個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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101話

 「じゃ、反省点を述べよ」

 

 「一撃で宍田を戦闘不能にできなかったことっすかね。最悪俺が振り回されて武器にされてたかもしんねえ。もう少しで引っ張り合い負けるとこだったっす」

 

 「移動で心操くんに頼りました。機動力のなさが出たと思います……」

 

 「俺は良かったっしょ!?結構役立ったと思ったんすけど!」

 

 「最後の攻めが強引過ぎたところね。壊すのは最小限にとどめたつもりだったけど、危険な攻め方だったわ」

 

 「結局後ろから出れなかった。守られた戦いでした、悔しいです」

 

 「よし。特に蛙吹の言う通りだ、アレは一歩間違えば大崩落につながる可能性がある。今回は蛙吹がきちんと気を付けたから止めなかったが、次回以降闇雲にやるようなら減点だ。あと上鳴!気を緩めるな!今回は切島がいたからいいが、お前が一番足止めに適している。前に出るのを恐れるな!だが、誰も欠けることなく終わらせたのは素晴らしい」

 

 A組VSB組の第一セットが終わり、それぞれがこっちに戻ってきて講評会が開かれる。今回のセットは終始A組のペースでことが運んでいたから、B組としては悔しいかもしれないね。向こう側の司令塔が策を弄することを穢れと呼んで嫌う塩崎さんだったからこそ、索敵と前衛を同時にこなせて身軽な宍田くんとB組の鉄壁ツートップの円場くんを出したのだろうけど、こっちのチームが全員そろって会敵しちゃったから流れが傾いちゃったんだよね。あとえーくんが強かった。うん。私が掴まれたら多分手を切り離してどうにかするくらいしかない。切り離した瞬間に多分思いっきりパンチを貰うだろうけど。

 

 「今回はA組にしてやられたな。塩崎は作戦をきちんと考えるように。宍田は咄嗟の時にパワーに頼りがちだ。頭を使え。この二人のどっちを軸にするかで結果は変わるぞ。次回は精進するように」

 

 え、うそブラドキング先生あんなに怖いの!?エリちゃんがB組を怒るブラドキング先生の余りの眼力の強さに無言で震えあがって私によじ登って抱き着きの態勢に入った。相澤先生の理詰めの怖さも震えるけどブラドキング先生のあのド迫力も恐ろしいな……。エリちゃんの背中を叩いてあやしてあげつつ次セットの準備に入る。

 

 心操くんと作戦会議しよーと思ったのだけれど、5セット目でチームになる物間くんに先にとられてしまった。うーん、心操くん用のサポートアイテムの案を聞いてもらって採用されそうなら使おうかなと思ってたんだけどな。でもまあ、私の方がセット遅いし終わった後でいいかな。それよりも次!百ちゃんたちだ!同じ創造系として応援するよー!頑張ってね!

 

 百ちゃんチームは、青山くん、透ちゃんに常闇くんで対するは拳藤さん、小森さん、吹出くんに黒色くんだ。鉄哲君の話によるとB組のクラス委員長である拳藤さんはかなり頭が切れるらしく、彼女がいなければB組皆が物間くんに呑み込まれてたとのこと。それ物間くん質の悪い深淵か何かじゃない?どれだけA組のこと目の敵にしてるんだろう。何が彼をそこまで駆り立てるのだろう?不思議でしょうがないや。

 

 陣地に向かう百ちゃんたちを見送って、すぐに気づいた。百ちゃんもう既に始めてるね。個性で生み出してはないけど、頭の中で組み立ての段階に入っている。うわ、ルールの穴を突くえげつない方法をやるねえ。百ちゃんもクレバーになったね。そして同じチームには青山くんと透ちゃんがいるし、中距離戦にめっぽう強い常闇くんも一緒。個性伸ばしで生まれ変わった百ちゃんのお披露目だね。

 

 『それではガンバレ拳藤第2チーム!』

 

 「偏向実況反対ー!」

 

 ブラドキング先生のなんか偏ってる実況、ひどくない?プレゼントマイク先生呼んできてよ、私たちやりにくいったらありゃしないんだからもう。それはそうと開始のベルが鳴った瞬間に百ちゃんが一気にドサッ!と山になるほど大量の四角いボックスを生み出した。百ちゃんも習得した超圧縮技術だ。外観から何のアイテムなのかを察することはできないけど。

 

 それをダークシャドウが全てひっつかんで、偵察に出る。ボックスを四方八方に投げながら偵察を進めるダークシャドウ、一方百ちゃんは新たに超圧縮ボックスを生み出し続け、それを透ちゃんと青山くんで自陣のいたるところに仕掛けていく。完全に要塞にする気だ。準備を整えてから攻め入る、百ちゃんらしい作戦だと思う。最後にいくつかのボックスを生み出して腰に括りつけて、額を伝う汗をぬぐった。

