忘れた方はまた一話から見直してください!
境界戦機の配信が終了し、円盤も買いそびれたので内容を確認する術がもうありません!
記憶を頼りに原作と合わせていくしか無いですがパラレルワールドと思ってください!!
「ひょぉぉぉぉぉぉ!やべぇな北米軍の新型」
肉眼で遠方を観てそう言ってるのはアジア軍の特殊部隊『フォンヴァオ』のエースであり現場隊長だもあるパイ・タオファ准尉だ。
「はしゃいでる場合ですか?アレは敵ですよ?」
そう通信で指摘するのはアジア軍の正規所属でありフォンヴァオの監督司令官であるチェン・フェイ特務少尉だ。
「なんったっけ?北米の…」
『ブレイディ・フォックスですわ』
「そう、それな!三機だけでアジア軍の部隊をこうも簡単に蹴散らすとはねぇ」
『機体こそブレイディ・ハウンドとあまり変わりありませんが問題は中身ですわね……こう……何か妙なモノを感じますわ……』
「准尉、我々はアレと戦わなくてはならないんですよ?今回の任務は敵新型機の足止めです」
『またもや実質の決死隊ですわね……。まったくワタクシ達の貢献はアジア軍でもトップだというのに……』
「そんじゃ精々頑張りますか」
そう言うとタオファは白いニュウレンのカスタム機に乗りこんだ。
「この辺りのアジア軍は一掃した」
「了解。アルファ隊、帰投せよ」
三体の内のブレイディ・フォックス一機の有人機はそう通信を入れる。
「凄いな新型は。三機だけでこれだけ圧倒出来るとは」
ブレイディ・フォックスのパイロットがそう言った時だった。
「!?」
突如、爆発音と共に煙幕が周囲を覆う。
「敵襲か?!各機迎撃用意!」
その音声と共に無人のブレイディ・フォックス2機は周囲を警戒する。
すると煙幕と共に紛れ込んだ白いニュウレンがブレイディ・フォックスの無人機の一機をくの字の刃物で切り裂くと機能停止させた。
それに反応したもう一機のブレイディ・フォックスがレーザーライフルの銃口を向けるも、白いニュウレンの脚部に仕込まれた刃で頭部を貫かれ機能停止する。
「ブレイディ・フォックス二機が一瞬で?!何だ!あの機体は?!」
煙幕が晴れてきたところで有人機のブレイディ・フォックスがレーザーライフルを白いニュウレンに向けて放つ。
しかし白いニュウレンは左右に躱しながら後退していく。
「何て機動性だ!!アレは本当にアジア軍のニュウレンなのか?!」
「得体が知れん……撤退す……」
その時、対アメイン用ライフルの弾丸がレーザーライフルを持つブレイディ・フォックスに命中する。
「クッ!何処から……」
次の瞬間、ブレイディ・フォックスの前に白いニュウレンが迫り、脚部を斬り裂く。
最早戦闘力の無いブレイディフォックスからパイロットが出てくると既に周りはフォンヴァオに囲まれていた。
「まさか……これが噂に聴くアジア軍の影の部隊か……?」
「ご想像にお任せします」
フェイが一言応じた。
「まさか……制圧部隊の他にこんな……しかもまだ年端もいかない少女達が……」
「お話はここまでです。存在を知るものがいては困りますので」
フェイが淡々と告げると銃声が周囲に響いた。
アジア自由貿易協商圏、首都のガオ商会所有ビル最上階。
「予想以上じゃ無いか。まさかこれ程とはね」
戦果の報告を受けたガオ・シンは機嫌が良そうである。
「精鋭たるフォンヴァオの実力があってこそです」
リモート通信によるフェイの画像が映し出されている。
「今までの犠牲も無駄じゃ無いって事さ。これでこの機体が今後の量産機の主流になる事だろう。量産機も部隊に配備するよう手配しよう」
「……ありがとうございます」
そして双方は通信を切る。
たが、それも束の間、直ぐに新しい通信が入る。
「おや、貴方ですか?」
