個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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113話

「あのクソガキィ……」

 

「もう、昨日のことなのにいつまで根に持ってるの?かっこわるいよ?」

 

「うるせえ!碌な注意もしねーで無罪放免が通るか!場合によっちゃ騒乱罪じゃ!」

 

「正論なのが逆に腹立つね~」

 

 ギリギリパチパチと歯ぎしりと小爆発の二重奏を奏でる爆豪くんに私は菜箸で炒めていた朝ごはんのカリカリベーコンを口の中に突っ込んだ。とりあえずこれでギリギリ歯ぎしりはやむでしょう。ほら爆豪くん、暇してたのは知ってるよ?だからこうやって朝ごはんづくりに君を引っ張ってきてるんだからキビキビ働く!ほら、激辛ピザトースト作ってあげるから!

 

 まあ昨日のことを考えると爆豪くんがこうなるのも無理ないような、そんな気がするなあ。昨日、宿直をしていた私たち4人、夜のとばりに包まれた那歩島で……ヴィラン出現の報があった。小さな男の子、活真くんだったかな?が知らせてくれたんだけど……教えてくれた場所に急行した私たちを出迎えたのは……巨大なカマキリのようなヴィラン、の幻影だった。そう、いたずらだったのだ。

 

 その犯人は小さな姉弟、名前を真幌ちゃんと活真くんというんだって。デクくんが昼間迷子になった活真くんを探した時に知り合ったんだそう。

 

 活真くんのお姉ちゃんである真幌ちゃんの個性で作られた幻のヴィランだったんだけど、まあ……キレるよね爆豪くんは、そりゃ。私はああいたずらかよかったーぐらいなんだけど、注意はしとこうと思ったら思ったよりキレた爆豪くんが怖かったのか真幌ちゃんが半泣きになってしまったので慌てて爆豪くんを私が拘束して引っ張って帰ってきたんだけど……

 

 真幌ちゃんと活真くんのフォローはデクくんとえーくんにお願いしちゃったから私たちより後に帰ってきた二人に聞いたらあんまり聞いてくれなくてそのまま逃げちゃったんだって。一応おうちに帰るのは尾行して確認したみたいだけど……うーん、ヒーローをおちょくって遊んでいるのかなあ?あんまりいいとは言えないかも。前任の時はそうじゃなかったのかなあ?うーん、どうしたもんか。

 

「もごっ、もがっ……楪てめぇ……!」

 

「歯ぎしりやめたらやめてあげる」

 

「クソがっ!」

 

 朝ごはんのおかずを歯ぎしりするたびに爆豪くんの口の中に突っ込む私にキレるいつも通りの爆豪くん。まあね、爆豪くんが言わんとすることもわかるよ。個性の無断使用、虚偽の通報……子供のいたずらで済んでるかもしれないけど場合によったら本当に逮捕される。ヴィラン出現の虚偽通報は特に悪質とされるので量刑が別になってるくらいには社会問題だったり。まあ、次やったら親御さんに連絡を入れるくらいはしないとだめかもね。

 

 目玉焼き、ウィンナー、浅漬け、鮭の塩焼きと大方のおかずを爆豪くんに突っ込んだあたりで彼は観念したのか歯ぎしりをやめた。爆豪くんは最近私が料理してると勝手につまんでいったりするんだよね。お返しなのか爆豪くんが作った料理がおいていかれたりするんだけど。素直に食べたいって言えないあたり爆豪くんもかわいいところがあるねえ。

 

 というか、爆豪くん普通に料理上手なのなんだか笑っちゃう。キャラに合ってないって言ったらいいのかな?まあ、完璧主義的な側面がある彼のことだからあんまり言いすぎるといつかのようにアフロにされちゃうから黙ってよーっと。土鍋で炊き立てつやつやご飯をお茶碗に少しよそって、ちょっとだけしかない鮭のハラス、刻みのり、ワサビ、そして昆布茶を入れてお湯を注げば即席のお茶漬けだ。秘密だよ、と爆豪くんに私が口の前で指をしー、としながら言うと彼は無言で茶碗を手に取るのだった。

 

 

 

 朝ごはんを終えても、お昼ご飯を過ぎても、そして夕方になっても私たちは大忙し。私なんて百ちゃんと同じ感じで万能に近いから指名で引っ張りだこになっちゃう。というか、ただ話したいだけのおじいちゃんおばあちゃんの割合結構高いな?次点で多いのは観光客のトラブル。旅行鞄をなくしたりとか、お財布落とした、宿の予約を忘れた何とかしてとか。ンな無茶な。

 

