DR Dystopia March   作:黒木冴

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コロシアイ学園生活、はっじまっるよ〜!

2024/5/6.校則に少し加筆。


今宵、希望が潰えども
Chapter1 (非)日常編①


時雨視点

 

 

目を開ければ異質なものが見える。あの最悪な朝礼以降に自分が何をしたのかも覚えていない…どうやら何時の間にか泥のように眠っていたのだろう。

目をキョロキョロと動かして周りを調べる。普通ならつくはずのない監視カメラ、鉄板で遮蔽された窓、カレンダーのない空間。キングサイズのベッド。

 

嗚呼これが夢であって欲しかった。だが……

 

 

≪グッモーニン、オマエラ!爽やかな朝の7時だよ!華々しいコロシアイ学園生活は今日からスタート!さあさあ、今日から元気にコロシアイ学園生活を!≫

 

 

……畜生、夢じゃなくて現実だった。これから毎日こんな汚え声のモーニングコールが毎朝流れるのか。どうせならお猫様の喉鳴らしモーニングコールを寄越せ。モノクマの汚ねぇ声より100億倍マシだ。

 

 

『んん、朝だよな…適当に朝飯でも食っておくか……はっ?』

 

 

俺はベッドから下りようとしたが手首を何かに掴まれそれは叶わなかった。その何かとは人の手―もっと言うなら何故か俺のベッドにいる紅羽の手だった。

 

『く、紅羽!?何でお前、俺の個室にいるの!?』

 

「あんなことあったから…少しでも時雨と一緒に居たかったから。て言うかもう少し寝ようよ、まだ眠いし」

 

『ちょっ、待て!確か自分の個室以外で眠るのは校則違反だろうが!』

 

「別に違反じゃないよ?確かに寄宿舎以外では眠ってはいけないとは書かれてあるけど、自分の個室以外で就寝してはいけないとは書かれてないでしょ。それにクソクマから「松永クンの部屋は澪島クンの部屋同然に扱ってあげる!だって幼馴染みだもんね!」って言われたし…あれから文句言ってこないからセーフじゃない?後5分でいいから寝させてよ」

 

 

おい待て、待て待て待て待て待て!誰かに見られたら絶対に誤解される!許せ紅羽、お前のためでもあるんだ!俺にそんな気はない!

 

 

「ふああぁ、時雨…一緒に寝よう」

 

『紅羽!眠いなら自分の部屋で寝ろ!じゃないと俺はお前と絶交する!!』

 

よし!これくらいキツく言えば、流石に紅羽も言うことを聞く……あれ?俯いて黙ってる?分かってくれたのか?

俺は勝手に自己完結し、紅羽のことを気にせず朝御飯を食べに行こうとベッドから離れようとしたが、視点がドアからいきなり天井に変わる。

 

俺は瞬時に分かった―自分が紅羽に組み敷かれていると。

 

 

『はっ?く…紅羽?お前、ふざけてんのか?良いからどけ!重いんだよ!お前はさっさと離せって!離れろ!離れねぇと』

 

 

「澪島ぁぁぁぁ!アウトぉぉぉぉ!」

 

絶叫の後に俺が見たモノは、紅羽が高速でベッドから床に叩き付けられた光景。しかもそれをしたのは怒りのオーラを露わにしている夕海。何でお前個室に入れるの?多分鍵掛けるのを忘れてたんだな…夕海は見○色の覇気が使えるのか、成程。

 

 

「夕海君、いきなり廊下を走ったら…どうしたの松永君。もしかして澪島君にヒドいことをされたの?」

 

 

木巾、俺は辛うじて未遂です。現在進行形でヒドいことされてるのは紅羽の方です。夕海、紅羽を仰向け状態にして頭上でクルクル回すな。俺の幼馴染みはピザ生地じゃない。そろそろ泡吹きそうだなぁ、あっ既にカニだった。夕海はその気があれば良いピザ職人になれるぞ。開店資金も半分位出すし、何なら常連客になろう。俺はシーフードピザが食いたい。

 

 

「夕海君、一旦落ち着いて。澪島君泡吹いてるから」

 

「あ、ホントだ。ちょっとばかしやり過ぎた」

 

