個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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106話

 ギュイィィィン!とドリルや工具の音が鳴り響いている。いつもより人がかなりせわしなく動いているこの場所は、サポート科。私はそこでヒーロースーツに身を包み、同じくヒーロースーツ姿のパワーローダー先生を胡乱な目で見降ろしている。ああ、エリちゃんが恋しい。と私は「今日は私が一緒なのさ!」と校長先生に連れ去られてしまったエリちゃんに思いをはせる。どうして……どうして……

 

 「どうして私はここに居るのだろう」

 

 「くけけ……それは今日が体験入学だからだよ。サポート科の手伝いよろしくね」

 

 「私はヒーロー科なんですぅ!」

 

 「何言ってるのさ君はもううちの子だよ」

 

 知らないうちに私サポート科に移籍されかけてる!?それはそうと、今日は雄英高校の体験入学の日なのだ。雄英高校はヒーロー育成校、学校なのだ。入学者を確保しないことには始まらない。なので、昨今の情勢を鑑みてもなお、学校としての根幹をなすイベントだけは外せないので最近のお気に入りはエメンタールチーズの校長先生が頑張って今日を迎えたらしい。ハードチーズがお好みなのか。覚えとこう。

 

 それはそうと、昨日このことを知らされた私は後輩になるかもしれない子たちとトレーニングができるのか、と物凄く楽しみでわくわくさんになっていたのだけれども、当日の今日に朝いきなり寮にやってきたサポート科各位にそれぞれが開発した拘束用サポートアイテムで拘束され、拉致されかけたのだ。いやこれ拉致だよ、という余裕もなかった。

 

 突然のことで目を白黒させていた私と余りの凶行にフリーズするクラスメイト、そしてじわりと目に涙を浮かべたエリちゃん。それが目に入った瞬間私はキレて拘束をぶち破り対物用威力のビーム兵器で本気で迎え撃とうとしたのだけれど、遅れて現れたパワーローダー先生がサポート科全員を鎮圧してとりあえず落ち着いた。身の丈以上の巨大ビームライフルを振り回す私をクラスのみんなが必死に止めてくれてたらしい。あとから思いだしたけどぶっ放してたら隣のB組寮まで巻き込んで更地になる所だった。また校長先生に怒られちゃう。

 

 そのあとマッド具合に拍車がかかりすぎてちょっとヴィラン寄りになったんじゃないかでお馴染サポート科の全員をこんこんと見下ろして説教をしていた。明ちゃんとメリッサさんはパワーローダー先生と一緒に現れて頭を抱えていた。明ちゃんがそうなるってどうよサポート科3年生?年下にこんな説教されて恥ずかしくないんですか。私は忘れませんからね、ハロを追い回して分解しようとしたこととか。次やったら巨大電子レンジ作って中に放り込みますよ、いいですね?

 

 「なんで私はヒーロー科の方じゃないんですかぁ……しかもヒーロースーツでこんなところに」

 

 「しょうがないわ。学生で超圧縮を習得してるの、私と貴方くらいだもの。発目さんはもう少しね」

 

 「ヒーロー科は黙っても人が来ますから!私たちは刈り取る必要があるのです!希望者を!」

 

 いや分かるよ。普通科はともかく専門科のサポート科や経営科は素養がないと難しい科だ。だから推薦入学者枠も多いし、ヒーロー科よりも偏差値高かったりする。誤差だけども。どうやら後輩に興味があります状態の明ちゃんと経験があるらしいメリッサさんはてきぱきと準備を進めていく。

 

 超圧縮技術というやつは曲者で、コツみたいなものを習得しなければうまくできないのだ。要はアレ、物品を原子レベルまで分解してギッチギチに圧縮してるので、その原子レベルまで分解されたパーツをどうパズルしていくかの法則を掴まないと超圧縮技術を習得できたとは言えないの。で、そのパズルの方法ってのが個人差があってめんどくさいのよねえ。だから、習得できるかどうかはその人の努力にかかってたりする。

 

 いいなあ、きっとヒーロー科の皆はもしかしたら後輩になるかもしれない人たちと一緒にトレーニングして仲を深めてるんでしょ?私もそっち行きたいなあ。別にサポート科嫌いじゃないんだけど、長居すると分解されかけるからさ。たまに顔出すぐらいで十分な気がするよ、うん。とりあえずやりますという私にパワーローダー先生は

 

 「まあ、楪を呼んだのは理由があるんだよ。模擬授業を一コマやるからそれを手伝ってほしくてね。サポート科が作ったサポートアイテムVS君という形で」

 

 「ロボインフェルノでも出してくるんですか?」

 

