「エクスマキナより1-A全員へ、基地局が何らかの不具合により停止しています。これより私が中継地として機能するので各自情報共有を」
『こちらフロッピー!海岸よりヴィランが出現!至急応援を求むわ!』
『希械!気づいてくれたか!商店街にもヴィランがいる!救助の手が足りねえ!委員長、頼む!』
『了解した!これよりヴィラン撃退と救助を並行して行う!』
「クリエティ、いるならみんなにトランシーバーを。このまま中継器になってたら私動けないから。エリちゃんの安全を確保してから向かいます」
『わかりましたわ!』
この島全域なら何とか私で中継器の代わりにはなれる。が、いろんな電波が私を通じて混線していくので脳みそがとても疲れる。長くは持たない。中継器直せるかなあ?跡形もなかったらいくら私でもどうしようもないよ?新しく基地局作るのだって難しいし。国が使用してる暗号と物理キーが解けなきゃ本島につなげないから、この島ではどうにもならない。衛星通信も同様。
そんなことを考えつつ事態の把握に努めようと全員にグループ通信の電話を個性でかけると、帰ってきたのはまさかのヴィラン出現の報だった。一気に私の顔がシリアスになるのを見たエリちゃんが不安げな顔をしている。正直のっぴきならない事態だ。通報が機能していない、大本の基地局を壊したのも本土に連絡をさせないためだろう。本土からここまで飛行機で軽く3時間以上はかかるし……。なんだったら船ならもっとだ。
「エリちゃん、白ハロと一緒に待っててくれる?私、ヴィランを倒してくるから」
「……うん。お母さん、戻ってきてね?」
「もっちろん!エリちゃんを一人になんてしないから!白ハロ!ギガンテスを起動。エリちゃんを最優先に防御行動、および事務所の防衛を行いなさい」
『ギガンテス起動、ミッション受諾』
いつもの返事ではなく戦闘用に切り替わった白ハロが超圧縮技術で封入してあったナノマテリアルを開放し、改良型のギガンテスが組みあがる。4mを超す巨躯になったギガンテスの胸がぱかっと開いてふかふかのクッションを敷き詰めたエリちゃん専用スペースを晒す。エリちゃんに約束、と小指を絡めてからもう一度抱きしめて、そのスペースにエリちゃんを入れる。そうして白ハロが地面を跳ねてエリちゃんの膝に収まり、ギガンテスの胸が閉じる。
百ちゃんがトランシーバーを配ってくれたみたいなので中継機能をカット。バイザー型のカメラを一瞬光らせたギガンテスがホバークラフトで浮いて滑るように事務所の方に向かっていくのを確認して、私はブーストふかして大ジャンプ。上空100mから島の全域で何が起こっているかを確認する。戦闘位置は……海岸、すでに轟くんや飯田くんが現着して異形型らしき男と戦っている。
そしてもう一つ、商店街側……赤い包帯を操る男がえーくんや、上鳴くん、峰田くん青山くんと戦っている。赤い包帯が巻き付いても持ち前のパワーで強引にちぎってまっすぐ向かうえーくんにミイラ男は後ろに下がりながら距離を取り、車やら電柱やらをえーくんにぶつけだすけど、えーくんの硬化はもうそんなちゃちなものじゃ破れない。車は真っ二つ、電柱はつまようじのようにへし折れてもえーくんは無傷。
そして、えーくんが腹パンを決めると同時に後ろからやってきた爆豪くんが挟み込む形で爆破を決める。爆豪くんが商店街に行ったのならえーくんもいるし私が海岸のほう……いや、ちがう。足りない、人数が。集まってくるクラスメイト達のうち一人、デクくんだけ姿が見えない。何かに気づいた?連絡網の外にいるんだね?いくらデクくんと言えども単独行動は危ない、私が合流しなきゃ。
「デクくん、デクくん、聞こえる?海岸と商店街にヴィランが出ているの。今どこ?他にいるかもしれないし、単独行動は危険だよ」
『楪さん、今交戦中なんだ!活真くんと真幌ちゃんが襲われてる!このっ!』
「すぐ行く!A組全員へ!デクくんが単独で戦闘中!」
ナノガントレットの通信機能を一部ハックしてデクくんに呼びかけると若干の戦闘音とともに慌てた様子の声が返ってきた。同時にナノガントレットの反応があるほうに目を向けた私にも戦闘をしているのが見て取れた。家が……活真くんと真幌ちゃんの家が崩れている。すぐに私は足のブーストをふかして移動する。住宅密集地、しかも森の中ときたらビーム兵器は使えない。デクくんが牽制で空気砲を発射しているのが見える。
「お待たせっ!」
「楪さんっ!」
「増えた、か」
「希械、おねえちゃん……」
デクくんが繰り出したスマッシュに合わせるように、加速して加減抜きで拳をふるった。だけど、中空で私とデクくんの攻撃は止まる。空間障壁!?いや、違う!大気を圧縮して壁にしてるんだ!私とデクくんの攻撃をこうもあっさりと受け止めるなんて!そこで初めて私はヴィランと目を合わせる。無造作に伸ばした白い髪、ジャケットの下には紫色にうごめく機械、背中には薬品が入ったガラス瓶が背中に突き刺さるように立っている。
「邪魔だ」
「デクくん庇って!ビームシールド
「うんっ!」
ヴィランの5本の指先から紫色の光が収束し、放たれる。間違いない、私のそれとは仕組みが違うけどビームを発射したんだ。デクくんに活真くんと真幌ちゃん二人をかばってもらうように頼んでから私は自分の大きな体を利用して前に出る。右手の甲に六角形のデバイスを作り出した私はそれを前に掲げる。ビームにはビーム、そこから放出されたビームの盾が放たれたビームを弾いて防御する。その隙に作りだした左手の短距離誘導ミサイルを発射!