『あれでちょっとばかしとか言わねーよ。お前ヤケに手馴れてなかったか?』

 

「ああ、アイツがふざけた事したらこういうのしたし。アイツはやられてもピンピンしてたぞ」

 

『…アイツって誰だ?』

 

「あたしの幼馴染み。体がかなり丈夫だって自慢してたし」

 

『へぇ……』

 

「さて澪島、ナニしたのか知らないけど松永に謝りな」

 

「はあ?何でボクが謝らなきゃ―」

 

 

「謝罪するまでさっき以上のをお見舞いしてやろうか?」

 

 

夕海が額に青筋立てながら背中に背負っていた薙刀を構えると、流石の紅羽もビビったのか「ごめんなさい」と俺に謝ってくれた。荒療治には早過ぎたな、反省反省。

 

俺達は寄宿舎の2階から1階の食堂に移動することに。途中で戌神に出会い、どうして木巾と夕海がいるのかと聞かれたので「朝ご飯食べに行く途中で偶然会った」と適当な理由で誤魔化した。

 

「時雨君、本当にコロシアイ生活なんて始まっちゃうのかな?僕、コロシアイなんて嫌だよ」

 

『戌神…大丈夫だ。コロシアイなんて、絶対させねー。俺達は必ず全員でここから脱出するんだ』

 

「そうだよ戌神君。コロシアイなんて絶対にさせない。僕に出来ることがあれば、何でも言ってね」

 

「時雨君、修二君…そうだよね!僕達なら出来るよ!僕も出来る限り手伝うから!」

 

「……………………」

 

 

紅羽、そんな目で見るな!戌神や木巾に友情以外の他意はねえ。だから睨むな!

そう思ってたら「コラッ!そうやって誰彼構わず睨むんじゃないの!!」と夕海が薙刀で紅羽の頭を小突いていた。お母さん、もっと言ってやって下さい。

 

「まったく少しは媛子を見習いなさいよ。アイツは小鳥遊や渋谷にすら元気良く朝の挨拶かまして食堂に行ったぞ」

 

『ははは…そういや夕海、何で茉波だけは名前で呼んでいるんだ?他の奴には苗字呼びなのに』

 

「……あたしがこの学園で目が覚めた時、最初に会ったのが媛子なんだ」

 

「そうなの!?」

 

「知らない場所に放り出された子供みたいな感覚だったあたしに、無邪気な笑顔で接してくれたのが媛子だった。それに…あたしと友達になりたいって言ってくれたから」

 

『友達…でも夕海みたいに世話好きな奴なら、友達なんて沢山いるだろ?』

 

「…………そうでもないよ」

 

『えっ?』

 

「あたしの周りには…そんな奴いなかった」

 

『(あれ?もしかして俺は地雷を踏んだのか?)あっ、えっと…何かごめんな!湿っぽい話にして!』

 

「別にいいよ。あんたが気にすることじゃない」

 

「あっ、何か良い匂いがするよ!」

 

 

食堂に着いた俺達を待っていたのは、焼き魚が焼き上がった香り。狩谷は俺達の姿を見るや和定食のおかずが乗ったお盆を一つ一つ運んできてくれた。夕海は厨房へ戻ろうとする狩谷に向かって「あたしも手伝う」と言いながらベージュのエプロンを自然な流れで着用し厨房へ入っていく。

 

そして夕海と入れ違いで狩谷が厨房から出てきて、俺達の目の前にあるバイキングでよく見る大きな炊飯器の前に立った。どうやらご飯をよそってくれるらしい。本当は自分で出来るけど、狩谷の親切を無駄にしてはいけないのでよそってもらおう。

 

 

「松永さんは沢山食べる方だか?」

 

『いやー、普通かな?』

 

「ならこれくらいでいいだな。澪島さんと木巾さんと戌神さんはどれくらいが丁度だ?」

 

「ボクも時雨と同じ位」

 

「普通でいいよ」

 

「僕は大盛りね!」

 

「分かっただよ。ちょっとだけ待っててほしいだ」

 

空いているテーブル席に着き、和定食の中身を改めて見る。アジの開き、菜の花のお浸し、胡瓜と大根の浅漬け、豆腐と若布の味噌汁。これが所謂飯テロという奴だろうか。

 

