「はい、報告頂戴」
「現在目標グループはここより南西10キロ先地点にて出発準備中、時間通りに出発するものと思われます。事前に調べた飛行ルートはこちらです」
「うわー、これどう思う楪さん」
「綿密に計算されてますね。天気まで勘定に入れて、雲の中に隠れるように移動するつもりじゃないでしょうか」
「さっすが鋭いね。じゃ、迎撃地点にちょうどかち合うように出発しようか」
車の中にて私とホークスはサイドキックの人たちから貰った情報を元に作戦を立てていた。どうやらヴィラングループは港の一角から堂々と空を飛んで別ヴィラングループとの取引先である離島まで飛んでいくつもりらしい。生憎だが今日は曇り空で空の上には曇天が広がっている。海上では一雨振るかもしれないし、沖の風は強い。悪天候だ。それに乗じて雲に紛れて秘かに出発するつもりなのだろう。
迎撃地点はどうしようか、というホークスに私は海上での迎撃を提案した。理由は単純、抵抗にあった場合に非常にやりやすいから。巻き込まれる建造物がなく、人もいない。私の火力に制限がかかりにくい、勿論漁場を荒らすわけにはいかないので海中で爆発物を爆発させるような真似はできないけど。
だが、一応これにもリスクはある。雲と同じ高高度での作戦になるのでヴィランも私たちも墜落死の危険性がある。これの場合下がコンクリートか水かの違いだけど雲のある場所から水に落ちればほぼ即死なので変わらないだろう。じゃあ陸にいるうちに叩けば、という話でもあるんだけど……同時進行で離島のヴィランも捕まえるらしい。しかも離島のヴィランはどこにいるか分からない、合流地点を探るために一回出発させて集合場所にヴィランが現れてから同時進行で捕まえるということらしいのだ。
他の飛行可能なヒーローに頼めばいいのではないか、とも思う。具体的にはリューキュウとか。と聞いたら大きすぎて目立つから、とのこと。難しいんだねヒーロー活動って。だから、学生とはいえ私が引っ張り出されたのかな?じゃ、そろそろいこーかね。というホークスは走行中の車のドアを蹴り開けて、そのまま出て行った。えっ!?
「エクスマキナー、行くよー」
「は、はいっ!」
「ホークスをお願いします。あの人適当に見えて結構無茶やるんで……」
苦笑いしたサイドキックの人が車を停めてくれて、私は転がり落ちるように外に出る。最後にサイドキックの人の忠告のようなものに私は一つ頷いてそのままバーニアで飛び立った。迎撃地点は離島の1キロ手前、ヴィランたちがまっすぐ進むなら私たちは斜めに進んで線が交わるところでぶつかり合うこととなる。
「ついてこれる?」
「ついていきます。リフボード、
確認のようにそういったホークスは私の返事を聞くとにやりと笑ってから大きく翼を広げ羽ばたき、凄まじいスピードで高度をあげつつ海上に繰り出した。私はそれについていきながら足からサーフボードのようなメカを生み出す。リフボード、ホバーバイクでは大きすぎて小回りが利かず、かといってバーニアを使い続けると消耗が激しい。ので折衷案のような形で開発をした新サポートメカだ。
仕組みとしては荷電粒子が並走するときに働く反発力を利用して浮いてるんだけど……超絶簡単に言うとビームのレールを下に作ってそのビームの上に載って空を飛ぶサーフボード、かな。銀色のリフボードの上に載った私が緑色のビームの軌跡を残しながらホークスに追いついた。これの最高速度は時速1200㎞、ギリギリ音速に届かない速さ。ホークスの瞬間最高速度はメディアを見る限り音速を越えてると思うけど、巡航速度がどうなのかは分からない。
「へー、君びっくり箱かなにか?空飛ぶスケボーは初めて見たよ」
「これは私が開発したものですからね。世界でも私だけしか持ってません」
「……そりゃすごい」
本気で驚いたような声が返ってきた。彼の後ろにいるのでどんな顔をしているのか分からないけど、純粋に褒めてくれるなら嬉しい。びっくり箱かぁ、最近クラスの皆にもよく言われるよね。なんかあるたび知らないもの出してくるって。姿勢制御のため時折バーニアを吹かしつつ、ホークスと一緒に雲海の中に入る。
「うわさむっ」
「そりゃあ、これだけ高ければ酸素も気温も低くなりますよ」
「君は要らないの?酸素マスク」
「必要ないです」
高度が現在2000mほど、うっすらと寒くなってきて酸素も薄くなっている。激しい戦闘を想定しているからかホークスはサポートアイテムらしい酸素マスクを口につけていた。私は体内に蓄えた水分を個性で分解して血中に直接酸素を供給できるので最悪呼吸できなくなっても平気だ。重水素作るときにいつもやってるし、今更間違うこともない。