『ご機嫌いかがですか?ガオ・シン様』
「……ミス・セレーネ、何か?手短にお願いしたいのですが?」
『折り行って貴方様にお話があるのですが……』
一変して不機嫌そうなシンだったがモニターに映し出されたデータを見ると再び上機嫌な笑みを浮かべる。
「じっくりと聞かせて頂きましょう」
北米軍管轄内、とある都市のホテルの一室。
個室の浴室でシャワーを浴びている女性がいた。
金髪の碧眼に白い肌、北米人の女性だ。
彼女は浴室から出るとふと何かしらの気配を感じる。脱衣場に隠していた拳銃を手に取ると構え、飛び出す。
眼の前にはとある男がいた。
迷い無く発砲する所だが彼女がその男に気を取られた一瞬の隙に天井から現れた黒尽くめの女性に銃を奪われ、拘束され、喉元に刃を突きつけられる。
「フブキ!待った!待てだ!」
男は必死で制止する。
演技なのか本気なのかさえ読み取れない。
「清霞ヒロシゲ……だったか?ヤトノカミの……」
「流石が北米のエージェント、よくご存知で」
男はニヤついてそう言った。
「まぁそれも名前の一つなんだけどね。『クリスティ』ちゃん」
そう言うとフブキは突如、彼女の拘束を解き、バスタオルを渡す。
丸腰で抵抗する方法が無いからであろう。
「ええ?フブキ、そのままでも……」
言い終わる前にフブキがヒロシゲに向けて飛び道具の苦無を投げつけた。
視線はクリスティに向けたままである。
すんでの所で外しはしたが彼女の裸をいやらしく眺めるヒロシゲがたまらなく不快らしい。
目視してないから外したという訳では無さそうだ。
「私に何の用だ?お前達の相手は『ネゴシエーター』であろう?」
動揺する事なくバスタオルで身体を隠すと彼女はそう質問してきた。
「また別口で必要になってね。それにキミ『ブローカー』ちゃんの方が美人だし話も解りそうなんで」
そう言うとヒロシゲは部屋内を物色する。
「フブキ、アレ、渡しといて」
ヒロシゲの言葉と共にフブキはデータチップのような物を渡す。
そして小型の拡声マイクを自分の喉に当てる。
「……それ、直ぐに……確認して……」
ゆっくりと静かな声だった。
ヒロシゲは目を盗みながらスーツケースに入っていた下着をさり気なくポケットへ忍ばせた。
「そんじゃそうゆうことで」
用が済んだのか、ヒロシゲは部屋を出る。
フブキを信頼してるのかかなり余裕のある隙だらけな様子だった。
「あイて!!」
突如、フブキはヒロシゲの尻に蹴りを入れる。
取った下着は置いていけという仕草だ。
「えぇ……」
ヒロシゲは渋々とケースから盗み出した上下の下着を置いていく。
「結構可愛い趣味してんじゃん。それとも上からの指定?」
「………」
彼女はヒロシゲの戯言に付き合うつもりは無く、無言で応える。
「そう、パイク・デイ……何だっけ?まあいいや、見つかるといいね。またな、クリスティちゃん」
「!!」
クリスティはその言葉に反応し、ヒロシゲを追おうとするもフブキに阻まれ、制止される。
クリスティはその場で立ち尽くし見送るしか無かった。
おそらく後ほどホテル内の監視カメラを全て確認しても徒労に終わるだろう。
映像を書き換える程度、清霞ヒロシゲにとっては造作も無い。
(キヨカ……奴について何か知ってるのか?まあいい急いで確認しろと言ってたが……)
クリスティはノートPC端末を起動させ、チップのデータを確認する。
自動的にファイルは開かれ、その情報を見てクリスティは驚く。
「これは……?!そんなまさか………!」
それらは北米同盟の諜報機関を持ってしても知り得なかった情報だった。
だがそのファイルの最後にはこう記されている。
【尚、このデータは自動的に消滅するよん♪】
目を通し終えた直後、チップは排出され煙をあげる。
