呟いた。

 

「なぁケイ、以前ナユタの奴が女は胸だけじゃ無いって言ってたけど何となくわかる気がしてきた……」

 

『好みは人それぞれたからな。お前の趣味にとやかく言うつもりはない(ガシンには黙っておくか……)』

 

 

 

 北米、アーロン・エッカート上院議員の豪邸。

 その一室のサウナ室にて。

 

「旦那様、ブレンゾンCEO、セレーナ様から通信が入っております」

 

「ふむ、繋げ」

 

 サウナ室のスピーカーから連絡が入り備え付けらたモニターにセレーナの姿が映し出される。

 

『ご機嫌いかがですか?アーロン・エッカート様』

 

「こんな姿でも動じんとはな。以前寝たのもあるが流石にこういう事には慣れているようだな」

 

『またお相手させて頂けると良いのですが私は今多忙の身でして。要望があれば手配させて頂きますよ?』

 

「いや、結構。お前と寝たのは関係を持つ為だ。整形まみれの身体は味気が無い。それにこの年だ。楽しむのも一苦労よ」

 

『良い精力剤の宛があります。手配致しましょうか?』

 

「日本で蔓延してるという『例のドラッグ』では無かろうな?まあいい、要件は何だ?」

 

『先程ネイソン・デント議員の所へご様子を伺いに行きました。そのご報告を』

 

「あやつは今、誰とも会わんと聞いておる。度を超えた賠償とはいえお前を赦すとは思えんが」

 

『その甲斐あってか彼は意気消沈しております。現在は休養しておりますが間もなく辞職し、エッカート様の脅威にはならないかと』

 

「お前は相変わらず恐ろしい女だな。まぁおかげでこれからは枕を高くして眠れそうだ」

 

 エッカートはそう言うと薄笑いを浮かべる。

 

『恐れ入ります』

 

 

 

「皆のもん!よう集ってくれもした!戦の準備ばあるが宇堂どんの好意もあるば、今宵は楽しむでごわす!」

 

 レジスタンスの一同が集う食堂、薩摩隼人の代表である島津トヨミが挨拶をする。

 

「それではヤタガラスの代表として私、宇堂キリュウが改めて乾杯の音頭と挨拶を」

 

 リモートのモニターに映る宇堂キリュウの手には盃があった。

 

「お互い思う所はあるでしょうが、ここに一時的にとはいえ各レジスタンスの同盟が成立しました。先の時代にあったという薩長同盟といった所でしょうか」

 

「あの眼鏡のナイスミドルはん、なかなか男前どすな。声もええ声しとるどす」

 

 リモートで映し出されたキリュウの顔をミヤコは品定めする。

 

「島津トヨミさんはまだ若く、まだ少女の身でありながら父上君や兄君のご遺志を継がれ薩摩隼人を率いておられ、そしてオセアニア軍から実質的な領土奪還を立派に成し遂げられた。願わくばこの縁が続くことを願っております。つきましては我々ヤタガラスの創設に至っては……」

 

「長かね……」

 

 トヨミはそう呟いた。

 キリュウの挨拶かわ長びく様子でムラクモのメンバーのレンはあくびをし、ミヤコは話を始める。

 

「あの……」

 

 リモート先からも拠点の様子は解る様子でムラクモのメンバーの達が勝手に飲み食い始める様子が映った。

 

「あんま長いと折角の美味い飯が冷めるじゃて!乾杯!」

 

 既に食事に手を付け始めたマイアがそう叫んだ。

 

「か、乾杯ッ!」

 

 

 

「代表のキリュウはんもええけどやっぱウチはガシンくんやな〜〜」

 

「綺麗に整った顔してて寡黙でカッコいいですもんね……」

 

 向かい合った席でイオは酔ったミヤコに絡まれていた。

 

「イオ、横取りはアカンどすえ?あんさんは反則やからな」

 

「いえ、私は……」

 

「男の半分以上は大きいのが好きなんやで?もっと自信持ったらええのに……」

 

 ミヤコはイオの豊満な胸をつつきながらからかう。

 

 

 

「そういやミヤコの奴、さっきも飲んどったんじゃが……」

 

 そのイオとミヤコのやり取りを見ながらマイアは手に持った缶の酒を口にする。

 

「たまにとはいえミヤコさん、飲む時は派手ですからね。さっきも言ったんですが心配です……」

 

 ユミも不安そうにだが酒を口に運ぶ。

 

「止めるのも面倒じゃ。飲んどる時の腹パンは怖いしの」

 