 「あれは君にとっちゃ木偶の棒だろ。予算の無駄だよ。ヒーロー科のアピールをしつつ、サポート科のアピールもできる。一挙両得だとは思わないかい?」

 

 「確かに私ほどサポートアイテムを使うヒーロー候補生はいないと思いますが。まあもう準備させられてますからね。いいでしょう、やりますとも」

 

 「ちなみに報酬は校長が用意してくれたレアメタル詰め合わせだ」

 

 「物凄くやる気出てきました」

 

 現金なんて言わないで欲しいんだけどレアメタルってマジでレアなんだよね。基本的に家電を吸収するだけじゃ微々たる量しか手に入らないの。それでいていろんな性質を併せ持ったりしてて量が欲しいって時に在庫が、ってなりかねないの。まとまった量手に入るならやらない理由がないんだよ。もう、最初からソレいえば無条件に協力したのにもう。私相手にサポートアイテム試すようなことするから朝みたいになるんだよ。

 

 やる気がみなぎってきた私は何故か最初からあてがわれている結構広い展示スペースにでん、でん、でんとゴリアテ、アルビオン、ヘカトンケイルを配置してその前の椅子に座って膝の上にハロを大きくして抱っこしておく。ちらちらとサポート科の人たちの中身気になっているアピールは全部無視だ。うるせえ自分で作れ、朝のこと許したわけじゃないんですからね。

 

 今日も元気よく鳴り響くプレゼントマイク先生の放送機器要らずの大声を聞きながら、私は意識を切り替えるのだった。一応プロライセンスを持った技術者の端くれでもあるわけだし、これもお仕事、ヒーロー活動ということにしておこう。だから明ちゃんはその工具を仕舞ってゴリアテの前からどいてね?分解したら怒るよ?ねだるな、勝ち取れ?さすれば与えられん?そのままだと貴方が与えられるのは私のゲンコツになるよ?よろしい。

 

 

 

 

 「か、カッケー……」

 

 「体育祭1位の人だ……」

 

 「デッッッか……」

 

 「こちらはサポート科の特設コーナーだよー。気になるアイテムがあるなら先輩が懇切丁寧に教えてくれると思うから気軽に話しかけてね~」

 

 意外とサポート科、盛況だな。私大体座ってようやく普通の身長の人と目が合う感じなので話しかけやすいのか、それとも後ろの外骨格たちが悪目立ちしてるのか分からないけど……割とよく質問される。抱きかかえてるそれは何ですか?とかサポート科だったんですね、とかね。ヒーロー科だよ~と訂正してるのだけれども。

 

 「すっげぇ……これ先輩が作ったんですか!?」

 

 「そうだよ。中に人が入れる強化外骨格、タイタンシリーズっていうの」

 

 「楪希械先輩ですよね。体育祭みてました。あの、少し質問してもいいですか?」

 

 「うん、いいよ」

 

 私の目の前にやってきたのは中学校の制服に身を包んだ特徴的な二人。浅黒い肌と強いパーマがかかった黒髪の男の子と電気のようなエネルギー質の髪、多分エンデヴァー事務所のバーニンが近い感じの髪をした男の子だ。ヒーロー志望です!と名乗ってくれた吹寄風児くんと三田来人くん。そうかー、私ももう先輩になるんだなあ。感慨深いなあ、うんうん。

 

 「先輩の体育祭で使用していたサポートアイテム……全て威力がすさまじかったと思います。兵器といっても過言ではないほどに。対人で使用できないものを使い続けるのはベターではないと思います。それに、後ろのアイテムも見る限りではそれに拍車がかかってるように見受けられます。小回りが利くものを作ろうとは思わなかったんですか?」

 

 「おまえ、先輩を前にしてなんちゅうことを……!」

 

 「凄いね、ストレートに。小回りが利くものは作ってあるよ。今回は先生から派手なものを出して欲しいって言われてるから、こうなってるだけなの」

 

 「そうなんですか。すいません不躾に。気になってしまって」

 

 なるほど三田君、面白いタイプだね。タイプとしては障子くんに近いのかな。頭が回って口も回るタイプ。歯に衣着せぬ感じのいい方は入学したての頃の轟くんを思い出すなあ。なんて思いながらちょっといたずら、例えばこんなのだね、といいながら二人の周りにシールドビットをふわふわと浮かべてあげる。いつの間にか包囲されていたことに気づいた二人は周りを見渡して目を白黒。

 

 私はあんまり気にしないけど、三田くんはちょっと対人関係が難しいタイプかもしれないね。相手の欠点をそっくりそのままオブラートに包まずに聞いてくるから腹が立つ人は怒ってしまうかもしれない。まあ爆豪くんに爆発サン太郎とか言わなかったら大概大丈夫じゃないかな?年下の生意気な発言に噛みつく人は恥ずかしいぞ~、ってね。