「シッツッ!!」
クリスティは思わずそう声をあげる。
「………」
自分だけが知り得る情報だがあの清霞ヒロシゲからのもので曖昧で眉唾なところもある。
それが真実だという確証は無い。
「……キヨカ・ヒロシゲ………何が望みだ?……私にどうしろと言うのだ……、」
九州南部、レジスタンス同盟の拠点。
そこでは合同の訓練が行われている。
「はぁ……はぁ……これは……薩摩隼人式か……それともムラクモ式か……」
ガシンは息を切らし、座り込む。
ついていくのがやっとといった様子だ。
「私も流石にきついな……」
シオンもガシンと同じように座り込む。
『姫、ご無理はなさらずに』
シオンを気遣ってナユタが声をかける。
『しかし薩摩隼人もムラクモも大したものだ。これだけ過酷な早朝訓練だというのに平然としている者もいる』
訓練に参加していたムラクモのミコト、ナギ、マイアは平然としている。
薩摩隼人のトヨミ、大山、中馬、他の面々もまだまだ元気といった様子だ。
「ヤタガラスのもん!しっかりせんか!こげな程度で音を上げとったらアジア軍にば勝てんばい!」
元気に声を張り上げてるのは薩摩隼人のトヨミだった。
「お嬢の言うとうりだらしないの。ヤタガラスの男衆は鍛え直さねばいかんばい!」
大山もそう声を張り上げる。
「うう……この年には………キツい」
遅れて到着した熊井ゴウケンはそのまま倒れ込む。
「なんで……ウチまで………」
ミヤコもフラフラと到着し、かがみ込む。
「うぷっ!」
ミヤコは催したのか口を抑え込んだ。
そして
「おゔぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
嘔吐する。
「全く、二日酔いになるまで飲み過ぎなんですよね……」
カエデが呆れた様子でミヤコを見る。
「カエデ……参加しとらん癖に……」
へばりながらもミヤコは言い返す。
「私が医務室に連れて行こう」
その様子を見て駆けつけた全く疲れてる様子の無いナギがミヤコに肩を貸した。
「ナギさん!私も手伝います!」
それを見たカエデが態度を一変させる。
「一人で充分だ、いい」
「ミヤコさん重いですよ?私も手伝います」
「構わない」
ナギからしたらカエデの手伝いはむしろ邪魔なのである。
「カエデ……アンタなぁ……」
「はぁ……はぁ……流石にきついな……」
馬崎も仰向けに大の字に倒れ込んでる。
「お疲れ様です」
イオが倒れ込む馬崎にタオルとドリンクを渡す。
「イ、イオさん!」
すると馬崎は突如起き上がる。
そしてタオルと飲み物を受け取ると
「ははっ……カッコ悪いとこ見せちゃいましたね……」
と言いながら汗を拭う。
「訓練は大変ですから……ご苦労様です」
「ふぅ……」
「あ………」
訓練後のケンジとガシンの目が合った。
「参加してたのか……」
ガシンはそうケンジに声をかける。
「半ば無理やり何だけどね……それ、貰っていい……?」
「飲みかけだぞ?新しいの持ってきてやるよ」
「いいからいいから。喉渇いちゃって」
ケンジはガシンの手からドリンクを取り上げるとそのまま飲んだ。
「………!」
少し口から垂れるその仕草は妙に色気がある。
「フフ、ありがとう」
ケンジは笑顔でガシンにそれを返す。
「新しいの取って来ようか?」
「いや、いい……」
少し呆然としながらガシンは応えた。
「そう、もうすぐ朝ご飯だから行こっか?」
「俺はもう少し休んでから行く」
そういうとケンジは手を振り、先に行く。
「……ちょっと残ってる……」
返された飲み物を見てガシンはそう呟く。
『あやつめ……まだ余裕があるじゃ無いか……』
ケイはそう呟いた。
「さぁさぁ皆さん、我々ヤタガラスからの食糧支援です」