 

 そして、青山くんと透ちゃんが揃って離脱、残ったのは百ちゃんと常闇くん。ボックスを全て投げ飛ばし終わったダークシャドウがB組の皆を見つけた。そして、意気軒高に襲い掛かるダークシャドウを迎え撃つのは黒色くん、彼はダークシャドウに入り込んだ。彼の個性は黒いものに入り込んで、それを操ること。ダークシャドウは体の自由を奪われて、引き返していく。

 

 『八百万、かかった!』

 

 『では7番の作戦で行きますわ!』

 

 そこまで予測済みだったらしい百ちゃん、最低でも7つ作戦を考えてたんだね。その瞬間、戻ってきたダークシャドウに向かって常闇くんがボックスを2つ放り込んだ。ダークシャドウを操る黒色くんはそれをダークシャドウの手で振り払おうとするが、その瞬間に超圧縮ボックスの一つが真っ白の球体に姿を変え、もう一つのボックスもろともダークシャドウごと黒色くんを覆ってしまった。なるほど、黒色くんは黒色のものしか入ることができない。白い球体に空いた穴からダークシャドウと繋がってる常闇くんは苦々しい顔で

 

 『すまん、ダークシャドウ』

 

 『後でお好きなお菓子を進呈しますわ』

 

 中で何があったのか、ダークシャドウは一気に弱まって常闇くんの中に戻ってしまった。息も絶え絶えなダークシャドウを見て何が起こったかを察した。一緒に取り込んだボックス、閃光弾だったんだ。黒色くんを取り込んだ状態でダークシャドウが一気に弱まる。結果何が起こるか、限界まで縮小したダークシャドウの面積が足りず、黒色くんは吐き出され、白い球体の中に取り残される。流れるようなオペレーションだ。ダークシャドウが黒いからこそ黒色くんはそれに乗り移るかもしれない、だけどしないかもしれない。しなかった場合はどうしてたんだろうか……?百ちゃん、さすがとしか言いようがないね。

 

 あっさりと黒色くんは無力化され、ボールごと牢にいれられる。百ちゃんの操作で牢の中で玉が割れ、呆然とする黒色くんが残される。百ちゃんは丁寧にダークシャドウに謝っている、ダークシャドウには弱弱しくイイヨ、といっているけどアレはきついな~。ダークシャドウは無敵だけど感情があるから、けど……百ちゃんがあんな合理性のみを追求した作戦を立てるなんて思わなかった。

 

 『さて、葉隠さん!』

 

 『うん!見つけたよ!青山くん!』

 

 『ウィ☆』

 

 一方別ルートで探索していた青山くんと透ちゃん。透ちゃんは顔の部分に物々しいゴーグルをつけている。そして、見つけたと言っているあたり残りのB組を見つけたんだろう。透ちゃんがゴーグルを操作すると、ダークシャドウがばらまいていた圧縮ボックスが一斉に起動し、カメラのレンズのような形に変わる。これもしかして……!

 

 青山くんがネビルレーザーを透ちゃんに向かって発射する。透ちゃんはそれを体で受け取って、軌道を捻じ曲げ、明後日の方向に発射する。やっぱり!透ちゃんの体はレンズの役目を果たすことができる!青山くんのネビルレーザーを自らの体を集光レンズにして捻じ曲げて、軌道を変える。その先にある圧縮ボックスのレンズを経由して、次々と他のレンズにレーザーがパスされ、その先にいた小森さんの足元に命中した!

 

 「これ……!百ちゃん流のオールレンジ攻撃だ……!!」

 

 『希械さんのように自由自在とはいきませんが!私たち全員の力を合わせればそれに近いことくらいはできますわ!』

 

 『連続で行くよ~~!』

 

 『名付けてキラメキ☆レーザーカーニバル!』

 

 『青山くんダサい!』

 

 『ノコッ!?わっ!?あぶなっ!?』

 

 『まずいっ!吹出!』

 

 個性「キノコ」……小森さんの個性はありとあらゆる場所にキノコを生やすことができる個性。百ちゃんなら知っているだろう、キノコ……つまり菌類は人体にも根を張り得るということを。だからまず人間に使ったらどうなるか分からない正体不明の個性を持つ小森さんを標的にした。四方八方、あらゆる場所から襲い掛かるネビルレーザーをタップダンスするように何とか避けていく小森さんを見てまずいと感じた拳藤さんは、大きく前に進みながら後方に待機している吹出くんに指示を出した。

 

 その瞬間、吹出くんの方から建物すべてを横断する超巨大な『ズガガガガン!』というオノマトペが発射された。文字はそのまま建物を巻き込み全てをぶっ壊してちょうど百ちゃんとそれ以外という形でA組を分断してしまった。うえっ!?こんな大規模攻撃出来たの!?やばいなオノマトペ、文字っていろんな意味があるから私の天敵になりかねないぞ……?例えば「バラバラ」とかで体中バラバラにされたりとかしたら……怖いな。吹出くんは要注意っと。