「…これくらいボクだって作れるし」

 

何対抗意識出してんだよ紅羽。別にいいだろ誰が作ったって…小鳥遊や渋谷はダークマターしか作らなそうだが。そんなことを思いながら狩谷が作った朝飯を4人で食べる。木巾はホントに何しても映えやがるな、神様赦さんぞ。

 

『……美味い』

 

「ホントだか!?嬉しいだよ〜!」

 

「うん!ホントに美味しい!美菜子さん料理上手だね!」

 

「美味しいだけじゃなくて、栄養バランスも確り考えられている。狩谷君は本当に料理上手だね」

 

「えへへ、そんなに褒められると照れ臭いだ〜!」

 

「……まあ、食べられなくはないかな」

 

紅羽はそう言いながらも箸を進める。素直じゃない。正直狩谷の料理は母さんの手料理位美味い。狩谷の笑っている顔は可愛い。

俺が朝飯を食べている間にも戌神はご飯を3杯平らげた。あいつの胃袋は鉄で出来ているのだろうか。

 

「おっ、お前等遅かったな!狩谷の朝飯は何杯でもイケる位美味ぇぞー!」

 

『刻村…お前何食ってんだ?』

 

「飯食った後は甘いものって決まってんだろ。モノクマ印のクリームパンとか胸糞悪いネーミングだけど、これしか無いから妥協した」

 

そう言いながら刻村は俺の向かいに座り、袋から出したクリームパンに噛じりつく。こいつの胃袋も戌神と同じ鉄製なんだろうか?そして紅羽、睨むんじゃないの。俺はこっそり紅羽の足を踏んでやった。

 

「それよりよー、コロシアイってマジなのかよ?オレはぜってーやだぜ!?」

 

『…そんなの決まってんだろ。コロシアイなんて絶対させねー!俺達全員で脱出してみせる!』

 

「だよなだよな!コロシアイなんてしねーで、オレ達で脱出しようぜ!」

 

「そうだよ!コロシアイなんて物騒なことしちゃダメだよ!」

 

「戌神君の言う通りだね。希望を捨てちゃダメだ、僕達で何とかなるかもしれないって希望はね」

 

『だよな!よし、先ずは朝飯食べ終わったら―』

 

 

 

 

「本当にそうかなぁ~?」

 

 

 

俺達の決意を揺るがすような声がした方を見ると、俺達から少し離れた場所で呑気にブラックコーヒーを飲んでいる蘭がこっちを見ていた。その表情は昨日と同じ微笑み、正直あいつが何を考えているのかさっぱり分からない。

 

「ねぇしぐっちゃ〜ん、この学園から脱出するのが俺達にとって最善策なのかなぁ〜?」

 

 

「……君は何が言いたいんだい、蘭君」

 

「あのねぇ…ぶっちゃけるとさぁ、俺はこの学園から脱出するのは馬鹿げてると思うんだよねぇ〜」

 

『なっ!?』

 

「俺はさぁ、人間も野生動物や植物みたいに適応するべきだと思うんだぁ。この閉鎖的空間だってぇ、次第にみんな慣れると思うよぉ~」

 

「ヒュウガ君本気なの?本気でこんな場所に、一生留まれっていうの!?」

 

「えぇ?だってこんな良い優良物件無くなぁい?食べ物に困らず、一日中適温な空間だから寒暖差によるストレスがないし、俺達の着替えや風呂もある。そして外からの脅威に晒されることがない!ストレスはなるべく少ない方が長生き出来るよぉ〜?」

 

 

「つまり外に出る危険を冒すくらいなら、このイカれた空間にずっといろってこと?馬鹿でしょ」

 

「馬鹿かどうかは君に決めつけられたくないかなぁ〜。しぐっちゃんがいないとなーんにも出来なさそうな顔してる癖に、偉そうに説教垂れるとかマジ受けるんですけど〜」

 

「っ…!」

 

止めろ蘭!紅羽をこれ以上刺激するな!お前五体満足でいられるか分からんぞ!?

