個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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那歩島編
112話


「雄英スペシャル焼きそば一つ!」

 

「こっちはお好み焼き!」

 

「バニラアイス~~!」

 

「はいはいただいま~~~!」

 

「楪さんフルスロットル……」

 

「デクくん!ほら早くお会計!」

 

 季節は冬なのに常夏の天気、青い海、広い空に雲一つなく照り付ける太陽。そんな中私は……ヒーロースーツで海の家を経営しています!違うんです、理由があるんです。けして、けしてヒーロー志望から料理人志望に進路を変えたわけじゃないんです。確かに私はお料理は好きだし、食べてくれる人の笑顔を見るのはもっと好きだけどね?それはそれとして、別にお店を経営するほどのめりこんではいないのです。

 

「おかあさん、はい」

 

「お、ありがとエリちゃん。あとで一緒に泳ぎに行こうね~」

 

「うん、ハロとまってる」

 

『マッテル!マッテル!』

 

 ついつい、と私の鋼鉄の足をこんこんとノックするエリちゃんから瓶のコーラを受け取る。白いワンピースの下に、黄色の水着を着たエリちゃんは実にかわゆい。こんな熱いところにきて熱中症にならないか心配だったけど白ハロについてるエアコン機能で冷風を浴びているからか熱気籠る厨房にいても問題なさそう。おとなしくちょこんと私が作った椅子に座って私が料理する姿をわくわく顔で見るエリちゃんは、ものすごくかわいい。かわいい!

 

 よし、と私はビキィッ!と瓶の口をかみ砕いてコーラを開けて、ガラスを飲み下してからコーラをぐいっと一気に飲み干す。うーん!糖分とカフェイン、エナジードリンクに類似する成分で元気いっぱい!残りの瓶もバリボリと食べちゃってから改めてごうごうと業務用の超火力がステキな鉄板たちの前に立って、エプロンをぎゅっと締める。ソースがちょっとついてるのがご愛敬だけど。

 

「楪さんごめん、迷子が出たみたいだから僕も探しに行ってくるよ」

 

「はいはい~。それじゃ、がんばろうかえーくん」

 

「おうさ!いいいらっしゃいませえええええ!!!」

 

 ここは那歩島、日本のはるか南にある南国の島。沖縄よりも緯度がずっと赤道に近いからか、日本特有の四季があまり感じられない島だ。なにせ、もう12月なのに海水浴ができるくらいには夏真っ盛りって感じ。長袖なんかいらなかったねー。うん、私たち雄英高校ヒーロー科1-A組はいま、国家プロジェクトの一つとして実際にヒーロー活動をしております!一昨日到着したんだけどねえ。

 

 始まりは、チームアップミッションで私が脳無に遭遇して少ししたころ。えーくんに思いっきり泣きすがったからか、私も心の整理がついた。とりあえず自爆の解除手段を研究して、次に私の個性を搭載した脳無が出てきたら自爆させずに拘束してひっとらえてやるんだから!と私が意気込みも新たに訓練に励もうとした矢先に相澤先生から伝えられたのがこれだった。

 

 チームアップミッションの開始もそこそこに伝えられたのはプロヒーロー不在地区における実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト。ものすごく長いからわかりやすく言うと、老年で引退するプロヒーローがいるんだけど、そのプロヒーローの後任が来るまでの間、私たち一応セミプロたちが代わりにヒーロー活動しなさい、ということらしい。そのヒーローがいなくなる不在地区っていうのが、ギリギリ日本、この那歩島ってわけ。

 

 で、なんで海の家をやってるかって話なんだけど、ここをやってるおじいさんが腰をいわしちゃったみたいで……明日は息子さんが来てくれるみたいなんだけど、今日は誰も都合がつかない。そして私、えーくん、デクくんが代打としてやっているってわけさっ!呼び込み&接客の二人に、お料理ならどんとお任せあれなわたし。そして癒しのエリちゃん!完璧な布陣だ……!一技術者としては完璧って使いたくないけど。

 

 なんでエリちゃんがいるのか?という疑問もあるかもしれないけどそれは単純、この島ものすごく平和なの。具体的には引退しちゃうおじいちゃんヒーロー一人で何とかなっちゃうくらい、ここ最近のヴィラン発生率が上がった社会でも不思議なほど平和な島。だからセミプロとはいえ学生の私たちが活動できる地域に選ばれたんだろうけど。

 

 チームアップミッションだと、任務、つまり大体対ヴィランになるのでエリちゃんを連れて行くのは論外だ。だけど、この島は違う。というか1か月もエリちゃんと離れるのはちょっとまずいのだ。まだちょっと不安定な部分があるから。もちろん回復基調だけど、それが今一番大事な時期。だから、長期にわたって私が離れるわけにはいかない。まあ、自分の義娘すら守れないヒーローなぞ私のヒーロー像ではないので鍛えた科学の粋を尽くす所存です。今ならビームを漏れなく100発同時発射でお贈りしますとも。メリクリウスに続く新兵器も開発できたしねー。

 

 平和な島だからこそ、ヒーローの仕事はあまりない。だけど、ヒーローの本質はヴィランを打倒することではなく誰かを助ける余計なおせっかいのこと。だから私たちは、この島においてはヒーローであると同時にちょっと便利な人たちでもあるの。けど、私たち1-A!元気に!楽しく!責任をもって!ヒーロー活動をやっております!私は今、海の家の女将だけど!