熊井がそう言うとヤタガラスのメンバー達が携帯食糧の箱を開け、それぞれ配っていく。
「熊井さん、この食糧は……」
シオンが熊井に心配そうにそう言った。
「我々の備蓄だ。だが薩摩隼人、ムラクモに施しを受けるばかりでは面目が立たないからな。宇堂さんもそう言ってる」
『中世の時代、互酬の関係はギブアンドテイクによる相互依存であると同時に自らの社会的地位を保つための行為であった。他者からの贈与に対し同等以上の返礼を行うことで自らの地位を証明し、それが出来ない者は贈与した者の下風に立つと見なされたのですよ。姫』
ナユタが割込み、そう語る。
「まぁそういう事だ。返礼には値しないかもしれないが」
「確かに。文句ばかり言って何も出さないのは流石にね」
「こんな物しか無くて申し訳無い」
困惑しながら熊井はミコトに携帯食糧を手渡す。
「いや、こういう場だからこそ保存の効く食糧はありがたいです」
ミコトはそう言うと携帯食糧を受け取る。
「全種類ありますので好きなの選んでください。」
ヤタガラスの配る携帯食糧は一見細長いビスケットにも見えるが日本発祥の伝統的な携帯保存食で栄養も十分だ。
「アサミはね、バニラ!」
アサミはバニラ味を受け取る。
「フルーツ味だ、俺はフルーツ味しか食わん」
レンは気取っだ様子でそう言った。
「俺もフルーツ派だ……」
ガシンはそう呟くように言って受け取る。
続いてナギの順番になる。
「チョコ味……」
「フルーツ味違うんかい!」
医務室より戻ったミヤコがツッコミを入れる。
意図は不明だが本能的にそう言わざる得ない様子だった。
「さて、今回は次の作戦についてだ。前回は行き違いがあったが今回はそのような事が無いことを願っている」
「………」
リモートによる作戦会議が行われてそこには宇堂キリュウの姿が映し出される。
いつになく厳しい表情と口調だ。
「次の目標は北九州の都市の奪還、という事だが……」
宇堂キリュウは一呼吸置いて話す。
「まさか強引な武力制圧という訳にはいくまい。アジア軍が駐留していてその戦力も協商トンネルの時の比ではない。それに都市は人口密集地だ。そんな所で戦闘を始めるなど論外だ」
宇堂は厳しい口調で語る。
「宇堂殿の考えを聞こう」
中馬が話を進める。
「九州南部は君達、薩摩隼人が抑えた。オセアニア軍も事実上撤退が進んでいる。それをアジア軍や協商圏が知らぬ筈もあるまい」
宇堂キリュウの言葉は推測だとしても充分な根拠はある。ヤタガラスは火の車と言えどそのスポンサーである宇堂は資産家だ。
多少なりとも独自の情報網はあって然りだ。
「簡単に説明すると都市の包囲し交渉する。所謂脅しの形だがアジア軍も北米軍の新型の脅威に立たされてる。戦力を本州に集中させたいアジア軍とは交渉を試みたい。入植者はそのまま退避させるか共存の道を探る」
「そいは何の冗談か宇堂どん?協商連中との同盟や共生は無か!」
トヨミは真顔でモニターの宇堂キリュウを睨む。
「トヨミさん、貴方はまだ若いのに古い考えに縛られている。その考えは改めないと例え日本を取り戻したとしても世界からの批判や遺恨は避けられない」
「宇堂!きさん!お嬢に無礼じゃろが!」
大山は立ち上がると声を荒げる。
「良か。宇堂、話しば続けよ」
リモートとはいえ宇堂に飛びかかる勢いの大山を制止する。
トヨミも収まりはつかないが薩摩隼人を纏める者としてこの場は堪えている様子だ。
「メディアや総督府に対して通達を送る。そこで入植者の避難やアジア軍の撤収を呼びかける。総督も愚かではない。九州の現状を観れば懸命な判断をするだろう」
「して、どのように通達を?」
中馬が冷静に宇堂に問う。
「ヤタガラスには優秀なハッキング能力を持つ者達がいる。ネット上やメディアハックの根回しはそれで万全だ」