 那歩島は島民1000人ほどの小さな島だけど、漁と農業よりも、観光産業で生計を立てている島だ。ふひー、最近島の中で私のことを子育てヒーローだっていう噂が駆け抜けてるんだけど流したの誰?間違ってないんだけど、危ない仕事じゃなかったら大体エリちゃんと一緒にいるからね!話したいおじいちゃんおばあちゃんたちもエリちゃん目当てなところがあるみたい。なにせ、この島子供あんまりいないからねえ。学校も、全校生徒20人くらいだっけ?私たちとおんなじくらいだね。

 

「よし、エリちゃんいこっか、デクくんも」

 

「うん。えっと……」

 

「新島さんの畑のお手伝い、だね。収穫が大変なんだって」

 

「コンバイン楪ちゃんの出番だ!なーんてね」

 

 エリちゃんを抱っこして、今日も今日とてヒーロー活動。本日最後私に入っている予約は畑の収穫のお手伝い。うーん、これじゃほんとに何でも屋さんだなあ、ヒーロー活動と言えばそうなんだけど、そうじゃないような。まあ、困っているなら助けましょう!そんなわけで一緒なのはデクくん!エリちゃんに麦わら帽子をぽふっと乗せて4輪のバギーをガチャガチャと作り出し、ブロロロロオオン!とエンジンを……あら?

 

「あ、活真くん。どうしたの?」

 

「おー、昨日ぶりだね」

 

「……だれ?」

 

「昨日、ちょっとね。エリちゃんと同じくらいだから仲良くしてくれると嬉しいね」

 

 デクくんが私より先に気づいて大きな帽子をかぶった小さな人影に声をかける。慌てて塀の向こう側に隠れてしまったけど、すぐにばれてしまってバツが悪そうにちょこんと顔を出す。そのあどけない顔はやっぱり、昨日のいたずらの件で知り合った活真くんだった。おずおずと自信なさげな感じでこちらに歩いてきた活真くんをじっと見るエリちゃん、新しくお友達ができるといいね?

 

「あの、昨日は……ごめんなさい。その……」

 

「偉いね~。謝りに来てくれたんだ?」

 

「大丈夫だよ、怒ってないから」

 

「もう二人のヒーローにもごめんなさいって言ってくれる?」

 

「大丈夫だよ、もう聞いてる」

 

 私がベランダを指さすと、活真くんは上を見上げる。そこにはベランダの欄干に背を預ける爆豪くんとアイスバーを片手ににかっと笑ってこちらに手を振るえーくんの姿が。活真くんはそれを見てばっっと頭を下げる。爆豪くんはノーリアクションだけどえーくんは偉いぜ!のグッドサイン。そもそもキレてたのは爆豪くんだけだし、その爆豪くんも道義的な面での怒りが大きいので本気で怒ってもいないしね。

 

「昨日、ヴィランが出たって言ったらヒーローは怖がって助けに来ないってお姉ちゃんが……お姉ちゃん、ヒーロー嫌いだから。だから、僕……」

 

「そっか、僕らが助けに来るって信じてくれたんだね。だから、呼びに来てくれたんだ」

 

「おかあさん、絶対助けてくれるもん。デクさんも、えーじろーさんも、ばくごーさんも」

 

「もちろん。誰のSOSだって見放さないよ。エリちゃんも、活真くんも、真幌ちゃんも。だから、何かあったら絶対に来てね?話したいとか、遊んでほしいとかでも」

 

 エリちゃんの嬉しい信頼に私は笑顔になってエリちゃんをぎゅっと抱きしめる。エリちゃん、みんなのことが本当に大好きなんだね。日頃いろいろ言ってる爆豪くんのことも疑ってない。爆豪くんは上でボソッと当然だわってつぶやいているけど、私には聞こえてるぞ~?ちょっとだけあれだね、照れちゃってるね。良かったね、ちゃんとエリちゃんが爆豪くんのことを見てて。

 

「そのバッジ、忍者ヒーローエッジショットのだね。もしかして活真くんもヒーローを目指してるの?」

 

「う、うん!そう!だけど……僕の個性、ヒーロー向きじゃないし……それにお姉ちゃんも危ないからやめてって」

 

「確かにそうかもね。ヒーローは危ないよ。私たちは、それでもなりたいって思ってるけどね。そう……活真くんがなりたいヒーローってなぁに?」

 

「悪いヴィランをやっつける、強いヒーロー……」

 

「いいね、ちなみに私はみんなのことを守れるヒーロー。デクくんは?」

 

「僕は、困ってる人を救けるヒーローになりたいんだ」

 

 デクくんも察したみたいだけど、真幌ちゃんが何となくヒーローに対してあたりが強い理由がわかったような気がする。朝、来てくれた人に二人の事情を聴いたんだけど、二人はこんなに小さいのに二人暮らし、お父さんは日本の本島で出稼ぎに行っているし、お母さんは死別しちゃってるのだとか。近所の人も見守ってるみたいだけど……。

