境界戦機 ロストネイション   作:アンサングのフレンズ

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 本来はこれは前回の5話と一緒に入れる予定でした。
 短めになったので結果的に小出しにして良かったかもしれません。
 アニメ境界戦機をご存知の方はあの閣下が登場致しますw

 サブタイトルが直訳では無いのは解りにくいと思いますが一応意味があります。


坑道 black operation

 九州北の海域、アジア協商トンネル内坑道。

 そこでは捕らえられた日本人達が劣悪な環境での強制労働に従事させられていた。

 

「作業が遅い!今日も飯も休憩も無しだ!」

 

 鞭を握りしめたアジア軍の現場監督が声を荒げる。

 

「そんな!?もう三日も飲まず食わずで一睡もしてないのに……」

 

 痩せこけ生気を無くした日本人が監督官に向けて弱々しく言った。

 

「口答えするな!口を動かす暇があったら働け!」

 

 監督官は鞭を振るう。

 

 その時、一人の労働者が倒れた。

 

「貴様!誰が休んでいいと言った!」

 

 監督官の鞭が倒れた者を打つ。

 

「立て!立て!」

 

 しかしいくら打たれようが反応が無い。

 監督官は倒れた者へと近づくと既に事切れていた。

 

「ちっ、使えん奴め。捨てておけ!」

 

 監督官はその亡骸を足蹴にして叫ぶ。

 

「いいか!ここから出たければこのトンネルを完成させろ!でなければこうなるぞ!解ったか!」

 

 強制労働に従事させられてる日本人はサマザマな理由をつけられて此処に連れて来られている。

 抵抗するものもいたが徹底的に痛めつけ、そして足枷をつけられてて抵抗の意思を奪われる。

 食事も睡眠もろくに与えられず医療体制も無い使い捨ての労働力としてトンネル工事に従事させられているのだ。

 

 

「全く……あんな事にさえならなければ私はこんなところで……」

 

 協商トンネル工事現場兼アジア軍基地内の防衛監督官の事務所のある建物内。

 いかにも不機嫌だと解るアジア軍の将校がいた。

 

「賄賂と根回しで何とか処刑や降格は免れたがよりにもよってこんな場所へ左遷され現場監督など……」

 

 彼はリウ・フウ少佐。

 かつてはアジア軍支配下の中国地方で総督代理をしていたがとあるメイレスに乗ったレジスタンスによりその悪行の数々を暴露され失脚、財産の殆どを失い現在はアジア自由貿易協商本国と日本を繋ぐトンネル工事の監督と防衛を担当している。

 

「工事の進捗はどうだ?!」

 

「そろそろ開通することかと……」

 

 リウ・フウの問いかけに参謀らしき兵が応える。

 

「遅い!もっと日本人の労働力を集めろ!開通だけなくこのトンネルはメタンハイドレートの資源採掘にも使うのだぞ!」

 

「しかし北九州は入植が進んでおります。他の地方から連れてくるのも難しいかと……。日に日に数は減るばかりで……」

 

「使えん奴め!もういい!出ていけ!」

 

「………」

 

 参謀の男は黙ってリウ・フウの部屋を後にする。

 

「上層部から常にトンネルの開通を急かす圧力ばかり……」

 

 リウは机を叩く。

 

「全くここではワインの入手もままならん……」

 

 リウはそうぼやくと机の引出しから注射器と薬品を取り出す。

 震える手でそれを己の腕に注射する。

 

「んほっ……ふぅ………」

 

 明らかにドラッグの類である。

 リウ・フウはガンギマリの緩んだ顔になった。

 

「これだ……此処に来て唯一……唯一この『ムゲンサイカ』だけは良かった……。なんともたまらん……」

 

 

 

「これより作戦を開始ばい!みなのもん!気張れ!」

 

 トヨミの掛け声と共に薩摩隼人、ムラクモ、ヤタガラスのメンバー達がそれぞれ行動を開始する。

 

「ナギはセイレンでヤタガラスのメイレス達に同行する。乗艦の完了次第と共に潜航を開始、目標地点へと向かう」

 

「いってらっしゃーい!」

 

 アサミはミケ猫のミケを抱え、レンやヤタガラスの子供達と一緒に潜航していく潜水艦水靈(ミズチ)を見送る。

 

 

 

「これが……ジョーハウンドの改造機……」

 

 馬崎はそれを見上げる。

 両腕をガトリングに付け替えられたジョーハウンド出合った。

 驚いてる場合じゃないと馬崎は切り替え、自分の割り当てられた機体へと乗り込む。

 

「このコクピット、やけにきれいだな……」

 

 ジョーハウンドの操縦席は丁寧に掃除され、チリ一つ落ちてない。

 

「?イオさん?」

 

 出撃する馬崎を見送るようにイオが立ってるのが操縦席の馬崎から見える。

 馬崎はジョーハウンドのコクピットハッチを開け、イオを見た。

 

「もしかしてこの機体はイオさんが?」

 

「……はい。あの……上手く動きますか?」

 

 馬崎はジョーハウンドの各可動部を動かして見せた。

 

「ありがとうございます!大事に使いますね!」

 

 お世辞や愛想抜きでジョーハウンドの調子は良い。

 馬崎はそうイオに告げるとジョーハウンドのハッチを閉じる。

 

「そんじゃ行ってきます!」

 