 

 

 

 

「クソが!ヴィランでねえじゃねえか!」

 

「いいことでは?」

 

「爆発さん太郎はストレスが溜まってるんだよ」

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?ンダッ!?」

 

「爆豪くんエリちゃんが怖がるから目の吊り上がりおさえて」

 

「んの……!メカ女ァ……」

 

「久々呼ばれたなあ、それ。それ以上やるなら晩御飯抜くよ」

 

「グヌゥ……!」

 

 ふふふ、と笑いながら戦闘が必要な場面がなかったせいで出場をオール拒否した爆豪くんが目を吊り上がらせて手をパチパチさせている。あまりの暴虐顔ぶりにエリちゃんがそっと私の胸に顔をうずめて爆豪くんを怖がったので指先から空気砲を放った私は爆豪くんにちょっとだけ注意。ふへへ、残念ながら私は那歩島に来てから朝昼晩みんなのご飯とお夜食を作っているからね。この罰が成り立つのだ。

 

 まあ、私が作るのはいいよ。お料理苦手な人いるし、時間ある人は手伝ってくれるし。この旅館借り切って仮の事務所にしてるから従業員さんもいないしね。お掃除とかもぜーんぶ私たちの仕事。そしてプロヒーローも、先生も誰もいない。責任はすべて私たちが負わないといけない。それがむしろいい緊張感を生み出して場を引き締めてくれる。

 

「あ、上鳴くんバッテリーの件どうだった?」

 

「おお、問題なかったぞ!つーか、お前がいきゃ全部スパっと解決だろ」

 

「それは、そうなんだけど……1か月でいなくなるから作ったものを置いて行って責任が持てなくて……既製品か充電対応のほうが丸いんだよ」

 

「委員長~細かい仕事受けすぎじゃね?」

 

「そうは言うが、困りごとに優先順位はあるかもしれないが、大きいも小さいもないだろう。オールマイト先生が言っていた、これもヒーローの仕事だと」

 

 時刻はもう夕方、日の沈みが遅いからまだ茜色だけど、もう夜と言ってもいい時間帯だ。そろそろ夜ご飯の準備しないとね。実はさっき、この島の村長さんや魚河岸の偉い人、それに漁師さんやビーチのお客さんまで来ていろんな差し入れを持ってきてくれた。大きな真鯛が何匹も、そしてなんとマグロが丸ごと!小ぶりだけどね。たくさんの野菜、フルーツ。どれもこれもおいしそう!腕が鳴るなあ!

 

「よし、ご飯作るよ!暇な人手伝って!」

 

「では、わたくしが」

 

「お、俺もやるぜ~」

 

「俺も暇だからよォ。なんか一品作らせてくれ」

 

「希械ちゃんの料理が毎日食べられるなんて天国だ~~!」

 

「別に三奈ちゃんは毎日食べてるじゃない」

 

「ケロ、私もやるわ」

 

 お手伝いに名乗り出てくれたのは、百ちゃんに、瀬呂くん、砂藤くん、そして梅雨ちゃん。三奈ちゃんは昨日やったから賑やかしかな?しかしいいねえ、いいねえ。腕が鳴るねえ。私の腕は鳴っても機械音だけど、久しぶりのメカジョーク!さてさて、今日のメニューは~~~、こちらっ!マグロと鯛の海鮮丼、お野菜の天ぷらに、マグロ出汁のお味噌汁。それとデザートに砂藤くん製フルーツポンチかな?サクサクっと進めていこう。

 

 料理が趣味の私と砂藤くんは毎日ご飯に出ずっぱりだけどお手伝いはローテーションだ。まず私がサクッとマグロを捌いて、赤身、中トロ、大トロとサクにしちゃう。骨についた中落ちもきれーにこそぎ落として赤身と中トロ少しと混ぜて叩きにしちゃう。それを瀬呂くんが作ってくれた酢飯の上に乗せる。これを量産。もちろんみんな食べ盛りだから大盛り!ささっとマグロ出汁を取って、お味噌溶いてっと。その間に砂藤くんが真鯛を捌いてくれた!

