カッコいい女に愛されるシチュ   作:もぐら王国

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騎士長に愛される

小鳥もさえずる爽やかな朝。

小柄な青年であるロットは、作った朝食をテーブルの上に並べていく。コーンスープに目玉焼き、カリカリベーコンなど・・・。美味しそうな料理を二人前分用意していくが、ロットの妻はまだリビングに現れない。

彼の妻―リオンーは王国に仕える騎士団の隊長だった。

リオンの剣技は並ぶ者のいない達人級の腕前で、おまけにその佇まいには不用意に近づいたものは全てを切り裂くとでも言うような鋭い風格が常に備わっていた。それが色々あって、当時、下級の一般兵士だったロットと結ばれているのだから世の中は何が起こるのか分からない。

ロットは彼女の寝る二人の寝室へと向かう。

普段はお勤めで早起きな彼女も、今日のような非番の日、それもロットと激しく愛を交わし合った翌朝などは大抵お寝坊になる。そんな彼女を起こすのも夫であるロットの仕事だ。

 

「リオン、朝だよ」

 

ベッドの上で布団から頭だけ出しているリオンに優しく声を掛けるが、彼女は「んん~っ」と唸るだけで、目を開けようとはしない。

 

「リ~オ~ン」

「んん・・・」

 

彼女は意外に意固地だ。そこに騎士のタフさも合わされば鉄壁の要塞が完成する。ロットはそんな彼女の守りを崩すために、カーテンを全開で開け、差し込む陽の光を顔に浴びせた。

 

「ほら、リオン。いい天気だよ。朝ごはんを食べたらデートにでも行こうよ」

 

美青年とも間違われる彼女の端正な顔立ちが光に照らされるが、すぐに寝返りを打って背を向けてしまった。

普段はまるで見せない子供っぽい仕草をする彼女は実に可愛いが、しかし困ってしまう。このままでは布団を干すことが出来ないし、朝ごはんが冷めてしまうし、なにより彼女と過ごせる折角の休日が勿体ない。

そう思ったロットは心を鬼にして、多少強引な方法で起こすことに決めた。

くすぐり攻撃である。

いくら身体を鍛え上げている王国騎士と言えど神経の集まっている脇腹は弱点に違いなく、リオンもまたその部位への刺激に大層弱かった。

まして今の彼女は裸で、布団の下は無防備である。くすぐり攻撃はこの上なく有効な手段だと思われた。

そうと決まれば早速ロットはベッドに上がり、リオンの掛けている布団にお邪魔して、横に寝た。

目の前には眉目秀麗なリオンの寝顔。

 

「リオン。そろそろ起きてってば」

「んぅ・・・」

「起きないと、(くすぐりで)襲っちゃうぞ~」

「・・・」

 

最終勧告まで行ったが起きなかった。であれば、しょうがない。

ロットは一応の免罪符を胸に、くすぐりを実行に移すことにした。

指先をよく引き締まった太ももに触れさせ、その滑らかな肌をつぅーっと滑らせて、やがて、脇腹へ・・・。

しかし。

その指が脇腹へ辿り着くことは無かった。

 

ぎゅうぅぅっっ

 

「っっっ!?」

 

ロットは突然強く抱きしめられたのである。それを仕掛けたのは勿論、彼の目の前にいたリオンであり、リオンは笑みを浮かべながら猛禽類のような鋭い目つきでロットの目を真っすぐと見つめていた。

 

「おはよう、ロット」

「あ、うん。おはよう、リオン。やっと起きてくれてうれs」

「朝から私を襲うとは良い度胸じゃないか」

「いや・・・これは、違くて」

「そうか? 手を私の臀部に触れさせているのにか?」

 

言いながら彼女はロットの手に自分の手を重ねる。

 

「あ、これは、いきなり抱きしめられたからで」

「ほう。でも、さっき君が自分で言ったんじゃないか」

 

彼女はロットの耳に口を寄せて、ゆっくりと囁いた。

 

「襲っちゃうぞ」

 

って。

 

その言葉の破壊力と鼓膜を揺らした低音に打ちのめされ、ロットの顔はみるみる真っ赤に染まった。

 

「くっふふ。自分で言っておいて何でそんなに赤くなってるんだい」

 

可笑しそうに笑う彼女にロットはときめきを覚える。

出会った昔も婚約した今も、彼は変わらず彼女に惚れ続けているのだから、ときには生娘のように顔を赤くしてしまうのも仕方がなかった。

そして、彼女を起こすという任務もまた、過程はどうあれ達成された。

ロットはこれ以上かっこ悪い姿は見せられないと思い、逃げるように布団から出ようとした。しかし、その腕をリオンの逞しい腕が掴んで引っ張り、再び布団に引きずり込まれた。

 

「おわっ」

 

ロットは気付けばまた、リオンに抱きしめられる。

 

「逃げんな」

 

吐息と共に呟かれた言葉にはしかし、確かな意思が込められていた。

 

「でも、リオン。朝ごはんもう出来てるし・・・」

「お前の料理は冷めても美味い」

「そう言う問題じゃ」

「それにご飯は運動して腹を空かせた後に食べるのが一番うまい」

「ええと」

「昨日は君が先に力尽きてしまったからな。私はまだ体力が余ってるんだ」

 

そう言うと彼女は、ロットに顔を寄せて額をくっつけ合う。

鼻先が触れあう距離。

目を見開いているロットの瞳に自身の瞳を合わせて、言った。

 

「分かるな?」

 

リオンはロットの脚に自身の生足を絡ませた。

ロットは僅かに息を呑んだ。

 


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