 馬崎は外からは見えないが笑顔でイオに向けてそう言った。

 

「行ってらっしゃい。お気をつけて」

 

 馬崎のジョーハウンド改造機は輸送車へと乗り込む。

 

 

 

「まさかジョーハウンドの腕そのものを機関銃にしてしまうとはな」

 

 熊井ゴウケンも関心しながら輸送車に操縦するジョーハウンド改造機を乗せる。

 

「よし、いいぞ。出してくれ」

 

 熊井のジョーハウンドを乗せた輸送車のエンジンがかかる。

 運転手は変装したメアリーだった。

 

 

 

『アジア協商トンネル。アジア自由貿易協商本国と日本を北九州から繋ぐ地下トンネルだ。そしてその海域に眠る燃料資源、メタンハイドレートの採掘場も兼ねている』

 

 ナユタが今回の海底協商トンネルについての情報をまとめ、語る。

 

『元より日本がこうなる前から売国議員達が進めていた計画。日本経済が破綻し工事は頓挫するかに見えたがアジア自由貿易協商が北九州を実行支配したことで再開したという事ですよ姫』

 

 これらは通信でレジスタンスに流れている。

 ナユタ自身はシオンの為に説明してるようだが改めて言葉にする事でレジスタンス連合の士気を高める狙いがある。

 

『工事の為の増税、そして強制労働。これは見過ごす訳にはいかない。今まで傍観するしか無かったがレジスタンス同士が連携すれば助け出せる可能性は高い』

 

 ケイもガシンに向けてだがこの言葉はレジスタンス全体的にも発せられている。

 

「ああ……日本人は助け出す。それはアイツの遺志でもあるからな……」

 

「………」

 

 ガシンはナギの機体、セイレンに視線を向けるレイキが目に留まる。

 

「どうした?シオン?」

 

「ナギちゃんの機体、なんかこう……凄いなって……」

 

 ガシンはシオンに声をかける。

 ナギの機体、セイレンが気になるようだ。

 

『セイレンか。ブレンゾン北米製。メイレスがベースだがブレンゾン北米独自の設計で構成されている機動性に特化した攻撃性の高い機体だ。滞空時間はレイキの方が長いが瞬発力が高い』

 

 ケイはセイレンについてわかり得る情報を表示する。

 

『それ故、通常の人間には扱える代物ではない。まず速すぎる反応についていけず負荷には耐えられまい。あれで有人仕様とはな。北米のブレンゾン製とはいえ解らない事だらけだ』

 

 高性能AI、アイレスのケイの力を持ってしても知り得た情報は少なかったようだ。

 

『ギンペイの奴、アクセスにもブロックをかけている。そもそも奴の存在も謎だ。我々兄弟とも違う感じがする』

 

 ナユタは更にギンペイの謎にも付言する。

 

「ナギちゃん、ギンペイ、そちらはどうかな?」

 

 シオンはナギのセイレンに通信を入れる。

 

「問題無い」

 

『同じく』

 

 その一言だけが返ってきた。

 

『相変わらず愛想の無い奴だ。共に過ごした同志だというのに』

 

「………」

 

 ナユタの言葉にシオンは口を紡ぐ。

 

「何の話だ?」

 

『知らずとも良い。くだらん話だ』

 

 ガシンはそれが気になったがケイは答えようとしない。

 

「出るぞ。熊井隊長達に続け」

 

 

 

 協商トンネル付近の山中。

 そこには薩摩隼人を中心としたレジスタンス同盟が各所に集結し、強襲に備えていた。

 

「時間と共に仕掛けるばい!バンイップは準備できとるか!」

 

「良かです!ありったけの爆弾積んでますきに!」

 

 大山が声をあげると薩摩隼人のメンバーがそれに応じる。

 

「当主、攻撃の合図を」

 

「良か」

 

 中馬がトヨミに歩み寄ると攻撃の合図を要望する。

 

「チェストーーーーーーーーーーーー!!」

 

 トヨミの合図の掛け声が響く。

 

「チェェェェェェストォォォォォォ!!」

 

 それに呼応するかのように薩摩隼人のメンバー達が叫ぶ。

 

「チェストって何なんだ?」

 

 ガシンから呟くように疑問の言葉が出るが誰もそれに応える事は無い。

 

「合図と共に爆弾を積んだバンイップ・ブーメランが基地へ向けて走り出す」

 

 装甲も外され徹底的に軽量化され、急造故に乱雑に爆発物が積めるだけ積まれた故に不安定だがそれでも基地内へ瞬時に突入出来るだけの機動性はある。

 

「今じゃ!チェストーーーーー!」

 

 その合図と共にバンイップは自爆する。

 次々と自爆するバンイップにアジア軍の基地は破壊されていいく。

 

「ええい!オセアニア軍か?!自爆とは血迷ったか!」

 

 アジア軍のニュウレンが迎撃に出る。

 正面から高速で向かってくる自爆型バンイップに対して一斉射撃。爆弾に命中したバンイップは爆発四散する。

 

「驚かせやがって……正面から突っ込んでくるだけだ!」

 

 だが後続のバンイップが跳躍力を活かし飛び込んでくる。

 

「うわぁ!何体いるんだ!?」

 

 アジア軍は必死にバンイップを迎撃する。

 

「脚を狙え!」

 

 そう叫ぶアジア軍兵士の言うとうり数機の有人ニュウレンがレーザー銃で正面切って突っ込んできたバンイップの脚部を狙う。

 見事脚部に命中しバンイップは転倒する。

 