 

 つまり、真幌ちゃんはヒーローそのものが嫌いなんじゃなくて、危ないヒーローになろうとしている活真くんを止めたいんだ。んー、気持ちはわかるかなあ。と言っても私は両親に心配される側だけど。雄英高校入学してから大怪我ばっかりしてるからね、脳無にやられたりとか、ステインにやられたりとか、荼毘に燃やされたりとか、オールフォーワンに目玉抜かれて全身ズタボロにされたりとか。口が裂けても安全なんて言えないや。

 

「活真くんがなりたい、ヴィランに勝って人を救うヒーローも、僕の人を救うためにヴィランに勝つヒーローも、根っこは同じ。最高のヒーローだよね」

 

「活真くんがヒーローになりたいっていうなら、応援しちゃうよ。頑張ろうね、お互い。なりたいものになれますように」

 

「うんっ!」

 

「でも、できるだけ家族には心配かけない感じで、ね?」

 

 デクくんがしゃがみ込んで目線を合わせて、活真くんとぎゅっと握手。私は活真くんのエッジショットバッジにちょっとばかし細工をする。きれいなメタリックバッジに変身したそれを嬉しそうに見てくれる活真くん。うん、エリちゃんと一緒に暮らしていてわかるんだけど、小さい年下の子って見てて元気をもらえるね。なんでだろうなあ、守ってあげたくなるし、応援したくなるし。

 

 おどおどとした様子はどこへやら、活真くんは元気に手を振って小さな手で麦わら帽子を押さえながら漁港のほうへ駆けていった。ふふふ、いいねいいね、しっかり真幌ちゃんと話し合えるといいね。個性が戦闘に適しているかどうかは確かに大事だけれど、それ以上に大事なのはヒーローになりたいっていう固い意志だよ。もしも、後輩になれるなら応援しちゃうよ、私も頑張らなくちゃ。

 

「さっ、元気ももらったし行こうかデクくん!サトウキビを根こそぎ刈り取りに行くよ!」

 

「あ、安全運転でね?」

 

「そうだね、安全に……空飛んでいこうか!」

 

「え?」

 

「ハロ!エリちゃんを守って!」

 

 私が言うや否やエンジンをふかしていたバギーのタイヤが横向きに倒れ、そこからジェット気流を噴射し浮く。変形機能でチャイルドシートになった白ハロが座席にエリちゃんを固定し、予想外の展開に固まったデクくんを助手席に放り込むと私は一気にアクセルをふかして、目的のサトウキビ畑に向かって道路を無視し、空を飛んで発進するのだった。

 

 

 

 

 

 

「エリちゃん、美味しい?」

 

「甘くて、おいしい」

 

「け、結局楪さんがほとんどやっちゃったのに僕ももらってよかったのかな……?」

 

「もらえるものはもらっておくのがいいよ~」

 

「うん、僕は報告をしてくるよ。楪さんはこれからフリーだよね?」

 

「そうだね、エリちゃんと一緒に遊んでくるよ」

 

 ちろちろとサトウキビの収穫を手伝ってお礼にともらったサトウキビを両手で持って舐めるエリちゃんにきゅんきゅんする私。たしかに、私が両足を大型コンバインに変えてサトウキビを採りまくったのは事実だけどデクくんも結構頑張ったじゃん?たまったサトウキビをメカもびっくりな馬力であっちへこっちへ運んだりね。新島さんも大満足だったみたい。ふふん、あなたの隣にいつでも便利!メカヒーロー・エクスマキナをよろしくお願いしまーすってね。

 

 宿直したしエリちゃんのこともある私はこれから休憩。せっかくだからエリちゃんと一緒にこの島を回ろうと考えてるの。せっかくデクくんからも行ってきなよって言ってもらってるから彼とはここでお別れ。ふりふりと手を振るエリちゃんと大きく手を振るデクくん。私もデクくんにひらりと手を振ってから、えーくんがいるであろう漁港に向かって歩を進める。

 

「エリちゃんは、今日食べたいものある?」

 

「ぱいなっぷる……?」

 

「おお、いいねパイナップル。ゼリーにしようか!」

 

「ぜりー……」

 

 口の端からよだれが垂れそうなエリちゃんを微笑ましく見守っていると、突然……電波が切れた。不審に思って個性で探ってみると……どうやら島全体から電波がなくなっている。これはつまり……基地局に何かがあったの?まずいな、ここの基地局は衛星やらネットやらなんやら、すべての通信設備の大本だ。混乱が発生するってレベルじゃないよ。なにか……きな臭いにおいがする。




 更新更新。さて、急転直下で始まります。とりあえずインターンまで構想は済んでるのでそこまでは走り抜けたいですね。ではまた次回

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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