 

 「そういえば、二人はヒーロー科志望なんだっけ?体験授業もうすぐじゃないかな。行かなくて平気?」

 

 「あっ!?やべえ人数制限はいっちまう!すんません先輩!来人が失礼しました!」

 

 「ご丁寧にありがとうございます。勉強になりました。失礼します」

 

 「はーい、楽しんでいってね~」

 

 ヒーロー科の体験授業はあっちだよ~空間投影で矢印を作って方向を指し示してあげるとどうやら迷ってここにたどり着いたらしい二人はお礼を言って速足にヒーロー科の方へ去っていった。結構印象に残ったなーあの二人。もしも入ってくるなら面白いことになりそうだけど。むふふ、と私は一人未来に夢をはせるのだった。あ、こんにちは~。え?動くのかって?動くよ、ほら。そんな腰を抜かすほど驚かなくても。

 

 

 

 

 いやー楽しいなあ。サポート科の見学に来る子たちはみんな大なり小なりサポートアイテムに興味がある子たちだから話が合うというか、なんというか。私の元々の気質がそういう技術者寄りだっていうのもあるかもしれないので仲間を見つけた感覚だ。何でヒーロー科なのにサポート科の手伝いしてるんですか?って何回も聞かれたけど。私が知りたいよ、私もみんなとヒーロー科の体験授業したいよ全く。

 

 あと私、曲がりなりにも雄英の体育祭優勝してるから他の人よりもかなり、いや大分顔が売れてるんだよね。神野の件はテレビ中継でもオールマイト先生中心で私や爆豪くんはそこまで映ってなかったから気づく人は気づくレベルだろうけど、タイタンシリーズのインパクトが無駄に大きいせいか神野のことを質問してくる人は流石にいない。オールマイト先生がどこにいるか聞いてくる人はいるけど。

 

 「あ、楪。そろそろ準備頼むよ。サポート科のやつらも張り切ってるしね」

 

 「もしかしてこれにかこつけて皆私相手に自慢のサポートアイテムの性能を試そうとしてませんか?」

 

 「ほぼ10割それだね。ちなみに俺も出してる」

 

 「……遠慮なしに破壊しますけどいいですね?」

 

 「むしろそうしてくれなきゃ困るよ。手加減されたら性能差なんてわかったもんじゃない。知りたいのは限界性能だからね」

 

 薄々気が付いていたけれどもそれが今確信に変わる。なんだかんだ言ってサポート科の皆は勤勉だし真面目だし目的に向かってひじょーーーーにまっすぐに進んでいく。それがマッドな方向、まあ私も人のことが言える立場かどうかは分からないけど研究者気質なのは間違いない、サポート科の皆どこかしらそうなんだろう。

 

 体験入学のアレソレは全部隠れ蓑でこれをいい機会に大概の無茶を上からどうにかできる私相手に自分の限界、最高のサポートアイテムを試す気でいるんだな?パワーローダー先生含めて。まあ私も気持ちはよくわかる、この前完成した肩掛け式遠隔エネルギー充填型ビームキャノン、仮称サテライトキャノンを上にぶっ放した時と同じ感じなのだろうきっと。ごめんなさい校長先生。

 

 まあ、戦闘訓練で動くのは嫌いじゃない、というかむしろ大好きだ。戦闘が好きか嫌いか聞かれたらまあ、あまり好ましくはないのだけれども。誰かを助けるための戦いが必要になるってことはここ1年で物凄く学んだことなので、強くなれるならそりゃーいくらだって動きますとも。それはともかく、メリッサさんと明ちゃんに軽く手を振ってから私はパワーローダー先生と一緒に特設ブースを抜ける。この後運動場で私VSサポートアイテムという形になるので先に準備するためだ。まあ私既にヒーロースーツで戦闘態勢バッチリなんだけど。

 

 「ん?どうしたの三田くんに吹寄くん。そんな気を落としたような感じで。ヒーロー科体験できた?」

 

 「あ、楪先輩……それが」

 

 「人数制限にかかって見学だけで終わってしまって。体験できなかったんです」

 

 「なんですと?」

 

 気落ちしたようにとぼとぼ歩いていた吹寄くんと姿勢よく歩く三田くんを見つけた私が声をかけると、彼らは私を見上げながらそんなことを言った。私はそれを聞いて、パワーローダー先生と目を合わせるのだった。




チームアップミッションであった職場体験編開幕です。あと1話で終わりますですはい

 ではまた次回に

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ

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