個性「メ化」   作:カフェイン中毒

101 / 138
後期授業編
99話


 福岡の脳無襲撃事件からはや二日の時間がたった。エリちゃんが起きてすぐ私と轟くんはニュース映像を消したから知らなかったんだけど、あの後荼毘が負傷したエンデヴァーとホークスを襲撃したらしい。あわやナンバーワンが殺される、というところで割り込んだのはチャート上位のラビットヒーロー、ミルコだった。

 

 その場から動かずに待っていた私たちは車に乗って現れた相澤先生に事のあらましを詳しく聞かされて私は気絶しかけた。うん、覚悟できてないところに情報の濁流が襲ってきたから普通にキャパシティ超えそうになった。いや、脳無が来た時点で連合が関与してるなんてことは自明の理なんだけども、明らかにこれエンデヴァー狙いとしか思えないんだよね。だってエンデヴァーが福岡に移動した途端に起こった事件だから、タイミングが謎過ぎるんです。普通なら、避ける。エンデヴァーは強いから。

 

 だけど、エンデヴァーがいるタイミングでわざわざあんな強い脳無、それこそUSJのアレ以上のやつを投入してきたってことはエンデヴァーを亡き者にするためとしか思えない。ふむぅ……と考えながら私の意識は考え事に引っ張られていく。

 

 「希械!もっと強く頼む!」

 

 「え、あ。うん」

 

 「おわあああっ!?」

 

 「あ、やり過ぎた」

 

 ガインゴインと考え事をしながら安無嶺過武瑠状態のえーくんを寮の中庭で殴っていた私は、えーくんの要請を受けて戦闘形態からゴリアテの腕を作り出してそれで殴った。あ、と思った時には既に遅く、えーくんは地面を擦りながら5mほど後ろにノックバックして停まった。考え事しているときだったから手加減がお粗末になってしまった。いや、えーくんなら正直おざなりになっても無傷なんだけどさ。

 

 「急にどうしたの?自主練に付き合ってほしいなんて」

 

 「エンデヴァーの戦い、お前も見たろ。情けねえが、今の俺はあの脳無には勝てねえ。ならせめて、あの脳無の攻撃を受け止める程度にはなっておかねえと。いざって時に動けなくなっちまう」

 

 「なるほど。けど流石に近所迷惑だよほら、爆豪くんの部屋から手榴弾落ちてきた」

 

 「あいつにしちゃあ優しいな。今度から森の中でやるか」

 

 中庭に落ちてきた爆豪くんお手製の個性手榴弾により見事に煤塗れになる私とえーくん、ちなみにノーダメージ。これ以上やると爆弾製造機本体が襲い掛かってきかねないので今日はここで終了かな。夜も遅いし、窓ガラスに張り付いて私たちを見ているエリちゃんが煤にまみれた私たちを見て目を白黒させているし。あ、轟くん帰ってきた。えーくんと一緒にタオルで粗方体を拭いてから共用スペースの中に入る。お風呂入ろうかな、とエリちゃんに言うとこくん、と頷いてくれた。

 

 「おう、轟!お帰り!エンデヴァー、どうだった?」

 

 「顔にデケェ傷跡が残ったが、無事そうだった。なんか……色々話せた。何でだろうな」

 

 「そう……エンデヴァーが何か変わったからじゃないかな?自分の目標としてたところに自分の力じゃない形で座ることになったんだし」

 

 「……そうかもな。あいつのことはまだ嫌いだ。けど……その先はまだ分かんねぇ」

 

 「轟、風呂入ろうぜ!色々聞かせてくれよ!」

 

 「私たちもお風呂行こうか、エリちゃん」

 

 「ハロも一緒」

 

 「勿論」

 

 帰ってきた轟くんに声をかける。轟くんは重傷を負ったエンデヴァーを見舞うために外出許可を得ることが出来てさっきまで相澤先生と一緒に実家に里帰りしていたところだ。何となくすっきりした感じの顔をしている轟くんにえーくんが肩を組みながらお風呂に誘うと、わかったと轟くんは返して荷物を置きに部屋に戻っていった。私とエリちゃんはお先にね、と女子風呂に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 「個性が暴発?」

 

 「うん、その時変なものを見て……」

 

 「なるほどねえ……オールマイト先生には?」

 

 「相談したんだけど、オールマイトにも分からないって」

 

 オールマイト先生に分からないんだったら私にゃ本格的にお手上げだなあ、とヒーロースーツに着替えた私はかぶりを振る。えーくんと一緒に煤塗れになった昨日からあけて本日のヒーロー基礎学の準備中、デクくんから一応知っておいて欲しいとお話をされた。何でも昨日の夜ワンフォーオールが夜中に暴発したのだそうだ。怪我をしたのか、と思ったんだけどデクくんの許容範囲での暴発だったみたいで一応の一応無事らしい。よかった~。