「結構普通についてくるんだね。自信失くしちゃうなー」
「ただまっすぐ飛んでるだけじゃないですか。戦闘機動になったら私もっと雑ですよ。当たる前提で進みますし」
「そりゃよくない。助けてくれたヒーローが傷だらけは安心感激減だぞー?見えてきたね、見えるかい?」
「はい」
先ほどから私の対空レーダーに引っかかる影、8人。それぞれ形が違う。鳥みたいな形、人間そのまま……下方向に視界を切り替えた目を向けると眼下には何かを運びながら飛ぶヴィランたちの姿があった。何を運んでいるのだろうか?おそらく生物系、つまり異形型の鳥の翼を持ってるのが4人、他は念力とか、足からのジェット噴射とかで飛んでるっぽい。
「どうだろ、落とせるかな?」
「一発で全員行けます。ただ、墜落します、確実に」
「それは俺が何とかする。できるだけ致命傷を避けてくれ」
「分かりました」
難しいこと言うなー、この人。一撃で全員をノックアウトしつつ、死なないようにしろと来ましたか。やるけど。私はリフボードの上で片膝立ちになり、圧縮ボックスを二つ開放する。一つはホルスタービット、もう一つはGNスナイパーライフルⅡ、バージョンアップしたビームスナイパーライフルだ。ホルスタービットの内部に収納されているピストルビットにパーツを接続してライフルビットにして引っ張り出す。ビットの数は12、プラス私のGNスナイパーライフルⅡを合わせて13の銃口が8人を狙っている。
「よし、向こうは既に終わらせたみたい。あとはこっちだけだね」
「カウントください、タイミングはお任せします」
「OK、10、9、8、7、6、5、4……」
カウントすると同時に翼をはばたかせたホークスが急降下する。一気に速度が上がり、亜音速まで加速した。彼我の距離は私から約1.5㎞、ホークスから750mほど。ハロとリンクして最大限集中して8人同時に狙いをつける。当てることならできる、そのために作った装備たちだ。ミリ単位のズレが致命傷になる、動かすな、逸らすな、ホークスの合図を待て。
「3」
トリガーに指をかける。思考トリガーにも同時に起動させ、荷電粒子が銃口に集まりだす。
「2」
深く息を吸い込む。思考がクリアになった。上空の風の音がきえて、ホークスの合図の声だけが聞こえる。
「1……撃て!」
トリガーを引いた。対人威力まで抑えたビームが13の銃口から同時に発射される。ピンク色の光条はホークスの周りを追い抜くように駆け抜けて……ヴィランたちに過たず命中する。鳥型のヴィランには両翼の付け根を貫くようにして飛行能力を奪い、そのほかのヴィランたちには手や足に当てることで痛みによる個性の強制解除を狙った。傷口はビームの熱量で焼けているので強制的に止血がすんでいる。
ヒュゥ、と通信からホークスが軽く口笛を吹く音が聞こえる。彼は着弾から一瞬おくれてヴィランたちの元までたどり着き、その背中の剛翼を解放した。ホークス、という痛みに悶えるヴィランの声が通信越しに聞こえる。最低限飛行できるように残された剛翼から分離した羽根たちが傷ついて飛行能力を失ったヴィランたちを拘束しつつ支える。凄いな、いったいどれだけの羽根を同時に操作しているのだろうか?
優に200はくだらない羽根が私の視界を行き来している。それぞれが独立した動きをしていることからホークスはこれらすべての羽根を同時にかつ個別に操作していることが見て取れる。例えば私がこれをオールレンジ攻撃用の兵器でやったらどうなるだろうか、間違いなく脳みそがパンクしてゆだっている。無理だ、出来っこない。個性だから当人は無意識でできるのだろうけど、私には無理だ。あくまで私のオールレンジ攻撃は個性じゃないから。
私の個性は作り出すところまで、操作をするのは自前の脳みそだ。これだけの量を操ろうと思ったらハロがもう1台絶対いる。それでようやっと見れる程度に動かせるくらいだろう。どれだけすさまじいことをしてるんだこの人は、さすがは現ナンバー2、雲の上にいる人なんだな。ホルスタービットにライフルビットを仕舞って、GNスナイパーライフルⅡを手持ちしたまま両腰にホルスタービットをくっつける。
リフボードの上に立った私は波に乗る様に加速をつけてバランスを取ってホークスの所まで急ぐ。思ったよりもすぐに終わってしまった、と思いつつも成功したことにほっと息をつく。だってワンミスでこれヴィラン殺してたかもしれないし、逃げられてたかもしれない。ホークスに余計な面倒ごとをかけないでよかった~~~!そういえば、なんでホークスは私にこんな重要な役回りを任したのだろうか?おかしくない?狙撃できるって聞かれたからできるって言ったけど流石に信用しすぎなような……?