 

「何も知らない部外者のくせにボクのことああだこうだって決めつけないでくれる?ボクは単に時雨と一緒にいたいだけだし、時雨がいないと何も出来ないって訳でもない。これ以上変なこと言うなら麻酔なしで腹かっ捌いて臓物1個減らすぞ腹黒」

 

「あはは、随分な脅し文句だねぇ〜。だったら逆にその減らず口二度と聞けないように麻酔なしで縫合するか、お前の生えてる歯全て抜歯して男色家の知り合いに高値で売ってやろうかぁ〜?」

 

「戯れ言吐かすなよこの赤髪クソ野郎。喉笛掻っ捌かれたいか磔火炙りにされたいか選べよ腐れ外道」

 

「ふざけてんのはそっちだろサイコ野郎!その二枚舌ぶっこ抜いて口の中血まみれにぐべらぁ!」

 

蘭がいきなり倒れ、その3秒後に紅羽も倒れた。あの危険物2人を倒した猛者がいるなんて…そんなことを思っていると、夕海が気怠そうに厨房なら出てきた。

成程、紅羽と蘭の悪口マシンガントークを止めたのは鶴の一声ならぬ「夕海の一撃」か。2人が蹲っている近くにはお玉も小さめの金属ボウルが床に落ちている。どちらが投げられたかは分からないが、蘭は右側頭部を擦りながら夕海を見る…蘭は少し涙目だった。

 

「喧しい!あんた達揃って小学生か!!」

 

「うぅ〜…痛いよハルちゃぁん!俺の顔にお玉投げるなんて重罪だよぉ〜!」

 

「あんた等が煩くするからでしょうが、少しは反省しなアホらぎ!澪島、こいつの発言に一々反応するな、時間の無駄だ」

 

「…時雨、夕海さんに暴力振るわれたから慰めて」

 

『甘えんな。自業自得だ』

 

生まれたての小鹿みたいにガタガタ震えながらお互いに抱き着いている刻村と戌神、「大丈夫だから」と2人を安心さようと背中を擦る木巾。朝っぱらから夕海の説教を喰らっている蘭と紅羽。そして俺は周りに気を配りしつつ朝飯を平らげたのであった。

 

 

 

「……時雨君。あたしが絶対に助けるから」

 

 

俺を見た茉波がこう呟いた意味は、やっぱり分からなかった。

 

 

 

朝食を食べ終えた後、俺は紅羽と共に夕海に廊下へ連れ出され軽く説教された。あの時紅羽を突き放したのは少し反省している。美味しいご飯は温かい内に食べたかったから我関せずでいたが、俺以外にも食堂使っている人もいるもんな。反省しよう……因みに蘭は夕海の右ストレートで一発KOされた。カワイソ。

一旦食堂に戻ると、俺達以外の生徒が全員食堂に集まっていた。…小鳥遊が俺を睨む、何にもしてないのに理不尽だ。

 

「松永、やっと来たのかだよ!遅いぞ!」

 

『あー、悪い。夕海に説教されてて……』

 

「言い訳など聞きたくないのだよ!これからモノクマに対抗するべき会議だと言うのに、君は幼馴染みの行動すら見抜けないのか!?大体【超高校級の幼馴染み】なら、幼馴染みの扱い位慣れるべきだ!それなのにこうも手間取るなど、君の怠慢でしかないのだよ!いいか松永、これ以上集団行動を乱す真似をするなら―」

 

 

「はぁーぁ、ピーチクパーチクうっさいなぁ。無能な人って何で人より声がデカい人ばっかなんだろうね」

 

「む、無能だと?……無能という言葉はわたしに対して言ったのか澪島!」

 

「お前なんかに時雨の何が分かるんだよ。どうせ親から貰った才能に自惚れて、リーダー気取ってる癖に…ホントムカつく」

 

 

『(あっ、マズイ…)紅羽落ち着け。俺は気にしてないから、なっ?ちょっと落ち着こう。Aパートだから落ち着こう』

 

「澪島!自分勝手もいい加減にしろ!わたしは君に話をしていないのだよ!これだから集団生活を乱す問題児は困るのだよ!」

 

「……だから何?こんな風に時雨やボクのこと無能扱いして、自分が如何にリーダーとして相応しく魅せたい無能な人に構っている暇ないんだけど」

 

「何だと澪島!?会議に遅れた分際で、わたしに意見するなど言語道断だ!」

 

「うっわ、マジでキモいよこの人。何コイツ、自己満足大好き宇宙人か何かなの?」

 