 

 それで、なんで暴発したかは不明なんだけど、デクくんはその時ワンフォーオールの初代とそれに対峙するオールフォーワンの記憶を見ていたらしい。個性が見せる夢かあ……代々継がれて来たワンフォーオールならではの現象なのかな?これって普通の個性にはないことだし。例えば両親のどちらかと個性が一緒だからって両親の記憶を垣間見るなんてことは報告すらされてないわけで。

 

 「まあとにかく無事でよかったよ。よく考えれば100%が暴発してたら寮が壊れて私たち生き埋めだっただろうし」

 

 「うっ……それは流石に怖いな……気をつけないと」

 

 「今日の個性の動きで確認取ってみたら?出力調整の具合とか、個性が言うことを聞くかどうかみたいに。調子悪いと個性っていうこと聞かなくなるもの」

 

 「そういうこと、あるんだ」

 

 「身体機能だからね。エリちゃーん!お待たせ」

 

 「おかあさん!かっこいい、デクさんも」

 

 教室でハロと待っていたエリちゃんを迎えに行くと、ぱたぱたと音を立てて走ってしゃがんだ私の胸にぼふっと飛び込んでくるエリちゃん。随分と明るくなったなあ、と思いつつ私やデクくんのヒーロースーツ姿が好きらしく、エリちゃんは訓練のたびに私たちがヒーロースーツに着替えるとちょっとテンションが上がる。一番最初に見た私たちだから、記憶に強く刻まれてるのかな。

 

 「それで、風圧制御装置を組み込んだ新型ガントレットはどう?できるだけ軽くしたんだけど」

 

 「うん!すっごく使いやすいよ。待機形態がグローブに変わったから逆に強度が上がったんだよね!?」

 

 「そうだね。超圧縮で封じ込められる限度が上がったからさ。待機形態が大きければ大きいほど、より大きなものを封じ込められるの」

 

 ぐっぱ、とデクくんは真新しい白と赤で構成されたグローブに包まれた手を開いて閉じてみせる。デクくんのご要望に合わせてまず明ちゃんが作ったのが風圧に指向性を持たせるグローブ、文化祭の朝に渡したらしいそれを元にしてメリッサさんがフルガントレットを再設計。オーバーガントレットを踏襲しつつ更なる強化を施したのが今デクくんが付けてるガントレットだ。

 

 名づけるならバージョン2ってところだね。製作はなんと明ちゃん、私、メリッサさんの共同制作の逸品である。それよりも、今日は凄ーく楽しみなんだよね。とエリちゃんを抱っこしながら私は胸を高鳴らせた。なぜって?それはね……

 

 

 

 

 「さあ白黒つけようかA組ぃ!」

 

 「おう!物間ァ!勝負だぜ!」

 

 こういうことだからだ。燕尾服に時計を複数つけたようなヒーロースーツ姿の物真くんが胸を思いっきり逸らしてこっちに向けて叫んでいる。そう、今日は待ちに待ったB組との合同訓練、というか戦闘訓練なのだ。救助訓練は実は一緒にやったことあるんだけど、戦闘訓練はお初。だからヒーロースーツを見るのもお初。個性に関しては訓練中のB組の映像を相澤先生から貰ってちょこちょことクラス内に共有してるんだけど、B組の個性って直接戦闘に秀でた私たちみたいな個性持ちと違って搦め手とかの方が得意な感じの個性が揃ってるんだよね。クラス分けの時に意識したのかな?

 

 「アハハハハ!ねえこれ見てよ!文化祭の時のアンケートさぁ!2票差の僅差で僕らの勝ちだったんだよね!つまりこれはB組が優れている証拠でキュッ」

 

 「物間ぁ!?」

 

 「やかましい。そういうのは訓練後にやれ」

 

 「相澤先生、容赦ないなあ」

 

 相も変わらず教育に悪い物間くんがテンション高めで喋りだした瞬間に音響遮断イヤーマフをエリちゃんにつけて立ち位置を調整してエリちゃんから物間くんが見えないようにする私。猫耳型イヤーマフをつけたエリちゃんは大変かわゆい、クラスの女子もメロメロ、B組女子からもかわいいと声が上がる。エリちゃん大人気だね、よかったね~。

 