 

 梅雨ちゃんは手慣れた手つきで天ぷらを量産中。秘密よ、とみんなで味見したらすごくおいしかった。揚げたてっていうのもあるけど、サクサクの衣に天つゆが絡んで何とも言えない。これは……あれだね!?と私は砂藤くんとアイコンタクト、明日の分にしようと思ってた真鯛をさらに出して、天ぷらにしちゃうことにした。そんな感じでご飯が完成!ずらーーっと並べてっと。

 

「ご飯できたよ~~!」

 

「待ってました!」

 

「うわっ!海鮮丼だ~~!」

 

「おいしそ~~!」

 

 みんな感想もそこそこにいただきますをして、一口食べたらもう夢中。にやりと笑う私と砂藤くんはグッドサインを立てあい、同じ厨房に立ったみんなもニッコリ笑顔。エリちゃんもほっぺにご飯粒がつくほど、夢中になってスプーンとお椀をひしっとつかんでいる。これは物がいいからここまでおいしいんだね。いやー、さすがは島だけあって魚介類が美味しいんだよ。代わりに畜産系のものはちょっとお高いんだけど。

 

「じゃ、梅雨ちゃん、三奈ちゃん。エリちゃんのことお願いね」

 

「ええ、お任せして頂戴。でも、いいのかしら?宿直までだなんて」

 

「そーだよー!希械ちゃん忙しいんだし、夜くらいゆっくり休んでもばちは当たらないってー!」

 

「んーん、忙しいのは私の事情。お仕事には関係ありません。ささ、特別扱いはいらないからゆっくり休んで。エリちゃん、お休み」

 

「うん、おかあさん。おやすみなさい……」

 

「明日は一緒に寝ようね」

 

 島のみんなは寝入っても、ヒーローは24時間体制。持ち回りで宿直をすることになっている。むしろ、悪いことは夜の闇に乗じて行われるからね。ほら、サー・ナイトアイも真に賢しいヴィランは闇に潜むって言ってたし。まあ、自慢じゃないけど私はおおよそ万能なので大概のトラブルがあっても何とかできますとも。ここ最近、そういう風に自信を持つことにした。エリちゃんが見る私が、入学前のえーくんのうしろに隠れているようなのじゃかっこ悪いから。

 

「お、爆豪も宿直かぁ?まあお前昼なんもしてねえもんな」

 

「ケッ!」

 

「あ、デクくん。練習前にちょっと」

 

「ペッ!?なななななにかな楪さん!?」

 

「緑谷ー、希械の距離にいい加減慣れろよ。目線合わすためにかがむと近距離になっちまうんだよ」

 

「そゆこと。はい、デク君。新型のガントレットだよ」

 

「ええっ!?もうできたの!?」

 

「出来立てほやほや!名づけてナノガントレット!ナノ技術を世界初!実践投入した私とメリッサさん、明ちゃんの新サポートアイテム!豪華でしょ~~」

 

 デク君を呼び止めて、目線を合わすために中腰でのぞき込むとばっちり近距離で目が合ったら彼はどばんっと後ろにバックステップした。ちょっと傷ついた、同じく宿直のえーくんがフォローを入れてくれるけどいい加減慣れてほしい。わたし、背が高いからみんなを基本見下ろしているんだけど、距離が遠いの。見上げてもらうのも首が痛くなるから私がかがむことにしてるんだけど、デクくんったらいつまでも慣れてくれない。

 

 デクくんは毎日ワンフォーオールの練習をしているし、たぶんこれからもするんだけどやっと完成した私たちの合作を渡してしまいましょう!世界初!超圧縮のその先、ナノテクノロジーを起用した意欲作、ナノガントレット!このガントレットのすごいところは、入学当初デクくんに作ってあげたチョバムガントレットをコンセプトとして踏襲し、壊れて中身を守る構造になっていることだ!

 

 壊れたらだめじゃん、ということなんだけど。そうじゃない。ナノガントレットは文字通りナノサイズの粒子が組みあがって作られるもので、壊れても、一瞬で再構成される!オーバーガントレットは1部位12発だったけど、これを使えばなんと1部位36発、手足含めて144発!それ以上は貯蔵するナノ粒子の関係上持たない。こればっかりは技術の進歩かデクくんの進歩待ち。

 

 ちなみにだけど、壊れるのは内圧、つまりワンフォーオールの高まりを感知した時なので、通常の殴る蹴るじゃ金属の固さを持ちつつ柔軟に動く、ガントレットというよりグローブに近い動きを実現した。デクくんに渡した赤い腕輪をキラキラとした目で見てくれるデクくん。これは技術者冥利に尽きるね~~!

 

「ア゛ァ゛!?」

 

「お、なんだ爆豪羨ましいのか!?」

 

「俺にも作れやぁ……!」

 

「やべえ、俺爆豪が素直なの初めて見た……」

 

「かっちゃん、実はこういうの好きなんだよ……」




 お久しぶりです。恥ずかしながら戻って参りました。ゆっくり待っていただけると嬉しいです。映画第二弾編です。

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