宇堂の言うメンバーはケイとナユタのことであろう。
「宇堂殿はこの作戦で上手くいくと?」
中馬は宇堂にそう言った。
冷静な表情は変わらぬがヤタガラス以外は案じている様子だ。
「上手く行けば血を流さずに都市を取り戻せる素晴らしい案だ。薩摩隼人の方々はいかがで?」
「宇堂殿、もしアジア軍、協商側が要求に応じなければどうするおつもりか?」
中馬はそう宇堂に問いかける。
「その時は速やかに撤収する。脅しは失敗だ。都市付近での戦闘など論外だ。我々は罪のない一般人を巻き込むつもりはない。あの都市には入植者だけだなく亡命し、アジア協商の名誉市民となった日本人もいるのだからな」
「国ば捨て、売国奴となったア協の犬なぞ日本人では無か!」
大山は再び立ち上がり、大声でそう叫ぶ。
「大山君と言ったかね?私は敵だから配慮の必要は無い、といった考えには賛同しない。他に血の流れぬ方法があるとでも?」
モニター越しだが宇堂キリュウは大山に視線を向けそう言った。
「宇堂、おいらは戦争ばしとる!流血ば避けられん!そいに敵だけ血を流さんという結果は死んでいった同胞たちに顔向け出来ん!」
大山は大声でモニターの宇堂に向かって叫ぶ。
「前にも述べたがが我々ヤタガラスは積極的武力行使には賛同出来ない。他に血の流れない妙案が無く、賛同出来ないというのであれば同盟は解消する」
モニターごしとはいえ宇堂キリュウは臆すること無くそう続ける。
「当主、いかが致します?」
中馬はトヨミに判断を請う。
「そいで良か。ムラクモはどうじゃ?」
「お嬢……」
トヨミの言葉に大山は不服そうではあるが引き下がる。
そして静観していたミコトは応える。
「この同盟の代表は薩摩隼人だ。元より盟主の判断に従おう」
「そうか。ムラクモの新しい代表も話が解るようで助かった」
そう言うと宇堂の表情が和らぐ。
「この場所に廃村があります。我々の傘下の部隊が修繕をしています。そこに駐留し、作戦に備えましょう」
中馬が地図を映し出すとその地点を拡大し、示す。
森の中の道を一列となった車列がゆっくりと進む。
簡易的だが地元のレジスタンスにより車道が作られている。
所々に機能していないメガソーラーが放置され、その影響で崩落している場所もあるが手が入らず放置されていた。
それを深刻な顔で眺めるヤタガラスの面々。
「この一帯はこの有り様です。それ故にアジア協商は興味を持ちません」
輸送車の中で中馬がそう説明した。
「日本中この有様だ。九州も例外じゃ無いという事だ」
その光景を見てガシンが不機嫌そうにそう言った。
『責任者たる者が権力を行使して私利私欲の為に己の土地を売り渡した結果がこれだ……』
ケイも深刻な様子でそう応える。
「まさに売国奴だ。腹立たしい」
ガシンは目を閉じ腕を組み静かながらも怒をあらわにしている。
「ふぅ~〜〜、やっと着いたぁ……」
シオンは降車すると伸びをし、軽く立ったまま出来るストレッチをする。
『大掛かりな整備はされてないが道はあった。地元レジスタンスによるものですな姫』
「中馬さん、お待ちしておりました」
先に来ていた仲間達が出迎える。
そこにはヤタガラスが率いていた老人女子供含める日本人の難民達がいた。
「え?どうしてここに?」
シオンがオドロキそう言った。
それに初老の男性が応える。
「此処はまだ使える民家がたくさんありますから。おかげで助かりました。作戦前には避難しますよ」
『成る程、開発で強引に立ち退かされ、境界戦のいざこざでそのまま放置されてるという事か』
ナユタは過去のデータを検索し、そう説明する。
