個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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108話

 「わーたーしーがー!説明に来た!」

 

 「オールマイト!」

 

 「オールマイト先生、マッスルフォームとは珍しい」

 

 体験入学を終えた余韻に浸る間もなく忙しい雄英高校。本日のホームルームの担当は相澤先生ではなくオールマイト先生、うわ新鮮だなあ。もうお馴染となってしまったトゥルーフォームではなく、筋骨隆々マッスルフォームでのご登場だ。マッスルフォームのオールマイト先生に懐かしさを感じてしまうだなんて、時の流れは残酷だね。それはそうと、説明とはなんだろな?

 

 「もうすぐ全員が仮免許を持つことになるであろう今!ヒーローとして活躍の場を広げることができるある制度が新設されることになった!その名も……」

 

 「チームアップミッション、ですか?」

 

 黒板に表示された名前に私は頭を傾げる。チームアップといえば、ヒーロー同士が現場、もしくはあらかじめにチームを組んで協力して事に当たる作業を指す。記憶に新しいのだと死穢八斎會の時がまさにそれだ。オールマイト先生の話を聞いて行くと、これから全国の学校とヒーロー間で行われるチームワークとコミュニケーション能力を高め合うことを目的としていて、プロになったら必ずある現場での見知らぬヒーローとの協力をスムーズに行えるようになるのが最終目標とのこと、なるほど。

 

 「他校との連携も大いにあり得るぞ!」

 

 「ってことは士傑とか傑物の先輩たちとの協力もあるっつー話か!」

 

 「うむ!協力するヒーローの指名が入った場合はそっちが優先されるが、基本はランダムだ!どういった人間とも協調していくように!轟少年と爆豪少年は並行して仮免許もあるから大変だろうけど、プルスウルトラの精神で頑張ってくれ!」

 

 はい!とみんなが返事をする。そういえばもうすぐ爆豪くんと轟くんの仮免許の再試験があるみたいだね。11月の終わりだからもう少しなのかな。いやーこれで晴れて全員仮免許持ちだね。あの二人なら反省すればほぼほぼ間違いなく仮免許を取れるでしょう。なんてったって私たちのクラスの才能マンたちだし!あ、でも……

 

 「私の場合、エリちゃんがいるんですけど……」

 

 「そうだね!エリちゃんには申し訳ないんだが、雄英でお留守番してもらうことになるだろう!まさか現場に連れて行くわけにもいかないからね!」

 

 「ですよね。んー、エリちゃんお留守番できそう?ハロがいれば平気?」

 

 「……おかあさん、戻ってくる?」

 

 「勿論、絶対帰ってくるよ。お土産買ってね。だから、先生たちといい子で待っててね?」

 

 こくり、とエリちゃんが頷く。これからやるインターンとかで私が外に出る機会も多いだろう。そうなった時に離れられるようにトレーニングはしてきたけど、これが初になるのか。ここ最近、実はエリちゃんの角が誤差レベルではあるんだけど伸び始めていて、個性エネルギーの蓄積も始まっている。それに伴って個性訓練をしなければならないと相澤先生にも通達された。彼女にとっては忌まわしい力かもしれないけど、コントロール出来るようになればうまく力と付き合っていけるだろう。私もそうだったからね、機械の無駄に大きい力をコントロールするために両親から特訓を施されたりしたし。マジでなかったら積み木グシャを人体でやってた可能性が高い、お父さんお母さんありがとう。

 

 「早速だが、実は既に最初のミッションが決まっている!今から配る手紙を見て指定の日時にプロヒーローの元に向かってもらうよ!」

 

 そういってオールマイト先生がとりだしたのは紙の手紙、人数分。ちょっとワクワクしてきたぞ、私は誰と組むことになるんだろう?どんなヒーローに教えを乞うことができるんだろう?私は役に立てるだろうか?何でもできる万能マシンを自負する私ではあるけど、ちょっと不安だ。私はドキドキしながら、手紙を受け取るのだった。

 

 

 

 

 「わくわく、してたんだけどな~~~」

 

 ちーん、と福岡行きの新幹線の中で私は一人で沈む。一人、そう一人である。誰かと一緒にチームを組んでレッツゴー、と思ったら指定されたのは私一人だったわけだ。ハブられること多いね私最近。しかも手紙には、住所だけ指定されていて、誰が私と組んでくれるヒーローなのか分からないの。不安&不安だよ。

 

