不測の事態が満載だったけど、何とか5セット目が終了した。結局デクくんの暴走は何だったんだろうか?不思議でしょうがない。ただ、見る限り……特にデクくんそれ自体に問題があるようには見えないかな。うーん……困るなあ。こういう正体不明っていうのが一番面倒くさいんだよ。プログラムのバグじゃないんだからさ、意味不明なのはやめて欲しいなあ。今朝の個性の暴発っていうのがやっぱり関係あったんだろうか?
「えー、とりあえず緑谷。何なんだお前」
「確かになァ。新技にしちゃなんか逸脱してないか?超パワーにしちゃあ変だ」
「……僕にも、まだはっきり分からないです。力が溢れて抑えられなくて……制御が効かなかった。今まで信じてたものに突然裏切られたみたいで、僕自身すごく怖かったです。でも心操くんと麗日さんが止めてくれたおかげで、ただの力の塊なんだってすぐに気づけました」
デクくんが言うには心操くんが洗脳で止めてくれなかったらどうなるか分からなかったけど、彼のおかげで気づけたのだそうだ。二人にありがとうとお礼を言うデクくんに対して心操くんはブラフじゃなかったのか、という感じだ。いやーそれにしてもデクくんが無事でよかったよ。
「お茶子ちゃん、すぐびゅーって飛んでったね」
「ねー!がっ、と抱き着いちゃったりして!キャーッ!」
「か、考えなしに飛びついたのはアレやったかもしれんけどっ!!でも……何も出来なくて後悔するよりは、良かったかな」
「良い成長をしたな、麗日」
それはそうと、という感じで躊躇することなく暴走の渦中に飛び込んでいったお茶子ちゃんに対して私と三奈ちゃんがつっこんでみるとお茶子ちゃんは今になって自分が何をしていたのか思いだしたらしく真っ赤になってあせあせとしだすけど、いい判断だと思うよ。三奈ちゃんには別の意図がありそうだけども。
「んじゃ、ラスト行くぞ。B組は5人クラス内から自由に選べ。心操、きついなら休めるが、どうする?」
「やります。やらせてください」
「よーし、心操くん作戦会議しよう!
「B組!本気でかからないと楪にすべてぶっ壊されるよ!彼女に勝つためにメンバーの選定から始めようか!」
開始は15分後だ、という相沢先生の説明でやっと私の出番かー、と背筋を伸ばして心操くんをブリーフィングに誘った。心操くんはそれにいつも通り首を抑えるポーズで首肯し、ついてきてくれる。B組は本気で私たちにぶつかってくれるみたいだね。いやーありがたい。これで私の新形態をお披露目しても大丈夫そうだ。誰が来るのかなー?割と本気で楽しみだ。うんうん。
「なんか、楽しそうだね」
「あ、わかる?B組の人たち人数差があるからって慢心してるわけじゃないっぽいからさ。本気でぶつかってきてくれて嬉しいなーって」
「その人数差があるわけだけど、どうするの?俺、正直楪にとっちゃ足手纏いでしかないんだけど」
「そうかなー?私はそうは思ってないんだけど。何せ心操くんがいれば……無傷完封も夢じゃないからね」
ふへへ、と悪い顔で戦術&戦略を練り始める私に心操くんが若干ドン引きしてる。いやー、心操くんのおかげで搦め手に幅が出るんだよ。いるだけでコミュニケーションに不和が生じて、味方の声すら信用できなくなる。ふんふふふーんと私は心操くんにペルソナコードと対になるように設計したゴーグルを手渡した。これは?と聞く心操くんに。
「姿を隠して声だけっていうのもいいんだろうけど、目の前の味方が敵だったら、恐ろしいでしょ?ペルソナコードは本来それとセットで運用する想定だったの。だから、それが正しい姿だね」
「で、これどういう機能があるの?」
「見ててね」
私の周囲に立体映像が折り重なって、見た目が完全に変わる。心操くんの目の前にいる私は今、デクくんの姿になっているだろう。体重は誤魔化せないが、フォールドプロジェクターの応用で身長も、髪も、顔も全て擬態することができる。どうしてゴーグル型なのかっていうのは、内からじゃ投影映像に邪魔されて周囲を見れないからだね。だから視界を補助するゴーグル型になったわけ。
「そのゴーグルは心操くんの目で捉えた相手を記録して体表面に立体映像を作り出し、選択された相手に擬態することができるの。これを使えば、心操くんの個性は初見殺しじゃなくなる。何回でも、機能するようになるよ」
「……ヒーローっぽくないね」
「んー?それ言ったら私なんて戦争に使われる兵器とか戦車だよ?見た目や戦い方にヒーローっぽさを求めてるなら私も再考するけど、一番は……誰かを助けるための力じゃない?心操くんの個性が最大限効くなら、救助対象も敵も無傷で終わらせられるからね」