「北九州のレジスタンスが身を潜めるにも使っていたようです。しかしいずれはここにもアジア軍は来るでしょう。アジア協商の北九州の植民都市はここからそう遠くありません」
中馬はヤタガラスの面々にそう説明した。
皆、不安そうな表情を隠せない。
「心配なか!アジア軍はおいら薩摩隼人の快進撃にびびっとるで!連中ば今は都市に籠城しとるばい!」
大山が皆の不安を払おうと鼓舞するように大声で言った。
『しかしアジア軍から援軍は来るだろう。奴らは物量作戦が得意だしな。未確認だが得体の知れない部隊も存在するという』
ケイは懸念している様子で話す。
「アジア軍ばまとめてチェストすっど!なぁお嬢!」
「お嬢ば言うな大山。当主ばい。安心せい!おいら薩摩隼人がアジア軍の連中ばチェストすっで!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!チェストーーーーー!!」
トヨミの言葉で薩摩隼人や九州の難民達が盛り上がる。彼女の言葉で士気が高まってるのが解る。
今にも都市部に攻め入ろうという勢いだ。
「当主、ヤタガラスとの協働である事をお忘れなく。仲間からの連絡を待ちましょう」
制止するかのように中馬が言葉を挟む。
「仲間?スパイでも潜入させてるのか?」
中馬の言葉を聞いたガシンがそう疑問を口にする。
『薩摩隼人も武力だけでは無いという事か。情報は重要だ。そこを解ってるのは流石だ』
ケイは感心した様子だ。
廃村は所々古びているものの人が住んでいる故に手入れされいる。
電気水道等のインフラこそ通じていないが自家発電用の装置が持ち込まれそれによって生活用水も補っている。
「アイツと開拓した村を思い出すな……」
「………」
ガシンとシオンは村を眺めながら思いを巡らせる。
「こうしてシンデレラは王子様と幸せに暮らしました。めでたしめでたし〜〜〜」
カエデが珍しく嬉々とした表情で子供たちに紙芝居を披読み聞かせしている。
しかし満悦のカエデに対して子供達の表情は疑問に満ちている。
「絵は上手だよね……」
幼い少女の言う通り手先が器用なカエデの絵は誰が見ても上手いと言うだろう。
「でも……」
「何で王子が……ナギだっけ?ナギの姉ちゃんなんだ?」
紙芝居の王子は見るからにナギそっくり、そのもだった。
勿論シンデレラはカエデだ。
「シンデレラを自分にするのは解るけど王子って男だろ?」
「これはこういうものなの」
カエデはそう断言して子供達の質問を一蹴する。
「他は無いの?」
「新作、あるよ」
カエデは新しい紙芝居を取り出す。
「それじゃ白雪姫」
だが扉絵に描かれた王子はまたもやナギだった。
そして白雪姫はカエデ。
ちなみに魔女の姿はメアリーだった。
「もういいよ!」
「アイツの紙芝居、クオリティは高いねんけど不評やねん」
ミヤコはその光景を見ながら皆に説明すように呟いた。
ヤタガラスの馬崎は自分のジョウガンの動作、装備の確認を行ってる。
「………」
だが馬崎は不満そうだった。
「もう少し腕部の稼働、細かく設定出来ないか?なんというか繊細さに欠けるというか……」
「今までそれで良かったじゃないか?どうした?」
トンネルの作戦で乗ったジョウガンの改造型の整備はムラクモの柊イオの手によるものだった。
自信は無さげだったがとても繊細で少し乗っただけでも馬崎の操縦に馴染む物だった。
ヤタガラスの村松タケルも優秀なメカニックに違いはないが今の馬崎からすれば不満なのだ。
「……いや、すまん。これで大丈夫だ」
「不具合があるなら良くないでしょ。後で調整しとくよ」
一通りメンテナンスは終わってる様子だがムラクモの柊イオの所にに頼みに行くのも疲れてるだろうし気が引ける。
更に馬崎はイオに対して何かしら意識している所があった。