「やった!」

 

 だが損傷を顧みないライトチューンによりバンイップの速度は三倍程に上昇していた為、速度の勢いで滑り込む。

 そして爆弾の自爆機能が作動。

 

「おわあああああああああああああ!」

 

 ニュウレン有人型数機を巻き込み自爆した。

 

 

 

『ガシン、少し早いが攻撃に移るぞ』

 

「どうした?何か不測の事態でも起きたか?」

 

 ケイの言葉が気になりつつもガシンはジョウガンを移動させる。

 

『ある程度は仕方ないがアジア軍の生体反応が消失し始めている。目標は日本人の救出だからな』

 

『では姫、我々も参りましょう』

 

 ケイに呼応するようにナユタもシオンに声を掛ける。

 

「了解!ナユタ、トンネルまでの道を開くよ!」

 

 シオンはレイキの薙刀を構え、飛翔する。

 

『ギンペイ、ナギ、作戦を開始だ。陽動を頼む』

 

「了解」

 

 ケイが指示を出すと膝をついて身を隠すようにしていたセイレンは立ち上がると一気にその瞬発力で基地内部へと飛び込んだ。

 そしてアメインの指揮車両を撃ち抜く。

 

「なっ!?」

 

「えっ?!」

 

 指揮車両を失った指揮下の無人アメインは停止する。

 続け様に基地内の建物へ向けてセイレンは発砲する。

 

『この戦力なら充分殲滅は可能だ。確実に救出の安全を確保出来る』

 

 ギンペイはヤタガラスの二機へ向けてそう通信を送る。そして有人機アメインもコクピットを狙い、手際よく破壊していく。

 

『待て!そちらは陽動し時間を稼げばいい!アメインを足止めさえすれば……』

 

 容赦無く有人の指揮者とアメインのコクピットを破壊するセイレンのナギとギンペイにケイ達は驚く。

 人命優先、助命が心情のヤタガラスのやり方とはあまりに違いすぎるのだ。

 

『何を言っている?言葉の意味がよくわからない。陽動の役割もこなしている。戦術対応も現場の判断で問題無い筈だが?』

 

『それはそうだが……·』

 

『ケイ、とにかく今は進路の確保が優先だ。姫、頼みます!』

 

 ナユタは動揺するケイを宥め、シオンに指示を出す。

 

「う、うん……」

 

 戸惑いながらもレイキとジョウガンは無人機のアメインを各個撃破していく。

 

「うわぁぁぁぁ!!あれはヤタガラスのアメインだーー!」

 

 無人機アメインを制御する指揮車の前にジョウガンが現れた。

 

『大人しく降伏するなら見逃してやろう。さぁ……』

 

 ケイは投降を呼びかけるもその指揮車は銃弾を浴び、破壊された。

 

『何だと?!』

 

『何をしている?非効率だぞ』

 

 立ち尽くすジョウガンを尻目にセイレンが通り過ぎて行く。

 

「何をだって?!意図的な指揮車両への攻撃は条約違反だぞ!?」

 

 ガシンはそう叫ぶように言った。

 

『「境界戦条項」か。我々はテロリスト扱いだ。守る意味は無い』

 

「………」

 

『それに境界戦条項は今や形骸化し機能していない。守っている国は実質存在していない』

 

『その通りではあるが……』

 

 『境界戦条項』

 それは日本のみならず世界各地で勃発する境界戦の為に各国勢力同士で制定された条項だ。

 人命を尊重し、その地の文化遺産を守る等定められたルールだったが激化する戦況に形骸化していた。

 

 その時、制御を失ったニュウレンが動き出す。

 

『何だ?』

 

『制御を奪った。これで効率が上がる』

 

 更にセイレンは落ちていたニュウレンのライフルを拾うとアタッチメント認証を解除する。

 

『……まさか……お前……!!』

 

 ナユタからは驚きと動揺が感じられる。

 

「ナユタ、どうしたの?」

 

『まさか……そんな筈は……』

 

 比較的冷静だったナユタにも動揺が見られる。

 

「ケイ、今の見たか?」

 

『ああ、あの能力はまるで……』

 

「ゴースト……!!」

 

 ガシンは強くそう口にする。

 

 

 

「なんだ!?これはどういう事だ!!」

 

 リウ・フウは突然の襲撃に錯乱していた。

 

「テロリスト達の襲撃です!」

 

 アジア軍の兵士がそうリウ・フウに報告する。

 

「そんな事は解ってる!ワン大尉はどうした!?」

 

 ワン大尉とはこの現場でのリウ・フウの副官である。

 どうやら姿が見えないらしい。

 

 

 

「ヤタガラスの!おはんら何しとる!?やる気ば無いんじゃったら帰れ!」

 

 薩摩隼人のメンバー達から棒立ち状態になってるジョウガンとレイキに野次が飛んだ。

 

「ナユタ!ガシン!とにかく今はトンネルまでの道のり確保を!」

 

 シオンは自分を狙ってきたアメインを斬り伏せ、叫ぶ。

 

「……ああ」

 

 ガシンのジョウガンは狙撃銃から煙幕弾を撃ち、援護する。

 

『予定進路付近に敵影無し』

 