スコココン、と剛翼の中でもひときわ大きな風切り羽根がヴィラン8人の首元を叩いて意識を奪う。あ、完全に確信した。これホークス一人で十分だったやつだ、経験を積ませるために尻拭いも含めてやらせてもらったって感じだこれ。それをここまで私に気取られなかったホークス、すごい。スマート、カッコいい、そしてイケメン。なるほどこれは人気になるわけだね。
「いやー、完璧だね。常闇くんが褒めちぎってただけはあるよ。同時に13の銃で別箇所を狙撃するとはね、正直どこかでミスすると思って身構えてたんだけど、全然心配いらなかったわ」
「すいません、わざわざ譲ってもらって。ホークス一人で十分だったでしょう?」
「否定はしないけど、君のおかげで物凄く楽だった。それにそもそもの趣旨がチームアップでの連携を磨くための任務だしね。それにしても相性良いな俺たち、卒業したらウチの事務所来る?」
「あはは、冗談がお上手ですね」
「いやこれ割とマジ。俺についてこれて、滅茶苦茶万能で空飛べて?おまけに1キロ先の動く目標に対して遠距離攻撃ができる。誘わない理由ないよ?」
ホークスの顔、というかサングラス越しの目は物凄く真剣だった。え、これもしかして本気のリクルーティング?うわ、すっっっごく嬉しい!だって、ナンバー2のヒーローに認めてもらえたんだよ!?そりゃ嬉しいよ!ホークスの事務所かあ……忙しそうだよね。仕事がすごく早そう、速すぎる男だけに。
それにしても最近はいろんなところからリクルーティングのお誘いが来るなあ。私はまだ高校1年生だよ?例えばI・アイランドの研究機関とかサポートアイテム開発会社とか、最近だと携帯に直接エンデヴァーから将来の就職先について聞かれて事務所に来いとまで言われた。向かいの席に轟くんがいたんだけど、その話が出た途端無言で私の携帯を奪ってそのままブチッと切っちゃったんだけど。「焦凍おおおおお!!!」というエンデヴァーの叫びが途中で切れて私は凄く気まずかった。
えへへ、こんな人気になるだなんて中学校時代の私は考えもつかなかったよ。最近は入学時と比べて度胸も付いてきた気がするし、期待されるなら期待された分頑張りたくなっちゃう。ありがとうございます、とホークスに頭を下げる、彼はからからと笑って口を開く。
「よーしミッション終了!腹減ったっしょー?奢るからメシ行く?」
「いいんですか!?わー、こっちの料理どんなのがあるのか楽しみですー!」
これにてミッションは終了、というホークスがご飯に誘ってくれた。このまま離島に降りて、警察にヴィランを引き渡したのちご飯をご馳走してくれるのだそうだ。やったー!ご飯!食は私の大好物なので是非とも!とうきうき気分で行きましょう、とボードを操ろうと体重を傾けた瞬間に、私のレーダーが超々高速でこちらに迫る物体を捕らえた。言葉じゃもう間に合わないぐらい接近してる!?このっ!
「ホークス!」
「なっ!?」
咄嗟にボードからバーニアで飛び出し、剛翼を分散してるせいで飛行能力が低下したホークスを突き飛ばす。彼を狙っていた超高速の円錐型の何かは彼のいた場所をすり抜け、代わりに私の右肩に着弾して根元から私の手をもぎ取っていった。バチバチ、と私の肩からショートした電気と油圧のオイルが飛び散る。
「ヴうぅぅぅぅ……」
「脳無か……!エクスマキナ!腕は平気か!?」
「……冗談、きついよ」
ホークスの心配の声に私は返す余裕がない。こちらを唸りながら睨む見慣れた脳みそむき出し真っ黒の造形の脳無……違うところがあるとすれば、目が真っ赤で、デジタル表示のようなレティクルがあり、右手が巨大な機械に覆われた歪な銃の形をしていて……それで、背中から生やした機械のロケットで空を飛んでいる。まるで、制御に失敗したような機械と生き物の混ざりもののような脳無が、そこにいたからだ。私の個性が、そこにあったからだ。
私の平坦な声が耳を叩く。目の前のソレが、どうしても受け入れられなかった。
出会っちまった...!
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