「馬崎、今の内に飯でも食っとけよ。その間に終わらせてやるよ」
「ああ……」
村松タケルに促され、馬崎はガレージを後に食堂へ向かう。
「ごめんなさい。ご飯、まだなんです」
馬崎が向かった食堂ではイオやミコト、他にもヤタガラスや難民の面々が大人数の食事の用意をしていた。
「あ……、いえ、すみません。俺が早く来ただけで……」
馬崎は照れくさそうに言った。
「柊、握り飯と味噌汁ならあるだろ。それを出してやれ。此処はもういい。後は任せてお前も食事を取れ」
ミコトが気を回したのかそう言った。
艦長として、ムラクモを率いる者として少しずつそういった事が板についてきた様子だ。
「頂きます」
馬崎とイオは手を合わせそう言う。
日本の伝統的な食事の前の動作だ。
馬崎は早速味噌汁に手を伸ばす。
「不慣れだから美味しく無いかもしれませんが……」
「この味噌汁、イオさんが!?」
馬崎は手に取った味噌汁を眺めながらそう言った。
イオは照れくさそうにしている。
馬崎も照れくさそうに味噌汁を啜った。
「……美味い……」
イオに対する気遣いではなく自然と本音が漏れるように馬崎からその言葉が出た。
「美味い!美味いですよイオさんの味噌汁!世界一美味いです!」
馬崎は恥ずかしげもなくそう言いながら味噌汁を口に運び、握り飯を頬張る。
「このおにぎりも美味いです!塩が効いていて疲れが吹っ飛びますよ!」
「そのおにぎりは僕が握りました」
二人にケンジが割って入るようにそう言った。
そして二人が振り向いた所をケンジが手に持っていたカメラのシャッターを押す。
「いい写真が撮れたね」
ケンジが持っていたのは旧世代のアナクロなカメラだ。
だがその場で写真が現像されて出てくる。
「もう一枚欲しいね」
ケンジの声とは裏腹に二人は照れくさそうにし、イオは完全に顔を伏せてしまう。
「残念。二人とも結構いい画になってたのに。これ、どうぞ」
ケンジは出来た写真を二人の前に置くとその場を後にする。
どうやらヤタガラスとの写真を撮って回ってるらしい。
「………」
気まずい雰囲気が二人の間に流る。
「どうしよう……写真なんて恥ずかしいな……」
「そんな事ありません!とても可愛く写ってますよ!」
小さな声で言ったイオに対して馬崎がまたもや恥ずかしげも無くそう言った。
だがイオは顔を赤くしてしまう。
「その写真、捨てて貰っていいですか……?他の人に見られたく無い……」
どれだけ馬崎がフォローしてもコンプレックスがあるイオには耐えかねるものなのであろう。
「捨てるなんて勿体ない!そうだ!この写真、俺が預ります!絶対に誰にも見せません!」
そう言うと馬崎は写真を懐に入れる。
「……あっ……」
イオは戸惑うも馬崎はもうその気満々だ。
「さあイオさん、早く食べましょう。折角作ってくれた味噌汁が冷めてしまいます」
そして馬崎はその味噌汁を飲み干す。
「また、味噌汁作ってくださいね。イオさんの作る料理なら何だって美味いですよ!」
北九州アジア協商植民都市。
かつては日本の北九州を代表する都市だったがまだ日本政府が機能してる時代から親アジア協商派の知事や市長との繋がりで徐々にアジア協商圏からの移民が増え、実効支配が成されていた。
境界戦前に実質的に占領が成されていた都市の一つだ。
都市の大型モニターにはアジア協商の宣伝が大々的に流されている。
日本人も僅かに残っているがそれらは名誉市民の扱いかつ人権など無い。
生活の為には過酷な重労働が必然となる。
その一方でアジア協商からの移民は悠々自適な生活を送っている。
アジア協商での生活は苦しくとも日本への植民を希望すれば日本人から徴収した税金で生活は賄われる。
格差の激しいアジア協商では日本への入植希望者が後を絶たない。