 

 『うわわっ!?ごめんヤオモモ!レーザーもうダメだ!あと青山くんも!』

 

 『あとは任せたよレディ……』

 

 『さすが!どこまで予想してたの!?でも、もう考える暇は与えない!』

 

 『ええ、確かにここまで接近されれば私一人では貴方にかないませんわ。なので、近づかれたらどうするかを先に考え終えておきましたの』

 

 大規模攻撃でネビルレーザーの中継点を粗方破壊された上、青山くんの限界が近いことを察した透ちゃんはゴーグルを投げ捨て、青山くんと分かれB組陣地に向かっていく。そして、青山くんは一旦腹痛を回復させるために後方へ。入れ替わる様に闇を補充した常闇くんが小森さんの個性作用範囲外と思われる場所からダークシャドウを伸ばして襲い掛かる。それと同時に百ちゃんの所までたどり着いた拳藤さんが巨大化した拳を振るって百ちゃんに襲い掛かる。

 

 百ちゃんは既に仕込みを終えている状態だ。タングステン製の壁をやすやすを折り曲げる拳藤さんのパワーをまともに受けて吹き飛ばされる。やっぱ格闘戦じゃ拳藤さんに勝てないよね……!吹き飛ばされるまでが策の内と言わんばかりの表情で百ちゃんが笑みを浮かべる。その瞬間、半壊した部屋中に置かれていた超圧縮ボックスが起動、半分はイカれてたみたいだけどそれ以外は自動砲台のような形になって一斉に拳藤さんに向かって白い球を吐き出した。

 

 『私を襲うならここを離れた時にするべきでしたわ。ここは既に、私の蜘蛛の巣でしてよ』

 

 『しまっ!?トリモチ!?』

 

 『いいえ、蜘蛛の糸ですわ』

 

 ぶら下げていた超圧縮ボックスを解放する百ちゃん、完成したのは私が夏休み中に蜘蛛糸粘液と一緒に見せたウェブシューター!その百ちゃん版だ!拳藤さんは周りから発射される蜘蛛糸粘液弾を手で防御する。だけど、蜘蛛の糸は粘着力ともう一つ、強度が非常に優れている。ケーブルほどの細さでも、それは鋼鉄製のワイヤーに匹敵するだろう。両手から文字通り網状の蜘蛛糸を発射した百ちゃんはもう一度近づかれる前に、拳藤さんをぐるぐる巻きにしてしまう。

 

 『こっちを使わないで良かったですわ』

 

 『参考までに聞くけど……ソレナニ?』

 

 『音響手榴弾ですわ。鼓膜程度なら簡単に破れます』

 

 『……そこまでする?』

 

 『私たち、級友があんな目にあってから一つ決めておりますの。光明が見えるなら立ち止まらない、全てを出しきり全力で、ですわ。負ければすべて奪われる、守りたいものも守らなければならないものも。あんな思いは二度とごめんですわ』

 

 簀巻き状態の拳藤さんの疑問に答える百ちゃん。訓練中の皆、中々に怪我が多いと思ってたらそういうことだったんだ……。そうだよね……さっき相澤先生も言ってたけど訓練で全力が出せないなら実戦でそれ以上が出るわけないんだ……。百ちゃんはあれだね。私に近づいてきたね、私たち創造系の長所は初見殺しを容易に創造できるってことだよ。だから、分からん殺しされた拳藤さんは攻め入らざるを得なかった。まだ残ってる圧縮ボックスが何なのか分からないから、動かす前に仕留めにかかったんだ。

 

 『お、お手柔らかに、ノコ?』

 

 『フミカゲ、気絶サセロッテイッタ!』

 

 『ノコオオオオ!?』

 

 『吹出くんとった!』

 

 『ん!?んんんんっ!?』

 

 ダークシャドウだけが近づいて、小森さんを捕まえる。キノコを生やして抵抗する小森さんをダークシャドウは容赦なく壁に叩き付けて気絶させた。何されるか分からない相手は意識を失わせるに限るよね。そしてヒーロースーツを脱ぎ捨てた透ちゃんが背後から吹出くんにチョークスリーパーをかけて、オノマトペを出す暇も許さず絞め落とした。

 

 簀巻きの拳藤さん、気絶した小森さんに吹出くん、檻の中の黒色くん……今回もA組の勝利だ。トイレに急ぐ青山くんを見送りながら私は無意識に片手を握ってたことに気づく。私も熱くなっちゃったのかな。エリちゃんはそれをきょとんとしながら見つめている。ふふ、武者震いかなあ。




 実は楪さんの影響受けまくりヤオモモさんでした。おつよい。では次回にまた会いましょう

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ
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