 

 

「あ、イオさん、丁度良かった」

 

「馬崎さん……」

 

 馬崎は話し中のミヤコにも軽く会釈すると地元の名産品であろう品を出す。

 

「これ、良かったらどうぞ。お袋が送ってきてくれた物で……」

 

 馬崎はレジスタンスとしての活動は故郷の両親には秘密にしている。

 資産家である宇堂キリュウと関係のある企業に就職してるという事になっており両親からの贈り物等はヤタガラスを通じて馬崎に渡される事になってるのだ。

 

「おーい!馬崎!ナンパかコノヤロー!」

 

「ちげーよ!」

 

 既に酔って出来上がった村松タケルが遠方から叫び絡んで来る。

 

「なんかすみません……。面倒なのを制止しないといけないので俺行きますね」

 

「………」

 

「ほほぅ、イオもやっぱり隅に置けへんなぁ」

 

「ち、違います!」

 

「まぁ悪くないんちゃうか?応援しとるで」

 

「違いますってばぁ!」

 

 イオは酒を飲んでいないのに顔を赤くした。

 

 

 

「なぁ馬崎、あのガシンの隣に座ってる毒島って子、絶対に俺に気があるぜ?」

 

「何を言ってるだお前は……」

 

 村松タケルは遠目にケンジを見ていた。

 

「しかし俺には主任という人が……しかしムラクモ美人揃いだな……取っ付き難いのもいるけど」

 

 

 

「あれ、ガシン君野菜食べ無いの?」

 

 隣にいたケンジが野菜嫌いのガシンに気づく。

 

「ああ、……苦手でな……」

 

「駄目だよちゃんと食べなくちゃ。食べさせてあげる」

 

 ケンジは妙に嬉々とした態度でガシンの残した野菜を箸で掴み、ガシンの口へ運ぼうとする。

 

「はい、あーん」

 

「やめろ……やめろって……」

 

 ガシンは照れくさそうに拒否する。

 

「この子、いつも野菜を食べ無いの?」

 

 話を聞いていたユミがガシンの元へ来る。

 医者としての矜持からか気になる様子だ。

 

「そうなんだよ。パパ、いつも野菜を残してるの」

 

 ガシンに懐いてる少女がユミに応える。

 

「それは大変ね。栄養面が心配だわ」

 

 ユミはガシンの隣に座ると残した野菜をスプーンで掬う。

 

「万遍ない栄養摂取は健康の基本よ。アレルギーも無いみたいだししっかり食べないと!」

 

 そして野菜の入ったスプーンをガシンの口元へ運ぼうとする。

 

「はい、あ~んして」

 

 入浴後に浴衣に着替えたユミの姿は他を圧倒していた。

 流石にユミに合うサイズは無かったのか胸の谷間がしっかりと現れて溢れそうである。

 そして下半身からは肉付きのいい太腿が除いている。

 間近でそれを直視してしまったガシンは見惚れて思わず口が開いてしまう。

 物量とパワーの色気に圧倒されてしまったのだ。

 

「美味い……」

 

 やや放心状態ながらもガシンは口に入った野菜を咀嚼し味わっている。

 

「そう、いい子ね。良かった」

 

 ユミはガシンの間近で微笑みかける。

 

「流石に豊満おねパワーは圧倒的だね……強すぎる……」

 

「ユミ先生め……、また全部持っていきおったな……」

 

 状況を見ていたケンジとミヤコは小さい声でそう呟いた。

 

 

 

 ナギは黙々と食事を終えると幾らかの空いた食器をまとめると席を立つ。

 

「ナギちゃん、もう行くの?」

 

 シオンがナギに声をかける。

 ナギの隣の席にいたカエデがまたシオンを睨みつけるがシオンは気付いていない様子だ。

 

「そうだ。明日に備えて休息する」

 

「そう、お休みなさい」

 

「………」

 

 シオンの言葉に無言で応じる反応をするとナギはその場を後にする。

 傍らのカエデも急ぎ食事を終わらせるとナギの後を追う。

 シオンはその様子をじっと見つめていた。

 

「何か?」

 

「うわ!びっくりした!なんだメアリーさんか……」

 

 メアリーは変わらずの装いである。

 目立たぬ外れの席で食事を取っていたメアリーは足らない分を皿に取りに来た所だった。

 

「すみませんねぇ……こんな格好で……これ貰っていい?」

 

 そう言うとメアリーは残っている料理を皿ごと持っていく。

 