 エリちゃんは、私と離れることについて我慢してくれてたんだけど結局別れる直前になって涙が溢れてきちゃって私の胸はすさまじい罪悪感に締め付けられることになった。あかん、涙が出てきてまう。お茶子ちゃん、関西弁はこんな感じでいいですか?は~~~~。とにかくミッドナイト先生に慰めてもらって、白ハロと一緒にばいばい、と手を振ってくれたエリちゃんに見送られて私は新幹線に乗ったのだ。大丈夫かなぁ、長期任務とかじゃないといいのだけれど。

 

 「えーーー、ここ?」

 

 そんな感じで新幹線を降りて指定された住所にたどり着くと、そこには立派なヒーロー事務所が……あるわけもなく。一般的なマンションが佇んでいた。あれーーー?え、マジでこれなんですか?じゃあこの番号ってもしかして部屋番号?えーーー?なんか不安になってきた、ちょっと後悔もし始めている。うーんこの、まあとりあえず勇気を出していってみよう。もしかしたらまともなヒーローかもしれないし、事務所構えるお金がないだけで。その時点でなんか怖いな。

 

 ぴんぽーん、と指定された部屋のインターフォンを押す。うっわー、職場体験やインターンでも味わったけどこの緊張はいつまでたっても慣れないなあ。はーい、と気の抜けた感じの男の人の声がしてガチャリとドアが開く。開いたドアの先にいるのは

 

 「お、来たね。悪いんだけど声を出さずに入ってくれないかな」

 

 ホークス!?と声を出しそうになって急いで手で口を塞ぎ、玄関をくぐる。彼は私を微笑ましそうに眺めてそのまま引っ込む。ホークス、下半期ヒーロービルボードチャート2位、速すぎる男と称される新進気鋭のヒーローだ。個性の剛翼の汎用性はいうまでもなく、私のオールレンジ攻撃のヒントになった人物でもある。うっそー、すごいな。でもなんで名前出さなかったんだろう?

 

 「いやーごめんね。実はここ俺の隠れ家でさー。バレるとめんどくさいなって」

 

 「あ、はい。それはそうとホークスとチームアップだなんて光栄です。インターン行くか迷ってたので」

 

 「お、そうなの?俺は歓迎するよー、ついてこれたらね。で、ミッションなんだけど」

 

 緩いなー、ホークス。ヒーロースーツのサングラスを額にあげてわざわざコーヒーを淹れてくれるホークスの隠れ家らしい部屋、思った以上に何もない。L字のソファにテレビ、そして机。全てに使われた形跡がほとんどない。埃の状態からして一回掃除してるみたいだけど、なるほど隠れ家というのは本当らしい。

 

 「君と俺のチームで、一つのヴィラングループを捕まえる。これが任務だ、ちょ~~っと厄介だけどね」

 

 「厄介、ですか?」

 

 「飛べるんだよ、全員。飛行個性持ちのヴィラングループなんだ。しかもこれが結構速いらしくて俺にお鉢が回ってきた」

 

 「成程、それで私ですか」

 

 「そゆこと。常闇くんから聞いたけど君飛べるんだって?しかもマッハで。後色々できるらしいじゃん?狙撃とかできると助かるんだけど」

 

 「狙撃ですか、出来はしますけど……」

 

 狙撃、確かに私は飛べるし狙撃もできる。だけどいまだ特化してるとは言いづらい。例えばスナイプ先生や、一昔前の遠距離系最強ヒーロー「レディ・ナガン」のような針の穴を通すような狙撃はまだ不可能だ。当てるだけなら多分できるけど、相手がビームより速くなければ当てられると思う。光速の10%より速いなんてワープぐらいでしかお目にかかれないとは思うんだけどね。ただ撃ち落とせ、というだけなら多分できるはずだ。

 

 「出来るならそれで十分さ。じゃ、さっそく行くよ。ウチのサイドキックがヴィラングループの動向を抑えててね、あと2時間後に取引先に移動を始める。そこを叩く」

 

 「わ、分かりました!」

 

 手際が良すぎる。悪いんだけどすぐに着替えて、といわれて私はいそいそとお風呂場を借りてヒーロースーツに着替える。うわ、今になって物凄く緊張してきた。だって今から№2ヒーローと一緒にヒーロー活動するんでしょ?前のエンデヴァーの時のようなお荷物&見学者、というわけではなくサイドキックとして。責任重大だな、というか私あれじゃん……まともにインターン出来てないじゃん。常闇くんに詳しい話聞いておくべきだったなあ。だって、彼インターンもホークスの事務所に行ったわけだし。