 メアリーのトラックにハルの通信が入る。

 輸送車にも専用のハルの複製型AIが積み込まれてる。

 メアリーは輸送車のアクセルを踏み込み、発進させる。

 他の輸送車も続く。

 

『ジョーハウンドタンク、これよりトンネル付近までの護衛を開始します』

 

 淡々とした話し方の通信が入る。ミズチの制御AI、ハルの複製型だ。

 腕部をガトリング、脚部を無限軌道のタンク型に改造されたジョーハウンドは無人制御で動き出す。

 この機体の制御にはハルの複製型が使われているが旧式AI制御の為、動きは鈍重かつ単調だが厚い装甲と火力で頼もしい存在となる。

 

 

 

「失脚し、こんな所に飛ばされたとはいえ処刑や降格せずに脱落は免れたんだ!こんな所で私は死なんぞ!」

 

 リウ・フウはそう言いながら所持している『薬』をかき集め、アタッシュケースに詰め込むと

 

「トンネルを使って本国へ行くぞ!奴らもそこまでは追ってこれまい!」

 

 と数人の部下に命じて車を出させる。

 

 

 

 

「あの車!敵の大将ば穴ぐら使って逃げおるばい!」

 

 輸送車からその状況を見た大山が叫ぶ。

 

「逃げるもんば仕方なか!おいらがすべき事は他にあるばい!」

 

 その声を聞いたジョーハウンドに搭乗していたトヨミが大山にそう言って宥める。

 

 リウ・フウの車を追ってトンネル名を進むとそこには有人型のニュウレンが待ち構えていた。

 

「このぉ!!」

 

 輸送車に搭載されている腕部をガトリングに改造された馬崎のジョーハウンドがニュウレンを掃射する。

 

 ニュウレンは穴だらけとなって機能を停止する。

 

「なんて威力だ……」

 

 同型のジョーハウンドに乗る熊井ゴウケンもその威力に驚く。

 

『付近に敵反応無し。前進してください』

 

 ハルはそう指示を出す。

 

 

 

『ミズチ、目標地点到達予測まで約20分』

 

 北九州の海中を航行するミズチ。

 別働隊としての作戦があるようだ。

 

 

 

『ガシン、追跡されないようにトンネルの入口付近を警護だ』

 

「ああ、解った」

 

 ガシンの乗るジョウガンは武器を二丁のハンドガンに持ち帰るとトンネルの前で仁王立ちし、構える。

 

『シオン、付近の敵を迎撃してくれ』

 

 機動性を活かしたレイキがトンネルに近づこうとするアメインを斬り伏せ、撃ち漏らしをジョウガンが片付ける。

 

 動揺こそあったがこの二機の見事な連携が見て取れる。

 

 

 

『敵は撤退を始めたな……』

 

「このまま退いてくれるといいんだけど……」

 

 シオンとナユタがアジア軍の兵士が次々と基地から逃げ出している様子を見るとレイキは動きを止める。

 

「後は日本人の救出だけだ。熊井隊長達を待つだけだ……」

 

 ガシンもジョウガンのハンドガンを下ろす。

 

「これより敵の追跡を行う」

 

「え、ちょ……?」

 

 ナギのセイレンが逃げるアジア軍の車両を破壊する。

 

「待て!ナギ!もういい!俺達の目的は果たした」

 

 ガシンが制止するように叫ぶもセイレンの追撃は止まらない。

 

『まだ基地内にも残っているがジョウガンとレイキは動かないな。ハル、基地内の敵の掃討をする』

 

『了解しました。これより垂直ミサイルによる攻撃を行います』

 

 タンク型ジョーハウンドから垂直ミサイルが放たれる。

 それらは分裂し、爆雷となって降り注ぐ。

 

『クラスター爆雷……だと……?!』

 

 ケイが再び動揺する。

 

『まさか今になって禁止兵器とは言うまいな』

 

 ギンペイは淡々とそう言った。

 

『我々の目的は救出だ。殲滅や焦土作戦で無い事を肝に命じておけ』

 

 比較的冷静なナユタはそうギンペイに向かって言い放つ。

 

『ヤタガラスがそうならそうすればいい。ならば僕達は勝手にやる』

 

 レジスタンス同盟は目的の一致によって結成された。協力関係にはあっても互いに命令できる関係では無い。

 

『排除、排除』

 

 タンク型ジョーハウンドが敵の掃討を始める。

 機械制御故か歩兵や生身であっても容赦無い。

 

『排除、排除』

 

 逃げる者、両手を上げて投稿の意を示す者も敵と認識すれば容赦無く排除していく。

 そして基地内の施設も破壊する。

 

「もう戦意を失ってるじゃないか……やり過ぎだ……」

 

『アジア軍の施設は監視が強い。そのまま利用してもこちらの情報が漏れる可能性がある』

 

 ガシンの言葉に応えるようにギンペイが応答する。

 

『我々なら無効化し、探し出すことも可能だ』

 

 ナユタはそう進言する。

 

『それだと手間がかかる……それに……』

 

「敵は殲滅する」

 

 ナギはそう応える。敵の徹底的殲滅が鬼曽の教えだ。

 だが敵の数が多かったのかセイレンは既に弾が切れで攻撃の手が止まる。

 

『まだ生体反応が全て消えた訳では無いが後は薩摩隼人が処理するだろう。奴らに聞いておかねばならん事もあるだろうしな』

 

 

 

「チェストーーーッ!!」

 