 エリちゃんは物間くんを完全に雄英の負の面として認識してるらしく「ゆうえいの、ふのめんのひと……」とぽそっといって私に抱き着く力を強める。流石の物間くんでも小さな女の子に怖がられていると来るものがあるのか、相澤先生の捕縛布で首をきゅっとされながらも傷ついた顔をしている。傷つくならエリちゃんの前でA組をこき下ろさなければいいのに……。エリちゃん、A組の皆の事好きなんだから、好き放題言われて印象がいいわけないんだからさ。

 

 「さて、本日はゲストがいます」

 

 「1年C組の心操人操くんです」

 

 あああーーーっ!とみんなが歓声の声をあげる。相澤先生とブラドキング先生に促されて前に出てきたのは、ジャージ姿で捕縛布を首にぐるぐる巻いている普通科の星、心操くんだ。おおーっ!ついにヒーロー科の授業に混ざれる段階まで来たのかな!?私、残念ながら最近はエリちゃんのことがあったせいで心操くんの特訓にお邪魔できてないからどれくらい強くなれたか分からないんだよね!

 

 うんうん、と私が頷いていると文化祭で面識を持った心操くんがここに居るのが不思議らしいエリちゃんが首をちょこんと傾げている。そっか、エリちゃんにとっては普通科の優しいお兄さんだったからね。当日はお化け屋敷だったから会えなかったけど。雄英を散歩しているとたまに走り込みとかしてるのを見るよ。頑張ってるなあって感じで好ましい。

 

 「では心操、一言挨拶を」

 

 「……何人かは面識あるし、俺のことを知ってる人もいると思う。先に謝っておきます、慣れ合うつもりはありません。俺はこの場にいる誰よりも遅れている、悪いけど必死です。だから、貴方たちを乗り越えて、俺の個性を人のために使いたい。そのために、超えさせてもらいます」

 

 うわー、心操くんギラギラだ。ただ、アレは体育祭でのいわばやけっぱちからくるビッグマウスじゃなくて、本当に高い壁として私たちを見ているからこそ出る油断のない言葉だ。心操くんの瞳はまっすぐ皆、ではなく私を見つめている。おお、ここで私にくるのか。戦闘訓練だし、もしも対戦することがあればいつかの時のように加減を抜いて相手を務めさせてもらうよ。うんうん。

 

 「じゃ、早速やりましょうかね。戦闘訓練!今回はA組とB組との対抗戦になる!」

 

 「舞台は運動場γの一角!双方4人組となって1チームずつ戦ってもらう」

 

 「ってことは半端が出ねえように心操はB組に行くことになるのか」

 

 「はっはー!当然だね!彼はもうB組決定さ!」

 

 「いや、そうじゃない」

 

 なんですと、と心操くんがB組側として加算されることを決定事項みたいに誇っていた物間くんがフリーズして発言したブラドキング先生を信じられないものを見るような顔で見ている。ブラドキング先生信頼されてるなー。それにしてもそうじゃないとはどういうことなのだろう?A組側が21人ということは20人であるB組に心操くんを足すのが一番フラットだと思うのだけれど。ほら、チーム戦とかで一番輝く個性じゃん心操くん。B組の戦闘映像は細部に至るまで解析して対策立ててるから彼が入ることで何があるか分からないという強みがB組に生まれ出でるんだけどなあ。

 

 「今回は心操を2回参加させたい。つまり、A組とB組で一回ずつ行う」

 

 「では、A組が5人チームになるのが2回あると?それは不公平ではありませんか?」

 

 「飯田、最後まで話を聞くように。確かにそういうことになる。だから……A組からは一人不参加とする」

 

 「というわけで楪、お前は不参加だ」

 

 そんなーーーーっ!?ピッと相澤先生に指を刺された私が今回の対抗戦に参加できないということが決まって愕然とした。ひどくない?ひどいよね。だってあれじゃん、これ期末試験の時と一緒じゃん。また一人じゃん私。流石にこれはいかに精神が鋼とか高張力鋼とか噂されてる私でもちょっとひびが入るよ?しゅん、とした私を抱っこされてるエリちゃんが頭に手を伸ばして撫でてくれる。エリちゃんは優しいなあ……。

 

 「先生!そりゃーねーだろー!希械だけハブなんてよー!」

 

 「そーだよー!希械ちゃん可愛そう!」

 

 ぶーぶー!と主にA組とB組の一部からブーイングが飛ぶ。相澤先生はそれをひと睨みで黙らせてからまだ話は終わってない、と続けた。なるほど、まだ何かあるわけだね!?具体的には私を参加させてくれるようなやつが!

 

 「全部終えてから、楪と心操をペアにしてB組5人チームとの特別戦を開催する。それが楪を外した理由だ」

 

 ええ?




 VSB組編始まります。強くなったA組と新兵器を携え進化した楪さんをみよ!

 ではまた次回に。感想評価をよろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。