「デクくん!いまっ!」
「フルカウル30%!デトロイト、スマッシュッ!」
「パワーが、なぁっ!?」
ミサイルの防御にまた空気の壁を張った相手、だけどそのおかげで紫色のビームは途切れた。デクくんが今まで使っていた15%から一気に倍にパワーを跳ね上げて私の後ろから飛び出す。加速とパワーを余すところなく注ぎ込んだワンフォーオールのパンチは、相手が張った空気の壁を押してヴィランを後ろに吹き飛ばした。通じ、てないね!無傷だ!硬化したナノガントレットの硬さは私が合成した硬質合金と同等、それなのに亀裂すら入ってない。
「二人とも、今すぐ走って逃げて!」
「わ、わかったわ!」
「その力、その個性……奪う価値がある!」
「奪うだって……!?」
「それは……っ!?」
私とデクくんは、おそらく違う意味で驚いている。ワンフォーオールが効かなかった?違う、私の作ったサポートアイテムより硬い壁?違う。デクくんは、きっと「個性を奪う」この言葉に驚いている。オールフォーワンのように個性を奪って、そして使役する個性なんだ。さっきから空気の壁と爪をビームに変換して発射する個性と関連性のないものが続いている以上、信憑性は高い。
だけど、私はもっと違う方に驚いていた。ジャケットの下にうごめいている機械が鳴動して、まるで機械でできた動物のあごのようなものが背中から現れたのだ。それは……それはっ……私の個性だ!私から奪われた、あの時空で戦った脳無が持っていた、不完全な私の個性!こいつ、ヴィラン連合……?いや、なんでもいい。なんでもいいけど……
「聞かなきゃならないことが増えたよ」
「……楪さん?」
「……そうか、この個性の元の持ち主はお前か。なら、奪わなければなるまい。生身になじまぬ、劣化したこれを完成品にするために!」
「できるものならね。デクくん、詳しいことはあと。今はこいつを止めよう。狙われてるのは、あの子たちのどっちかだよ」
「……わかった!」
絶対に、捕まえなければならない。それだけは確かだ、だけど、個性を奪えるという性質は厄介だ、距離を取って弾幕戦……ビーム兵器が使えないのが痛い。住宅地が近すぎる、流れ弾が二次災害を引き起こしかねない。いや、組み立てろ、作り出せ。オールレンジ兵器はこんな入り組んだ森の中じゃ空間をうまく使えないただの的。必要なのはストッピングパワー、威力、そして範囲……合致するのは、これだ。
「ビームショットライフル、
「ワンフォーオール、フルカウル……15%シュートスタイル!」
「最後に聞く、どけ」
「「断る!」」
相手も私たちも同時に動く、機械でできた獣は分裂するように顔を増やし私たちに襲い掛かってくる。デクくんは地面を蹴り、持ち前のフットワークを前面に押し出すシュートスタイルをもって相手を翻弄しにかかる。私はうって変わってその場から動かずに構えたビームショットライフルを乱射する。収束率を落として射程を極端に短くする代わりに、面攻撃と威力を両立させた急造武装、けど十分!
ライオンの顔のような機械獣たちをビームが貫いていく。デクくんに当てないように暴れる銃口を操りながら、弾幕を張り続ける。相手は複数の個性を備えてはいても、慣れてはいないようだ。同時に扱えるのは空気の壁とビーム、もしくは私の個性の二つ。それ以上、例えば3つ同時にというのは今のところ出していない。それでも連射力が弱い武器だから、接近を許してしまい、銃で殴りつけて対処。だけどこっちも壊れた!