『我がアジア自由貿易協商では東の地、日本への入植者を募集しております。その地での生活と安全は補償されています。今お住まいの方でも御家族や御親戚、ご友人の方をお誘い頂きますと特別な謝礼金をお出ししております。アジア自由貿易協商万歳』
あらゆるメディアからこういう宣伝が流れてくる。
それに目もくれず一心不乱に特別なリュックを背負い自転車で配達をする日本人達。その姿はやつれてボロボロだ。完全歩合制の配達の仕事。それを日に何件もこなしてようやく一日の生活が出来る割に合わない日本人に許された仕事。
これはまだマシな方で他は監視下に置かれた奴隷や家畜未満の重労働ばかりだ。
「仕方なかったんだ!腹が減ってどうしようもなくて……」
一人の日本人の配達員がアジア協商の警察に連行されていく。
「まったく配達物の料理を食うなんて日本人は常識が無いな!人間として失格だ!収容所で反省しろ!」
「収容所は嫌だ!あそこから出てきた奴なんていないじゃ無いか!」
日本人には情状酌量の余地は無い。収容所に送られれると二度と戻って来ることも。
その日本人の姿を見て入植者達はある者は嫌悪し、ある者は嘲笑する。
入植者の中にはアジア協商で貧困な生活を送っていた者も少なくない。
だが入植者として志願すればその生活は一変する。
過去の苦労は忘れ、今に至る。
たが突如、都市のあらゆるメディアはハッキングを受ける。
『我々は日本を奪還せんとする勇士達だ。アジア自由貿易協商に告ぐ。直ちに退去せよ。さもなくば殲滅する。以上だ』
人工音声と文字だけの簡潔な告知、たがそれらはあらゆるメディアの放送に割り込んで来た。
たがこういう事は度々あるのか入植者達は
「脅迫?どうせまたつまらぬ悪戯だろ。いつも通り犯人さっさと捕まえて見せしめに処刑しろ」
「それが……今回はどういう事か発信元が割り出せず
……」
「どういう事だ?まあいい。この都市に駐留する軍に真っ向から挑んで来るのは北米軍だって難しい。適当な日本人を犯人に仕立て上げて市民の不安を解消しろ」
直ぐ様アジア協商警察が動く。
場所は都市部のスラム街。
華やかな都市の中にある日本人が住まうスラム街だ。
「……こいつ……PCどころか携帯端末だって無い。電気だって通って無いぞ……」
人が住んでるかも解らない様な場所に犯人として扱われる一人の中年男性。
警察が来ても何も反応せず目も虚ろだ。
おまけに足を引きずっており歩くのもままならない。
「……コイツが犯人だと決まったんだ。だがこれなら収容所の方がまだマシかもしれんがな」
「もっとも生きて帰って来れない訳だが…」
その日の内に犯人逮捕のニュースがメディアで流れる。
だが都市の住民達はその事に感心を示さない。
いつもの事だと流していた。
とある廃墟ビルの一室。
そこは設備が持ち込まれとある組織の拠点となっていた。
「まだまだ戦闘のある土地で平和ボケ。これなら簡単そうだね」
ノート型の端末を見ながら少年が囁く。
「良いじゃない。平和を楽しんでるならね。昔の日本人も同じようなもんだよ」
その後ろで痛んだソファーに大胆に腰掛ける男がいた。
清霞ヒロシゲだ。
「御前にとっちゃこっちの方が都合がいいだろうしな。俺はどっちでもいいけど」
「………」
イブキがそれを無言で見つめる。
『作戦開始時刻まで24時間を切りました』
ヒロシゲのフクロウ型のアイレスが告げた。
「そんじゃ俺等もそろそろ行きますか」
ヒロシゲは立ち上がると二人を従えるように歩きだす。
「さぁ、愉快な遠足の始まりだ!!」
原作に無い馬崎にフラグを勝手に立てました!
前書きの通りパラレルワールドという事なのでまた違う結果になるかもしれませんよ?
次回は節目となる派手な展開です。