 トヨミの乗るジョーハウンドの改造機が無人制御のニュウレンを真っ二つにした。

 

「アメインの方も見事だ当主殿」

 

 熊井ゴウケンがトヨミのアメインに通信を送る。

 

「おーえす?とやらが良かもんぱ替えとると聞いたばい。そげんからくりば苦手なおいでもこうやってそれなりに扱えるでの」

 

 薩摩隼人のジョーハウンドは近接戦闘用に大幅に改造されていて最早別物といっていいだろう。

 

「しっかし随分やられてしもうたばい」

 

 トヨミのジョーハウンドは既に装甲は傷だらけである。

 

「こちらも弾切れだ」

 

 熊井機の残弾はゼロとコクピットのモニターが告げる。

 

「トヨミさんの機体は眼界までライトチューンされてるので負荷が大きいかと。そろそろ機体も限界なのでこちらへ」

 

 メアリーはトヨミにそう通信を送った。

 

「そうみたいじゃ。もううんともすんとも言わんばい。……大義じゃたのおはん」

 

 トヨミはそう言うと名残惜しそうに自分の機体を降りると輸送車に乗り込んだ。

 

「……しかしまだこの先にも敵が……」

 

 戦力が減ってしまった状況でメアリーは不安の様子だ。

 

「問題は無い。このまま進まれよ」

 

 しかし中馬は冷静にそう告げる。

 

 

 

「何だ!?これは!?一体どういう事だ!!」

 

 先に進んでいたリウ・フウは憤慨している。

 目の間にあるのは停止したトンネル用の巨大掘削機である。

 

「穴はあちらと繋がってるんじゃ無かったのか?!どういう事だ!!ワン大尉め!!」

 

 

 

「言う通りにしたぞ。残りの金額は振り込んだのだな」

 

 ワン大尉は密かに襲撃前に車で逃走していた。

 車内で通信を交わしている。

 

「へいへーーーい。お話の通りに。ハワイにでも行って余生を遊んで楽しく暮らせるよーん」

 

 ワン大尉の通信相手のふざけた喋り方、ヤトノカミのリーダーの男である。

 

「俺は自分の安全が確保できればそれでいい。母国など知った事ではない。だが、悪くない条件だったぞ。まぁ後は精々頑張る事だな」

 

 ヤトノカミのリーダーとワン大尉の間には何かしらの交渉があった様子だ。

 ワン大尉は満足気な表情を浮かべている。

 

「こりゃどうも。あ、それとその車、このメッセージ終了と共に爆破消滅するから」

 

「なっ……!」

 

「そんじゃねー」

 

 ワン大尉の乗った車はその通り爆発した。

 

 

 

「もうちっと利用したいとこだったけどこの辺が頃合いかね。あんま蜜月だと御前に睨まれるしな」

 

『彼女は既に気づいてるものと思われます』

 

 端末のフクロウ型のアイレスがそう進言する。

 

「清算したから問題ないでしょ?その辺はあのオバサンも解ってるし。でなきゃ組まねぇわ」

 

 ヤトノカミのリーダーは彼らの拠点からの通信だったようでその付近には刀を携えた黒衣の少女とPCをタイピングしている少年がいる。

 

「そんじゃコイツの口座から全部こっちに移しといて」

 

 リーダーは少年にそう指示するとワン大尉の口座のデータを開く。

 

「ちぃーと減ってるけどぼちぼちかな?まぁコイツの血縁もそこそこ金持ってるみたいだし俺等とのやり取り記録してるからそれを出汁にゆすっときますか」

 

 PCの画面にはワン大尉の身内のリストが表示される。

 政府関係者、並びに企業関係者もいる。

 

『リウ・フウ閣下も終了かwww』

 

 少年の狸型アイレスが冷笑するように言った。

 

「コイツの身内のもだよね?」

 

 少年が小さな声で確認する。

 

「モチのロン!」

 

 リーダーはよろしくといった具合に少年の肩を軽く叩く。

 

「トンネル繋がってりゃ向こうに運ばせて夢幻彩花の荒稼ぎが出来たんだけど惜しいなぁ」

 

 リーダーは惜しそうな表情でそう言った。

 

 

 

「少佐!奴らが来ました!」

 

 リウの部下が後から来る車両に気づく。

 

「年貢ば収め時ばい!腹ば決めい!」

 

 輸送車の運転席の上に立ったトヨミがそう叫ぶ。

 

「ま、待て!!投降する!!私はアジア軍、リウ・フウ少佐だ!」

 

 慌てるリウ達は両手を挙げ投降の意を示す。

 

「おはんがここの頭ならそれで良か!」

 

 リウ・フウ達はあっという間に囲まれた。

 

 薩摩隼人のメンバー達は強制労働に倒れた日本人達を解法していく。

 

「ああ……これは夢をみているのか……それとも迎えが来たのか……」

 

 横たわる衰弱した老人がそう弱々しく呟いた。

 

「じじどん、しっかりせい。おいら薩摩隼人が助けに来もした」

 

 トヨミはその老人に寄り添うと手を握る。

 

「ああ……もうよう見えんが、なんと美しく可愛らしい……これが……菩薩様というのかの……」

 

 老人は目に涙を浮かべ、安心したように顔が緩む。

 

「じじどん、ひとまず寝るとよかね。その後に飯ば食った後に話でも聞かしてくればよか」

 

