アサルトリリィ×仮面ライダー time of 百合ヶ丘女学院 作:黒破リンク
(この小説は少しだけ舞台アサルトリリィ新章第2弾のネタバレを含みます。)
私は豊川リョウヘイ。
百合ヶ丘女学院、アールヴヘイム所属。百合ヶ丘にある2つのチーム、雪月花、ブラックアウト。その2つに所属してせず、戦い続けている。
何故私がチームに属さず、アールヴヘイムで戦うことを選んだのか。何故仮面を着け、百合ヶ丘へ来ることとなったのか。
……今此処に、私の過去を書き記す。
私の母は元女優、父はプロ野球選手というスターの両親の元に生まれた、至って普通の少年だった。
私は女優として輝いていた母を、そしてプロ野球で活躍する父を誇りに思い、尊敬していた。
そしていつか、自分も両親のように誰かを笑顔に、憧れを抱いてもらえるような人間になりたい、そう思っていた。
だが、そんな日常も、長くは続かなかった。
……父が戦力外通告を受けたのだ。
父がプロ野球の世界で輝くことが出来なくなった。それからというもの、家族環境は大きく歪んでしまった。
父は戦力外通告を受けたことによって自暴自棄になり、酒とギャンブルにハマっていった。
母は結婚を機に女優を引退し私を育ててくれていた。
今となっては、私の為に愛を注ぎ続けてくれた母には感謝してもしきれない。
……話を戻そう。
父は酒とギャンブルにのめり込み、多額の借金を抱えてしまい、返せないほどに膨れ上がった。
今にして思えば、父を止めておけばこうならなかったのではないかと後悔はしている。
そんな父は、暴挙に出た。
……私をG.E.H.E.N.A.に売り付けたのだ。
G.E.H.E.N.A.が父の返せなくなった多額の借金の返済の肩代わりする代わりとして要求したのが私の身柄をG.E.H.E.N.A.に売り渡す事だった。
当然私はそれを拒否したし、もちろん母も拒否した。一度は自分たちの力で解決しようと家族間で話にはなったのだが、母が外へ出掛けている間に父は私をG.E.H.E.N.A.に売りつけたのだ。
その後家に帰ってきた母は1週間くらいかけて警察や近所の人達と協力して捜索にあたってくれたらしい。
しかし売られたことを知らない母は、見つからないことに嘆き、父にものすごい剣幕で問いただしたと言う。
その時、父はこう言ったらしい。
『リョウヘイをG.E.H.E.N.A.に売った。』
と、こう言った父に対し怒りを覚えた母は父と別居した。
その後、父は私を売ったことで借金を返済したものの、尚も酒に溺れ、肝臓が悪化しそのまま死亡。
売られた私は当時そんなこと知る由もなく、G.E.H.E.N.A.の研究所、鞍馬山ラボで実験台にされていた。どうやらG.E.H.E.N.A.は、私に何かしらの異能があると目をつけていたようで、後にデータを盗み見した時には、『ヒュージの気配が肌でわかる』と言う異能を持っていたらしい。
……確か当時、私は10歳辺りだったか…。あまりにも忌々しくて思い出したくもない日々なもので、あまり記憶に残したくなかったからか正確な年齢は覚えていない。
私はG.E.H.E.N.A.の施設で開発途中の剣、『黒曜炎剣アマノハバキリ』の起動実験をさせられていた。
私以外にもリリィや私と同じように売られたり誘拐されたであろう人も沢山いた。
アマノハバキリの起動実験の順番が私に回ってきた。
他の被験者同様、私は最初起動することが出来ずにいた。
そして来る日も来る日も実験は続き、私の精神は疲弊しきっていた。
幽閉されて数年経ったある日のことだった。私にある人が声をかけてくれた1人の女性がいた。
『山口千尋』。白い髪でショートヘアのような髪型をしていた女性。ひと目で年上だと言うことはすぐにわかった。
彼女は精神的に疲弊しきった私に、話をしてくれた。
鎌倉府の学校でリリィとして戦っていて、そこで幼馴染5人でレギオンを作る約束をしたそう。
嬉しそうに語る彼女の笑顔は、かつて母が私に向けた笑顔にそっくりだった。
実験の順番が回ってくるまでの間、やることなんてある訳もなく、ただひたすら幸せだった家族の時間を思い出しては涙を流し続ける毎日を過ごしながら、千尋さんと話をしたり、後は……賀川蒔菜さんと斎藤素瑚さん、加藤菖蒲さん…だったかな。その3人と会話をしたりもしていた。
精神的にも肉体的にも辛い実験を耐え抜き、クタクタな状態でも千尋さんや蒔菜さん達と話をすることでそんな辛いことも忘れることができた。
……けれど、そんな日が続くはずもなかった。
……いつだったかな。蒔菜さん、菖蒲さん、素瑚さんの3人が脱走を試みたのだ。