「死ねぇ!」
「かっちゃん!」
「爆豪くん!?他のヴィランは!?」
「一匹軽く捻ったァ!てめえらは眺めてろ!俺がこいつを殺す!」
相変わらずヒーローとは思えない口の悪さだけど、一人制圧を終了したというのは大きい!あとは多分、海岸だけ……!片手のサポートアイテムを喪失したらしい爆豪くんはそれでも確かに闘志みなぎる背中でヴィランに相対している。私は手短に彼に複数個性を使う、オールフォーワンと同じ個性を持っていることを伝える。それだけで彼は脅威度を悟ってくれた。
「……こうか?」
「っ!爆豪くん、デクくん!ああっ!?」
「楪さん!」
「……ッちぃ!」
やられた、相手は……脳無じゃない!私の個性の使い方を、私を通じて学習した!新たに表れた機械獣の口から、またも紫色のビームが発射される。40を超える熱線がいっぺんに爆豪くんに集中する。爆豪くんを引っ張って私の後ろに放り投げ、ビームシールドで受ける。だけど、キャパオーバーだ、貫通したそれが私の脇腹を貫く。
間髪入れずに今度は空気の壁の個性を応用したらしい衝撃波が飛んでくる。痛みに一瞬硬直した隙をつかれて吹き飛ばされる。なんて威力、ワンフォーオールみたいだ……何本も木をへし折って吹っ飛ばされた私は即座に飛び起き、すぐに戦線に戻る。トランシーバーの会話を聞くに海岸の方もかなり苦戦してるみたいだ。こっちに人は割けない!
「うわあああっ!?」
「がっ……!?」
「二人ともっ!」
また、別の個性!?今度は青い鉱石と骨を合わせたような竜がヴィランの背中に現れて、爆豪くんを咥え込んで地面にクレーターを作る勢いで衝突した!まずいっ!デクくんも吹き飛ばされた!私は、爆豪くんを救出するためにビームサーベルを抜いて竜を真っ二つに両断する。その隙にデクくんが戻ってきて……50%だ!やばいっ!
「ワイオミングすまっ!?」
「鬱陶しい!」
突如、雷が落ちた。5つ目の個性……っ!しまった、私に高電圧の雷は相性が悪い!対策を施していても結局は私の手は金属で機械!絶縁体で作ってれば別だったかもしれないけど、今は戦闘用の合金の手足だ!二人に超高電圧である雷なんて撃たれたら死んでしまうのでとっさに電磁誘導ですべて私に落とした。脳天が真っ白になるほどの痛みと衝撃、手足のあちこちが中身から爆発してボロボロになる……う、うごけ……ないっ……!どんなに頑張っても、5分、いや3分は……!
「ネビルレーザーっ☆!」
「待たせた、希械っ!お前、俺の幼馴染をこんなにしやがって!」
「電気は俺の十八番だろうが、捕まえてやる!」
「みん、な……!」
青いレーザーが相手に襲い掛かる。かなり無理して腹痛を堪えてる様子の青山君と硬化したえーくんが前に出てくれる。上鳴くんが私に過剰に帯電している電気を自分に移してくれたおかげで私は何とか手足の制御を取り戻した。急速に手足を直しつつ、立ち上がる。後ろでは障子くんと口田くんが真幌ちゃんと活真くんを確保した。
「ぐうっ……!くぅ……!」
「ナイン!しっかりして!」
「スライス、少年を……!」
「させねええええええっ!!!」
少年、つまり活真くんが狙いか!いきなり皮膚がひび割れ始めた頭を押さえて苦しみだしたナインと呼ばれたヴィランに赤い髪のスライスと呼ばれた女がいきなり表れて肩を貸す。
えーくんが活真くんを守ろうと向かって拳を叩きつける。スライスの個性らしい刃物のような髪の毛をすべて弾くが、苦し紛れに出した空気の壁がえーくんを阻んで吹き飛ばす。そしてそれは、私にぶつかった。
同時に、スライスは地面に煙幕手榴弾を投げつけたらしく、あたりに催涙性の煙が蔓延する。私たちがそれぞれ目と呼吸器を守るとさらに信号弾が飛ぶ。爆豪くんがろっ骨をかばいながら放った爆破が煙を薙ぎ払うと、そこにはもう、だれもいなかった。
「やられた……!」
「とにかく事務所まで行こう!」
「希械、おぶされ。障子!爆豪と緑谷をたのむっ!口田!真幌と活真を!」
「ああ」
「うんっ」
ぬぐえぬ敗北感が、みんなを包んでいた。
まあ、そりゃね。当然持ってますよね残念ながら。前はデッドコピー、今回は人が持ってる。そこらへん違いますけどね。ではまた次回に。感想評価よろしくお願いいたします。
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