 トヨミは優しく微笑みながらそう言った。

 

「……ああ……そうじゃな……ありがとう………」

 

 老人は安らかに目を閉じた。

 

「お嬢……そのご老人ば……」

 

 大山はトヨミに声を掛ける。

 

「……乗せられるもんば乗せい。あまり期待は出来んが生きとるもん優先じゃ」

 

 トヨミは立ち上がると静かにそう言った。

 

「リウ少佐、他の日本人は?」

 

 中馬は鞘に納めながらも刀を柄をリウに向けて尋ねる。

 

「知らない!私は知らんぞ!私はここの管理担当だが現場の事は……」

 

「きさん!また懲りず日本人を売りさばいとるがか!?」

 

 大山は詰め寄り、リウの胸ぐらを掴み持ち上げる。

 

「ヒィィィィ!!誰か!誰か知らぬか!」

 

 リウは怯えた様子で叫ぶ。

 だが、部下達は目を逸らし、黙ったままだ。

 

 

「中馬さん、こっちば来てほしか……」

 

 薩摩隼人のメンバーが何かを見つけたのか、中馬をその場へ案内する。

 

「これは………」

 

「ゔっ………」

 

 そこには何人もの日本人の亡骸が積み上げられている大穴があった。

 埋葬というよりゴミを埋めて廃棄してるかのようだった。

 

 薩摩隼人のメンバー達はそれらを観て思わずえづく者もいるが何より怒りの感情がこみ上げる。

 冷静な中馬からも明らかに殺気を放っている。

 

「使い物にならなくなった者はそうやって廃棄しろと少佐が……」

 

 臆した部下の一人が言い訳を述べる。

 

「貴様!ま、待て!仕方無かったんだ!」

 

 薩摩隼人達の鋭い視線が一気にリウ・フウに集中し、彼は焦り、怯える。

 

「そうだ!私に提案がある!これを見ろ!」

 

 リウ・フウは懐から持ち込んだ薬品を取り出して見せる。

 

「これは……これは『夢幻彩花』だ!私はこの薬の仕入れ方を知っている!どうだ!?私を助けてくれれば取り引き先を教えよう!これを売れば活動資金に……」

 

 中馬は目にも止まらぬ速さの抜刀でリウ・フウの脚の健を斬った。

 

「きさんは用済みばい。ここに眠る同胞には悪いがここで共に果てるが良か」

 

 感情が高ぶったのか中馬の口から方言が飛び出す。

 

 

 

「中馬!他に生きとるもんは!?」

 

 大山の問いかけに出てきた中馬は無言で首を振る。

 

「生きとるもんはこいだけか……全員は無理かもしれんが仏もせめて乗せれるだけ乗せ……」

 

 トヨミは輸送者の生存者を見たあと、丁寧に並べられた日本人達の亡骸を見つめる。

 

「当主、時間がありません直ぐに戻ります」

 

 だが中馬はそこに口を挟み、トヨミを輸送者へと乗せようとする。

 

「大山、当主を頼む」

 

「どげんした中馬?」

 

 しかしトヨミは中馬の行動が気になるのか留まる。

 

「ヤタガラスの御人達も車へ。アメインはここに置いていかれよ」

 

「……え?」

 

 中馬の言葉に馬先は驚く。

 

「せめて俺の機体だけでも乗りませんか?弾切れですが駆動は問題ありませんし……」

 

 馬崎は思うところがあるのか自分の機体は持ち帰れないかと中馬を説得する。

 

「お嬢!はよか乗るばい!」

 

「おはんらは先に行くが良か!おいはせめて代表として最後まで残るばい!仏に手ば合わせるでの!」

 

 譲らないトヨミは大山達を先に行かせた。

 

「中馬さん、何故そんなに急ぐのかせてめ教えて頂きたいのだが……」

 

 ゴウケンは中馬を問いただす。

 

「このトンネルは破壊します。そろそろムラクモのミズチからの爆雷投下の時間になります」

 

 中馬は淡々と応えた。

 

 

 

『ポイントに到着しました』

 

「予定時刻まで待機」

 

 潜水艦ミズチは協商トンネル付近まで来ていた。

 

「ハル、周囲のメタンハイドレートの量は解る?」

 

『データをモニターに映します』

 

 ケンジの質問にミズチの管理AIハルは周囲のメタンハイドレートの分布データを映し出す。

 

「こんだけあったんやな……勿体無いどすな……」

 

 ミヤコはその量を見て驚く。

 

「これだけの量、こちらの被害は大丈夫?」

 

 ケンジはメタンハイドレートの誘爆の影響を懸念する。

 

『時限式の爆雷投下後、西九州海域まで避難します。多少の衝撃はあるかもしれませんが問題無いかと』

 

「くれたる位やったら全部吹っ飛ばす。御前はんらしいやり方どすえ」

 

 ミヤコは改めて鬼曽の度量に驚き感服する。

 艦長のミコトは時間を確認すると告げる。

 

「時間だ。時限式の爆雷を投下する」

 

 

 

「このトンネルを爆破……そんな……俺達は何も……」

 

 馬崎は動揺を隠せないでいる。

 

「既にムラクモのミズチが海底トンネルの上に。そろそろ爆雷の倒壊が始まる頃合いかと」

 

 相変わらず中馬は淡々と告げる。

 

「中馬さん、トヨミさんも知らされていないのでは?」

 

「………」

 