「……カッコイイなあ、敵わないや」
「心操くんもカッコイイよ。ヒーロー科に負けてない!」
いつも言ってると思うんだけど、私は一生懸命に努力をする人が好きなの。頑張るなら、私は精一杯手伝うし、力の及ぶ限りサポートする。だから私にとっては、出遅れても必死に追いつこうとする心操くんを心底カッコいいと思ってたりするのだ。うんうん、さて、作戦詰めていこうか心操くん?大丈夫、勝てるよ。私たちなら。
『特別戦、A組楪&心操チームVSB組宍田、拳藤、鉄哲、取蔭、物間チーム!試合開始だ!』
「あらら、ブラド先生ったら……わざわざ誰かを教えてくれるなんてありがたいなあ……」
「うわ、悪い顔……どうするの?」
「うん、作戦通りにいこう。私が全員を同時に分断するから、心操くんはそうだな……鉄哲くんを確保して」
「確かに、彼ならすぐかかりそうだ。よし、よろしく楪」
「うん。あ、道中こればらまいといて」
ナニコレ、という心操くんにグレネードを手渡す。何って、宍田くん対策。彼嗅覚で索敵できるから鼻を潰しておこうと思ってさ。ハイ、ぼふっとな。あ、私たちにはほぼ無臭だよ。臭いに敏感な人ほどダメージが来るよ、鼻にツーンとね。苦笑した心操くんが捕縛布を手繰って姿を消す。
さて、セメントス先生曰く……戦闘は自分の得意を押し付けることだそうだ。なるほど確かに、ただ私の場合はちょっと違って……相手の得意を封じた上で自分の得意を押し付けるのが私の戦闘だ。ここで数に勝るB組の人たちに対して何をするべきなのか。簡単な話……全員バラバラにして連携を完全に封じればいいんだ。心操くんに鉄哲くんを任せたのは前衛の要に彼がなり得るからだ。私がまず狙うべきは……予想外を押し付けられかねない物間くん。
腰についてる圧縮ボックスを全て落とす。100を超えるビット兵器が空中に浮かんでそれぞれのルートを辿って前に進んでいく。外骨格使えって言われたけど、こんな入り組んだところじゃ逆に不利だ。ハロの全性能を使って同時にビットで処理するのが望ましい。手にビームライフルを形成。両目の機能を引き上げて、そのまま標的を見つけて打ち込んだ。
実戦仕様のピンクの閃光が鼻を抑えた宍田くんの頭を掠める。ちょっと焦げた体毛に冷や汗をかいた宍田くん、すぐに周囲を警戒しだすB組の面々、そうだよね……私と心操くん相手にわざわざ一対一になる必要はないからね、そりゃあ……固まるに決まってるよ。だからそれ、ばらさせてもらう。
『うわわわ!?なにこれ!?』
『楪だ!この量、笑えないね!』
ファング、ライフルビット、シールドビットに追い立てられたB組チームが対処に入ろうとする。けど、今回は数で攻めた。鉄哲くんには熱耐性のおかげでビームが効かないのでファングを当て続けることでノックバックによる吹き飛ばしでまず戦線を離脱させる。それからはビームで追い立ててそれぞれを完全に分離する。ああ、頭が痛くなってきた。あとはハロに任せよう。
「いらっしゃい、物間くん」
「ゆ、楪……!」
ビットのビームに追い立てられた物間くんを誘導して私の所に来させた。にっこりと笑う私に対して青ざめる物間くん。そんなラスボスにでも会ったような顔しちゃって。同期された視覚の一つで心操くんが物間くんの姿で鉄哲くんと接触し、そのまま洗脳にかけてしまった。おー、さすが心操くん、スマートだね。
「いやー、うまくいってよかった。私、物間くんが一番厄介だと思っててさ。ここで仕留めさせてもらうよ」
「い、いやに買いかぶってくれるね……!僕は自分一人じゃ何もできない男だよ?宍田や鉄哲、拳藤に取蔭……!もっと警戒するべきやつはいるんじゃないかなあ!?」
「ん?作戦前に誰の個性をコピーしてるか分からないし、何してくるか不明なのが一番怖いんだよ。鉄哲くんならいま心操くんがやってくれたよ。ああそうそう、平和の象徴を終わらせた人の気持ちが知りたいんだっけ?」
「そ、それは挑発であって本心じゃないよ。気に障ったなら謝罪する」
「知ってる。でも教えてあげるよ。時代を終わらせちゃった気持ちってやつ。私の感想だけどね……次を担いたいって思ってるから、笑って前に進むんだよ。じゃ、やろうか」
ハロに指示出し、鉄哲くんが牢に入った。ブラド先生の実況は状況判断の材料になってしまうので回線乗っ取ってシャットアウト。次は取蔭さんをやってくれると嬉しいな、いま彼女、ばらけて撹乱しようとしてるから。2,3パーツを撃ち抜いて消耗させておこう。宍田くんは今鼻を抑えて必死に逃げているところ。あっ、拳藤さんと合流しちゃった……!うん、これ以上無駄に時間をかける理由はないね。