『紅羽やめろって!小鳥遊も落ち着けって!』

 

 

「はぁ……小鳥遊、あんたいい加減にしなさいよ。もう黙っててくんない?」

 

「なっ、何を言うのだよ夕海クン!これはモノクマへの対抗手段を考える大事な会議なのだ!集団生活において、優先順位を考えなければこの先生き残れないのだよ!」

 

「ふーん、大事な会議だからってあたし達の前で時雨君や紅羽君を晒し者にしても良いの?正直カッコ悪いよ梓ちゃん」

 

『茉波…』

 

「つーか、遅れてきたのはあたしだって一緒の筈だろ?それなのに松永達だけネチネチ説教して楽しいわけ?」

 

「そうですよ小鳥遊さん!夕海さんも遅刻したのに、松永さんや澪島さんだけを吊るし上げるなんて、卑怯者のすることです!!」

 

『夕海……勅使河原……』

 

「あ、あのね時雨君!嫌な思いさせてゴメンね?遅刻したことなら気にしないで!全然気にしてないから!紅羽君も落ち着こう!時雨君のこと本当に大切な人だって思ってるんだね!!」

 

『戌神…』

 

「だ、だが澪島がわたしを侮辱したことと松永が遅刻したことは別問題なのだよ!だから」

 

 

「小鳥遊さんってしつこいねぇ〜。しぐっちゃんだってぇ、悪気があって遅刻した訳じゃないって、ハルちゃん言ってるじゃんかぁ。あれれぇ?集団行動を乱す真似をしてるのってもしかして小鳥遊さんじゃな〜い?」

 

「……しつこい人は嫌われるわよ」

 

「梓ちゃん、重箱の隅を突くのは止めなさい。自分を小さく見せているのが分からない?」

 

「んだんだ!あんましねちっこいのはいただけねぇだよ!」

 

「そーだそーだ!しつけーぞ小鳥遊!」

 

「ねえー、あずっち会議いつ始めるのー?オイラ漫画の続き描きたいんだけどー!時間勿体無いー!」

 

「塚本靖彦の言う通りですわ!小鳥遊梓、これ以上無駄な時間を割かせる気なら、私様は自室に戻らせてもらいますから!!」

 

「(渋谷君それは死亡フラグなんじゃ……)」

 

「あずあず、しーちゃんやくーちゃんにいじわる…めっ!!」

 

≪にゃぷう!!柊君大事件ニャ!ぼくの朝のブラッシングの時間が刻一刻と迫っているニャーー!!≫

 

「ワトソン、生きるということは思い通りにはならないものだ」

 

 

「ううっ……松永に、澪島…晒し者にして、す、すまなかった、のだよ」

 

『あ、ああ、別にいいって!俺も今度は気を付けるからさ!紅羽も反省しているしさ!』

 

「えっ?ボクや時雨に全然落ち度が無いのに一体何を反省するの?」

 

『空気を読め、このおバカ!』

 

「ホントにあんたって奴は!この愚か者!!」

 

相変わらず我が道を行く紅羽の頭を夕海と共に引っ叩き、何だかんだで会議は始まった。まあ、簡単な話がクジ引きによる班決め…刻村は最初からハブられました。ワトソンすら参加しているのにね、可哀想。

 

寄宿舎

・食堂

夕海、茉波

・倉庫とリネン室

勅使河原、美山

・大浴場

小鳥遊、木巾

・トラッシュルーム

狩谷

 

校舎

・服飾室

三十石、クロト

・体育館

戌神、米倉

・中庭

俺こと松永、蘭

・茶道室

紅羽、ワトソン

・美術室+美術室倉庫

渋谷、塚本

 

 

「わーい、しぐっちゃんと一緒だ〜よろしくねぇ〜」

 

『お、おう。こっちこそ宜しく』

 

「…………(探索適当に切り上げて中庭行こう)」

 

「ワトソン、澪島がサボらないように見張りをしてくれ」

 

≪かしこまニャ!今のぼくは杉下○京さん並みに細かいところが気になる助手ニャンコに変身ニャ!≫

 

 

「あっ、時雨君。中庭の探索に刻村君も混ぜてくれない?中庭って結構広そうだし、3人位いた方がいいかもしれないし!」

 