 熊井の言葉に中馬は口を塞ぐ。

 

「そいで仏ば連れていけんがか……。墓が海底とは申し訳なか」

 

 察したトヨミはそう言うと日本人の亡骸に手を合わせる。

 

 

 

「後ほど抗議はいくらでも。急ぎ輸送車へ」

 

 一同はメアリーの運転する最後の輸送車へと乗り込む。

 

「行きます。飛ばしますよ!」

 

 後部の輸送部分をパージし、メアリーは輸送車を発車させた。

 

「ま、待て!置いて行かないでくれ!」

 

 その場に取り残されたアジア軍の兵士達が必死でそれを追いかけるが直ぐ様引き離された。

 

「き、貴様らどこへ行く!私を置いてくな馬鹿者!」

 

 リウ・フウも足を引きづりながらそう叫ぶ。

 

 

 

 「爆雷投下完了。全速で離脱!」

 

 時限式の爆雷を投下したミズチは急ぎその場を離れる。

 

 

 

「アジア軍の捕虜ば要らんばい!」

 

 アジア軍協商トンネル前基地では薩摩隼人のメンバーのその声と共に生き残りのアジア軍も次々と処刑されていった。

 

『周囲に敵の生体反応無し……全滅だ……』

 

 ケイが周囲の索敵をし、そう告げる。

 

「其奴で最期ばい。しかし嬢ちゃん、手慣れとるの」

 

 老体だが屈強な薩摩隼人のメンバーが始末を終えたナギを見てそう言った。

 大山動揺、この老人の顔や身体に幾つもの傷が見える。老人もまた歴戦の勇姿なのだろう。

 

「敵の殲滅を完了。輸送車の帰還まで後退し待機する」

 

「よかばい。ご苦労じゃったの」

 

 互いに敬礼し、老人はナギに言葉を送る。

 ナギはそのままセイレンに搭乗し後方まで下がって行った。

 

 

「まるで修羅のような娘っ子よのう。昔の薩摩兵子もあんなもんじゃったのかの……。バケモンを殺すモンば己がバケモンになんとやらじゃ……。心せい、娘っ子」

 

 

 

『多少の殺傷は覚悟していたが……やり過ぎだ……』

 

『ケイ、こちら側には犠牲はない。結果的に殲滅の成果によるものだ。手放しでは喜べんがな』

 

「こんな……徹底的過ぎる……」

 

『ガシン、あまり見るもんじゃない』

 

 ケイはジョウガンのモニターを消す。

 

「これがムラクモと薩摩隼人の意志……」

 

『姫、我々の役割は終わった。下がろう』

 

 ナユタも同じくモニターを切り、レイキを自動操縦に切り替え、機体を下がらせる。

 

 

 

『警告!爆破予定時間が迫ってます』

 

 急ぎトンネルを戻る輸送車だがこのスピードでは爆破完了まで脱出は不可能だとハルは警告する。

 

「マイアさんのアレを使いますか。ハル、スタンバイ」

 

「な、何を……」

 

「皆さん何かに捕まってください!」

 

 そういうとメアリーはドクロマークのついた新しく取り付けられたレバーを引く。

 

「『地獄のドライブ』DEATHよ!!」

 

 その言葉と共に輸送車は輸送車のレベルでは無い急加速を始めた!!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その急加速に馬崎と熊井から叫び声が上がる。

 

「おはんら、喋ると舌噛むぞい」

 

 トヨミが静かにそう告げる。

 

 

 海底に落ちた爆雷のタイマーが時間に達する。

 予定通り起爆し周囲のメタンハイドレートに引火、それらも次々と誘爆していく。

 

 

 

「何だ?この揺れは?地震か?!それに何だこの音……」

 

 リウ・フウはその爆発の衝撃に動揺するが直ぐ様トンネルの天井が崩れ落ちる。

 

「ぐわぁァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 

「何だ?この音と揺れは!?」

 

 先を進んでいたリウ・フウの部下も同じように動揺する。

 

「トンネルが崩れている!!」

 

 振り向いた一人がトンネルの崩落に気付くも瞬く間に崩落に巻き込まれていく。

 

「うわぁァァァァァァァァァ!!」

 

 

 

『爆雷の起爆時間予定時間です』

 

「間に合って!」

 

 ハルの警告に動揺する事もなくメアリーは運転を続ける。

 

 カーブをドリフト走行で走り、輸送車の側面を壁に擦り付ける。

 

「ヒィィィィィィ!」

 

 その状況に馬崎は悲鳴をあげる。

 

「メアリーさん、もう少し安全運転で……」

 

 その速度にたじろぎながらも熊井はメアリーに言った。

 

「停まったら死にますよ」

 

 メアリーはそうとだけ告げる。

 

 やがてトンネルの入口が見えた。

 

 

「出口だ!」

 

 熊井が歓喜の声をあげる、

 

「助かっ……」

 

 馬崎がそう言おうとした時、輸送車は出入り口の坂から勢い余って飛び上がる。

 丁度その後、トンネルの出入り口から砂塵と水が噴き出す。

 トンネルは完全に崩落した。

 

 輸送車は数メートル空中を進み着地、そのまま指定ポイントまで進む。

 

『安全圏に到達、お疲れ様でした』

 

 ハルのその言葉と共に馬崎と熊井は輸送車から飛び出す。

 

「し、死ぬかと思……」

 