「何かナギちゃんに気になる事でも?」

 

「あの子、全然笑わないんですよね……。自分で判断して動いてるんだけどなんか淡々としてるというか無機質というか……」

 

 シオンはナギを心配するかのようにそう言った。

 

「私もそうでしたよ」

 

「そうなんですか。私と一つしか違わないのに大人っていうか年相応の子供らしさが無いというか……」

 

「あの子はもっと小さい時から訓練を受けて戦ってますからね。戦士として出来上がってるんだと思います」

 

「そっか……。そういう子もいるんですね。私は今でも戦うのは怖くて……」

 

「………」

 

「他に何か……?」

 

「カエデって人、何か冷たいんですよね。何か悪い事でもしちゃったかな?」

 

「あの子はナギちゃん大好きだからね。仕事はしっかりするけど暇な時はナギちゃんに付き纏ってる位だから」

 

「懐いてる人がいて良かったです」

 

「ナギちゃんですらちょっと迷惑に感じる位にね……。カエデちゃんはナギちゃんに救われてそのままムラクモに入ったんだってさ」

 

「そうなんですか。カエデさんにとってナギちゃんはヒーローなんですね」

 

「女の子だからヒーローってのはちょっと違うかもだけど……王子様みたく思ってるよねアレ……」

 

「………」

 

 シオンは黙って何かを思い出そうとしている。

 

「メアリーさん、私達、何か忘れてる気がするんですよね……」

 

「?そうだっけ?まだ作業は残ってるけど……」

 

 

 

『さて、同志ギンペイよ今、我々はかつて無い窮地に立たされている』

 

『勿論だ。打開策を今検索している』

 

 ギンペイとナユタが入ってる携帯端末は未だに脱衣所のロッカーの中であった。

 

『いかにして……ここから脱出するかだが……おかしい……。ケイにも反応が無い……』

 

『こちらもだ……何故……』

 

『私を忘れていかれてるしまうとは……姫ーーーーーーッ!!なんという仕打ちかーーーーーーーッ!!』

 

『ナユタ、落ち着け。これ以上はもう打つ手が無いと判断した。僕はバッテリー節約の為に休眠モードに入る』

 

『なんと!諦めるというのか!ここで寝たら死ぬぞ!』

 

『………』

 

『ギンペーーーーーーッ!!……あぁ……騒ぎすぎて……バッテリーの消耗が……』

 




 先ずは境界戦機の主要キャラ、ヤタガラスメンバーの登場です。
 時系列的には一期と二期の間なのでアモウとガイ、ミスズは不在です。
 
 にしてもケンジはヤタガラスを男を食い散らかす気満々ですねw
 一話でも語られていますが毒島アヤメを名乗る時は狙いを定めてる時です。
 これは殺るのもヤる時も同じ。
 偽名はケンジのケンを漢字にした絢をアヤと読んだのと人を殺める事から来てます。
 節操の無いケンジですが仲間といい感じになってる馬崎は外しています。

 馬崎とダリアの関係は信頼であって恋愛では無いというのがワイの解釈です。
 馬崎はかなりの好青年だと思っております。

 レジスタンスの新勢力、夜刀神(ヤトノカミ)ですがストーリーの構成上で必要無いかもしれませんが思いついてしまったので。
 元々はヤトノタケル、ヤソノタケルという名前でしたが
村松タケルと被るので辞めました(笑)

 鏖禍刻は過激派レジスタンスとするならヤトノカミはギャングみたいな感じです。
 白いアメインゴーストは本編のアメインゴーストに姿形は似ているも似て非なるもの、機械化神経直結有人制限です。

 大型アメインは基本的に拠点防衛用です。
 バカ高いコストでデカいので主にアジア軍とユーラシア軍の本国で運用されております。
 日本では拠点防衛用。

 アジア軍のメイレスモドキは虎の子の試作機、先行量産型が破壊された影響で北陸戦線には配備間に合わなかったという事にしておきます。

 そしてみんな大好きサツマン侍!
 島津って名前は思っきし使ってますが示現流は使いませんでした。
 九州のオセアニア軍をチェストして事実上の撤退をさせていますがオセアニア軍は情報を隠蔽。
 一部他国の情報部には知られてますが日本人には公になっておらず知らないという状態です。
 それはアジア軍の北陸も同じ。
 一応はアニメの展開に支障はきたさないよう心がけております(笑)

 境界戦機本編のメインキャラクターがガッツリ登場するのでこの話はしっかり完走したいですね。
 
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