「
ドロリ、と私の両手が銀色の水のようになって崩れ落ちる。地面に落ちた銀色の水はまるでそれが意思を持っているかのように動き出して、私の周りをうねうねと滞留しだす。私の両腕から流れ出すそれが1トンを超えたあたりで私の腕が形を取り戻す。滑らかに、丸く。いつもの角ばっていてメカメカしい私の腕ではなく、繋ぎ目のない滑らかな腕の形に。物間くんがそれを見て、ゴクリと唾をのんだ。
「参考までに聞かして欲しいんだけど……なにかな、それ」
「ナノマシンと液体金属を組み合わせたものだよ。凄いでしょ」
「そういうのはラスボスのやることであってヒーローのすることじゃないんだよ!」
「きこえなーい!」
ぶわっ!とすさまじい勢いで液体金属が塊となって物間くんに襲い掛かる。物間くんは両手を肥大化させて受け止めようとしたみたいだけど、液体なんだよね、それ。指の隙間をすり抜けて、腕を伝って物間くんを飲み込んだ液体金属、メリクリウスが物間くんを拘束してしまう。メリクリウスが勝手に移動して物間くんを牢に移動させていく。途中で物間くんが金属に変わったり獣っぽくなったり分裂しようとしてたけど、メリクリウスは自在に形を変えて物間くんを拘束し続け、抵抗を許さない。
「心操くん、いまどう?」
『ごめん、取蔭に見破られた!今逃げてる!』
「凄いな取蔭さん、見破ったんだ!心操くん合流しよ!誘導するからこっから正面衝突だ!」
『わかった!ごめん!』
「へーきへーき!」
流石にメリクリウスを使いながらだと同時に戦況の把握は無理だったので最低限ハロに心操くんを任せてたのだけどどうやら取蔭さんに見破られたらしい。何それどうやったんだろう!?勘かな?ハロから再度ビットたちの操作権限を受け取った私が今いる場所に宍田くん、拳藤さん、取蔭さんを誘導する。止まれば攻撃があたり、かといって誘導されてる現状にB組チームは歯噛みしてるみたいだ。当然だけどね、拳藤さんがやったように、考える暇を与えないように動かしてるんだから。
ハロに誘導された心操くんがB組より先に戻ってくる。B組チームはちょっと遠回りのルートで誘導しているからもうちょっと時間がかかるだろう。息を切らせた心操くんが袖口で額を拭う。ゴーグルを額にあげた心操くんが話しかけてくる。
「ごめん楪、しくじった」
「え、ちゃんと鉄哲くん捕まえたでしょ?成功してるよ。しかも掴まってないし心操くん」
「何回も守られたよ。その浮いてるやつにさ」
『シンソウ、スゴカッタ!ハロノ援護イラナイ!』
「べた褒めじゃんハロ。あとで映像見せてもらおっと」
凄いな、心操くんは苦々しい顔してるけど、ハロがここまで褒めるってないよ。だってハロ、AIだから成功失敗の判定は凄いシビアなの。つまり、ホントにハロの援護なしでも何とか出来たんだよそれ。心操くん、実戦経験はないけどさっきまでの2戦で自分がどう動けばいいのか、何が出来て何ができないのかを理解し始めたんだね。だからハロのビットによるフォローもこうすればよくなるっていうのにとどまって、援護しなければヤバかったっていうのがなくなったのか。これはうかうかしてられないなあ、私も。
「ゲッ……やっぱり誘導されてたんだね」
「また何か知らないのがある!注意して二人とも!」
「まさか鼻を潰されるとは思いませんでしたぞ……!」
「ほら、セメントス先生がいつも言ってるでしょ?得意を押し付けるのが戦闘だって。ここで、終わらせよう」
ビットに追い立てられて私と心操くんのいるちょっと開けた場所にやってきた3人、取蔭さんはやっぱりか、と苦々しい顔をしている。追いかけてきたビットたちがメリクリウスに飲み込まれてそのままナノマシンによって分解され、メリクリウスの一部となり体積を増やす。ごぼごぼと重低音を出して私の周りを蠢くメリクリウスといつもと違う私の腕を見て拳藤さんが警戒をあらわにした。よーし!いいとこ見せるからね!いくよ!心操くん!
今回の新兵器解説
MERCURIUS(メリクリウス)
液体金属にナノマシンを混ぜ、自在に操れるようにした物質。使用すると腕がメリクリウスに置き換わる。硬度、形は自由自在。色んなことができるとってもすごい液体金属。元ネタはターミネーターのアレとかケイネス先生とか某風影とか。
ではまた次回にて。感想評価よろしくお願いいたします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