 馬崎がそういい終るところだった。

 

「オロオロオロ〜〜〜〜〜〜〜」

 馬崎は嘔吐する。

 

「ゲボボボ〜〜〜〜〜〜」

 

 それに連動するように熊井も嘔吐する。

 急激な車酔いか、二人共顔色が青い。

 

 

「いやーおはん、見事な運転じゃったばい!」

 

 トヨミと中馬は平然としていた。

 

「不謹慎じゃがちと面白かったばい」

 

 トヨミの肝の太さが伺える。

 

 その時だった。

 輸送車が各所から煙をあげ爆発し、タイヤが外れ傾く。

 

「うわっ!」

 

 馬崎が驚く。

 

「誰だ……こんな改造をしたのは……おかげで助かったんだが……」

 

 熊井からは何とも言えない感情がこみ上げる。

 

「確かおはんらのマイアっちゅう整備士じゃったか?自爆型のバンイップもそうじゃろ?」

 

「必要最低限の性能は何とかするけどそれ以外は知らんって言ってましたね」

 

 自爆型も脱出用の輸送車も限界まで性能を引き上げてあった。荒っぽいがマイアの実力が伺える。

 

「突貫工事の割にいい出来じゃろ?」

「……って言ってました」

 

 メアリーはマイアの真似をして言った。

 

 

 

 数時間後、レジスタンス同盟拠点。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 同盟の拠点に帰還後、調子が悪く、横になっていた馬崎にイオが声をかける。

 

「イオさん!?」

 

 馬崎は飛び起きる。

 

「大丈夫ですよ。それより……」

 

「?」

 

「整備して貰った機体なんですけどトンネルに置いていく事になってしまいまして……」

 

 馬崎からは申し訳ない気持ちが溢れている。

 

「作戦なら仕方無いですよ。とにかく馬崎さんが無事に帰って来てくれて良かったです」

 

「イオさん……」

 

 

 

「先ずは作戦の完了、お疲れ様でした」

 

 会議室の大画面のモニターにリモートのヤタガラス代表、宇堂キリュウが映し出される。

 

「しかし残念な事に多くの日本人は助ける事が出来なかった。無念とお悔やみを申し上げます」

 

「………」

 

「しかしながら何故協商トンネルの破壊を?我々は協商トンネルの存在意義は説明した筈では?それにその場にいたアジア軍も一人残らず皆殺しにしたと言うではないか……」

 

 宇堂キリュウの不機嫌さから場の空気が一気に張り詰める。

 

「宇堂どん、アレは忌々しい大穴ぞ。アレは塞がねばならん」

 

 威風堂々とした態度でトヨミは発言する。

 

「宇堂殿、アジア協商から日本へ通ずる道があれば援軍や侵攻の危険性があるかと。それと、アジア軍は自軍の捕虜を助けたりはしないことは既にご存知かと。それに我々には捕虜を養う余裕はありますまい。」

 

 中馬も補足するように続く。

 

「前にも言ったがそれは君達の感情論と偏見だ。捕虜の引き渡しは彼らとの交渉に使える。日本を取り戻し、戦いが終わった後の事を考えればあの協商トンネルはアジア自由貿易協商との和睦の架け橋となった筈だ。その可能性が潰えたのだ」

 

 宇堂の遺憾の意が態度に現れている。

 だが薩摩隼人やムラクモにはその意図が全く理解出来ない者も多い。

 

「………」

 

「きさん……!」

 

 くってかかりそうな大山に対して中馬は制止すると

 

「ムラクモ側も協商トンネル破壊には賛成でした。通達せずに実行したのは申し訳無い」

 

 とリモートの宇堂に謝罪する。

 

「なるほど、多数決……という訳か。確かに我々はレジスタンスとしては対等、平等という事での同盟。しかしながら我々ヤタガラスに通達無しとは対等とは呼べますまい?そうではありませんか?中馬さん?」

 

 宇堂は怒りの皮肉を中馬にぶつける。

 たが中馬は平然としている。

 

「宇堂さん……それくらいに……」

 

 熊井は宇堂を制止する。

 

「ああ……解っている。次の作戦も重要だからな」

 

 すると宇堂も感情を抑え、話を切り替える。

 

「次の作戦?」

 

 ガシンとシオンは戸惑う。

 ギスギスした雰囲気から今回で同盟も終わりかと思ったがまだ次の協働があるという事だ。

 

「日本を取り戻すための重要な作戦だ。今回のものよりより大規模になる」

 

 すこし和らいだ表情で宇堂キリュウは話し始める。

 

「宇堂殿……」

 

 中馬は引き止める様子で声をかける。

 

「彼らには話しておきたい」

 

 だが部下への誠意を示さんとばかりに譲らない。

 宇堂キリュウは笑顔で告げる。

 

「北九州の都市を奪還する」




 北九州海域にメタンハイドレートは無かったと思いますしメタンハイドレートは海中で爆発しないと思います。
 ちなみにもっとヤバい事になる予定でしたが時事的に自重しました。

 レジスタンスの皮を被ったアウトローのヤトノカミの連中が前回に続き出てきましたが今後もちょくちょく登場する予定なんですけどまだ名前全然決めて無いんですよね。
 いちおうリーダーは
 『キョカセンひろし(仮)』イメージCV 藤原啓治
と読んでます。

 次回はロボットバトルの無い休憩日常回を予定しております。
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