「お昼になったら一端全員食堂に集まりな。あたしと媛子で昼食作っておくから…あっ、訳あって食べられない物やアレルギーとかあるなら遠慮無く言ってくれ。それを除いた食事作るから」

 

「ありがとうございます夕海さん!わたくしの食事は、カロリーの高いものを避けてもらえると助かります!」

 

「オレはレーズンや辛口カレー以外なら何でも良い!」 

 

「僕の食事には牡蠣やレアステーキは避けてもらえるかな?」

 

「青奈、味の濃いもの…あんまり食べられない」

 

「ボク辛い料理や薬味とかも無理だから」

 

「俺は豆乳使った料理絶対食べたくな〜い」

 

「勅使河原は高カロリー食、刻村はレーズンと辛口カレー、木巾は牡蠣やレアステーキ、三十石は濃い味付け、澪島は辛い料理や薬味…よし、後はいなさそうだな」

 

「ハルちゃん酷い!無視らないで!」

 

「夕海遥音、私様は貧乏くさい料理を口にしたくありませんの。ですので私様には高級食材を使った―」

 

「ならあんたで作れよ成金女」

 

「私様は成金ではありませんわよ!何故私様には辛辣なのですの夕海遥音!!」

 

「遅く来たくせに、朝っぱらからフレンチのフルコースとイスパハンを要求する奴に食わせる飯はねぇ」

 

 

蘭は何故か無視られていた。それよりも渋谷の横暴酷い。フレンチのフルコースとイスパハン用意しろとか寝坊した奴の言う事じゃない。こういう奴を説教しろよ小鳥遊、依怙贔屓するな。

俺達のいる寄宿舎と姉妹校の校舎は通路がある離れのある旅館のような造りになっているらしい。校則とやらも追加されているようだが、それは後で見ておこう。

 

俺達は其々割り当てられた場所へ向かう為、食堂から散り散りになる。茉波と夕海に見送られながら刻村と蘭、そして俺は校舎1階の中庭に向かう。

1階の見取り図は電子生徒手帳の地図機能として載っており、GPS機能付きらしい。俺達がいるのは玄関ホール。受付の台にレターボックス、ホールの真ん中にはモノクマの銅像が建てられていた。玄関の扉はガッチリ施錠されており、俺達に開けさせる気は微塵もないようだ。

 

 

 

姉妹校1階・中庭

 

中庭へ来た俺は、外の空気を感じられるかもしれないと希望的観測をしていた。だがそんな淡い希望は巨大なドーム状の天井によって崩される。やはり俺達がいるこの校舎は閉鎖的空間であることは揺るぎない事実のようだ。

 

『えっ…何でこんな所に桜や桃、木蓮や沈丁花まで咲いているんだ?』

 

「わぁ〜綺麗だねぇ!なんか桃源郷っぽ〜い!あっちの花壇にも花が咲いてるよぉ〜」

 

「オイ見ろ2人共!中庭の真ん中に噴水あるぞ!水飲み場やウッドデッキ、アウトドア用のテーブルセットやバーベキューコンロ、バーベキュー用の鉄串とか備長炭、後木製のデカいブランコもある!」

 

「バーベキュー?俺服が煙臭くなるの嫌だよぉ?」

 

 

≪そこは問題ナッシングだよ!この中庭は優秀な換気機能付きだからね!≫

 

『……えっと、校則の再確認っと』

 

≪無視しないでよ!!≫

 

 

俺はモノクマの存在を無視りつつ、蘭や刻村と共にコロシアイ学園生活に於ける姉妹校の校則を確認することにした。デスゲームって結構ルールに厳しいからな。

 

 

希望ヶ峰学園姉妹校校則

 

1.希望ヶ峰学園姉妹校での共同生活に期限はありません。

 

2.学園内で殺人が起きた場合、全員参加による学級裁判が行われます。

 

3.学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがオシオキされます。

 

4.学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロ以外の生徒であるシロが全員オシオキされます。

 

5.クロが勝利した場合は希望ヶ峰学園姉妹校から卒業し、外の世界に出ることができます。

 

6.就寝は校舎の保健室と寄宿舎に設けられた個室のみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

 