けれど、逃げきったのは蒔菜さんのみ。他の2人はより強い実験を受け、『成れの果て』となってしまった。
それから程なくして、千尋さんもさらに実験を受けた影響で『成れの果て』となってしまい、私の身近にいた人は皆消えてしまった。
それでも尚、実験は終わらなかった。
仲の良かった4人が居なくなったとある日、私の順番が来ていた。
私が何度目かの起動実験をしていた時の事。
起動しようとした瞬間、突如アマノハバキリから火の手が上がった。それを手に持っていた私はその火に巻き込まれた。
顔を大火傷し、応急処置の末に程なくして実験は中止。
実験は中止となってもG.E.H.E.N.A.から解放されることなく、私は施設に囚われていた。
近くにいた人は皆口を揃えて『化け物』、『怪物』と私を罵った。
……誰も望んでこんな姿になったわけじゃない。
私は、1人になって不安に駆られていたこともあってか、泣き続ける毎日。
来る日も来る日も涙を流し続け、涙が火傷痕に沁みて痛みを覚えた。それでも耐え忍んで、開放される日を信じて耐え続けた。
…ある日、鞍馬山ラボにヒュージが現れた。そこにいた被験者のリリィ達が戦う最中、私はまたとないチャンスとばかりに起動させたことすらないアマノハバキリを持ち出して顔を包帯で巻きながらラボから逃走を図った。混乱の最中での脱出が功を奏したのか、追手が来ることも無く、無事にラボから脱走することができた。
けれど、逃げる道中、私はとある人物の襲撃を受けた。
……成れの果てとなった千尋さん、素瑚さん、菖蒲さんの3名に。
戦いたくない……そう思いながら私はアマノハバキリを握りしめ、マギをこめて黒い炎を纏わせる。
黒い炎を纏った剣で空中に円を描き、「黒炎鎧、着装!」の掛け声で黒い炎に包まれ、炎を剣で切り払い変身した。
これが私の……仮面ライダーとしての初めての戦い。
私は3人に立ち向かった。仮面の下で涙を流しながら戦った。その当時は戦闘経験はおろか、武器すらまともに振るった事すらない私は人数差と経験値の違いで追い詰められた。
その時私は語りかけた。3人に目を覚まして欲しい。そう思いながら必死で私は戦った。
千尋さんは、私のマギに触れてほんの一瞬だけ意識を取り戻したのか、私の声に気づいたように反応した……
『リョウヘイ……!?ドウ…シテ…ココニ…』
そう言ったと思えば、またすぐに攻撃されてしまう。
私は煉獄拳を3人の腹部に怪我をさせずに放って気絶させ、私は変身を解除し逃げるようにその場を立ち去った。
フラフラと立ち去り、私はしばらく放浪していた。
食事や水分もまともに取らず、戦い続け、倒れた。
若菜様と出会ったのは中等部3年の冬…ついこの間のこと。
若菜様に助けられ、百合ヶ丘で世話になることになった。
父が私をG.E.H.E.N.A.に売り付けた数日後に、母は父と離婚。その後、母は実家に戻って祖父母宅で農業をしながら隠居生活をしていた。
母は祖父母のいる実家へ帰宅した私を見た瞬間、酷く悲しみを覚え涙を流していた様子。何せ、私の顔には痛々しい火傷痕が残っていたからである。
実家に帰省してからというもの、母は私を常に心配していた。まずは火傷痕を見られないようにと、女優時代の人脈を駆使して仮面を用意して私に着けてくれた。私が常につけている仮面はこの時に母が調達した仮面なのだ。
……私は辛い思いをしたこと、大切な友人が皆いなくなったこと。ラボにいた時のことを思い出しては残さず母に伝え、祖父母も母も、私の為に泣いてくれた。
『もう辛い思いはして欲しくない。私たちは常にリョウヘイの味方』と、口を揃えてこう言ってくれた。
嬉しかったし、感謝を伝えた。
……けど、私にはそれが辛かった。ありがたみに触れて、千尋さんたちのことを思い出しては涙を流し、後悔の念に駆られて叫んだ。
一時の休暇で母の実家で過ごしていた時、突如ヒュージが現れ、私は母達を避難場所まで送り届けた後にアマノハバキリを持ってヒュージに立ち向かった。母達にはもちろん止められた。けれども、その時の私は自分のような辛い思いをする人を出したくない一心で戦場へと入っていった。
アマノハバキリの起動自体はできたものの、何故か変身することが出来ず、仕方なく生身でヒュージに立ち向かった。
私はヒュージの攻撃を受けて吹き飛ばされた影響で仮面が外れてしまう。ヒュージの凶刃が私に迫り、死を覚悟した瞬間、1人のリリィが私を助けてくれた。
若菜様だ。
潔癖症な彼女に仮面を拾われ、私の素顔を見られてしまった。
一瞬顔を歪めた若菜様を見て、私はまた罵詈雑言を飛ばされるかと思い、謝った瞬間、若菜様は私を心配してくれた。
