生活安全局はアットホームで楽しい職場?です 作:みなみなるる
ちょっとずつ書いていきます。キリノとフブキちゃん好き。
プルルルルルルル……プルルルルルルル……
ガラリとした局内の一室。
自分と、帽子を顔に乗せて居眠りをしている同期以外に人影がないそこに電話の呼出音が鳴り響く。
電話近くの席に居る同期はピクリとも動く気配が無いため仕方なく席を立って電話へと足を向ける。
ちらりと居眠りする彼女の方を見ればヒラヒラと手を振っているのが見えた。
(起きてるじゃん……)
「はい、こちら生活安全局」
『もしもし? この声はミツネさんですね、キリノです』
受話器から聞こえてくるのは、よく話す同期の一人である中務キリノの元気な声だった。
「どうしましたか?」
『はい、実は本日の巡回はフブキとの予定なのですが、まだ予定の場所に来ていなかったので何時頃そちらを出たかお聞きしたくて……モモトークも反応ありませんし』
「……あー」
チラリと今話題に上がった人物であり居眠りしていた同期、合歓垣フブキの方を見ると、電話に対して歯切れの悪いこちらの返答を不思議に思ったのか顔に乗せていた帽子をとり、不思議そうにこちらを見ていた。
「少々お待ちを」
『? 分かりました』
一言断わってから受話器の口に手を当てて声を聞こえないようにしてから、こちらを見ている彼女に向けて一言口を開く。
「キリノさんからです」
「…………っ!?」
(完全に忘れてたって顔ですね)
「や、やっばぁ……完全に忘れてた」
「キリノさん、もう既に予定地にいらっしゃるようですよ?」
「……もう出たけどどこかで足止め食らってるかもって言っておいてくれない……?」
冷や汗を流し、急いで持ち物を用意した彼女はこちらに対してそんなお願いをしてきた。
「はぁ、フブキさんはしょうがない人ですね……早くキリノさんの所へ向かってあげてください」
「うん! それじゃぁよろしく〜!」
さて
「お待たせしました、フブキさんはたった今こちらを出ました。忘れていたようですね」
『はい!? 忘れていたんですか!? ……報告で上にバラしてやります』
「うん、今回はフブキさんが悪いからね……キリノさんも始末書を書くことになるようなことはしないように気をつけてくださいね?」
『はい! ありがとうございました、では失礼します』
「頑張ってください」
そんなやり取りを終え、受話器を置くと、書類の処理作業へと戻る。
「さて、続きしますか」
そんな日常の話。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それは突然の出来事だった。
サラリーマンの俺は、いつも通り電車に乗って通勤していた……はずだった。
いつも通りの時間の電車に乗ったし、電車に揺られている最中窓から見える景色も代わり映えしない見覚えのあるもので、そこまでは何も問題なかったのだ。
目的の駅に電車が止まり、駅のホームに足を踏み出したその瞬間世界がぬり変わった。
「えっ?」
つい先程まで周りに居たはずの、自分と同じようなスーツ姿の男性や女性、電車の扉が開くのを整列して並んでいたはずの人々、それらが一様にいなくなり、視界に移るほとんどの人間が女子高生に変わっていたのだ。
「あっすみまっ!?」
ボケっとしていると、先程の自分と同じように電車から降りようとしていた人がこちらを避けるように横から抜けていく、その際に肘に何かが当って現実に意識を引き戻され、謝罪の言葉が口から出たのだが、その声の変化、先程自分の肘に当たった荷物である銃火器や、他にも人々の頭の上に浮いている何かなどが一度に情報として入ってきた事でさらに思考を混乱の渦へと叩き込まれた。
人の流れに流され、最終的に壁沿いの柱の隣に落ち着いた辺りでしゃがみこむ。ほっそりとした、タイツに包まれた足と短いスカートが視界に入ってくるが、現状のおかしさにもはやそういうものだと受け入れている。
抱えた頭の中では先程まで見た情報から気のおかしくなったかのような結論が導き出されていた。
(……ここはブルーアーカイブの世界???)
そんな馬鹿な、と否定したくなる。
しかし、見回すことで視界に映るのは頭の上にバリエーション豊かなヘイローを浮かべ、銃火器を携行している女子高生や、気が付かなかったが、二足歩行する犬猫。
モニターに表情が映るロボット等、あのゲームに登場するキャラクターたちの特徴しかしないのだ。
そして極めつけはしゃがんだ際に肩から降ろした通勤用カバンだったもの。
黒かったはずのそのカバンは白とブルーの明るい色に変わっており、側面には銃火器が二丁ほど固定してある。
カバンの中を確認してみれば、まるっきり変わっており、その中に生徒手帳? 警察手帳? のようなものがあった。
「ヴァルキューレ警察学校、生活安全局所属、月見里ミツネ? これが今の俺か……」
「あの、お気分優れないんですか?」
呟いた瞬間、頭上からそんな声が聞こえた。
咄嗟に頭を抱えたまま顔をあげれば、長く白い髪を三つ編みにした少女が心配そうに屈んで覗き込んでいた。
はて、どこかで見たような記憶が。
「すみません、ちょっと気分が優れなくて……」
そう返事を返しつつ少女を観察すれば、先程目に入った自分の服装に似た雰囲気で、ヴァルキューレ警察学校の校章の入った腕章、白い上着など、一目で現在の自分と同じ学校生だと分かる。
そこで、ふとゲームの画面を思い出した。
(あ、この娘原作キャラのキリノだ)
そう先程までのキリノへの既視感に納得していると、彼女はさらにこちらに話しかけてくる。
「体調が優れないのでしたら駅員さんをお呼びしましょうか? それとも病院に……」
「い、いえいえ! ちょっとした貧血みたいなものなので少し止まっていれば治りますから、そこまでして頂かなくても大丈夫です」
「そうでしたか……」
「心配してくださってありがとうございます。えっと」
「あ、自己紹介がまだでしたね、ヴァルキューレ警察学校の生活安全局に所属している中務キリノです」
「私は月見里ミツネです、私も生活安全局所属です。改めてありがとうございます、キリノさん」
「いえいえ、お気分は大丈夫そうですね」
お互い自己紹介をし、お礼を言えば朗らかな笑顔でそう返してくる。
ブルアカのアプリ自体はまだ始めてまもなかったためこの子に関してそれほど知識はなかったが、とてもいい子そうだ。
「それにしても同じ生活安全局……あ! もしかして今日新しく人が来るって通達されてましたが、ミツネさんのことだったんですね。これからよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「そうだ、せっかくなので一緒に向かいましょう」
「はい、色々教えていただけると嬉しいです」
(訳の分からない状況だったけど、キリノに出会えたことで何とかなりそうだ……今はこのまま流れに乗って頑張ろう)
そんな決意を胸に、キリノに連れられて改めてキヴォトスでの一歩を堂々と……
(あ、でも銃撃戦とか怖いな……)
堂々? と踏み出すのだった。