7.夜10時から朝7時までの「夜時間」は、食堂と体育館が封鎖され、トラッシュルームとランドリーにはシャッターが降ります。尚、夜時間内ではトイレと大浴場以外の水道の供給が停止します。

 

8.希望ヶ峰学園姉妹校の学園長であるモノクマへの暴力は固く禁じられています。

 

9.モノクマが殺人に関与する事はありません。

 

10.鍵の掛かったドアを壊すのは禁止です。

 

11.「死体発見アナウンス」は3人以上の生徒が死体を発見すると流れます。但し、死体発見アナウンスは推理の為のものでは無いので、クロという証明や証拠には使えません。

 

12.希望ヶ峰学園姉妹校について調べるのは自由です。行動に制限は課せられません。

 

13.校則違反を犯した生徒は学園長であるモノクマによって処分されます。

 

14.夜時間内の大浴場の使用に制限はありません。好きな時間に入浴をお楽しみください。寄宿舎の大浴場の脱衣場に異性は入れません。入った場合、寄宿舎と校舎全体に警告動画が自動で流れます。

 

 

……うん、改めて見るとやっぱり嫌だな。ふざけてやがる。

モノクマは打ち上げ花火の如く散ればいいのに。

 

 

≪ふーんだ!もう知らない!豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえバーカ!≫

 

モノクマはかまってちゃん炸裂で怒りながら去って行った。メンヘラか。

 

 

『うーん……やっぱり抜け穴や隠し通路みたいなものはないか』

 

「流石のモノクマもそこまで間抜けじゃないでしょ〜。まっ、間抜けだったら良かったんだけどなぁ」

 

「なあなあ、これでバーベキューしようぜ!花見バーベキュー!」

 

『それは夕海達と相談だな。ほら、探索続けるぞー』

 

「ぶーー!!」

 

『ぶーたれる元気があるなら、真面目に探索しろっての!』

 

「しぐっちゃーん、これ何て花なのぉ〜?」

 

 

蘭がそう言って俺に指差したのはラナンキュラス。確かキンポウゲ属の総称の英語読みだったな。花壇を注視して見ると、ラナンキュラスの他に勿忘草(わすれなぐさ)、チューリップ、ムスカリ、フリージア、水仙も植えられている。ガーデニングにあまり詳しくないが、様々な花達が綺麗に咲いているのは凄いな。姉妹校とはいえ、こういった技術は本校である希望ヶ峰学園と遜色ないようだ。

 

 

『これはラナンキュラスって花だな。花言葉は「とても魅力的」や「華やかな魅力」』

 

「じゃあこれは〜?」

 

『これは勿忘草。花言葉は「私を忘れないで」や「真実の愛」』

 

「じゃあ桜は何なんだ!?」

 

『桜全般なら「精神の美」や「優美な女性」。ソメイヨシノは「純潔」や「優れた美人」、シダレザクラは「誤魔化し」。サトザクラとヤエザクラは「豊かな教養」や「しとやか」。ヤマザクラは「あなたに微笑む」や「高尚」。フユザクラは「冷静」、カンザクラは「気まぐれ」……だったかな?』

 

「すっげーな松永、よく知ってるな!ならモクレンやジンチョウゲの花言葉も教えてくれ!」

 

『木蓮は「自然への愛」や「崇高」、後は「持続性」。沈丁花は「栄光」、「不死」や「不滅」、「永遠」だな』

 

 

「因みに桃の花言葉は、「天下無敵」や「わたしはあなたのとりこ」、そして「気立ての良さ」なんだって〜」

 

『へぇー、よく知ってるな……って、茉波!?』

 

「…あたしもいるけど?」

 

何時の間にか茉波と夕海が俺の背後にいた。お前等、ステルス持ちなのか?