 

 隠していた両目を出して、冬仕様のヒーロースーツに身を包む。まあ、特に何か変わるわけじゃないけど。ちょっと生地が防寒仕様になったくらい?じゃらっと腰に圧縮ボックスを懸架して準備完了。空を飛ぶってことはアルビオンを着ればいいのかな?でも狙撃って言ってたしなー、普通のままでとりあえず行くか。亜音速くらいまでだったら今のままでも出るし。超音速行こうとすると内臓がオシャカになるので外骨格が必要なのだけれど。今それを克服すべく鋭意研究中なのだ。

 

 ぐっぱ、と一応個性がちゃんと動くか確認する。調子悪いと困るからね、特に飛行中は個性がエンストすると墜落して酷いことになる。主に道路が。落ちる程度なら多分私は平気、メカですので。よし、青メッシュいれて気合充填完了!よしいくぞー!

 

 「お、きたねー。んじゃー作戦開始まで時間あるからちょっと駄弁ろうか。色々話聞かせてよ」

 

 「え、あ、はい?」

 

 出迎えてくれたホークスは、だらけていた。着ていたはずの上着は脱ぎ捨てられて椅子の上に置かれて、サングラスは机の上に。そして寝転がっていた。な、なんかイメージと違う~~~!こんなキャラクターだったの?いやビルボードチャートの番組見る限り確かにこんな風になってそう!ファンサービスでいい噂しか聞かないからなんか衝撃的だ。座りなよー、というホークスの声に従って私もソファに腰掛ける。これ雑に扱っていいやつなのかな?

 

 「いやー、実は前から色々聞きたくてね。ちょっと俺個人的にヴィラン連合について調べててさー。接触してるんでしょ?」

 

 「え、ええまあ。といっても私が提供できる情報なんてニュースで流れているのとそう変わりませんよ?」

 

 「そうかもね。けど、生の声ってやつは俺が一番大事にしてるもんだ。情報なんかそれの筆頭、だから聞けるなら聞いておきたいんだよ」

 

 なるほど、と私は納得する。もしかして常闇くんが職場体験の時にホークスになんかプンプンしてたのってUSJの脳無の話とかを洗いざらい聞かれたから?そりゃあ常闇くんいい気しなかったよね、だってアレ普通に聞かれるの嫌な感じの思い出だろうし。じゃあ、最近だと死穢八斎會の件とか君関わってるって聞いたよー、というホークスにインターンで関わった事件です、と答える。

 

 とりあえず事のあらましは知ってるであろうホークスに何が聞きたいのですか、と尋ねるとまず治崎……オーバーホールについて聞かれた。思想、戦った感じなどなど……戦闘については強かったとしか言えないけど、USJの脳無ほどではなかったが印象かな。攻撃効かないのは同じだけど消耗はするし。脳無は消耗すらなかったから。思想についてはそうだね、分かり合えそうにはないってところかなあ。少なくともエリちゃんで金儲けをしようとしてた時点で私にとっては嫌いなタイプだ。

 

 「ふーん、なるほどね。ありがと、聞かせてくれて」

 

 「あの、私からもいいですか?」

 

 「なにかな?」

 

 「エンデヴァーが倒した脳無……所感ですけどUSJの脳無より強く感じました。勝手な予想ですけどあれエンデヴァーを狙って来たんですよね?」

 

 どうしてそう思うの?と寝転んでたソファから座る態勢になったホークスが鋭く聞いてくる。だって、あまりにも恣意的だから。あの脳無、今までの命令を聞くラジコンみたいな脳無と違って戦いながら考えていた感じがするのだ。プロミネンスバーンで生き残るために頭を千切って投げたりとか、分裂で邪魔が入らないようにしたりとか。あと恣意的だっていうのを決定づけたのは最後の最後に荼毘が姿を現したこと。これで狙ってあの場所に脳無を放ったことが私の中では決定的なものになった。

 

 「普通ならエンデヴァーが現れたら脳無だろうが普通のヴィランは姿を隠します。戦って勝てるにしても非合理的です、倒すのにかかるコストが高すぎる。それでもエンデヴァーを襲ったのはエンデヴァー自身が目的ではないでしょうか?」

 

 「なーるほどー。考えてるね楪さん。その考察は参考にさしてもらおうかな。じゃ、いい感じに緊張も解けたところで……仕事に行こうか」

 

 「はい!」

 

 サングラスをかけ、上着を着るホークスに私は勢いよく返事をした。よし!頑張るぞ!

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ

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