『なんて無茶をするんですか』と、至極当然のことを言われた。
若菜様に命を救われた私は若菜様と共に百合ヶ丘まで行くことになり、その直前に若菜様に一つだけ頼み事を言った。
『母と祖父母に挨拶をさせて欲しい。』
その頼みを若菜様は聞いてくれて、避難場所にいる母達に挨拶をしにいった。
『これからは世界のために戦ってくる。』
そう言って私は若菜様と共に百合ヶ丘へ向かおうと歩みを進めようとした瞬間、後ろから母に抱きしめられた。
『元気で帰ってきて。平和になったらまた一緒に暮らそう。』
そう約束して私は若菜様と共に百合ヶ丘へ向かった。
百合ヶ丘に着いて、私は特別寮と呼ばれる場所で生活をすることとなった。
任務や勉学、風紀委員としての仕事で忙しいはずの若菜様は、毎日欠かさず私の部屋へ来てくれた。G.E.H.E.N.A.に囚われていた間の授業内容を教えてくれたり、若菜様の話を聞く事が毎日の楽しみだった。
とある日に、若菜様は何故私が仮面をつけているのか、何故リリィでもない私が戦う力を持っているのか、その疑問を私に投げかけた。
『わたくしを信じて、お話していただけませんか?
どのような過去を持っていたとしても、わたくしはあなたの味方です。』
そう言ってくれたおかげで、私は勇気をだして若菜様に今までの事を話すことが出来た。
『私は、元女優の母と、プロ野球選手の父を両親に持つ普通の一般家庭に産まれ、何気ない日常を過ごしていました。ある日に、父が戦力外通告を受けてからを境に、幸せだった日常が崩れ去り、ギャンブルと酒に溺れた父は借金返済のために私をG.E.H.E.N.A.に売り付けたんです。
そのラボで出会った友人は成れの果てになったり、脱走したりして離れていったんです。
アマノハバキリ……私が持っていた剣の起動実験が行なわれていました。その際に起きた不慮の事故によって火傷を負いました。
私の顔は呪いなんです。見る者全てを不幸にする。だから仮面を着けて素顔を隠しているんです。
若菜様が居なくなるのは嫌だ……。』
震えながらそう言った私を、若菜様は抱きしめてくれた。
『あなたはよく頑張りました。今はわたくししかいないのですから、泣いてもいいんですよ。』
そう言われ、私は久しぶりに涙を流した。
若菜様に抱きしめられながら泣き続けた。私はその時気づかなかったのだが、抱きしめながら若菜様は『わたくし達は絶対、あなたを見捨てたりしません。』
と言ってくれていたと後に若菜様から聞いた。
……若菜様と出会ってまだ間もない。その間にたくさん尽くしてくれた若菜様。そんな若菜様の前では、仮面を外して、ありのままの自分で居られるような気がして、いつの間にか、私は若菜様の事が好きになっていた。
けれど、こんな私が若菜様を…人を好きになってもいいのだろうか。そう思うと、前に進めなくなった。
でも、私の想いは…変わらない。
こうして今までの事を書いている間に、出動要請が出た。
……気配的にヒュージではないみたいだ。
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出動要請が出てすぐ、リョウヘイはアールヴへイムと合流し、アールヴヘイムは天葉の指示を聞いて移動を開始。
リョウヘイは移動しようとする若菜の手を握ってその歩みを止めた。
リョウヘイ「待ってください。」
若菜「どうしたんですか?このような時に。」
リョウヘイ「……今言うべきことじゃないというのはわかっています。でも、今言わないと後悔する気がして…。」
リョウヘイは一度息を整えて、若菜に向き合う。
リョウヘイ「若菜様に助けられたあの日から、ずっとあなたの事を想っていました。この想いに気づいた時、本当にいいのかと迷いました。
……でも、迷いたくない。この想いに蓋をしたくないんです!!だから伝えさせてください!!
私は、槇若菜さん、あなたの事が好きです!!」
心の底から思っていた言葉を若菜に伝えたリョウヘイ。
すると若菜はそっと抱きしめた。
若菜「……その言葉を待ってました。
ようやく、素直に伝えてくれましたね?」
リョウヘイ「若菜様…。」
一度離してから、リョウヘイにキスをしてからこう伝える。
若菜「……わたくしの返事はこれです。戦いが終わったら、改めて伝えてくださいね。
行きましょう?」
そう言って若菜は手を伸ばす。
リョウヘイ「はい!!!」
そうして、アールヴへイムvsデイブレイクの刺客の戦いの幕が降りる。
デイブレイク編直前の話であり過去の話。
2人の恋の行方は……デイブレイク編をお楽しみに。