 

「わぁ〜い、ハルちゃんだ〜!俺に会いたくてここに来てくれたのぉ〜?」

 

「自惚れるなこの形状記憶ブス」

 

「形状記憶フォームみたいに言わないでよ!」

 

「形状記憶で思い出したんだけど、由良三郎の二重殺人トライアングルには、形状記憶合金を使用した殺人トリックが出てくるよ!」

 

『へぇ、そうなのか……』

 

「…おい媛子、あたし達がココに来たのは蘭をシバく為じゃねーだろ」

 

「おおっ、そういえばそうだった!あたしと遥音ちゃんは食堂の探索は終わったので、何かお手伝い出来ることありますかー?」

 

『いや、来てくれたのは嬉しいんだけど…もう探索らしい探索はしたから、手伝ってほしいことはないんだ。ごめんな?』

 

「そーなのかー……しゅん」

 

「しゅんって口で言う奴初めて見たわ…あっ、なら昼食作るの手伝ってくれない?人手は多い方が良いし」

 

『俺は良いぞー』

 

「オレも!なあ夕海、渋谷が言ってたイスパハンって奴作ってくれよ!何なのか分かんねぇけど!」

 

「イスパハンっていうのは濃いピンク色のマカロンにライチとフランボワーズ、バラのエキスを入れたクリームを挟んだケーキだよ。イスパハンって名前の由来は昔「世界の半分」と豪語されていた程に栄えていたイランの土地の名前で、そこに沢山咲いていたオールドローズの名前でもあって、別名は「王女のポンポン」とも―」

 

「あーー、分かった!分かったからもういい!」

 

「そもそもの話、イスパハンは作ったその日に食べられないわよ。一晩寝かせなきゃいけないんだから」

 

「そうなのか!?」

 

『ガトーショコラ、フィナンシェ、ベイクドチーズケーキ、シフォンケーキも一晩寝かせた方が美味しいって聞くぞ。理由はケーキによって様々だけど、大抵は材料が全体的に馴染んで一体感が生まれやすくなるんだ』

 

「成程…茉波は【超高校級の読書家】だから分かるけど、松永も結構物知りだよな!」

 

『そっ、そうか?そんなことないと思うんだけど…、それなら、俺よりも紅羽の方が物知りだぞ。あいつ、テストでは常に学年トップなんだ!』

 

「が、学年トップ……だと!?」

 

「刻村には縁遠い概念だな」

 

「わかるぅ〜」

 

「けどさあ、人間性ではダントツで万年赤て、ぎゃああぁッ!」

 

 

蘭の背後に忍び寄り、チョークスリーパーをしたのは茶道室にいるはずの紅羽。お前何してんの。ワトソンどうしたんだよ、まさか放置か?お猫様への扱いが雑なのは、幾ら幼馴染みでも許さぬぞ。

 

 

≪ニャンニャカニャーン!紅羽君待ってニャー!助手ニャンコはいきなり動けないのニャ!……これは、一体全体どういう状況なのニャ?≫

 

『気にしないでいいからなワトソン。今日のお昼は何が食べたい?』

 

≪ニャンニャカニャーン!お昼は笹身入りキャットフードがいいニャ!キャットフードは柊君が用意してくれるらしいから、時雨君は茹で笹身を用意してほしいニャ!勿論素材の味を生かした茹で加減でお願いニャ!!≫

 

はあぁ、やっぱり猫は可愛い。助手ニャンコ可愛い。ワトソンの頭をナデナデするのマジ癒やし。

 

というわけで、俺と刻村は茉波達と共にお昼ご飯の支度をすることになった。

紅羽と蘭は…この場合放置した方が良いだろう。好きなだけ仲良くケンカしな。

 

 

「「仲良くなんてないから!!!」」

 

 

綺麗に一言一句違わずハモっているのにか?一緒に昼食の用意するのは難しいと思うし、何なら一日中そこにいていいぞ?

 

「時雨の馬鹿!酷い!そんな女の何がいいの!?」

 

『俺略奪モノはちょっと……』

 

「あたしもネトラレは地雷だぞ」

 

「遥音ちゃん誰もそんなこと聞いてないよ?あたしも嫌いだけど」

 

「リャクダツ?ネトラレ?何の話だ???」

 

≪こ、コーキ君は知らなくていいことニャ!それよりも、早くお昼ご飯の準備に取り掛かるのニャ!笹身が食べたいニャー!≫

 

 

慌てふためく可愛い可愛いお猫様のお願いだ。早速お昼ご飯の準備をしなければ。俺は先陣を切るように足早で食堂へ向かった。…紅羽と蘭も付いて来た。

 

お昼ご飯は平和に作りたい。

 

 

 

 

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